回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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そしてWHITE ALBUMの季節へ

B組の演劇が終わり、ミスコンが始まるまでの時間。

俺は数人のクラスメイト達と文化祭を回っていた。

 

本当は今日までの頑張りを称える為に、骨抜のヤツを盛大に皆で接待するつもりだったのだが……

 

「へ……へへへ……やった……やったぜ俺は……やり遂げたぜ……へっ、へへへ……」

「「「「骨抜ぃ!!!!!!!」」」」

 

演劇終了後の鳴り響く拍手の中。骨抜は本当の本当に全てを出し切った、という満足気な笑みを浮かべ白く燃え尽き灰になっていた。

 

具体的に言うと椅子に座りぐっすりと寝ていた。

いや本当に頭が下がる。

 

今回の演劇が成功したのは本当にお前のおかげだ骨抜。

ありがとうな。

 

燃え尽きて穏やかな顔で眠る骨抜。

その横で。

 

「いやぁ~!!楽しかったね!!本当に楽しかったね!!来年の文化祭も皆で演劇出来たらいいね!!!」

 

ビクッ!!!

 

吹出のその言葉に骨抜がビクビクと痙攣を始めてしまったので、慌てて保健室へ骨抜を連れていった。

 

ホントご苦労さま。ゆっくり休んでくれな骨抜。

 

「あ!ドリルのおにいさん!」

「……お、通形先輩にエリちゃん!」

 

皆で出店で色々買い食いをしながら校内を歩いていると、エリちゃんを連れて歩く通形先輩と出会った。

 

「どうエリちゃん?文化祭楽しんでる?」

 

目線を合わせる為に身をかがめ、エリちゃんにそう聞いてみると、

 

「うん!!とってもたのしい!!」

 

「そっか!良かったねエリちゃん!」

 

エリちゃんは満面の笑みでそう応えてくれた。思わず通形先輩の方を見ると、彼も満面の笑みを浮かべていた。

 

良かった。

 

エリちゃんを助けられて、本当に良かった。

 

「でも、おにいさんたちのえんげきもみてみたかったなぁ……」

 

「……ちょっとエリちゃんには刺激が強すぎるかと思って辞めておいたんだよね!!」

 

満面の笑みを少し曇らせ、エリちゃんが残念そうにそう言ってくれる。俺達の演劇を見てみたかった、と。

だがしかし、通形先輩、それで正解です。

 

ちょっと色々とエリちゃんには刺激が強すぎると思う、ウチの演劇は……

 

「回原くん達はこの後どうするんだい?」

 

「しばらくはクラスメイト達と色々回ってみる予定です。その後はミスコンを見に行く予定です」

 

「ああ!!波動さんも出るんだよね!!今年卒業でラストチャンスだからってスゴイ張り切ってるんだよね!!」

 

「ウチもクラス委員長の拳藤が出るんですよ。だからまあ2人の応援って感じです」

 

「あはは!なるほどね!どっちも応援しなくちゃいけないのか!!中々難しい立場だね君も!!」

 

「ははは……まあそんな感じです」

 

そんな感じで少し話してから2人と別れ、俺達は俺達で文化祭を楽しんだ。

 

そして……ミスコンの時間が近くなり会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

そして……ミスコンが始まった。

幾人かがアピールを行い、やがて拳藤の番になる。

 

青いドレスを着て舞台に上がって来た拳藤は本当に綺麗だった。

その後その綺麗なドレスを自分で破り出した時はおいおい……と思ったもんだが、それにはちゃんとした理由があり、演武を披露しだした拳藤を見て、

 

「……なんか拳藤らしいな」

「ん」

 

これはミスコンではあるが、私は私。

 

綺麗に着飾るだけの女の子ではなく、私という、拳藤一佳とはこういう女性なのだ、という強いメッセージ。

 

これがミスコンを好まないと言っていた、彼女なりのミスコンへの回答なのだろう。

 

演舞が終わり大歓声とともに拳藤が舞台上を去っていく。

 

そしてその後もミスコンは無事に進んでいき、残るは最後の2人となった。

 

「……………」

「……ん」

 

「……えっ!ああ……そうだな……綺麗だな、ねじれ先輩……」

「……ん」

 

……正直、見惚れていた。

ドレスを着て現れたねじれ先輩……個性を使い宙を飛び、舞うその姿がまるで純真無垢な妖精みたいで……しばらくの間その可愛さと美しさに見惚れてしまっていた。

 

……そして、おそらく俺以外にこの場にいた多くの人も同じ気持ちだったのだろう。

 

その後、3年のもう1人の先輩の出番が来て……これはこれで強烈だったのだが……正直ねじれ先輩の印象が強すぎた。

 

結果。

 

ねじれ先輩がミスコンのグランプリに輝いた!

