御礼申し上げます。
完結目指して頑張って参りますので、これからもよろしくお願い致します。
「通形!テメエが治崎の相手しろ!俺がもう1人を抑える!爆豪!!お前は俺達のフォローだ!!そして回原!わかってるだろうな!!」
「はい!エリちゃんはお任せください!」
事前のブリーフィングでナイトアイさんから伝えられた未来。
今この場にいない音本という男の不意打ちの銃撃。
通形先輩はその銃弾からエリちゃんを庇い、そして個性を失う。
……そんな、未来。
「させる訳にはいかないですよね!」
その未来を避ける!!
エリちゃんを守る!!
それがこの場での俺の役割だ!!
「行くぞ治崎!!」
通形先輩が治崎に。そしてグラントリノさんが若頭補佐の玄野に飛びかかる!!そしてトンガリがそのフォローに入った!
そして俺はエリちゃんを守るため彼女に近づく。
初めて会う見知らぬ男に、エリちゃんは「ビクッ!」と震え少し怯えた顔をした。
だから、
「はじめましてエリちゃん。俺は回原。回原旋っていうんだ。さっきまで君を守っていた通形先輩のこうは……友達だよ」
子供には後輩ってわかりにくいかな?とか考え友達ってことにする。
そして自分に出来る最大限の優しい顔……優しい笑顔を彼女に向ける。
《少年達……そして良ければ皆も聞いて欲しい。『人を助けるって、つまり、その人は怖い思いをしたって事だ。命だけでなく、心も助けてこそ真のヒーローだと私は思うんだ。どんだけ怖くても、自分は大丈夫だって笑うんだ。世の中笑ってる奴が一番強いんだからね』》
ふと、神野区でのあの言葉を思い出す。
ああ、ホント、貴方は大英雄ですねオールマイト。
本当にその通りだ。
こんなにも怯えてる、小さな小さな女の子。
身体だけでなく、心もちゃんと救ってあげないと!!
それこそが本当のヒーローなんだ!
両の頬に指を当て持ち上げ、にっ、っと笑ってみせる。
「もう大丈夫だよエリちゃん。俺達が来た。必ず君を助ける」
俺のその笑顔と言葉に、少しだけ……まだ不安の全ては消せてないんだろうな。でもほんの少し……ほんの少しだけ、エリちゃんは笑ってくれた。
「すまないけどしばらく抱っこさせてもらうよ!しっかり掴まっててね!」
「うん」
エリちゃんを抱き上げた瞬間、こちらに治崎の個性による攻撃!!地面を分解・再構成し作ったトゲの攻撃が向かってくる!!
「よっと!」
そのトゲの攻撃がエリちゃんに決して当たらないよう細心の注意を払い躱していく。
「余所見をしている余裕があるのか治崎!!」
「ちぃ!!ルミリオン!!」
今までとは違いエリちゃんを守るという枷が外れ、通形先輩は治崎を圧倒していた!!
まあそもそも対人戦闘においてチート個性だもんな通形先輩のは。ハンデ無しの対人戦闘ならマジで無敵。
しかしまあ欠点というべきものはあって……
(決定打には足りないか……)
攻撃力不足。
それが通形先輩の欠点だ。
そもそも個性の関係上、パンチとかがどうしても手打ちに……しいて言うなら地面から飛び出した勢いをのせたりはしているが、どうしても手打ち気味になってしまう。
治崎はソコソコに鍛えている。
そして一撃で意識を刈られるような頭や顎への直撃はなるべく避けるようにして、通形先輩と戦っていた。
当然、他の肉体部分にはダメージが蓄積するのだが…、
(……自分の肉体を個性で修復しているな)
ダメージが蓄積された部分を個性で分解・修復することでダメージ0の状態へと戻していた。一体どんな理屈なんだか?まあ目の前で実際にやってるからには事実を受け入れるしかないんだけど。
(治崎がどの程度あの個性を使い続けられるかにもよるけど……千日手気味だな)
こちらの戦闘にも注意を払いつつ、もう片方の戦闘に目を向ける。
「ヌン!!」
「死ねぇ!!」
「くっ!!!」
グラントリノさんと……おそらく通形先輩と治崎の戦いを見て、俺と同種の判断を下したであろうトンガリが二人がかりで玄野を攻撃していた。
多分俺でもトンガリと同じ事をする。
あちらの戦いが膠着状態ならば、もう片方を集中して攻撃し先に倒すべきだ、と。
そうすれば4対2は一気に4対1になる。
「こいつで終いだ!!」
「そろそろ落ちやがれ!!」
「ぐはぁぁぁぁ!!!!」
そしてついにグラントリノさんの蹴りとトンガリの爆破攻撃が玄野に直撃!!玄野は大きく後方に吹っ飛び倒れた。
「ちぃ!!」
それを見て苦しい声を上げる治崎。
「さあ!!後はお前1人なんだよね!!」
その治崎に向け拳を構える通形先輩。
「……どうするジジィ。軽い膠着状態だぜ」
トンガリとグラントリノさんが一旦俺の側に戻ってくる。
「この子を保護するという一番の目的は達成した。後は通形の奴が治崎を倒せば無事幕引きなんだがなぁ……」
「……そのうち倒せるのかもしれねえけどな。攻撃力不足は間違いないだろ。どうすんだよ?援護すんのか?」
……そう、そこなのだ。
グラントリノさんは悩ましい……といった様子で。
「治崎の個性は強力だ。援護に入った奴が万が一捕らえられて人質になったりでもしたら目も当てられねえ……じゃあ、今通形に援護がいるのか?ってえとな……」
トンガリがやれやれと言わんばかりに、
「……攻撃力が足りないだけでワンサイドゲーム絶賛継続中だ。下手に援護入って人質になるリスクのがデカいかもな」
そう、そこなんだよなぁ。
今の状況、非常に悩ましい。
通形先輩はトンガリの言う通り、ワンサイドゲームで治崎を今も圧倒している。
だが、攻撃力不足で倒しきれていない。
いつ倒せるのかも不明。
じゃあ援護するか?
