回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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ヒーロービルボードチャートJP

文化祭は無事終わった。

ねじれ先輩から告白されたのは正直言うと予想外だったけど、まあそれだけで何かが決定的に変わるとかではなく日々は過ぎていく。

ただ俺の中の何かが変わった、そんな感じである。

 

ワイプシの皆さんが復帰の挨拶で来てくれたくらいかな、変わった出来事と言えば。

 

あいも変わらずねじれ先輩はウチのクラスに遊びに来るし、拳藤とは自主練、小大とはたまに一緒に料理などして過ごしていた。

 

……今までは誤魔化してきたけど、俺もこの辺の事を真剣に考えなきゃ行けないんだろうなきっと。

こんな俺に特別な気持ちを向けてくれる人がいるのだ。しっかりと向き合い考えていきたい。

 

 

「お!ついに始まるぜ回原!!」

 

そして今日。

最新のヒーロービルボードチャートJPの発表が行われる。

俺達B組の生徒は全員寮の1階の広間に集まり皆でテレビを見ていた。

 

No.10のリューキュウさんから順番に壇上に上がっていく。

 

「ミルコNo.5かあ!インターンでお世話になったし嬉しいね!!」

喜ぶ拳藤。

 

「……そのNo.5のミルコに勝ったクラスメイトがそこにいる件について」

 

「ほんと理不尽枠だよなあ回原は」

 

泡瀬と円場の誇らしいようで、でも呆れたような声に、俺は、

 

「単純に戦闘能力だけ見てる訳じゃないだろ?仮免の2次試験の点数そんな良くなかったし俺もまだまだだよ」

 

「あらやだこの子ったらもう」

 

「これでまだ向上心旺盛なんだもんなぁ」

 

「熱いぜ回原!!これからも頑張ろうぜ!!」

 

「おう!」

 

話を聞いて混ざって来た鉄哲含め皆でワイワイと話しながら続きを見る。

 

「……ベストジーニストまだ復帰出来てないのかやっぱ」

 

No.3のベストジーニストさんは欠席。早く良くなってほしいなぁ。インターンとかでお邪魔したいし。

 

そして……

 

「来たノコ!!ホークス!!イケメンノコ!!」

「確かにね!イケメンだよねホークス!!」

「………」

 

そしてNo.2が発表される。

若きヒーロー、ホークス!!

イケメンの登場に沸く小森と取陰。あとそれを見てちょっと機嫌悪そうな黒色。

 

「俺達より6つくらい上なんだっけホークスって確か。それでNo.2だもんなあ!スゲーよなー!!」

 

「そんな訳で回原さん。ここで感想を一つ」

 

「めっちゃ強そうだよなあホークスさん!!模擬戦してみたいなぁ!!空中戦闘最強格だろ!?いいなあ!!模擬戦してぇ!!」

 

俺がそう言うと、その瞬間何故か画面の向こうのホークスさんが「ブルッ……」と身を震わせた。

 

『……あの、どうしましたホークス?』

 

『……ああ、すいません……何故か今急に悪寒が……あ、大丈夫です何でもないです』

 

「……あらやだこの子ったら、画面の向こうのNo.2ヒーローに戦意をプレゼントしちゃったみたい……って、まじか……」

 

「まあなんせ回原だしなぁ……それくらいやりそう……」

 

「回原にタゲられるとかホークスも災難だなぁ、南無……」

 

そして気を取り直した司会がNo.1の名前を呼び、ついにあの人が壇上に上がった。

 

エンデヴァーさんだ。

 

職場体験で大変お世話になったヒーロー。

オールマイトさんの引退後、繰り上げで仮のNo.1となっていたが、今日ついに正式にNo.1となったのだ。

 

その後はNo.10のリューキュウさんから一言順番に話していく流れとなる。

 

まあテレビもあるし皆どうしてもお行儀の良いコメントばかりになるよね、ミルコさんくらいかな?少し茶目っ気出したのは。

 

トップ10ヒーロー達のコメントはこうして当たり障りのない感じで終わるだろうと皆が思っていた。

 