拳藤は準グランプリの次っぽいから3位なのかな?

 

ひな壇の上で「私本当にここいていいのかな?」みたいな顔をしてるのが実に拳藤らしいと思う。

 

まあそれはさておき、今はねじれ先輩だろう。

 

皆の歓声とお祝いの声を満面の笑みで受け止めて、ねじれ先輩は本当に嬉しそうだった。

 

こうしてミスコンが終わり、そして……

 

 

 

『ねえねえ旋くん、今どこにいるの?』

『少しだけ、2人で話せないかな?』

 

 

 

 

ねじれ先輩からの連続のメッセージ。

それに返信すると、即座に返事が返ってきた。

 

『じゃあ校舎の屋上で待ってるね!!』

 

トントンと良い拍子で約束が決まり、俺は校内を歩き屋上へと進む。

時刻は夕暮れ時。

文化祭の賑やかな喧騒も、少し終わりを意識し始めたそんな頃。

茜色に染まっていく校舎。

俺は階段を登り、屋上へと続くドアを開く。

そこには……

 

「待ってたよ旋くん。来てくれてありがとうね」

 

屋上には夕日に照らされながら明るく笑うねじれ先輩が待っていた。

 

明るいけど、でも何処か寂しさも想起させる夕日の色。

 

そんな色彩を身に纏ったねじれ先輩は、真正面から俺の目をしっかりと見て、そして口を開いた。

 

「好きです」

 

「え?」

 

「好きです。私、波動ねじれは、回原旋くん……貴方のことが好きです。大好きです」

 

「……ねじれ、先輩……」

 

「一目惚れなの」

 

「………」

 

「あの日あの早朝に走ってる貴方を……とてもとても大変な修行をしてるのに、地獄みたいな修行をしてるのに、今にも死んでしまいそうなくらいにキツそうなのに……でも本当はとてもとても楽しそうに笑ってる貴方を見て、私は貴方に一目惚れしたんだよ。本当に辛そうなのに、それでも笑う貴方が私にはとてもキラキラ輝いて見えたの」

 

「………」

 

「だからね。最初から私は旋くんの事が好きだったの。それでミスコンでグランプリ取れたら告白しよう!って決めてたの」

 

「そう……だったんですか……」

 

そうか……そうだったのか。

ねじれ先輩からの告白。

それは素直に……本当の本当に嬉しい。

だけど……

 

「あ!まだ告白の返事しちゃダメだからね旋くん!!」

 

「……え?」

 

なんで?

 

ねじれ先輩は俺の口を塞ぐようにしてピッ!とその可憐な指先を俺の唇に当てながら、

 

「私わかってるもん!っていうか多分旋くんの周りの皆も気づいてる!!旋くん!!皆の事を考えてワザと鈍感キャラのフリをしてるって!!」

 

「うっ……」

 

あちゃあ……まあ、バレバレかぁ……

 

「旋くん普通にそこまで頭悪く無いし、気が利かない訳でもないもん。わかってるよ。旋くんは人の気持ちに気がつけないほど鈍い訳じゃないって……でも、クラスの皆の事とか考えて、わざと鈍感なフリしてるって」

 

まあ……正直そういうところは、ある……

 

「ヒーロー科は3年間クラス替え無し。1クラス20人。そして……女の子は大体過半数より少ない……この状態でクラスの片方の子と付き合って、片方の子を振ったりしたら……3年間同じクラスで過ごすのって大変になるよね……だから旋くんはわざと鈍感キャラのフリをしてる。あの2人の気持ちに気がついてないフリをしてる……そうして3年間過ごすつもりなのかな?もしかしたら3年生の最後に、2人のどちらかに告白とかするつもりだったのかな?」

 

「…………」

 

そうなのである。

正直言えば、小大と拳藤からそういう好意を感じる事は、ある。

あるのだ。

でもねじれ先輩の言うように……どちらかのその気持ちに応えてしまうと……

……半端な気持ちでは応えられないと考え、気が付かないフリをしていた。

 

クラスの皆も、何となくその辺は察してくれている気がする。俺が2人をもて遊ぶような事をしたら許さないだろうけど。

 

