ホークスさんが
『エンデヴァーさんをNo.1ヒーローとしてプロデュースする』
『ヒーローが暇を持て余す世の中にしたい』
と、そんな話をした辺りから俺の危機感知に何かが反応し始めた。
「……回原?……いや、スパイラル?」
「……冗談でしょう?まさかここで仕掛けてくるなんて……」
窓の外に注意を向ける俺。
その様子を見てエンデヴァーさんとホークスさんも窓の外に注意を向ける。
高層ビルの窓の外。
周囲の建物よりも高所の為、視界がかなり開けている。
……そこに、ぽつんと浮かぶ黒い黒点。
「……来ます!!」
その黒い黒点が高速でこちらに向かって飛んで来た!!
「スパイラルくん!!店員のお姉さんを頼みます!!」
「わかりました!」
「え?きゃっ!!」
ちょうど間が悪く追加注文を取りに来た店員さんを庇い個室から離れる!!
その瞬間!!
……ドガッシャアァァァァァン!!!!
巨大なガラスの破壊される音と共に、怪物がビルの中に飛び込んで来た!!
脳無!!
空を飛ぶ黒い脳無!!
ヴィラン連合が操る怪物が空を飛び俺たちを強襲してきた!!
「スパイラル!!貴様は建物内の人の避難誘導を!!」
「コイツは俺とエンデヴァーさんで相手します!!」
その脳無を外に叩き出すエンデヴァーさん!!
そしてそれに続くホークスさん!!
「わかりました!!……皆さん!!今!この建物はヴィランの襲撃を受けました!!現在!!エンデヴァーさんとホークスさんの2名で応戦しています!!No.1と2のヒーロー2人で対応していますのでご安心ください!!大丈夫ですので!!慌てず騒がず落ち着いて避難してください!!」
お店に居た人達全員に聞こえるように声を張り上げる!
「エンデヴァーさんとホークスさんの2人でヴィランに対応中です!!ご安心ください!!ですので慌てず落ち着いてゆっくりと避難をお願いします!!店員さん!!非常階段へ皆さんの誘導をお願いします!!」
しっかしどうしたもんか!!人手が足りなすぎる!!
このお店はこれでOKだとしても、全部の階、店でこれ俺一人でやんのは無理ゲー過ぎる!!
とりあえず壁際にある緊急事態を知らせるベルを……昔で言う火災報知器のような役割の物だ。建物へのヴィラン襲撃を知らせる非常用ベルを鳴らす!
ジリリリリ!!!
これで緊急事態という事は建物内に伝わった筈だ。
後は各フロア各テナントの職員達の対応にある程度任せるしかない。
こういう時代の高層ビルだ。
当然、この建物で働いている人達は緊急事態に備えて避難訓練なども行っている。
つまり俺の役割は……この建物の人達が安全に避難出来るようにフォロー……具体的には非常用階段の防衛かな。
そこでガラス越しに外の様子を確認する。
当初俺たちが襲撃を受けた個室のちょうど反対側に戦場は移っているようだ……って!!
「あんにゃろう!!あの長く伸ばした腕!!ビルごと薙ぎ払うつもりかよ!!させっかっての!!」
胸元のコアドリルにアタッチメントを装着!!
「ギガァドリルゥブレエェェェイク!!!!」
ビルの強化ガラスを一瞬で突き破り、俺は黒い脳無が伸ばした腕にギガドリルブレイクで突撃する!!!
「ギッ!!」
「おおおおおぉぉぉぉ!!!」
ブチブチィ!!!
黒い脳無の腕が少し高層ビルにめり込んだ辺りで、俺のギガドリルブレイクでヤツの腕を断ち切る事に成功した!!
「ナイスフォロースパイラルくん!!すまない!!俺のパワーじゃヤツの腕を切る事が出来なかった!!」
ホークスさんがこちらに来て声をかけて来た。
「また……強いヤツ……来た……」
「コイツ……喋れるのか!?」
黒い脳無が自分の肉体の一部を槍の様に、鞭の様に何本も伸ばし俺を攻撃してくる!!
俺はそれを躱し、躱し難いものは化勁で受け流しながら飛んでヤツに接近!!
「オラァ!!」
両足の竜巻を瞬時に最高出力まで高め踏み込み時の地面の反発を再現!!
正中線に打撃を3連発!!おまけに個性の旋回で腰ごと回して勢いをつけた後ろ回し蹴りをヤツの顔面にお見舞いしてやった!!
攻撃を受け吹っ飛ぶ脳無!!
「……なんつー再生力だ……あれ、折れた骨が速攻で修復してますよね多分……」
「ああ……エンデヴァーさんの攻撃を受けて、焼き尽くされて消滅した部位もすぐに再生していたよ。凄まじい再生・回復力だ」
吹っ飛んだ脳無……俺が打撃した部位は確実に骨を砕いた感触があった……
が、今その部位周辺が内部から蠕動……明らかに体内の砕かれた骨と肉体が修復されているような動きを見せていた。
当然、俺がギガドリルブレイクでぶった切った腕も再生していく。
……恐ろしい敵だぞ、この黒い脳無は。
俺とホークスさんが向ける警戒の視線。
奴はそれを受けて楽しそうに笑い、
「なんだ!!白い何かを産み落とした!?」
「あれも脳無だ!!まさか!体内に格納していたのか!!」
まるで子供を産むように、黒い脳無が白い脳無達を地面に向けて放っていく。
おいおい!まじかよ!コイツの相手だけでも大変なのに!また敵が増えんのかよ!!
