「本当にいいのかナイトアイ?先のあるお前よりも老い先短いオイボレの方が……」
手短な作戦会議が終わった。
「良いんですよグラントリノ。これは指揮官として背負うべき当然の責務でしょう」
グラントリノさんの言葉に対し、ナイトアイさんはトンガリの奪って来た銃を持ちながら応える。
「私は貴方達皆の命を預かる指揮官だ。皆はこんな私に命を預けてくれた。ならば、私は私なりの覚悟をもってそれに応えるべきでしょう。何より……」
そして彼は、俺とトンガリを……緑谷と、今も治崎を抑えている通形先輩を見て、
「……何より、これでこのまま終わってしまうと、私は今回まるで良いところ無しのままで終わってしまう。どうにも私は彼等にカッコ悪い大人という烙印を押されてしまいそうだ。カッコ悪い大人の披露するユーモアなどでは誰も笑ってはくれないでしょう?せめて最後くらいは私にカッコつけさせて頂きたい」
そう言って笑った。
別にそんなつもりは無いのだが……
まあ顔合わせの作戦会議からの事を思い出すと、確かに大人の面子潰して好き勝手やってきた自覚はあるんだけどさ。
それでナイトアイさんをカッコ悪い大人と思うか?っていうとそんな訳ないじゃんね。
……だからきっと、これは彼なりのユーモアなのだろう。
『もしも過剰防衛を指摘された時は、全責任は指揮官である自分が取る』という。
……そんな固い决意。
それをユーモアとして披露したのだ、このとびきりカッコいい大人は。
「かっちゃん!回原くん!エリちゃんは任せて!!」
「リスクは少ないと判断したからこの作戦に賛同はした。だが当然リスク0って訳じゃない。細心の注意を払えよ」
後方に下がった緑谷、そして相澤先生。2人がしっかりとエリちゃんを守っている。
そして最前線では、
「皆!!遠慮無くやるんだよね!!例えそれがどんな作戦だったとしても!サーの元で鍛え培った経験と予測で合わせてみせるんだよね!!」
そんな頼りがいのある背中。
通形先輩が今も治崎を抑えながらそう叫ぶ!
先輩はずっと治崎を1人で抑えていた。
だから、俺達が何か作戦会議していた事には気づいていただろうが、その内容までは知らない。
だが、それでも合わせると!合わせてみせると宣言した!
「……この英雄症候群の病人共がぁ!!」
多勢に無勢。
多くのヒーローに追い詰められ、惨めなヴィランがそう虚勢を張る。
「俺達が英雄症候群だろうが何だろうがお前にゃもう関係ねえだろ。お前はここで終わっていけ」
これで、幕引きだ。
「お前には、強敵として後世に名を残すような立派な終わり方は許さねえよ治崎廻」
俺とトンガリ、そしてナイトアイさんが前に進む。
「治崎。お前は、大恩ある恩人から預かった小さな女の子を虐待していた、惨めで愚かな半端者の、ただのヤクザとして終わっていけ」
「貴様ぁ!!!!」
俺の挑発に引っかかり、目を見開き治崎が俺に飛びかかる!!
「割とマジで不思議なんだが……何でテメエより俺のが口悪ぃと思われてんだよ。マジで解せねぇ……」
それを準備万端のトンガリが迎え撃つ!!
「やるぜ!!
「があああ!!!目が!目が!!」
やるぜ!の合図で目を閉じた俺達と違い、目を見開いていた治崎がモロにトンガリの必殺技を喰らう!!
爆破攻撃ではなく、光と音による攻撃で相手を制圧する必殺技!!
ほんとコイツは何でも出来るな!!
さあ仕上げだ!!
「ダブルドリルハリケーン!!!」
俺は目を開き、トンガリの必殺技で片手で目元を抑えながら、みっともなくもう片方の手を振り回し牽制している治崎に向けてドリルハリケーンを放つ!!
「うおおおお!!!」
俺の両手から放たれたドリルハリケーンが治崎の両手を抑える!
「……銃弾を撃ち込んだ瞬間に、自分を分解・修復されては困るのでね。念には念を入れさせてもらう」
そして、俺達2人の前にナイトアイさんが銃を構えて進む。
「終わりだ治崎。何かしら運命の歯車が一つでも噛み合わなければ、おそらくこんな結末は迎えなかっただろう。だが、運命はこの道を示した。いや、私の見た予知を超え、我々全員でこの運命に辿り着いたのだ」
BANG!!
「……が……あ……」
「ヒーローとしてのオールマイトはもういない。だが世界はまだまだ続いていく。だから我々は……我々が、我々全員であの人のやってきた事を背負い、そして越えていく。あの傷だらけになっても戦い抜いた彼に報いる方法は、おそらくその道の先にしかないのだから。オールマイトに頼らない平和の構築。その為に一人ではなく、我々は皆でこの道を進んでいく」
「あっあっあ………」
硝煙の登る銃口。
その先にいた治崎。
……彼の口から漏れる絶望の声を聞きながら、ナイトアイさんがそう告げた。
たった今、個性と共に野望をも失った哀れな男に。
「あっあっあ………あああ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
治崎の慟哭が、地下空間に響いた。
「決着……かな?」
「かな?だと……おいボケドリル?」
……どうにも嫌な予感がするなあ……
……俺は頭上を……この広い地下空間の頭上を見上げる。
……やっぱ間違い無いよなあ。
「……全員、頭上を警戒してください。何かよく分からないけど嫌な予感がします」
「非合理的だが……この手のスパイラルのカンは良く当たる。全員、警戒を」
ゴッ!!!!!!
