こうして死穢八斎會を相手としたエリちゃんの救出作戦は無事終了した。
負傷者は病院へ直行。
残った者でヴィラン連合や死穢八斎會のメンバーを警察と協力して拘束。その後警察の車両でそれぞれ搬送。
並行し、付近のパトロールを行い何か異常が無いか等を確認する。道路にデカい穴まで空いてしまってるのだ。周囲の建物の被害や、巻き込まれてケガをした人がいないかなどの確認を行なった。
その後は警察の事情聴取。そして各種書類作成。
保須での経験で少しは慣れてるけど、やっぱ書類仕事嫌いなのよね俺……
一段落した頃にはすでに時刻は夜。
……ホントは怪我した人達の御見舞に病院行きたかったんだけど……御見舞は明日だなこりゃ……
帰るタイミングがたまたま一緒になったトンガリと緑谷と3人、警察署の出口に向かって歩きながら、
「腹減ったな。トンガリに緑谷、どっかで飯食ってくか?」
「え!?ど、ど、ど!どうするかっちゃん!?一緒にご飯行く!?」
あれ俺何か変な事言ったか?何でキョドり気味なの緑谷?
突然ワタワタしながら、トンガリにお伺いを立てる緑谷。同級生だろ?何してんのさ?
「うぜぇよキョドんなデク……あれ見ろドリル、警察の車だ。多分俺達を雄英まで送ってくれんだろ。飯は学校戻ってからだな」
そう言ったトンガリが顎で示した先を見ると、確かに警察の車が1台、警察署のすぐ外に止まっていた。
「ああ……そゆこと。まあ正直ありがたいな。素直にご厚意に甘えるか」
「おう」
「……うーん……ありがたいけど何かちょっと残念だな。せっかく3人でご飯行けそうだったのに」
「?何言ってんだ緑谷?同じ高校通ってんだから、これからいくらでも飯食う機会くらいあんだろ?」
「あははははは……ま、まあそうなんだけどね……」
そう言って緑谷がチラッとトンガリを見る。
「けっ!」
その緑谷の視線から逃げるようにトンガリが顔を背けた。
「硬派気取ってる男が好きな女の子にご飯誘われて照れてる、みたいな可愛い反応してんじゃねえよトンガリくん」
「テッメドリルコラ……やんのか?やんのか?別に俺はかまわねえぞ」
「わあああ!!ふ、2人とも!!何警察署内でケンカ始めようとしてんのさ!!」
ああん?
おおん?
みたいな感じでいつも通り軽くトンガリと言葉でやり合いながら歩いていく。
あまり俺達の普段の会話に馴染みがない緑谷が、まるで本当にこれからケンカ始まるのでは!!みたいに慌てるものだから、ついつい調子にのってトンガリとより会話が弾んでしまう。
結局、警察の車で学校まで送ってもらっている車内でもこんなやり取りが続いたのだが、最後まで緑谷があわあわしてたもんで、ついついトンガリと2人で会話を楽しんでしまった。
何だかんだで緑谷からかうのを楽しんでんなトンガリも。
「クラスの連中にかなり心配かけちまったみたいだな……そっちもだろ?とりあえず今日はこの後寮に直行した方が良さそうだ。残念だけど飯はまた今度だな」
「はん!別に俺は残念でもねーけどな!!」
「随分とテンプレなツンデレ台詞吐くじゃんよトンガリ」
「か!回原くん!あまりかっちゃん挑発しないで!!」
車内でクラスの連中から来たメッセージに返事する。
クラスは違うが、やはり2人にも心配のメッセージが多数届いていたようだ。
「とりあえず今日は寮に真っ直ぐ帰るとして……回原くんは明日はどうするの?」
「とりあえず病院に怪我した人達の御見舞かな。その後リューキュウさんとこで色々手続きする感じ」
「俺んとこは事務所の主が入院してやがるからな……けっ!俺も結局明日は病院になりそうだぜ!」
「そっか。緑谷もだろ?んじゃ明日こそ3人で飯でも行くか」
「店は俺が決めんぞアホドリル!……今調べたら病院近くに美味そうな中華料理屋あっから食うならそこだ!!」
「お、もう店探してくれたんか。サンキューなトンガリ」
「おう。テメエも文句ねえだろなデク!?」
「う、うん!!!」
「激辛の麻婆豆腐が有名らしいぜ!!逃げんなよドリル!」
「いーね激辛の麻婆豆腐好きよ俺。レシピ教えてもらいたいなあ」
「……あはははは」
