回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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平和の象徴

「瓦礫手裏剣!!!」

「君はやっかいだね本当に!!」

 

オールマイトさんと連携して戦うのは初めてだったが、その辺は何となくで自然と上手くバランスが取れた。

 

「おおお!!!」

超パワー超スピード、超耐久を誇るオールマイトさんが前に。

 

そして周囲のまあまあ手頃なサイズの瓦礫を手裏剣で投げるなどして、後ろからの援護中心の俺という形。

 

天を裂くとすら言われるオールマイトさんの打撃。

それを俺に配慮し手加減させるのも理窟に合わないので自然とこうなる。

 

 

時にオールマイトさんが突進の勢い余って後方に行き過ぎて隙を見せるなどした際は、俺が、

 

「カウ・ロイ!!」

 

「その飛び膝蹴りは食らってやれないなあ!!しかしシンプルな緩急の変化やらフェイントやらがここまで近接戦闘で厄介とはね!!本当に困ったもんだよ!!」

 

 

俺が接近戦をしかける。そしてその稼いだ時間の間に、

 

「カロライナスマッシュ!!」

 

超スピードで戻ってきたオールマイトさんが攻撃!!

俺は下がって援護に入る。

 

割と上手く連携は取れてると思う。

 

……この辺はエンデヴァーさんの所での経験が生きている。

本当にありがとうございます!!

 

そしてこの短期間でも仮面のヴィランが仮面を守っているのがよくわかった。故にその仮面を破壊するような一撃をアイツは無視出来ない。

 

……オールマイトさんを相手にしながらですら。

 

戦況はこちら有利に進んでいる。

 

このまま行けばいずれオールマイトさんか俺の一撃が仮面のヴィランを倒すだろう。

 

……そんな予測。

もしかしたら、そのいずれはもう少し早くなるかもしれないが。

 

(いい位置取ってるなトンガリ……)

 

……そう、トンガリ。

他ならぬコイツの参戦によって。

 

『見取り稽古』

 

そういう稽古がある。

読んで字の通り。

他人の試合や稽古を見て学ぶ事だ。

 

(……コイツ……トンガリの奴……この短時間で急速に伸びてやがる……)

 

 

トップヒーローであるオールマイトさん。

個性を使わないでハイレベルな戦闘をこなす俺。

 

……そして、個性を駆使しそんな俺達2人を1人で相手にするヴィラン。

 

三者三様の戦闘スタイル。

その全力戦闘。

それを、この才能マンは特等席で見ていた。

 

 

(下手すると今後5年〜10年分に相当するくらいの濃い戦闘経験をしてるんじゃないかトンガリの奴……)

 

先ほどからトンガリは何も喋らない。

 

……しかし、身動き1つしてないかと言えばそうでもない。

 

(……こまめに立ち位置を調整してやがる)

 

それも、俺とオールマイトさんに好影響なポジションに。

 

……相手が油断すれば一撃を与えられる立ち位置。

やらないだろうけど。

 

 

その立ち位置の精度がより良くなっている。

それもドンドンと。良く全体を見てる。

 

 

(やっぱ才能マンだなお前はさ……)

 

 

この濃密な戦闘体験……見取り稽古が短期間にトンガリの戦闘偏差値を跳ね上げていくのがわかる。

この後は今日を思い出し、自主練するだけでも強くなれそうなくらいの濃密さ。そんな濃密な戦闘経験。

 

……特にあの仮面のヴィランだ。

今も多種多様な個性を使い分けてオールマイトの攻撃を捌くヴィラン。

 

(正直……敵ながらあの個性の使いこなしには感服するぜ)

シンプルに個性の使い方が本当に上手い。

 

今も縦横1メートル程度の瓦礫を投げつけている相手に対し抱く感想としては不適当だが、それは本心からの敬意だった。

 

個性の扱いに関しては本当に図抜けたヴィラン。

雄英高校の教師陣と比較してすらずば抜けている。

 

皮肉な事としては、それをトンガリに見られることでトンガリの成長の糧になっていた。

 

反面教師。細かくは意味は違うけど。

 

 

……そして、戦場に更なる乱入者。

 

「遅いですよ!!」

「お前らが速すぎるんだ!!」

 

「……志村の友人か…確か名前はグラントリノだったかな?」

 

 

保須でも見た黄色のマントを纏う小柄な老人ヒーロー。

新たなヒーローが飛んできた!!

 

(強いな)

 

古強者。

 

そんな良い雰囲気を纏う老ヒーロー。

 

「小僧……本当に悪いが当てにさせてもらう……いいか?」

 

「かまいません。あれは逃す訳にはいかないでしょう」

 

「……すまん。他のヒーローが来るまでの間頼む」

 

「はい」

 

「……さっきまでの後方からの援護だけで大丈夫だ。他のヒーローが来るまでのしばらくの間だけ頼むよ我流Z少年」

 

「わかっています」

 

「おやおや……平和の象徴が切羽詰まって子供に援護を頼むのかい?流石に尊敬する師匠を見捨てて逃げた卑怯者はやる事が違うねえ」

 

「貴様ぁ!!!」

 

「俊典!!」

 

挑発にオールマイトさんがのってしまい飛び出し、ヴィランの衝撃波攻撃の直撃を受ける。

 

……が、

 

「おおおお!!」

「俊典!!」

 

その攻撃を突き抜け、オールマイトさんが仮面のヴィランの顔面にパンチを叩き込んだ!!

