回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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会議の行方

「想像しただけで腸煮えくり返る!!今すぐガサ入れじゃあ!!」

 

「同感です。今すぐ行きましょう。足りない情報は現地で知ってそうなヤツとっ捕まえて口を割らせればいい!!」

 

「よう言ったでスパイラルくん!!その通りや!!片っ端からとっ捕まえて口割らせたる!」

 

ファットガムさんの言葉。俺はそれに応え席を立つ。

胸糞悪過ぎる!児童虐待なんてレベルじゃねえぞ!!

今こうしてる間にも何が起こってるかなんて考えたくもない!!今すぐ全員で行くべきだろ!!

 

「けっ!コイツらが子供保護してりゃ一発解決だったんじゃねえの?」

ロックロックさんが緑谷と通形先輩を責める。

わからないでもないが……

 

「全て私の責任だ。2人を責めないで頂きたい。知らなかった事とはいえ、2人ともその子を助けようと行動したのです。緑谷はリスクを背負いその場で保護しようとし、ミリオは先を考えより確実に保護出来るように動いた……今、この場で一番悔しいのはこの2人です」

 

ナイトアイさんが2人を庇う。そうだ、その女の子がどういう目にあっているのかとか知らない状態であれば、2人の判断は決して間違いではないのだから。

 

「今度こそ必ずエリちゃんを」「「保護する!!」」

 

緑谷と通形先輩が席を立ち、そう強く叫んだ!!

 

「そう!それが私達の目的となります!」

 

 

 

「……けっ!ガキが粋がるのもいいけどよ。推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は隠して置きたかった核なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまってだ、あまつさえガキンチョヒーローに見られちまった。素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。攻め入るにしてもその子がいませんでしたじゃ話にならねえぞ。何処にいるのか特定出来てんのか?」

 

「……確かに。どうなのナイトアイ?」

ロックロックさんの意見、それをご尤もだとリューキュウさんがナイトアイさんに問う。

 

「問題はそこです。何を何処まで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かなければならない」

 

……そしてナイトアイさんが作戦の説明を行う。

全国各地の死穢八斎會と接点のある組織、グループ、そして死穢八斎會所有の土地。可能な限り洗い出しリストアップ。

そこをこの場にいるヒーロー達に調べて、拠点となるポイントを絞って欲しい、と。

その為に各地に土地勘あるヒーローが選ばれていた。

 

「……オールマイトの元サイドキックな割に随分慎重やな!!回りくどいわ!!こうしてる間にもエリちゃんいう子泣いてるかもしれへんのやぞ!!!」

 

「我々はオールマイトになれない。だからこそ分析と予測を重ね、助けられる可能性を100%に近づけなければ」

ファットガムさんの言葉に冷静に返すナイトアイさん。

 

「……さっきも言いましたが、知ってる奴を片っ端からとっ捕まえて口を割らせればいい。若頭がそこにいないか逃げるというなら、それはそれで追撃するだけの事でしょう?少なくとも逃走中はエリちゃんに危害を加えることはないでしょ?こっちの追跡がキツければそれどころじゃ無い筈だ。今すぐ行くべきです」

俺はそれに反論する。

それに例え本拠地にいなくとも、拠点がわかってるなら近いとこから虱潰しに行けばいいのだし、と。

 

逃走中に警察の監視に引っかかる可能性だってある。

今は動くべきだ。

 

「小僧……気持ちはわかるが」

「回原ちゃん……貴方まさかまたやるつもりなの?」

古豪グラントリノさんと蛙吹の言葉。

 

「どうなんやナイトアイ!!スパイラルくんの言葉は一理あるで!!情報無い状態でも今すぐガサ入れする事の利点は確かにある!!少なくともワイらは2人だけでも行くで!!」

 

「……あの……一ついいですか?」

……そこで相澤先生が挙手し発言の許可を求めた。無言でナイトアイさんが頷く。

 

「どういう性能かは存じませんが、サー・ナイトアイ。未来を予知出来るなら、俺達の行く末を見ればいいじゃないですか。このままでは少々合理性に欠ける」

……なるほど。個性で未来を見ることで情報を今すぐ集めるって事か。……なるほど、合理的な相澤先生らしい意見だ。

 

「……それは、出来ない」

……しかし、ナイトアイさんがそれを拒否した。

「私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり1日1時間、1人しか見ることが出来ない」

 

そして個性の詳細の説明を行う。

フラッシュバックのようにその人の未来が一コマ一コマ脳裏に映される。

発動してから1時間、他人の生涯を記録したフィルムを見られる。ただし、その視点は全編人物の近くからの視点。見えるのは個人の行動と僅かな周辺環境だけだ、と。

 

「いやそれだけでも十分過ぎるほど色々わかるでしょう……出来ないとは、どういう事なんですか?」

 

相澤先生の言葉に皆が頷く。

そこまでわかるなんてスゴイ個性だ!!

正直現時点で必要そうな情報だなんて、それだけでも十分あつまるんじゃないか!?

