回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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文化祭スタート!!

「いやあ!しかしあれだね!最強無敵の回原先生に!まさかまさかあんな弱点があるとはね!!」

 

「言ってろ……」

 

インターンに行っていた生徒達への補習の帰り道。

校内を歩きながら一緒に補習に参加していた物間と話す。話題は当然間近に迫った文化祭の話。

 

「正直!君は何でも小器用に立ち回るタイプかと思ってたけど、まさかまさかあんな大根役者っぷりを見せてくれるとはね!!まあ悪いけど笑わせてもらったよ!!」

 

「トンガリみたいな才能マンと一緒にしないでくれ。そこまで何でもかんでも器用にこなせるタイプでもないんだよ俺は」

 

クラスの出し物が演劇に決まり、役者として出る生徒を決めるオーディション的な事を行なった。

そん時に俺が披露した大根役者っぷりを思い出し、ネタにしきたのであるこの物間の野郎。

 

くっくっ……と笑いながら、

 

「……ま、空手・ムエタイ・柔術・中国拳法をこの歳であんだけ習得してるんだ。君も僕からみたら十分才能マンなんだけどね。良いじゃないか大根役者くらい。欠点が何もないとそれはそれで愛嬌の無いつまらない奴になってしまうし」

 

「そんなもんかね?」

 

「僕はそう思うけど……どうかな?拳藤は?」

 

物間はそこで俺達の一歩後ろを歩く……とてもとても不機嫌そうな拳藤に声をかけた。

 

「……それに関してはノーコメント。……でもアンタよくそうやって私に普通に話しかけてこれるもんだね。私、さっきの事まだ許したつもりは無いんだけど」

 

「おお怖い怖い」

 

ギロッ!と自分を睨む拳藤の視線を戯けるようにして受け流しながら物間が続ける。

 

「そんなに不機嫌にならなくても良いじゃないか。まあ確かに君の了解を取らずに勝手に君をミスコンに応募したのは悪かったと思うけどさ」

 

そうなのだ。

物間の奴、本人の了承も取らずに文化祭で行われるミスコンに勝手に拳藤をエントリーしていたのである。

 

そして出場辞退の受付が終わった先程の補習後、しれっとそれを拳藤に伝えたもんだから、まあそれからの拳藤が不機嫌な事不機嫌な事。

 

「そんなに嫌かい?僕は君なら優勝だって狙えると思ったからエントリーしといたんだけど」

 

物間のその言葉に拳藤は、

 

「嫌に決まってるでしょ。私の許可無くやった事も。そしてミスコンみたいなあんま女の子女の子を売りにするような企画に出るのもね。正直、ミスコンは私の趣味じゃない」

 

と、さっきからこんな感じなのである。

 

ここまで事態が進んだ以上、拳藤はミスコンに出なければいけないし、まあ出る以上やるべき事はちゃんとやる奴だが、それでも勝手に嵌められた事への不快さを先程から隠そうともしていなかった。

 

しかしそんな拳藤の不満をどこ吹く風とばかりに、

 

「君は美人だし、CM出演以来ファンも増えている。ミスコンでも間違い無くいいところまでいくだろう。だから僕達B組の地位向上の為にも悪いけど頑張ってくれよ」

 

「ふん!」

 

ある程度その辺はわかっているのだろう。

でも私不機嫌です!と、まあそういう事なのだ。そりゃそうだ。

 

物間はやれやれ……と笑いながら、

 

「まあせっかく出る以上、君も少しでも楽しんでくれたら僕も嬉しいんだけどね。なあ回原!君もミスコンに出てる拳藤を見てみたいだろう?例年通りなら綺麗なドレス着て舞台上でパフォーマンスとかするんだぜ!」

 

「おいこら物間!!」

 

思わず!といった声を上げる拳藤。

 

俺はそれにかりかりと軽くこめかみをかきながら、

 

「ドレスアップした拳藤ねえ……ま、見れるもんなら正直見てみたいけどさ」

 

何せ拳藤は学内でもトップクラスの美人である。 

見れるもんなら見ておきたいというのが、嘘偽りのない正直な男子高校生の本音である。

 