 

仮面のヴィランはその勢いで地面に打ち付けられ、仮面が割れる。

 

「やった……か?」

 

 

仮面を砕いた。

戦闘中、ずっとヴィランが守っているあの仮面を。

 

敵が必死に守っていたものを砕いた。

正直勝ちな気もするが……

 

「オールマイト……さん?」

 

…なんだ、あのオールマイトさんの身体から立ち昇る煙は?

 

(身体が……細くなってる?)

……気の所為か?

だが……

 

「小僧……テメエには悪いが最悪俺と2人で他のヒーロー達が来るまで時間稼ぎしてもらうかもしれねえ」

 

「……そのつもりではあります」

 

「本当にすまねえ……後は本当に時間との勝負だが……」

 

それは良いのだが……

 

「それはいいんですが……あれ……のんびり2人で何か話してますが放置してて大丈夫な奴ですか?」

さっさとトドメ刺した方が……

 

「……ダメだなあ!!」

……やっぱダメか……

 

ヴィランの掌から放たれた衝撃波。

オールマイトさんが空に吹き飛ばされる!!

 

それを追いかける古老ヒーロー!!

オールマイトさんを助けに向かったのだろう。

 

「………」

そしてこちらに掌を向けるヴィラン。

 

「……動けないだろう我流Z……君は避けられても彼は……爆豪くんはどうかな?」

 

トンガリの事か?それならコイツを舐め過ぎだ。

 

「……どーかね?アンタを倒すのは無理でも、攻撃を躱すくらいはなんとでもするぜトンガリなら」

 

「……ますます惜しい才能だね本当に……出来るなら本当に弔の仲間になって欲しかった所だよ爆豪くん」

 

「……ふざけろ。旧約聖書と新約聖書の発刊順序が入れ替わってもあり得ねえよボケが」

 

「くっくっく……本当に惜しいねえ……面と向かって僕にそういう口をきけるだけで大したもんなんだぜえ!!本当に本当に君は大器だよ爆豪くん!!」

 

「けっ!」

 

……ここでオールマイトさん達が俺達の傍の地面に降りてくる。救出は無事成功かな?

 

「前とは使う戦法も個性もまるで違うぞ!!正面からはまず有効打にはならん。虚をつくしかねえ!正念場だぞ!限界を超えろ!!」

 

「はい!!」

 

「……少し悩んでるよ……弔がせっせと崩して来たヒーローへの信頼……決定打を僕が打っていいものか……でもねオールマイト!君が僕を憎むように、僕も君が憎いんだぜぇ!!僕は君の師匠を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう。だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!!」

 

凶悪な力を溜めて、放とうとするヴィラン!!

 

「デケェのが来るぞ!!避けて反撃を!!」

 

古老の言葉に従い、飛び退く俺とトンガリ!!

 

しかし!!

 

「避けていいのか!!」

 

「うっ!!」

 

「おおぃ!!」

「オールマイトさん!!」

 1人何故かそこに留まるオールマイトさん!!

いや!まさか後方に誰かいるのか!!しまった!!戦闘に集中しすぎてて俺は見落としてしまっていたのか!!!

 

「君が守ってきたものを奪う!!」

 

そのツケを!!オールマイトさんが受けてしまう!!

そこに放たれる極大極悪衝撃波!!

 

「直撃かよ!!」

 

その最悪な衝撃波攻撃!!

その直撃をオールマイトさんが受けてしまった!!

 

……そして。

 

「まずは……怪我をおして持ち続けたその矜持……惨めな姿を世間に晒せ!!平和の象徴!!」

 

「オールマイト……さ、ん……」

「あ、あぁぁ……」

 

なんだ。これは?

 

何が……どうなって?

 

 

ヴィランの衝撃波攻撃……それ自体は凄まじい威力を持った凶悪な攻撃だった。

それはいい。

 

それを食らって、傷つき弱るのはわかる……

わかる……が……

 

「オール……マイト……なんで……」

「……しっかりしろ!!トンガリ!!」

 

トンガリの気持ちはめちゃくちゃわかる!!

だが……

 

「止まるな!!」

 

「……クソが!!」

 

 

悩んでもいい。

惑ってもいい。

 

だが……止まるのだけはダメだ!!

 

「まだ戦闘中だぞ!!」

「ああぁぁ!!!!」

 

それで気を取り直すトンガリ。目に意識の炎が戻るのが見えた。

 

これでトンガリは大丈夫だ……しかし。

 

ヴィランの攻撃……その直撃を受けたオールマイト……

 

萎んでいる……。

……衰えていた。

 

「あれが……オールマイト?」

 

「頬はこけ、目は窪み、貧相なトップヒーローだ!!恥じるなよ!!それがトゥルーフォーム!!本当の君なんだろう!!」

 

 

……そう、そこには1人のヒーローがいた。

 

弱り、衰え、傷だらけのヒーローが。

 

やせ細った長身の、ボロボロのヒーローが。

 

それでも……ガイコツのオバケのようになりながらも、その上更に傷だらけになってもまだ戦おうという……そんなヒーロー……

 

……あれが……あれが……オールマイトなのか……

 

 

だとしたら……

 

「だとしたら……だとしたら……俺は……俺達はなんて……なんてモノをあの人に背負わせちまったんだ……」

 

「…………」

 

 

……そうして、今夜の物語は最終の局面を迎えようとしていた。

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