 

相澤先生の言葉を聞き、ナイトアイさんは目元のメガネを抑え、少し俯き、

「例えば…その人物に近い将来……死……ただ無慈悲な死が待っていたらどうします?」

 

……あん?

……なんじゃ、そりゃ……

 

「私の個性は行動の成功率を最大まで引き上げた後に、勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は闇雲に見るべきじゃない」

 

「はあ!死だって情報だろ!そうならない為の策を講じられるぜ!」

 

ロックロックさんの叫び。

 

「占いとは違う。回避出来る確証はない」

 

「ナイトアイ!よくわかんねえな!いいぜ俺を見ろ!いくらでも回避してやるぜ!」

 

「ダメだ!!」

 

「……ナイトアイ……」

 

ナイトアイさんは悲痛な叫びを上げ、ついには下を向いて黙ってしまう。

そして部屋には沈黙。

誰も何も言わない。言えないのか?

 

……あっそう!!じゃあ俺が好きに言わせてもら……!

 

「……人が大人しく黙って聞いてりゃあ……んなクソくだらねえ理由でごちゃごちゃと……」

 

「かっちゃん?」

 

トンガリが立ち上がり叫ぶ!

 

「死は昇天だのって説法をここでかますつもりはねえけどよ!!俺が今まで大人しく黙ってたのは!!一見回りくどいと思えるアンタの作戦が一番合理的だと思ってたからだ!!だが今の個性の話聞いて!!んな使える手段があるのに使わねえ指揮官の作戦なんぞ黙って大人しく従えるかよ!!」

 

「君は……神野区の時の……」

 

トンガリを、ナイトアイさんが見る。

 

「人間生きてりゃそこら走ってる自動車に轢かれたって死ぬ!俺達ヒーローはヴィランと戦って死ぬかもしれねえ!!そんな覚悟決まってる奴等がここに揃ってるのに!!何で指揮官のアンタだけがビビってんだよ!!」

 

「私は……ビビってなど……」

 

「ビビってんだろうが!!」

 

「これはビビってるとかビビってないとかそんな幼稚な話では……っ!!」

 

「それがビビってる……って!ドリルテメ!?」

 

トンガリが叫んでる最中、俺は歩いてナイトアイさんの元まで来ていた。

そして……

 

「……トンガリの言う通りでしょ完全に。いい加減にしてくださいよナイトアイさん……」

 

「か!回原くん!!」

 

……俺は、ナイトアイさんの胸倉を掴みぐいっと引き上げた!

そして、彼の瞳をしっかりと覗き込む。

 

その、ビビってる目を。

 

「アンタずっとビビってるんでしょ」

「この手を離しなさい。そして私はビビってなど……」

 

「自分の死じゃない。アンタは自分以外の誰かの死を考えてずっとビビってる!!ビビり続けてる!!」

 

「くっ…!!!」

 

その怯えた目を、しっかりと覗き込み、叫ぶ。

 

「そして今!!アンタは俺達仲間の死にビビってる!!もしかしたら誰かの死を覗いてしまうことにビビってる!!」

 

「……!!!」

 

「ふざけんなよ!!仲間の死にビビってる奴が指揮官なんぞやるんじゃねえよ!!仲間の死に責任取れねえんだったら今すぐ指揮官なんぞ辞めちまえ!!俺が代わってやる!!」

 

「………」

 

「だから悔しかったら俺を見ろ!!俺の未来を見ろサー・ナイトアイ!!俺はアンタにこの作戦で命を預けてやる!!俺1人の命ぐらい背負ってみせろ!!」

 

「くっ!!」

 

「その上で作戦を考えろ!!エリちゃんを助け!!誰も殺さず!!誰かが死にそうなら皆でそいつも助けて生かすような策を!!誰かの死が未来にあるならそれを変えてみせろ!!それが指揮官であるアンタの責任だろう!!さあどうする!!俺はアンタに命をすでに預けたぜサー・ナイトアイ!!アンタはどう応えてくれるんだサー・ナイトアイ!!出来る事があるなら!!その責任からビビって逃げるな!!サー・ナイトアイ!!!」

 

「…………」

 

俺の叫び。

それを聞くサー・ナイトアイ。

 

……その瞳の中に、先ほどまで見えなかった強い意志の輝きが宿ったように見えた。

そして……

 

「回原くん……すまない。嫌な役割を君にやらせてしまったんだよね」

 

「通形先輩?」

 

俺の肩を後ろからぽん、と叩く大きな手。

 

「本来、君より先にサーに命を預けた人間が、今の君の言葉を言わなければいけなかったんだよね」

 

「ミリオ……」

 

 

そこには『絶対に退かないと』固く决意した通形先輩が立っていた。不退転。その三文字が気迫となって身体全体から溢れて出していた。

 

「俺を見てください、サー」

 

「ミリオ……」

 

「俺は貴方を尊敬している。人間としてもヒーローとしても、そして指導者としても指揮官としても。俺はすでに貴方に命を預けている。とっくの昔に預けているんだよね!!」

 

「………」

 