ゴォッ!!
その黒い脳無に炎が!!エンデヴァーさんの炎が直撃する!
「すまん!!戻るのに時間がかかった!!奴は俺が相手をする!!ホークスは地面に落ちた他の脳無達の対応をしろ!スパイラル!貴様は周囲の建物の防衛だ!!さっきのように高層ビルを破壊するような攻撃が来たらそれを防げ!」
こちらに戻って来たエンデヴァーさんの指示を受け、俺とホークスさんはそれぞれ動き出す!!
「わかりました!!奴の相手はお願いしますよNo.1!!」
スピードを上げて地上に向かうホークスさん!!
俺は黒い脳無と先ほどまでいた高層ビルの中間のポジションを取る。周囲の建物よりも一段以上高いビル。
避難が一番大変なのは間違いなくこのビルだろう。
優先して守るべきはこのビルで間違いないと思う。
「おおおおお!!!!」
実際、あの視野の広いエンデヴァーさんが何も言わず黒い脳無に攻撃を仕掛けている。俺が間違っていれば追加指示がある筈。無いのだからこれでいいのだろう。
「……しかし、不味いなこれ……」
エンデヴァーさん……多分、空中戦闘に不慣れだ。
エンデヴァーさんが空を飛べる、という情報は無かったと思う。
こういう土壇場で、多分ぶっつけ本番でしっかり空中戦闘に対応してる辺りは流石エンデヴァーさんと言うべきだが、細かな挙動に正直甘さが見える。
……いやでも、いきなり空飛べるようになっていきなりあの黒い脳無の相手をするというのがそもそも無理ゲーであり。それでもそれをやってのけているエンデヴァーさんがスゴイというのは正直あるのだが……
さっきのホークスさんの言葉……自分では力不足……正確にはパワー不足という言葉。
その辺りを考え、おそらくエンデヴァーさんは自分がアイツの相手をすると言ったのだ。本来は空中戦闘こそホークスさんの見せ場なのに。
……単純に、自分が活躍したいだけなら「空中戦闘はホークスに任せる。俺は地上に降りた脳無を倒す」と言ってしまえば楽に活躍出来るのに。
……本当に、言葉足らずで損をしてばかりの人なんだろうな、と。そういう不器用な優しさを感じてしまう。
今も、不慣れな空中戦闘をこなしながら敵を追い詰める我らがNo.1ヒーローの、その大きな背中を見る。
「……貴方の気持ち、よくわかりますよホークスさん」
多分、俺とホークスさんて似たところがあると思うんだよね。
あの不器用ながらも真摯に努力し、人々に貢献して来たヒーロー。
エンデヴァーさんに、その、これまでの努力が報われるような幸せな事があれば良いと。
そう、こんな状況でも考えてしまうのだ。
この人のこれまでのひたむきな努力が、良い形で報われて欲しい、と。
そしてエンデヴァーさんの渾身の炎が!
今!!黒い脳無を焼き尽くす!!
……かに、見えたが!!
「エンデヴァーさん!!警戒を!!奴は炎に焼かれる前に頭だけ投げ飛ばしています!!」
……俺のその言葉は届かなかったのだろうか……
頭だけになり、急速に再生しながら黒い脳無から伸びた槍の様に凶悪な身体にエンデヴァーさんが貫かれた。
「エンデヴァーさん!!!」
空に、血が舞う……
ギリギリで顔を逸らしたのか?
エンデヴァーさんの顔の表面を削る様な脳無の攻撃。
落ちる。
落ちる……落ちる!!
「エンデヴァーさん!!」
落ちる落ちる落ちる!!
俺達のNo.1ヒーローが!!
「エンデヴァーさん!!」
エンデヴァーさんが!!地に落ちた!!
落ちてしまった!!
そして、その地に落ちたエンデヴァーさん。
……その身体の上に立ち、何事かを話しながら勝ち誇る黒い脳無!!
それを見て!!
ブチぃ!!!!!!!
……ここで、俺の我慢の限界が……具体的に率直に言うと俺はブチギレた!!!
「おぉぉぉぁぁぁぁ!!!!」
両手両足を使った全力全速力飛行!!!
今にもエンデヴァーさんにトドメを刺そうとしている黒い脳無!!
「テメエゴラァ!!!俺達のNo.1ヒーローに何してやがる!!!」
「ガ!!!」
全速力でヤツに近づき!!その勢いそれそのものを活かした回し蹴りをヤツの顔面に叩き込む!!
踵落としは不味いとギリギリで判断!!何せコイツエンデヴァーさんを踏みつけてるから下に突き抜ける攻撃はNG!!
……それ以外の配慮を無くした全力攻撃!!
ヤツの顔面をブチ砕いてしまえ!!
「オラァ!!!」
……そんな意気で放った蹴りを!!コイツ!両手でガードしやがった!!
ガードした両手を砕かれながら吹っ飛んだ脳無!!
「テメエ!!思った以上に頭回るじゃねえか!!」
先ほどのエンデヴァーさんの炎に焼かれそうになり、頭部だけちぎって投げたコイツ。
……頭が弱点なんだろが、それをしっかりと守る頭脳がある怪物。
……でも、そんなの関係無いね!!
「おうコラァ!!テメエ!!舐めた真似ばかりしやがって!!俺が相手してやる!!覚悟しろやゴラァ!!!」
地を蹴り、ヤツに向けて加速する!!
周囲の状況とかもう知らん。
ただ、コイツをブチのめす!!
その一念。
その気持ちに支配され、俺は地を蹴った。