だから……だから今、俺は中途半端な気持ちのまま……誰かの告白を受け入れる事は出来ないのだ。

 

そしてねじれ先輩は「わかってるよ」という笑みを浮かべ、

 

「でもね旋くん。私には時間がもう残り少ないの」

 

「ねじれ先輩……」

 

彼女はくるりと身を翻し、俺に背中を向けて、

 

「旋くんは1年生。私は3年生。私はもう……後半年もしないで卒業しちゃうんだもん」

 

「あ……」

 

そっか……だから先輩はこのタイミングで……

 

「旋くん。私ね、シンデレラのお話が好きなんだ」

 

背中を向けたまま、ねじれ先輩は顔だけをこちらに向け、

 

「シンデレラが舞踏会で落としたガラスの靴を手がかりに、王子様が必死で探して彼女を見つけてくれる。とてもとても素敵なお話」

 

「………」

 

「……でもね、王子様がシンデレラを必死に探したのは、零時の鐘が鳴るまでに、王子様がシンデレラの事を好きになっていたからなの。鐘が鳴るまでに王子様がシンデレラを好きにならなきゃ、きっとシンデレラは探してもらえなかったの」

 

「あ……」

 

顔だけでなく、ねじれ先輩は全身で振り返り俺を見る。

 

「……私の零時の鐘は、卒業と一緒に鳴ってしまうの……だからシンデレラは……私は、それまでに王子様に好きになってもらわないといけないんだ」

 

「ねじれ先輩……」

 

「私ね……小大さんが嫌い。拳藤さんも嫌い」

 

夕闇の中、寂しそうにねじれ先輩が笑う。

 

「私は小大さんが嫌い。とてもとても可愛い女の子。誰かさんと一緒にいたくて必死に必死に頑張ってしまうような健気な子。とっても素敵な女の子。あんなに素敵な女の子と3年間一緒に同じ教室で過ごしてしまったら、きっと旋くんは彼女の事を好きになってしまう。だから私は小大さんが嫌い」

 

とてもとても寂しそうに……辛そうにねじれ先輩が笑う、

 

「私は拳藤さんが嫌い。ミスコンでも輝いてたとても綺麗な女の子。旋くんとは武術とかバイクとか趣味も合う明るくて元気な子。とっても素敵な女の子。あんなに素敵な女の子と3年間一緒に同じ教室で過ごしてしまったら、きっと旋くんは彼女の事を好きになってしまう。だから私は拳藤さんが嫌い」

 

こんな事を……こんな事を考えていたのか、ねじれ先輩は……

 

いつも明るく元気で無邪気なねじれ先輩……

時にはその距離の近さに戸惑う事もあったけど、それでも俺にとって大切な先輩。

 

そんな先輩の中に、こんな強い感情が秘められていただなんて……

 

その意外さと、それを口にさせてしまった事に、俺の心が締め付けられた。

 

しかしねじれ先輩は

「ふぅ……よし!全部出し切っちゃた!」

……っと気持ちがさっぱりしたような様子で、

 

「だからね旋くん。今日は告白のお返事はいいの。多分その辺の事は……そういう気持ちは自分を誤魔化して上手く何も考えないようにしてたんでしょ?」

 

「……お見通しですか……これは何とも恥ずかしい……」

 

「私はずっと旋くんを見てるもん。そんなのとっくのとっくにお見通しだよ」

 

何とも、見透かされてて恥ずかしいやら嬉しいやらである。

 

「だから、今日はこれでおしまいなの」

 

そう言ってねじれ先輩は俺の手を取って、

 

「さ!帰ろっか旋くん!!」

 

俺の手を引き、屋上の出入り口へと歩き出す。

 

「今日はこれで終わり。でも秋……もうすぐ秋も終わっちゃうかな?春になったら私は卒業だね……だから、だから冬の間に……私は貴方に私の事を好きになってもらう」

 

「ねじれ先輩……」

 

彼女はここでとびきりの笑顔を俺に向けて、

 

「覚悟しててね旋くん!」

 

こうして俺の文化祭が終わった。

 

そして秋の日々は過ぎ去り、冬の季節がやってくるのだ。

 

奇しくも……つい最近演劇の所為で知ってしまった……WHITE ALBUMの季節が。

 

 




というわけで、演劇よりもよっぽどWHITE ALBUM2しそうな我らが主人公……
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