回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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THE試験(釣り)

B組生徒達の必殺技開発は順調に進んでいた。

 

……特に小森の必殺技がエグい……エグすぎた。

あんなん初見殺しにもほどがあるだろ……

他の皆も頑張ってはいるけど、小森のはちょっと他の人との比較が難しいくらいには凶悪な必殺技だった。

 

(……対策は……やっぱ使われる前にやるしかないかなあ?)

 

「(ゾクッ!!)な!何か急に背筋がゾクッとしたノコ!!」

 

まあそれはさておき。

 

 

訓練の合間に俺は開発工房に顔を出して、頼んでいたヒーローコスチュームの追加装備を受け取る。

 

それはドリルハリケーンを強化する手甲と脚甲。

ドリルでより風を巻き込み、威力のある竜巻を放てるように工夫された物だ。

靴は5本指靴下を参考にした専用靴。

 

そしてベルト部分には胸元のペンダント型コアドリルのオプションパーツが2つ。

 

より早く壁や地面を掘って進めるように工夫されたドリルアタッチメント。

より強力な竜巻を放てるように工夫されたドリルアタッチメント。

 

一学期のヒーローコスチュームに上記を加えて強化したものが、俺の新しいヒーローコスチュームとなる。

 

「回原少年の必殺技はドリルハリケーンとギガドリルブレイク……それと竜巻での飛行に武術関連の技か……」

 

「ヒーローコスチュームも新調したし、合宿のおかげで個性も伸びてます。基本はこれらの強化で行くつもりです」

 

「必殺技開発は必要だが、それが目的になっては本末転倒だからね。既存の技の強化も大切さ!それでいいと思うよ。頑張ってな回原少年!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

オールマイトのお墨付きをもらい訓練を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてあっという間に日々は過ぎた。

ついに仮免試験の日となる。

ブラキン先生に連れられバスで俺達B組生徒は移動する。

 

向かうのはヒーロー公安委員会の管理するとある施設。

 

ここで本日俺達はヒーロー活動許可資格、その仮免の試験を受けるのだ。

仮免、それは緊急時における個性行使の限定許可証。

例年の合格率は5割ほど。

 

ここに来たのは俺達B組のみ。A組は別会場で試験を受けるらしい。

 

「おい見ろよ雄英だぜ……」

「あれヒーロー殺しに喝いれた回原だろ?1年雄英体育祭優勝者の」

「やっぱ雰囲気あんな」

 

バスを降りて会場に向かう。

途中、俺達と同じく仮免試験を受ける他の学校のヒーロー科の生徒達が、俺達を見ながらそんな事を話しているのが聞こえてくる。

彼等以外にも他の彼等彼女等、多くの人達が施設に向かって歩く俺達を見ていた。

 

「……どうも注目の的ってヤツみたいだね。まあ悪い気はしないけど」

 

「そう喜んでばかりもいられないぞ物間」

 

「先生?」

 

俺達の先頭に立ち歩くブラキン先生は立ち止まり振り返ると、

 

「注目を浴びる。それはつまり警戒され、狙われている事と同義だ」

 

へえ……それはそれは、

「……つまり?」

思わずニヤリと笑ってしまいながら、先生に先を促す。

 

「君なんでそんな嬉しそうなんだい回原……」

 

「この子ったらもう……闘争の気配感じるとすぐテンション上がっちゃうんだから……」

 

「はいステイステイ……ステイしなさいそこの蛮族」

 

「まだ試験開始前だぞ全く……」

 

「……まあ回原の反応は間違ってはいない。例年、ヒーロー仮免試験では『雄英潰し』が恒例となっている。闘争心と警戒心を最大限高めて行けよ!!」

 

ほう……雄英潰し……ねえ。

 

「「「「「はい!!!!」」」」」

 

先生の助言だろうなこれは。

それに生徒達皆で返事をしながら考える。

 

雄英潰し。

 

……なるほどね。

全員が合格するわけではないからこそ、強力なライバルを他の皆で狙うって訳か。

 

「……上等。返り討ちにするだけだな」

「……ま、そういう事だね」

 

雄英潰し大いに結構。

だがそんな簡単に俺達を潰せると思うなよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に入り更衣室で着替えて試験の説明会場に集合する。

そこで受験者全員が集まったのを確認し、ヒーロー公安委員会の担当の人が試験について説明を始めた。

 

まずは、1次試験の内容。

 

「まじかよ……いきなり1540人を100人にまで絞るってか」

「全然聞いてた内容と違うじゃねえか!」

 

周囲の受験者からも同様の……戸惑いの声が上がっていた。

例年は5割程度の合格率。

だが1次試験でいきなり10%切るぞこれ?いいんか?

