回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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突入

一夜明けて決戦の朝。

都内の警察署に8時集合の為、比較的早く寮を出て都内に向かう必要があった。

気を利かせて車を出してくれるそうなので、すでにヒーローコスチュームに着替え済み。

校門で皆と待ち合わせし向かう事となっていた。

まだ誰も起きていない静かな寮。

 

誰も起こさないようにひっそりと寮を出る。

 

そして少し歩いた所で……

 

「回原!」

 

「ん……小大?」

 

たまたま早起きしてたのかな?

寮の入口から走って小大がこちらに近づいて来る。

慌てて飛び出してきたのだろう。

少しの寝癖。女の子らしい可愛いパジャマを着た小大には、思わず目を奪われるような愛らしさがあったのだが、

 

「……っておい小大!お前パジャマはともかく裸足じゃねえか!足痛くないか!?大丈夫か!?」

 

「ん」

 

どうも大丈夫らしい。

 

小大は慌てて走った所為で乱れた呼吸をしばし整えると、

 

「回原」

 

「おう」

 

自分の胸元を抱きしめるようにして、小大は俺の目をしっかりと正面から見つめて、

 

「……気をつけてね。ちゃんと無事に帰ってきてね」

 

「……おう」

 

普段は「ん」としか喋らない。とてもとても珍しい小大の言葉。それに一瞬戸惑い……そして返事をした。

……まあ流石に何かしらの一大事というのは伝わるよな。ヒーローコスチューム着ての早朝からの外出だ。

それを察したからこそ小大は、パジャマ姿で裸足のまま慌てて外に飛び出し、俺を追いかけて来てくれたのだろう。

 

彼女は心配そうに……でも、その心配と不安を振り切るようにして

 

「……いってらっしゃい。待ってるからね」

 

そう、綺麗に笑って言ってくれた。

 

「……ありがとう小大。行ってきます」

 

「ん」

 

多分、俺もちゃんと笑ってそれに返せたと思う。

そして小大に背を向けて校門へと歩き出す。

 

……俺の背中が見えなくなるまで、見送ってくれている彼女の視線を背中に感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察に着き8時になると、早速作戦の概要が説明される。

そして手元には死穢八斎會所属の主力級メンバーと、その詳細な個性の情報などが印刷されたプリントが渡された。

 

事前にこういう情報がもらえるのはありがたいね。

死穢八斎會の本拠地の地下に広がるという広大な地下通路。

ナイトアイさんの予知でわかったその一部の情報などをしっかりと頭に叩き込む。

 

「回原くん……いえ、スパイラルね。昨日軽く話したと思うけど」

リューキュウさんが俺に近づき話しかけて来た。

 

「わかってます。ナイトアイさんの指揮下で突入チームに入るって事ですよね。了解です」

 

少し不安そうなリューキュウさんの言葉に笑って応じる。

俺の様子を見て、リューキュウさんも軽く笑い。

 

「気をつけていってらっしゃい」

「はい」

 

「へっ!ミルコを倒したって噂の学生かよ!演習と実戦は違うからな。あまり調子にのって飛び出すんじゃねえぞ」

 

「ちょっとロックロック!昨日から貴方ねえ!」

 

「大丈夫ですよリューキュウさん。ご助言、ありがとうございますロックロックさん」

 

「け!」

 

俺の素直な感謝の言葉に、ロックロックさんは照れたように背を向けて去っていく。

 

昨日からそうだった。

一見すると、俺達学生に悪態ばかりついていたように見えるロックロックさん。

しかし、その瞳の奥には確かにこちらを労るような優しさがあったのだ。

だから、今のも単に心配してこちらに声をかけてくれただけなのだろう。不器用な人だな。とある師匠を思い出させるような、そんな不器用さ。

 

「旋くん旋くん!!気をつけてね!どうせ無理はするだろうけど、あんまり無理しすぎはダメだからね!」

 

「……出来れば無理もしないで欲しいのだけど……」

 

「ねえリューキュウリューキュウ!どうして無駄な期待をしちゃうの?旋くんがこのシチュエーションで無理しないわけないよね!不思議不思議!」

 

「ありがとうございますねじれ先輩。大丈夫ですよ。無理は適度にしときます」

 

今朝の小大を思い出す。

そしてその他のクラスメイト達を。

 

俺の事を心配してくれるヤツラがいるんだ。

……ちゃんと無事に帰ってみせるさ。

行ってきます、って言って出てきたんだ。

ただいま、ってちゃんと帰って言ってやるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場所を移動し8時30分。

場所は死穢八斎會の本拠地。

威圧感のある大きな木製の門の前。

そこにサー・ナイトアイさん率いる、ヒーローと警察の連合チームが集結していた。

インターホンを押し令状を読み上げてから突入すると段取りを説明する警察の方。それにしつこいと悪態をつくロックロックさん。

 

 

そのやり取りを意識の片隅で捉えながら、

「……いるな」

「回原くん?」

 

俺は門の向こうに巨大な暴力の気配を察知した。

 

その気配は急加速!巨大な木製の門を内側から破るようにして!!

