回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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福岡にて

sideホークス

(自分が悪い……ってのはわかってるんですけどねえ……)

そう、これは完全に自分が原因なのだ。

 

だが……なんというかモヤッとするというか……

 

「インターンはリューキュウの所に行ったそうだな。話には聞いた。毎度毎度厄介な出来事に巻き込まれるな貴様は」

 

「あはは……何と言いますか……どうも師匠譲りのトラブル巻き込まれ体質のようでして」

 

福岡の街中を3人で歩く。先導する為に少し前を歩く自分と、その後ろで話す2人。

エンデヴァーさんと回原くんだ。

 

「ふん……難儀な体質もあったものだ。インターンでリューキュウ事務所に行ったのは空中での活動に課題を感じたからか?」

 

「はい!基本的に自分は武術の動きに慣れ親しんでいるのですが、どうしても地面があるのが前提の動きになってしまいまして……」

 

「……地面が無い空中での動き……地面と遜色無いように空中でも動けるようにというのを次の課題にしているのか……中々難しい課題だな」

 

「そうなんです……打撃を放つ瞬間だけ踏み込む足の竜巻を強化して擬似的に地面の反発を再現してみたり、旋回の個性で回し蹴りを強化したりと色々試しています。中々先は長そうです」

 

「……生憎だが空中での活動に関しては俺も助言はできん……しいて言うなら、更なる個性の強化……瞬間的な最大出力の向上と、瞬間的に最大出力まで個性をもっていく個性の瞬発力辺りが鍵となりそうだな」

 

(……ってそれ助言!助言ですって!しっかり助言してるじゃないですかエンデヴァーさーん!!)

福岡の街中を歩きながら剛翼の個性で羽を飛ばし街の人達を助けながら、後ろで話している2人の会話を聞く。

 

「はい!自分もそのイメージでした!個性で空中に擬似的な足場の反発を再現するような竜巻の運用が鍵だと考えています!その為には瞬間的な最大出力の向上と!一瞬で最大出力まで個性をもっていく瞬発力かな!と考えていました!」

 

「ふん……貴様なら心配はいらんだろうが……もしも次のインターンの行く先が決まらなければバーニン経由ででも連絡してこい。ウチの事務所で鍛えてやる」

 

「ホントですか!ありがとうございます!」

 

「……せっかくの1年でのインターン活動だ。本来であれば色々なヒーロー事務所に行き様々な経験が出来ればそれに越したことはない。3年になると大体一つのヒーロー事務所に活動を絞る事になる。1年の今は色々なインターン先に行けるチャンスだ。貴様が行きたいと思ったヒーロー事務所から声がかかったらそこを優先するようにな」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「ふん……物事の良し悪しとは基本相対評価だ。色々なヒーロー事務所を見てこそ、俺の事務所の本当の素晴らしさがわかるようになるのだ。せっかくだ。1年のうちは色々な所に行ってみろ」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

『ホークスありがとー』

「はーいどうもねー」

 

ありがとうの言葉がたまたま連鎖した。

(しっかしどうしてこうなってしまったんでしょうねぇ……)

正直モヤッとする……もう少し正確に言うならこれは軽い嫉妬……と、いうか……

 

(……何で君そんなにエンデヴァーさんと仲良くなってんのよ回原くん!?ズルくない!?)

 

そう、ズルい。

回原くんを、ズルいと感じてしまうこの気持ち。

(俺だってエンデヴァーさんとそんな風に仲良く楽しく話したいのに!!ズルいぞ回原くん!!)

 

そんなモヤッとした情けない気持ちなのである。

まあ、これは完全に自業自得とわかっている。

それがまた自分をモヤッとさせてしまうのだが。

 

(……あーあ、あんな生意気キャラでこの前エンデヴァーさんに接するんじゃなかったなこりゃ……)

 

そんな事を考えながら回原くんを見る。

(優秀で礼儀正しくて……しかも向上心も旺盛……そらエンデヴァーさんも気に入りますよねえ)

 

何となく可愛がって目をかけてしまうのもわかる。多分将来サイドキックとしての採用も狙ってるんだろうし。

 

雄英高校ヒーロー科1年B組の回原旋くん。

 

裏で公安に所属しているヒーローである自分は、前から彼の事は情報としては知っていた。

 

曰く『目指せ!!達人へと至る道RTAの被害者』

……と密かに公安でも有名な少年である。

 

直接の面識は無いが、梁山泊がヤバい所だとは知っている。 

そこの秘蔵っ子。

そしてこの前の仮免試験で今回No.5になったミルコを倒したヤバい少年。

それが俺の知ってる回原旋という少年だった。

 

(実際会ってみるといい子なんですよねぇ)

 

自分に対しての戦意がヤバいのはたまにキズだが。

出会って早々にあんなにも模擬戦模擬戦とせがまれるのは初めての経験だった。

 

「ホークスホークス!!一緒に写真取って!!」

 

「ホークス!この子にサインを!!」

 

ファンサをしながらそんな事を考える。

いい子なんですよねぇ。

だから変な嫉妬とかしてしまうのは筋違いなのだ。

ああいう関係をエンデヴァーさんと築けなかったのは自業自得なのだから。

(ま!自分の今のこーいう性格も気に入ってるからいいんですけどね)

 

「あれ!後ろにエンデヴァーおる!!」

「隣の子は雄英体育祭で目立ってた子やん!!」

 

ファンサで足を止めてしまい、ぽつんと後ろで立っていた2人にも注目が集まる。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!!ね!ね!あの流水制空圏ってのやってみせてよ!!」

 

無邪気に子供が回原くんにそんなお願いをする。

回原くんはニッコリと微笑み。

 

「うんいいよでもあれ相手がいないと使えない技だからなあって事でここは一つホークスさんこの子の為にも俺と模擬戦を!!」

 

「めっちゃ早口じゃん!どんだけ俺と模擬戦したいのさ!!」

 

事あるごとに模擬戦ふっかけてくる回原くん!!