 

まあ色々説明は続いていたが、要約するとオールマイトの引退やらヴィランの活発化を考慮し、試験内容を例年と大きく変えたって感じ。

 

「ま、関係ないか。全員で100人の中に入ればいいだけだろ」

 

「……だね。回原の言う通り。皆でとりあえず100人に残るとしようか」

 

 

1次試験の内容はボール当て。

試験会場の広大なフィールド内で受験者同士の競争。

受験者は全員3つのターゲットを常に晒されている体の好きな場所につける。

受験者には6つのボールが配られる。

3つ全てのターゲットにボールが当たってしまうとその人は脱落。

3つ目のターゲットに当てた人がその人を倒した事になる。

ボールは投げる必要は無く、タッチでもOK。

試験の通過条件は2人以上を脱落させる事。

通過は先着順となる。

 

「……まとめると試験内容はこんな感じだね。回原、アンタボール投げてこの試験クリアする自信ある?」

 

「うーん……やろうと思えば出来なくもなさそうだけど……正直面倒くさそうだなあ」

 

「……むしろなんでやろうと思えば出来るノコ……」

 

「仮にもヒーロー科のヒーロー志望が全力で抵抗するんだぞ……投げてターゲットに当てるなんて至難の技だろ……」

 

「……ともかく、回原でもボールを投げてクリアするのが難しい以上、基本的には相手を拘束してボールでターゲットをタッチするのが基本方針になるって事だね。つまり……如何に他の受験者を無力化・拘束するかがこの試験の肝となるって訳だ。だから……」

 

拳藤が俺と骨抜を見ながら、

 

「……だから、私たちは回原と骨抜を中心に釣りをするとしよう!さあ作戦会議だ!」

 

そして我等がクラス委員長を中心に作戦会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideモブ

 

俺の名前は藻分。

茂部高校ヒーロー科の生徒だ。

俺達茂部高校ヒーロー科の生徒達は……そして他の学校の受験者達は今、雄英生徒達を緩やかに半包囲するように動いていた。

 

雄英潰し。

 

ヒーロー仮免試験の風物詩といってもいいそれ。

 

そう、俺達はこの試験で雄英生徒達を狙い、獲物とするべくこうして動いていた。

 

……正直な本音を言えば、こうやってわざわざ虎の尾を踏むような真似をせず、漁夫の利を狙った方がいいと思うのだが……気弱で輪を乱すのが苦手な俺はそれを皆に言うことが出来なかった。

 

だからこうして今、俺は雄英生徒を包囲しようと歩いていた。

俺達に狙われているのを知っているのか知らないのか?

 

彼等は一塊になって歩いていた。

やはり自分達が包囲されそうなのはわかっているのだろう。

彼等は包囲を避けるように動く。

だが人数が違い過ぎる……

 

どれだけ動いても彼等は20人ほど。

それを100人以上の受験者達が狙っていた。

 

緩やかに2方向、3方向と包囲されつつ、雄英生徒達は広い試験会場の平地に……なんの遮蔽物もない平地エリアへと歩いていく。

 

……後で知った事。

……この時点で俺達と同じく雄英潰しを狙っていた連中の何人かは包囲の輪から抜け出していた。

 

……彼等は聡かった。

俺達は気づかなかった。

 

 

気づいた奴もいた。

気づかなかった奴もいた。

 

……それだけの話。

気づかなかった奴は俺と同様、試験開始の合図と共にその報いを受けることとなる。

 

そう奴等を包囲し倒すつもりだった間抜け達が、逆に誘導され罠にはめられた、と。これはそんなつまらない話だった。

 

試験開始の合図。

それと同時に回原という雄英生……最警戒対象ともう1人の雄英生が地面に手をつける。

 

「「個性合体!!スパイラル・マッド!!」」

 

「な!!!!」

 

その瞬間!!それまで俺達が普通に立って歩いていた地面が一気に液状化したように柔らかくなる!!

 

それだけならまだいい!!

 

「はあ!!なんだよこれ!!」

 

!!それが!!まるでドリルで撹拌されたみたいに!柔らかくなった地面が猛烈な勢いで回転!流れ出した!!!

 

柔らかくなった地面が回転!!それに飲みこまれた俺達を一瞬で無力化する!!

 

水を泳ぐ要領で脱出しようとするが、効果範囲の広さと流れる地面の勢いに流されてどうにもならない!うわ!!口に入ったぞ!!少し飲んじまった!!大丈夫なのかこれ!!

 

 

……後で聞いたらそのうちトイレで出るから大丈夫だそうな。ただし下剤推奨とのこと。

 

冗談じゃねえよ!!相手無力化しつつ肛門破壊する個性攻撃とかヒーローのやることか!!!

 

そんなこんなで絶望しながら猛烈な勢いで流れる地面に流れていると……

 

 

突然!!何らかの力でその流れから引き出される!!

 

これは……緑色のツル!?

 

「泡瀬さん、拘束を」

「了解!!」

 

強力なツルの個性!!それで流れる地面から救い出され普通の地面に放り出された瞬間、また別の個性で一瞬で拘束される。

 

俺の体が周囲の物に溶接され、身動き取れなくなる!

見れば俺の他のクラスメイトも角の個性で普通の地面に引き出されると、ブドウのような不思議な髪の個性でやはり一瞬で拘束されていた!!

 

他にも多くの人達が……流れる地面で身動き取れなくなった受験者達が……様々な個性で普通の地面に救われた瞬間に、一瞬で拘束されていった。

 

 

そうしてあっという間に40人……つまり雄英生がこの試験をクリアするのに必要な人数が確保された。

 

「そっちもこちらを狙ってきたんだ。まあ悪く思わないでくれよな」

近づいて来た雄英の生徒にターゲットをボールで3カ所タッチされる。

そんな光景がそこいらで40回分繰り返される。

そうして……俺達は何も出来ないまま試験終了を迎えた。

 

 

「……やっぱり……勇気を出して漁夫の利狙いに行こうって皆に言えば良かったなあ……」

 

試験をクリアし控室に向かう雄英生達の背中を見ながら、俺は次の試験ではちゃんと思った事を皆に言おうと固く決意した。

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