……いや、それで逆に援護入った奴が捕まると人質になり状況は一変する。
それにそもそも援護いるのか?
ワンサイドゲームで一方的に圧倒してるんだぞ。
んじゃ保護したエリちゃん連れてとりあえずこの場を離れるってのはどうか?
その場合、流石に子供を抱きかかえた俺一人が行く訳にはいかないので、グラントリノさんかトンガリが最低どちらか護衛につく。
そうなるとこの場の戦力分散。正直。この3人揃っていればエリちゃんを守りながらでも大体の不足の事態に対応出来そうなのに、わざわざ戦力分散するのもなあ……という感じである。
……そんな、堂々巡りの状況なのだ。
「……これで通形の戦況が苦しかったり、もしくは負けそうだったりしたら話は全く別なんだがなぁ……」
「……そん時は人質とか気にせず問題無用で援護だな。ちっ!状況が中途半端過ぎるぜ!!」
そうなのだ。
これで通形先輩が大ピンチ!!とかなら話は別。
人質のリスクとか気にせず問題無用で援護に入る。
……でも、今の感じ……援護いらなさそうなのよね。
そんな訳で俺達3人は、エリちゃんを守り、周囲の警戒は欠かさず、通形VS治崎の戦いを見守るという一種間抜けとも言える状況にどっぷりハマってしまっていた。
「けっ!ゾンビみてーにしぶてえ野郎だ!!状況がほぼ詰みって事もわかってんだろうによ!!!」
今も通形先輩の必殺技ファントム・メナスをマトモにくらい大ダメージ!!そしてそのダメージを個性で修復する治崎の姿を見て、まるでゾンビみたいと評するトンガリ。
まあ実際間違ってないわな。
「ゾンビだったらテメエの領分じゃねえの?神父見習いのトンガリくんよ?」
俺の言葉に「へっ!」と笑うトンガリ。俺に何か言い返そうとし、そこで俺が抱っこしているエリちゃんを少しだけじっと見て……そして、
「………『休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。永遠の命は、死の中でこそ与えられる』」
トンガリの突然の言葉に、抱き上げているエリちゃんが、
「かみさまへの、おいのり?」
そのエリちゃんに対し、ふっ、という軽い笑みを向けトンガリが続ける。
「『許しはここに。受肉した私が誓う。
「わあ……」
リップサービス込みで聖印を切り目を閉じ祈りの言葉を捧げたトンガリに、エリちゃんが思わず笑顔と感嘆の声を上げた。
「……って所なんだが、やれやれだな。見ろよあのピンピンしてるゾンビ野郎をよ。どうやら俺には神父の才能は無いらしいぜ」
目を開き、戯けた様子でトンガリがお手上げポーズをする。
「……随分と様になってるじゃねえの。信心が足りないだけで、実は案外向いてんじゃねえか神父?」
俺の冷やかしの言葉にトンガリは、
「はっ!ばーか」
と笑って返してくる。
そっか……トンガリも神野区でオールマイトさんのあの言葉を聞いてたもんな。
……だから、エリちゃんが少しでも笑顔になれるようにと、即興で演じてみせたのだろう。全く……この才能マンめ。
まあこんな寸劇を演じながらも、警戒は一切緩めて無い訳で。
「「「……………(ぐるり)」」」
「ひっ!!!」
殺気を感じ、3人同時にそちらを振り向く。
そこにはこちらに向けて拳銃を構える男……おそらくあれがナイトアイさんの予知で出てきた音本なんだろう。
「爆豪」
「おうよ!拘束して拳銃奪ってくらぁ!!」
そしてトンガリはその宣言通りに音本を拘束。拳銃を弾丸ごと奪った。
「これでナイトアイが見たっつう予知の中でのヤバい要素は潰したな」
「はい。後は通形先輩が治崎を倒せれば無事解決ですが……」
今も治崎を一方的に攻撃し続ける通形先輩。
治崎の個性のキャパの限界がどこかわからないが、このまま行けば治崎のスタミナ切れか何かで完勝となりそうだが……
「なあジジィ……ちょっと……」
「うん、どうした爆豪……ああ」
トンガリに呼ばれ、グラントリノさんがそちらに向かう。
(……この弾丸よ、あのゾンビに撃ち込まねえか?)
(……確かにその手はありだな。後で、過剰防衛って指摘される可能性はあるが……)
ヒソヒソとこちらに聞こえないように作戦会議をする2人。
エリちゃんに弾丸の話を聞かせないようにという配慮だろう。
耳の良い俺は聞こえるけど、エリちゃんには聞こえていない様子。
個性を消滅させるという、特殊な弾丸。
それを治崎に撃ち込み、幕引きとする。
自分が小さな子供を犠牲とし生み出した呪わしい弾丸で、自分の穢れた欲望に終止符が打たれる。
……ここまで綺麗な因果応報も中々無いだろう。
……個人的には、それでこの事態が解決するならそれも一つの手だろうとは思う。ざまあみろとも思うしね正直。
過剰防衛?
即死攻撃持ちの凶悪ヴィランと戦ってるんだぜ。
クソ喰らえだろそんなもん。
「すまない遅くなった!全員無事か!?」
「エリちゃん!!良かった!!」
「治崎はルミリオンが抑えているのか。合理的だな」
このタイミングでナイトアイさん、緑谷、相澤先生が追いついて来た。
こうして、状況が次のステージへと変化していく。