 

「全員警戒!!初手は向こうに取られた!!来ますよ!」

「ちっ!全員警戒!!門の前の者は下がれ!!」

 

ナイトアイさんの注意の呼びかけと同時!!巨大な破砕音と共に門が内側から破壊される!!

 

破砕音がまだ響き、門の破片がまだ宙を舞う中。

 

「シャア!!!」

「死ねぇ!!!」

「ヌン!!!」

 

……幾人かの人影が反応し、音を追い越すようにして前に飛び出していた!!

 

「ぐほぉ!!!」

 

門を砕いたその巨大な拳を振り下ろしたままの巨漢。

その男の鳩尾に俺の肘打ちが炸裂し!顔面にはトンガリの爆破が炸裂し!!背中にはグラントリノさんの蹴りが炸裂した!

 

「門付近の方の救助完了!!」

「今の奇襲での被害者はゼロなんだよね!!」

 

後ろからは緑谷と通形先輩の声。破片に巻き込まれてケガした人はいなそうだった。

 

 

さて正面から俺の打撃とトンガリの爆破。後ろからは蹴り。それを食らった巨漢はまだ細かな瓦礫が舞う中、後方に音をたてて倒れていく。

 

「……さぁてロックンロールだ。暴れようぜトンガリ!」

 

「は!何言ってやがるボケドリル!!ヤクザの本拠地へのカチコミだぜ!!そこは演歌だろうが!!」

 

俺が向けた獰猛な笑みに、トンガリも同種の笑みを返してくる。

 

「小僧共に演歌を先に歌われるとジジィとして面目たたねえな!テメエらもだろ!!行け警察!!まずは大人の筋を通してこい!!」

 

少し楽しそうなグラントリノさんの叫びに、ハッと気づいた警察の方が、

 

「今から令状を読み上げながら突入します!!警官隊前へ!!突撃!!」

 

「「「「「うおおおおおお!!!!!!」」」」」

 

門での騒動に気づき、慌てて屋敷の中から飛び出してきたヤクザ達に警官隊が襲いかかり、ヤクザ達が応戦する。

 

「……令状の読み上げを確認した。我々も行くぞ!!戦闘は最低限に!!前進を最優先とするように!!突撃!!!」

 

そのナイトアイさんの叫びにヒーロー達が呼応し、彼を先頭に動き出す。

 

「……さて小僧共……先手は譲ってもらうぜ!!ついて来なさいや!!」

 

「「上等!!」」

 

そしてグラントリノさんが飛び出す!!

個性を使い移動と蹴り攻撃を同時に行い、必要最小限の敵だけ倒し前に進む。

 

「オラァ!!」

 

俺も自分の前方を塞ごうとするヤツを優先的に倒しながら前に進む!!

トンガリも同様。

先を進むグラントリノさんを追いかけ、俺達は前に進む。

 

この手の突入作戦は先頭への負担が当然大きい。

だが!そんなの関係無いね!!

 

「はっは!!わかってんじゃねえか小僧共!!カチコミってのは先陣切ってナンボ!!先陣こそが漢の華ってなぁ!!」

 

当然、俺達の先を行くグラントリノさんの負担が一番大きい。

 

だがそんな様子は全く見せず、これぞ漢の花道とばかりに空を飛び翔ける!!

 

そして俺達は屋敷へと辿り着いた!!

 

「このまま例の部屋までのルートを確保する!!後ろは後ろの連中に任せればいい!!行くぞ!!」

 

「はい!!」「おうよ!!」

 

そこそこの広さのある室内空間ではグラントリノさんは凄まじい強さを発揮する!

出てくるヤクザ達をほとんど1人で無力化し、俺達を先に誘導する。

 

「この作戦はスピード勝負だ!!無力化したヤクザの確保は後から来る連中に任せろ!!俺達はこのまま前に進む!!」

 

そして!ついに俺達は目的の部屋に辿り着いた。

 

「操作は俺がやる!!ドリルとジジィは周囲の警戒頼む!!」

 

事前資料に書いてあった、木の床の特殊な操作。

トンガリがそれを操作する間、俺とグラントリノさんで周囲を警戒する。

 

「操作完了だ!!さっさと開きやがれこのウスノロ扉!!」

 

悪態をつくトンガリの声に応えるように、地下への道を塞いでいた隠し扉がゆっくりと開いていく!!

 

そしてこのタイミングでナイトアイさん達が!!緑谷が!通形先輩が!!そして他のヒーロー達が追いついてきた!!

 

「センチピーダー!!バブルガール!!2人はここに残ってこの場の確保!!残りは全員地下に突入!!行くぞ!!」

 

「「「「「おう!!!」」」」」

 

こうして俺達は地下通路に突入した。

 

 

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