そんなこんなで楽しく話してる内に学校に着いた。
3人で学校の中に入り歩き、寮へと向かう。
そして、
「んじゃここでお別れだな。お疲れトンガリに緑谷。また明日な!」
「おう」
「うん!また明日ね回原くん!」
それぞれの寮への別れ道で2人と別れ、俺は自分の寮へと向かう。
そして寮の入り口のドアを開き、
「ん!」
「帰ってきたか回原!!」
「テレビのニュースで見たぜ!!また危険な事件に巻き込まれやがって!!」
「オイラも心配してたんだぞ回原!ケガとかねえのかよ!?」
ドアを開けると、一階のフロアに集まっていたクラスメイト達が次々と俺に気づいて声をかけてくれた。
インターン活動の為、外で泊まりの拳藤以外全員集まってくれていた。
皆心配して集まってくれていたのだろう。
いいクラスだなあ、と心からそう思う。
そんな気のいい奴らに俺は笑って、
「皆ただいま。回原旋、無事帰って参りました。心配してくれてありがとな!」
そう、ただいまの挨拶と、心配してくれた事への感謝を伝える。
「ん」
俺の言葉に、一番近くに来ていた小大が応えてくれた。
(おかえりなさい。無事で良かった)
そして、後ろの皆も
「「「「「お帰りなさい!」」」」」
小大に続くように、そう出迎えてくれた。
……ああ、帰って来たんだな。
小大と、そして皆の笑顔を見て、俺は強く実感した。
「お腹空いてるだろ回原?そろそろ帰って来るかと思って食事のデリバリー頼んでおいたからゆっくり食べるといいよ……あ、着信だちょっと失礼……『ああ!愛理さん!!今日はありがとうございました!貴方と過ごした時間はとても素敵な時間でしたよ!……えっ!ファンクラブも入会してくれるんですか!!いやあ嬉しい!本当にありがとうございます!はい!細かい事はまた後日連絡しますね!ではまた!』『……ああ美咲さん!すぐに着信取れずすみませんでした。連絡くれてありがとうございます!今日突然声かけてすみませんでした。貴重なお時間を頂いてしまって……でも、その時間を僕なんかに使ってくれてありがとうございます!本当に嬉しかったんですよ僕は!え!ファンクラブも入会頂けるんですか!………』」
「……何あれ?」
……自分がジト目しているのがはっきりわかる。
何かちょっと……というかかなり怪しい感じで複数の女性からかかってきた通話を順番に捌いている物間を指差しそう聞く。
正直食事の事はめちゃくちゃありがたい。
が、何あれ?何じゃあれ?
「インターン行ったら物間がクズ間になったノコ」
「カス間とも言うね」
「3つ混ぜるとカズ間さんになる訳で、いやぁ!世の中上手く出来てるよねえ本当!!」
小森と取陰の女性らしい率直で厳しい意見に思わず頷いてしまう。あと吹出。すまんがオマエのは良くわからん。
……しかし、インターン経験してあれか……
今もまた違う女性との通話を捌いている物間を見る、
総督……この感じだと、物間を連合所属のヒーローに預けるんじゃなくて、自分で直々に鍛えることにしたんだろうなぁ……
あの人の事だ。
何か色々と考えがあっての事だろう。
正直見習いホストの修行のようにしか見えないんだけど……まあ、きっと何か考えがある筈だ……きっと……きっと……
「『沙莉さん!どうもこんばんは!昨日ぶりですね!今日はどんな1日でしたか?何か身の回りで嫌なことや危険なことはありませんでしたか?あったらすぐ教えてくださいね!僕が貴方を助けに向かいますから!!!』」
今も真剣な顔で女性との通話を続ける物間。
……物間は頭が良い。
……その物間が必要と判断してやっているのだろう。
だから、これは彼にとって必要な事なのだ、きっと。
「ん」
「ああ、まあ……しばらく見守ってやろうぜ。ヒーロー志望がそんな変な事しないだろうしな」
「何で男って複数の女の子に手を出そうとするノコ?」
「こ、小森……お、俺は……俺は!」
小森の問いかけにテンパる黒色……どんまい。
ここで上手く返せたらいいのにね。
とりあえず物間が手配してくれたご飯を食べながら、今日の事件の事を聞きたがるクラスメイト達に色々と話す。
こうして夜が更けていった。