「そして!!貴方に素晴らしいヒーローとして育ててもらったと!!そう確信してるんだよね!!貴方に育ててもらったからこそ、俺はこれからも素晴らしいヒーローとして活躍していけるんだよね!!……だから、俺の未来を見て欲しいんだよね!!」

 

「………」

 

「貴方の育てたヒーローの!!その輝かしい未来を!!自信を持って見て欲しいんだよね!!」

 

「!!!!」

 

その言葉に、ハッとしたように通形先輩を見るナイトアイさん。

 

「俺が尊敬する……俺が命を預けた貴方。その貴方が鍛えた俺がそう簡単に死ぬ筈無いんだよね!!でも!!もしかしたら何か不測の事態があるかもしれない!だから……だから!!貴方の素晴らしい個性で未来を見て!そしてサポートして欲しいんだよね!!そして!皆で協力して!嫌な未来があるなら皆でそれを回避すればいいんだよね!!」

 

「ミリオ……確かに、それは中々ユーモアの感じられる提案だ、な……」

「でしょう!!サー!!!」

 

……もう大丈夫かな?

 

……その様子を見てそう確信し、俺は少し後方に下がる。

 

「……けっ!テメエら2人していいとこもってきやがって」

 

トンガリが俺に近づいて来てそう言った。

 

「……そりゃ悪かった。でもお前もあそこからどう畳むか考えて言ってたのかよ」

 

「は!あんなビビってるだけのヤツなら何とでも言いくるめたるわ!!神のことばは生きていて、力があり、両刃の刃よりも鋭く、たましいと霊、関節と骨髄の分かれ目さえも刺し通し殺すぞコラァ!!!」

 

「待て待て今ここにニコイチのお前の相方いねえから解説ないのよ」

 

「……しっかし回原も無茶するよなあ。確かにアツかったけど爆豪以上に無茶苦茶しやがって」

 

「何言ってやがる切島。体育祭やらアレやらでも見ただろ。根本的に表面上の言葉が俺より多少マシなだけで、本質的にはこのボケドリルのが俺よりよっぽどヤベーぞ」

 

その後ろから切島と、ファットガムさんが来た。

「ええ口上やったでスパイラルくん!!どうも、いい方向で話はまとまりそうやな。君と爆豪くんのおかげや!!」

 

その後、ファットガムさんの言葉の通りに物事は進んだ。

 

俺達の言葉がナイトアイさんの心を動かし、彼は通形先輩に個性を使用した。

 

結果、死穢八斎會の本拠地に巨大な地下通路があり、そこにエリちゃんと若頭がいる事が判明した。

 

そして……

 

「明朝、エリちゃん救出・死穢八斎會殲滅電撃作戦を行う!!警察の方は急がせて大変申し訳ないが令状などの各種手配を明朝までお願いします。ヒーロー達は本日は解散。英気を養い、明日の作戦に備えてほしい」

 

そのナイトアイさんの言葉で、本日は解散となった。

決戦は、明日だ。

 

 

 

 

sideサー・ナイトアイ

 

「リューキュウ……非常識を承知であえて頼む。明日建物内部への突入チームに君の所のインターン……スパイラルを借り受けたい」

 

会議終了後、呼び止めたリューキュウにそう頼む。

彼女は不機嫌そうな顔で、

「……インターンは原則インターン先のヒーローとの活動が原則よ。確かに彼の近接格闘能力が突入チームに貢献出来るのはわかるけど、それがどれだけ非常識な頼みかわかってるの?」

 

「……わかっている。だが、そこを曲げてお願いしたい」

私は再度そう言って頭を下げる。

 

しばし置き、頭上から嘆息。

「……何かしら理由はあるのね。わかったわ。明日、スパイラルは貴方に任せるわ」

「すまない」

 

先ほど見たミリオの未来。

その中のビジョン。

 

個性を失うミリオ。

そして、私自身の死。

 

彼の……スパイラルの言う通りだ。

私は、自分の死にビビってなどいない。

彼の……オールマイトの、そして仲間の死を見る事に怯えていた。

……だから、私の死に関しては……そこまで気にならない。図らずも彼等の言う通り。いずれ死は訪れるのだから。

だが……

 

(……さあ。君は私に命を預けると言ったな。私も、君に命を預けるぞスパイラル!!)

 

先ほどのビジョンの中にスパイラルの姿は見えなかった。

……だから、もしかしたらこれが未来を変える布石になるのかもしれない。

 

あの時の、圧倒的な熱量を思い出す。

私の胸倉を掴み、叫ぶ彼の姿を。

オールマイトとも違う。

オールマイトが認めた後継者、緑谷とも違う。

私がオールマイトの後継者に相応しいと考えた、ミリオとも違う。

 

……だが、圧倒的な熱。

何もかもを巻き込み、燃やしながら皆を巻き込んでいくあの圧倒的な熱量!!

 

それはオールマイトにも無かったものだ。

 

(やってみせろ、スパイラル……)

 

あそこまで啖呵を切ってみせたのだ。

せめて、ミリオだけでも個性の消失から救ってみせろ。

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