俺のその言葉に、拳藤は物間を睨みながら「うぅぅぅ……」と唸るような声を上げながら、

 

「はあ……なんか疲れちゃったよもう……どの道出るしか無いんだし、諦めて気持ちを切り替える事にするよ、全く……でもさ物間……あんた元々性格悪かったけど、インターン行ってから更にやり口の悪どさに磨きがかかってないかい?」

 

と、大きなため息とともに降参宣言。

 

「その辺は師匠の影響かな?……ま、僕も悪いとは思ってるよ。文化祭終わったら殴ってくれてもいいし、学食でなんか奢れというなら何でもご馳走しよう」

 

「主演俳優の顔を文化祭前に殴る訳にもいかないからね……ま、その辺は文化祭終わってからの楽しみにしておくよ」

 

「……自分で言っておいてあれだけど……殴る方ですでに確定なんだね……」

 

「当然」

 

困ったもんだと天を仰ぐ我らが主演俳優。

そう、B組の演劇の主演男優は物間に決まったのだ。

 

メインシナリオは吹出と骨抜で調整中だが、大体のストーリーは俺達もすでに聞いている

 

「しかし……あれだなあ……現時点でエリちゃんを招待すべきか微妙なラインだなあ……」

 

「エリちゃんってインターンで助けた小さな女の子だっけ?」

 

「ああ」

 

拳藤はうーん……と考え込み……

 

「……最終の脚本まだ出来てないけど小さい子に見せるには悩ましいね……後は骨抜次第だけど……って!そういえば私も演劇出る予定だったのに!!どうすんのさ!!私ミスコン出るから演劇出れないよ!!シナリオ詰めてる2人に謝らないと!!」

 

「ああ……それなら僕から2人に謝っておくよ。そのくらいは最低限僕の役割だしね」

 

B組の出し物が演劇に決まって以来、吹出と骨抜の打ち合わせは続いていた。

骨抜は普段の授業をしっかりこなし、更に放課後は吹出とシナリオの詰めを行いながら、なおかつ『あ!骨抜これちゃんと見といてね!全部!』とシナリオ作成に必要と吹出が断言した作品や資料にも目を通していた。

 

ぶっちゃけクラス全員が『気軽に頼んでゴメン骨抜!』と言いたくなってしまうくらいには大変そうだった。

 

あれ以来連日、頭に冷えピタを貼り、睡眠不足で目にはクマ、頬はこけ生気の無い目でエナジードリンク飲みながら吹出とシナリオの詰めをしている。いやほんとに頭が下がるマジで。

ゴメンよ骨抜。

 

そんなこんなで色々話しながら寮に到着。

 

「お!帰って来たな補習組!!」

 

寮に入ると、ここしばらく明るい顔を見せなかった骨抜が満面の笑みで俺たちを迎えてくれた。

疲れ切った顔だったが、どこかとてつもない難題を無事にやり遂げた達成感のある顔をしていた。

 

「お!なんか良い顔してんじゃん骨抜!!」

 

ここしばらくの骨抜からは想像もつかない明るい表情であった。

 

「いやぁ!やっとついさっき調整したシナリオに吹出がOKを出してさ!!これでやっと本格的な劇の練習に移れるし、俺も肩の荷が下りたぜ!!」

 

「おおすげえ!!ついに完成したのかシナリオ!!」

 

「あれまとめたんだ!!まとまったんだ!やったね骨抜!偉いよ骨抜!!」

 

疲労困憊ながらも達成感に満ち溢れた骨抜。

俺達は心から骨抜を賞賛する!いやすげえよ骨抜!!流石!!