相澤先生のその言葉と同時に、鈍い轟音と共に天井が崩れた!!
「リューキュウ!?ウラビティにフロッピーもか!!」
「妙だな……落ちてくる瓦礫の量と崩れた天井の範囲が一致しない……グラントリノ!スパイラル!爆豪!3人は外に出て状況を確認して来てくれ!!残りの全員はエリちゃんの保護を優先する!」
「良し!行くぞ小僧共!!」
「了解!」「おうよ!」
ナイトアイさんの指示に従い、俺達3人空を飛べるメンバーが外の確認に向かう。
あれは……ヴィラン連合のメンバー?
瓦礫に混ざり落ちてくる人影、それを拘束するべきか一瞬悩んだが……
「かまわん!!俺達は外の調査だ!!下の戦力は十分過ぎる!!下の事は下の連中に任せとけ!!」
「了解!」
グラントリノさんの指示は正しいだろう。
それに従い、俺達3人はそのまま飛び続ける。
瓦礫を避けながら空を飛び外に出ると、
「……あれ?……仁君、ひょっとしてこれマズくないですか?」
「何もマズくねえぜトガちゃん!!いや最悪だ!!」
「ヴィラン連合!!」
「は!マヌケ共が自分で墓穴掘りやがったみてぇだなぁ!!」
そこではヴィラン連合所属のトガヒミコとトゥワイスの2人が、空いたばかりの地面の穴を覗き込んでいた。
「はっ!今日は本当に大捕物だなあオイ!!」
それを見てすぐ加速して蹴りを叩き込みに行くグラントリノさん!!
「血気盛ん過ぎだろジジィ!!」
慌てて加速しそれをフォローしにいくトンガリ!
2人が狙っているのはトゥワイスだ。
そしてもう一人は……
「……大した隠行だけど、まあそんくらいじゃ俺から隠れるのは無理よ。
「ぎゃー!!この人半裸の女の子を自分の服使って縛りあげましたよぉ!!変態!!変態です!!カアイクない!!」
上手く気配を消した上にこちらの視線外して逃げようとしたトガヒミコを拘束する。
俺の上着しか使えないから手首と足首を上手く結ぶ感じで拘束したのですが、とってもとっても峰田が大歓喜しそうな光景でした。困ったものですね。
「旋くん!!私が見張ってるからもう見ちゃダメ!!!」
「……はい、わかりましたねじれ先輩」
こちらに飛んできたねじれ先輩が、俺に後ろから抱きつくようにして俺の両目を『誰〜れだ!?』風に塞いでくる。
背中がとても暖かかったりとても柔らかかったりする気がするのだが、まぁ気の所為だろう。きっと。きっと。
「旋くん!旋くんなら見ないでも気配で怪しい動きしたら察知出来るよね!絶対!絶対見ちゃダメだからね!!」
「はいはい。わかりましたよねじれ先輩!」
「ぶぅ〜!!はいは1回だよ旋くん!」
「……はい。わかりました」
そんな感じで俺達がやんややんやしていると。
「けっ!しまらねえ野郎だ!!」
しっかりとトゥワイスを捕らえたトンガリにそんな事を言われてしまう。
はい。弁解の余地はありまへんね。正直すまんて。
これでも警戒はちゃんとしてるから許しておくれ。
何だかんだでちゃんと今も警戒は怠らない。
背中で今もぷんぷんしてるねじれ先輩の気配。
呆れた様子のトンガリとグラントリノさん。
何とか拘束から抜け出そうとしているトガヒミコ。
完全に気を失っているトゥワイス。
こちらに近寄って来る警察の方。
そして……
微かに聞こえた今の音は…
「……銃声?」
「旋くん?」
気の所為であって欲しい。
だが、今聞こえたのは間違いなく銃声だった。
誰かが撃った?
……もしくは、誰かが、撃たれた、のか?
結論。
エリちゃんを庇う緑谷を庇い、ナイトアイさんが撃たれた。
気を失っていたと思われていた玄野の銃弾……個性を消滅させる弾丸によって。
……こうして、エリちゃんを救う為の戦いは幕引きを迎えた。
思ったより治崎が呆気なく負けてしまいました。
物足りなさを自分でも感じつつ。でもこの戦力揃えちゃうとこうなるよなぁ、という所で、自分の力量不足を感じます。
もう一つくらい盛り上げどころが作れれば良かったけど……中々難しい。
ナイトアイに関しては元々生存ルートで考えていました。
ただし個性……テメーはダメだ。物語が終わってしまう。
ご都合主義により調整しました。