……が、そこに。

 

「へぇ……」

「ん」

 

……そこに、ホークスさんがぶちかました。

皆さんそんなお行儀良くしてていいんですか?と。

オールマイトという平和の象徴はもういないのに、皆さんそんなんでいいんですか?と。目茶苦茶挑発的に。

 

そして最後にエンデヴァーさんを焚き付けるような事を言って、ホークスさんは自分のコメントを締めくくった。

 

「……回原、感想は?」

拳藤の問いかけに、俺は思わず獰猛な笑みを浮かべてしまいながら、

 

「いいじゃん!めっちゃ俺好み!」

 

その獰猛な笑み……視線で画面の向こうのホークスさんの瞳をじっと見る。

 

「こーいう公の場で、衆人環視されながら自分より上位の人に喧嘩売っちゃうとか最高に俺好みだね!!いやぁ!俺めっちゃホークスさん好きだわ!!めっちゃ好きになっちゃったわ!!あーインターン指名してくんないかなぁ!!指導して欲しいしめっちゃ模擬戦の相手して欲しい!!」

 

「むしろ模擬戦だけで良さそうだね……」

「ん」

 

いやぁ~こーいう人なんだぁホークスさんって!!

良い事知っちゃった!

 

『ブルッ……あれ?何だろまたなんか変な悪寒が……』

画面の向こうでホークスさんがまた身体をブルっと震わせた。何だろ風邪かしら?

 

『は!生意気な悪ガキにタゲられでもしたんじゃねーの!?お前も生意気だし生意気つながりだな!!』

 

『……ふ』

 

『……え?え?』

 

何故か身体を震わせるホークスさん。それを見ながら楽しそうに笑うミルコさん。そして静かに笑うエンデヴァーさん。少し離れた所ではリューキュウさんが「あらあら」みたいにクールに笑っていた。

 

「ふぅむ……これホントに回原氏の戦意を察知しちゃってる感じですかな?」

 

「画面向こうに戦意届ける回原がヤバいのか?それともそれを察知しちゃうNo.2ヒーローがスゴイのか判断に困るわね。どちらもうらめしい」

 

画面向こうでまだ戸惑うホークスさん。

それを軽く睨み、エンデヴァーさんが前に出る。

 

そして、短くも力強いメッセージを、今テレビの向こうにいる皆に……全ての人に発した。

 

『俺を見ていてくれ』と。

 

短くも威厳溢れる強いメッセージ。

それを聞いて満足そうにホークスさんが笑った。

 

こうして今回のヒーロービルボードチャートJPは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後。

『おう。テメエには神野区の件で貸しがあったよな』

『はい』

『よし。俺様の代理で福岡に行け。次のインターン絡みってことで新白連合の名前を使っていい。貸しはそれでチャラにしてやる』

『わかりました』

突然の総督からの連絡。

 

何のこっちゃか良くわからないまま、

「回原、僕の方で飛行機のチケットとか学校関係とか諸々の手配はしておいた。福岡に着いたらこの手紙を先方に渡してくれとの事だ。頼むよ」

 

そう言ってこちらに近づいて来た物間から手紙やらチケットを受け取る。

 

「……しっかし物間がいるのに俺が総督のお使いとはね」

 

「総督曰く『何か死にそうなヤバい出来事に巻き込まれる気がする』との事だよ」

 

「……なるほど。それで俺に声かけてきたってことか」

 

「……僕も若干慣れてきたけど……極々普通の感覚で危ない気配を察知したり、危ない気配を感じたとこに代わりに行くとかって普通に考えると頭おかしいよね……いや、ちょっと慣れつつある自分もあれなんだけどさ」

 

「はっはっは……ようこそ物間くん……こちらの界隈へ」

 

ウェルカム!!と手を広げ戯ける俺に対し、物間は皮肉げな笑みを浮かべ、

 

「困ったもんだね……ちょっとだけそれを嬉しく感じてしまう自分が怖いよホントに……だんだん染まりつつあるんだろうね僕もさ……」

 

そう言った物間からチケットやら手紙やらを受け取り、寮を出て空港に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……新白連合の総督からは代理を向かわせる……とは聞いていたけど、まさか君が来るとはね……」

 

空港のロビーに着き、指定された待ち合わせ場所で待つことしばらく。1人の男性が俺に声をかけてくる。

 

ホークスさん。

ホークスさんだ。

 

まさかこの前テレビの向こうで見たばかりの!!あのホークスさんだったのか待ち合わせの相手って!!