 

「うん!骨抜の柔軟な考え方のおかげで、僕の好みからは少しズレるけど面白い作品になったからね!僕もこの作品には満足してるよ!!」

 

その骨抜の後ろからひょっこり吹出も顔を出す。

 

「いやあ!!でも流石は骨抜の着眼点だね!!まさか拳藤の配役にあんな事やらせるだなんて!!あれは拳藤以外じゃ説得力がない!!まさに神の一手!!って奴だったね!!」

 

「「「え………」」」

 

なん……だと……

 

俺達の戸惑いを他所に、

 

「だよなだよな!!いやあ!!自分で言うのも何だけど!!あれは拳藤にやらせるからこそ意味がある!!そして説得力も出る!!まさに神の一手だよな!!流石の俺でもこれは思いついた自分自身を自画自賛するぜ!!」

 

「「「…………」」」

 

「だよねだよね!!拳藤以外があれやっても説得力ないんだよね!!それだったらやらない方がましだもんね!!」

 

「だよなあだよなあ!!」

 

「「これが出来ないならシナリオ書き直した方がマシだよな!!」」

 

ワッハッハ!!と2人で肩を組んで盛り上がる2人。

……対照的に盛り下がる俺達3人。

 

3人、静かに視線を交わす。

(((これ、ヤバくね?)))

ヤバくね?ってかヤバい。ヤバいっしょ?

 

そして……

 

「……ん?どうした3人とも?何か様子がおかしいけど?」

 

当然、このB組一柔軟な男がそんな俺達の様子に気が付かない訳が無い。

当然、聞いてくる訳で……

 

すっ……

すっ……

 

「……回原?拳藤?」

 

俺と拳藤は一歩下がり、何も言わず物間を前に押し出した。

 

……さっき偉そうに言ってただろ?コイツはオマエの役目なんだろう?なあ物間……

 

物間は……物間は、流石に骨抜への罪悪感を隠しきれない様子で……とてもとても苦しそうな声で、

 

「2人ともすまない……特に骨抜……拳藤は演劇には出れなくなった……」

 

「「……は?」」

 

そうして物間が2人に説明する。

拳藤をミスコンに推薦した事。

出場辞退の期限が過ぎ、もう出るしか無いこと。

 

そして……

 

ビターン!!!

 

「「「骨抜ぃ!!!!」」」

 

そして、それを聞いた瞬間!!

あの骨抜が!あの骨抜が地面にビタン!!と前から崩れ落ちた!!

 

「うわぁ!!!しっかり!!しっかりしろ骨抜!!」

 

「私悪くないけどホントゴメン!!ゴメン骨抜!!しっかりしてくれ!!!」

 

口の端からエクトプラズムらしきものを吹き出し始めた骨抜を懸命に救助する俺達。

だが……

 

「……そっか……そっかー、拳藤は演劇出れなくなったんだね」

 

「「「吹出???」」」

 

ビクッ!!

 

正直、物間はめちゃくちゃこの2人に酷い事をしたと思う。

骨抜の反応は当然の事だ。

……だが、吹出の反応は、俺の予想とは少し違った。

 

「……物間がクラスの為にした行動でしょ?それに文句つけても仕方ないよね」

 

ビクッ!ビクッ!!

 

極悪な電気ショックを食らったように地面に寝転がりながらショックで跳ねる骨抜。

それを視界に納めながら、吹出はとてもとても冷静な声で、

 

「じゃあ……じゃあ、仕方ないよね、骨抜……」

 

ビクビクビクビクビクビクビク!!!!!!!

 

「「「骨抜ーーー!!!!!!!」」」

 

痙攣しながら白目を剥く骨抜の足を「むんず」と掴み、

 

「さて……シナリオの、修正をしようか」

 

「ぎゃあーーーーーー!!!!!!」

 

「「「骨抜ーーー!!!!!」」」

 

とてもとても楽しそうにそう言った吹出。

それに怯える骨抜。

非常に珍しい光景。

 

「いやあ!!ヤバいねこれ!ヤバいね!!でも締め切りギリギリで追い詰められるとなんかこうクリエーター魂的に燃えるものがあるんだよね!!」

 

なんか良くわからないけどテンション上がってる吹出。

 

「ウソだろ……ウソだろ……やっと……やっと終わったのに……あの地獄の日々が終わったのに……まさかのリライティングかよ……」

 

対照的に絶望してる骨抜。

 