正直困るけど……

 

(……何となくエンデヴァーさんが目をかける理由もわかるんですよね)

 

早すぎる男と呼ばれた自分。

上の世代からは自分の立ち位置を脅かす存在と煙たがられ、同世代と下の世代からは『アイツは特別』と距離を取られている自分。

 

……そんな自分に対し、物怖じせずここまでキラキラと敬意を持ちながらも挑戦してくる回原。

(何となく可愛がってみたくなる気持ちもわかりますよエンデヴァーさん)

 

自分のガチファンに珍しく握手を、ファンサをしようとし『エンデヴァーはそんな事せん!!』と拒否られ戸惑う彼を見ながら、思わずそんな事を考えてしまう。

常闇くんのインターンを受け入れた時にも思った。

下の世代は間違いなく育ってきている。

 

オールマイトの居なくなったこのヒーロー社会を共に支えていけるような卵達が。

 

戸惑うエンデヴァーさんから回原くんへ顔を向ける。

 

彼はキョトンと、首を傾げ、

 

「模擬戦ですか?」

「違うから!!飯食い行くよ!って声かけようとしただけだよ!!」

 

……困ったもんだ、と思いながらも可愛気があると相手に感じさせてしまうのが彼の魅力なんだろうなあ。

 

(……まあ、この後の『あの予定』までは時間もあるし……3人で食事くらいは出来るでしょう)

 

そこで新白連合総督代理としての話も聞けるだろうし。

 

俺は2人を先導して行きつけの店へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旨!!ここの焼き鳥めっちゃ旨いですねホークスさん!!」

 

行きつけの焼き鳥の美味しいお店。

自分の行きつけの店の味を褒められるのは素直に嬉しいものだ。

 

「若いからかいい食いっぷりだね回原くん!!足りなければどんどん追加するから遠慮なく言ってね」

 

「ありがとうございます!!」

 

「……ふん、食い過ぎると頭の回転が鈍る……回原、まだ食えるならこれも食べていいぞ」

 

「本当ですか!ありがとうございます!!」

 

手を付けてない自分の分の焼き鳥を回原くんに譲るエンデヴァーさん。

 

「……さて、わざわざ人を福岡まで呼びつけたのだ。一体どんな話があると言うのだホークス?」

 

そう言って、俺をめちゃくちゃ強い視線でじっと睨みつけてくる。

 

「エンデヴァーさん!!いくらなんでも回原くんへの態度と俺への態度に差があり過ぎませんか!?」

 

「ふん」

 

いやまぁ確かに自分が悪いんだけどさぁ!!!

 

「……それに何故回原がいる?」

 

「……ああ、そうですね、そこの話を先にした方がいいですね」

 

と、2人で焼き鳥をもぐもぐしている回原くんを見る。

口の中の物をゴクリと飲み込むと回原くんは、

 

「ホークスさん宛てに新白連合の総督から手紙を預かって来ています」

 

そう言って、封のされた一通の手紙を俺に渡してくる。

手紙を受け取り中を確かめようとした所で、

 

「新白連合だと?」

 

「はい。この後の話にも関わるんですが、新白連合の情報網を使わせてもらえないかお願いをしようかと」

 

「新白連合所属ヒーロー事務所……一見すると大きな事件の解決実績等の無いヒーロー事務所……だが、それは事件が大きくなる前に事前に解決しているケースが多い為だ。ある意味ヒーロー事務所の理想とも言えるか……なるほど、その活動の裏に、優れた情報網があるのだとしたら納得出来る。貴様はそことの連携を取りたい訳か」

 

「そう言う事です……って、そう来たか……」

 

「ホークス?」

 

新白連合総督からの手紙。

そこにはこう書かれていた。

 

『俺様は自分以外の人間が小細工するのは好かん。俺様の情報網を活用したいのならちゃんと「オマエのお友達」を介して正式に依頼してこい』

 

(……俺と公安の関係はお見通し、って事か……)

 

何処でそれを知ったのか、なんて考えても仕方のない事なのだろう。ただ向こうはそれを知っている。それが事実。

 

協力はしてもいいが、ちゃんと雇い主の公安経由で正式に依頼しろ、か……まあ確かにそれが筋っちゃ筋何だけど。

 

その上で、

 

『もしも公安を介さない独自の連絡手段をお望みなら、代理に行かせた坊主からクラスメイトの物間って奴の連絡先を聞いておけ。そいつ経由でなら直接連絡を取ってやる』

 

との事だ。

……この文章を読み、考える。

 

(これはそのまま素直に受け取ってもいいものなんだろうか?)

 

俺が公安を介さないで独自に連絡する事を想定している?

情報網を使いたければ公安経由で依頼しろと先に言っておきながら?

 

(……何か含みがあるのだろうか?)

ちらっと回原くんを見る。

総督の代理として来た彼の事を。

 

新白連合と梁山泊の関係は公安では周知の事実である。

そして総督の代理として、梁山泊の弟子である回原くんをここにこさせたという事は、

 

(……場合によっては……新白連合と梁山泊、その両方の協力が得られると……そうとも受け取れるけど)

 

……ダメだな。これだけだと情報が足りない。

だが、決して悪い事にはならないだろうとも感じる。

 

だからとりあえず……

 

「すまない回原くん……君のクラスメイトの物間くんって子の連絡先を教えてもらえないかな?」

 

……とりあえずこうするしかないのだろう。

どうにも誘導された気がするが、あまりにも判断材料が足りなすぎる。

どの道向こうの真意を知るためにもコンタクトを取る必要がありそうだった。

 

 

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