 

まじか!!ヤバ!!めっちゃテンション上がるわ!!

 

「はじめまして!雄英高校ヒーロー科1年B組の回原旋です!!今日は新白連合の総督の代理で来ました!!よろしくお願いします!」

 

とは言えまずは挨拶。挨拶は大事。古事記にも書いてある。

 

目を合わせしっかりと挨拶する俺に、ホークスさんはどうしたもんかなぁ……という笑みを浮かべながら、

 

「新白連合の総督の代理で……って事だけど、あの方とつながりあるんだね回原くんは?」

 

「はい。まあ俺と言うよりは武術の師匠絡みなんですが……」

 

「……ああ……梁山泊かぁ……そっかあ……うん、まあ確かに一周回って一回整理してみるとありえる展開ではあるのかこれは……」

 

うーん……みたいな感じでこめかみに指を当て色々考えていたホークスさん。

……少し時間が経過し、「よし!」と気を取り直した様子で。

 

「何となく事情はわかったよ回原くん。色々と大変だね君も。年齢の割に苦労してそうだ!はは!こうして知り合ったのも一つの縁だ!そんなに年齢も離れてないし何かあったら気軽に相談してきてよ。聞ける範囲でなら頼み事含め相談乗るからさ!!」

 

え?まじ?

 

「本当ですか!?」

 

俺のぐいっ!と前に身体事乗り出すような言葉にホークスさんは、

 

「ああ!!いいともさ!!まあ流石にお金貸してとかは困るけどね!恋愛絡みの相談でも何でも気軽にしてきてよ!!」

 

「ホントにですか!!めっちゃめっちゃありがとうございます!!」

 

えーまじか?めっちゃ嬉しいのだが!

嬉しいのだが!!

 

「じゃあ模擬戦してください!!何なら今すぐにでも!!」

 

「何で!!」

 

「始めてホークスさんの事を知ってから、ずっと俺はホークスさんと模擬戦がしたかったんです!!」

 

「だから何で!!」

 

「この前のヒーロービルボードチャートJP見てめっちゃファンになりました!!めっちゃホークスさん好きです!!だから模擬戦してください!!」

 

「うわあ熱烈ぅ!!!しかも礼儀正しい!!でも戦意高すぎぃ!!!初めて!!初めてのパターンだコレ!!女性関係でストーカーじみたヤバいファンはこれまでもいたけど何なのこの厄介ファンは!!俺も初めてのパターンだ!!」

 

「ホークスさん!!模擬戦!!」

 

「うわぁ!!目に邪心が一切無い!!これマジでシンプルに俺と模擬戦したいだけの奴じゃん!!」

 

 

「……人を福岡くんだりまで呼んでおいて……一体何をしているのだ貴様らは……」

 

空港のロビーで、ぎゃあぎゃあ騒いでる俺達に対し、落ち着いた威厳のある声がかけられた。

 

「……エンデヴァーさん?」

 

「久しいなスパイラル……まさかお前がいるとは予想していなかったが……」

 

そう、空港ロビーで騒ぐ俺達に声をかけて来た人。

エンデヴァーさん。

 

つい最近No.1ヒーローになった人。

 

そのNo.1ヒーローが、心底呆れた……という表情で俺たちを見ていた。

 

え……?な……何これ………?

 

No.1ヒーローとNo.2ヒーロー……

 

……そして本当なら新白連合の総督?

 

思わずゴクリとツバを飲む……

 

……え?

……何か思ったよりヤバいお使いを気軽に受けちゃったのかしら……俺……

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