そうよね……

ほんと同情する。

やっとキツイキツイ調整作業が終わったのに……物間のアレでコレはキツイよね………

 

 

「すまない骨抜……エナジードリンクと冷えピタは欲しいだけ言ってくれ……全額僕が出すよ……」

 

「夜食とかいるか?いるなら声かけてくれ。いつでも作ってやるからさ」

 

流石に哀れが過ぎる。俺と物間がそう申し出た。

 

「……全く……僕もそこまで鬼じゃないよ。拳藤がダメなら他にその役割をやる人向けに調整するくらいだ。流石にそこまで空気読まないつもりはないさ」

 

「ふ、吹出……」

 

「……でも妥協した変な改変ならOKは出さないからね!全く!!そもそも骨抜が『なるべく登場人物は誰も死なない方向で!!』とか無茶言うからこうなったのさ!!そもそもの原因の半分は君にあるんだからね骨抜!!」

 

「……だからと言って……だからと言って『人が死なないだけ』みたいな作品持ってくるのはどうなんだ……動画サイトでプレイ動画みたけど……マジで胃に穴が空くかと思ったぞ……」

 

「人の感情を揺さぶるって、創作において大切だよね!」

 

「……限度がある……せめて夏休みとかに見たかった……」

 

……そうして、いくらかのシナリオ調整を行い、俺達の作品が出来上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side普通科の誰か

 

……さて、ようやく文化祭が始まった。

ここは1年B組が演劇を披露する会場。

もうすぐ演劇の開始時刻だ。

 

……体育祭がヒーロー科メインだとすれば、文化祭はそれ以外の生徒がメインだ。

 

だから例年、ヒーロー科は文化祭では大人しめな企画をする事が多い。

……しかし、今年は例外だった。

 

ヒーロー科の1年A組。1年B組。

 

どちらも目立つ出し物だ。

 

『さて?一体どんな事やるのか見てやろうじゃないか』

 

偽らざる本音。多分ここにいる多くの生徒がそうだろう。

表面的には事件に巻き込まれてるのは1年A組。

……だけど、学年が変われば見え方は同じだ。

 

ぶっちゃけ、僕みたいな2年生からすれば、1年A組もB組も等しく疫病神みたいなものだ。

 

クラスが違う?関係ないね!だから何?って感じ。 

こいつらが入学してからトラブル続きなんだ。

クラスの違いなんて誤差。正直どちらも等しく疫病神だ。

 

だからここには……1年B組の演劇の会場には、僕以外にも彼ら彼女らに色々不満を持った生徒が集まっていた。

(……しょうもない事をやったら、ネットとかでボコボコに叩いてやる!!)

 

誰も口に出さない。

でも皆……そう考えてここにいるのではないか?

 

ブッーーーーーー!!!!

 

……そんな事を考えている間に、演劇の開始を告げるブザー音が会場に響いた。

 

アナウンスの音声が演劇の内容について話し出す。

 

『ロミオとジュリエット〜帝国の逆襲 X 王の帰還〜』

 

……まあ事前情報通りだ。

ロミオとジュリエットをベースに、他の有名作品のクロスオーバーごった煮作品。

 

『この作品は、ロミオとジュリエットをベースに、複数の作品をクロスオーバーさせた意欲作です』

 

先に聞いていた通りの事をナレーション係が説明していく。

そこには何も目新しところはない、

 

『……を、クロスオーバーさせました。そして、それらを上手く一つの作品としてまとめ統一感をもたせるために《WHITE ALBUM2》という作品のテイストを加え、独自解釈した作品となります』

 

「……は?」

 

今……なんて……

 

WHITE ALBUM2……だと……

 

ざわっ!!!!!!!

 

会場が急にざわついた気がする。

 

(え?いきなりそういう感じ?)

 

スン……

 

……ちょっと甘く考えていたことを反省し、気持ちを引き締めました。

 

 




次回は演劇回ですが、なんとなく流れがわかるダイジェストみたいな感じで書く予定です。
読まなくても問題ない感じです。

……これ完結したら番外編で書くかなぁ?くらいです。
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