回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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VS A組3

『A組!B組!訓練場内の生徒全員一時戦闘行動を中止しろ!!』

 

『小大と凡戸は拘束している心操と葉隠を一時解放しろ!!状況はこちらで把握している!!状況が落ち着いたら俺達教師立ち会いの元再度拘束する!!まずは全員の安全第一で行動しろ!!』

 

訓練場に響くブラキン先生と相澤先生の声。

 

「……やれやれ、水を差されたな」

 

轟との戦闘を一時中断する。

体育祭以来ずっと待ち望んでいた対戦だ。これから盛り上がっていく所だってのに全く……

 

「あれは……緑谷だよな」

 

戦闘を中止し、俺の近くに来た轟と2人でとある方向に目を向ける。先程から俺の危機感知レーダーにビンビン反応しているとあるヤツ。

 

1年A組の緑谷出久。

 

俺のライバル候補である。

 

その緑谷は今……何だろかあれ?黒い光?ロープ?鞭?……的な何かを複数身体から伸ばして周囲を攻撃?していた。

 

まあ見てわかりやすい異常事態である。

 

「……緑谷の個性は自分の肉体も破壊する程の超身体能力強化だっけ?」

 

「ああ……その筈だ」

 

「……自分の肉体を破壊する程の超パワーが体内だけでは収まりきらず、黒い光となって身体から溢れ出したのである!!……って事?あり得るんかそんなのよ?」

 

「……それだったら、仲間達を窮地から助ける為に秘められていた自分の力が覚醒したのだ!……の方がまだ緑谷のキャラ的にはありそうだが……」

 

付き合ってくれた轟と顔を見合わせ、2人でふるふると顔を左右に振る。

 

「「……いや、流石にねーよな」」

 

……うん、ねーよな。うん……

 

暴走でいいのかな?黒い何かを全く制御出来ていない緑谷を2人で見ながら轟と話す。

 

個性の暴走ってのは決して珍しくはない。大体それは個性に目覚めたての幼少期の事ではあるが、個性の暴走自体は決して珍しい事ではないのだ。緑谷って個性目覚めたの最近だっけ?それを考えれば個性の暴走ってのはあり得ない話ではないのだが……

 

「……正直、これまでの緑谷の個性の……聞いていた個性の延長線上にあの謎の現象があるとは思えないぞ……」

 

そう、これはまるで……

 

「横浜市神野区……あの仮面被っていたヴィランのような……複数個性の発現?何じゃないか?」

 

あの時の、あの特殊なヴィラン。

オールマイトさんの宿命の敵のような、あの凶悪極悪なヴィラン。

 

……複数の個性を自在に使いこなしていた、あのヴィラン。

 

「……複数の個性持ちの前例は確かにあるか……そう考えれば、例えレアケースだとしても……緑谷がそのレアケースである可能性はあるな……」

 

轟の言葉に頷く。確かに……確かに可能性はゼロではないか。

 

今も暴走を……暴走を続ける緑谷を見る。

意識はありそうだ。懸命に自分で自分の暴走を止めようとしていた。全く……それが緑谷らしい。  

 

先生達も緑谷が自力でなんとかするのを期待してるのだろうか?

 

「先生達がまだ緑谷を止めに入ってない。そして訓練場にいる君や轟、爆豪に緑谷を止めてくるような指示も出ていない。先生達はもう少し様子を見る算段らしいね」

 

「物間に泡瀬……トンガリもか」

 

「……け!」

 

緑谷を遠目に見ていると、少し離れた所にいた物間に泡瀬、トンガリが合流してきた。

 

「もしも緑谷を生徒達に止めさせようとするなら回原……君と轟、爆豪辺りに多分声がかかるだろ?とりあえず合流した方がいいと思ってね」

 

「このモノマネ小細工野郎に言われるまでもねーよ!!俺が!!俺が先に合流するぞって言ってたわ!!」

 

「……色々ツッコミどころがあるんだけど、とりあえず元々のモノマネ野郎からモノマネ小細工野郎に格上げになったのは、僕の成長を認めてくれたって事でいいのかな爆豪?」

 

「けっ!!知るかボケ!!」

 

「……やれやれ」

 

「……もう二度とやらねえ……もう二度と付き合わねえぞ物間……割に合わねえ……割に合わなすぎるぞ俺とお前の2人で爆豪の足止めはよう……」

 

不満気なトンガリ、飄々とした様子の物間……そして疲れ切った様子の泡瀬……三者三様だなあこの辺は。

 

「……んでどうするんだモノマネ小細工野郎?デクは暴走して納まる様子がねえ……汝の隣人を愛せよ、とは言うが流石にあれは御免被るぞ俺は」

 

「おや?確か君等幼なじみだろう?愛で隣人を救うべきじゃないのかな?」

 

「アホか!!誰が救うか!!あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさいじゃねーわ!!愛で殺して殺して殺しまくるぞこの野郎!!!」

 

「……爆豪。じゃあ俺ならどうだ?」

 

「何でだよ半分野郎!!何でテメエがこの流れで聞いてくるんだよ助ける訳ねーだろボケが!!何で自分が俺に助けられる側に入ってんだよアホか半分野郎!!……って地味にショック受けてんじゃねーよ『そうか……』じゃねーんだよボケが!!言った俺が困るだろーが!!」

 

ちょっとしゅん……とした轟を励ますトンガリ。やれやれとそれを見ている俺と物間……

 

その様子を゙見ていた泡瀬。

 

 

「……ほんと、お前らスゲーわ……この状況でも全員全然動じてないんだもんな……凡人枠の俺からするとこの4人……回原と物間、爆豪と轟の4人が同じ場所にいるのは安心するんだよな……お前らなら大概の事は何とかしちゃいそうだしな」

 

泡瀬の言葉に俺達4人が顔を合わせる。

 

まあ……そうねえ……

 

「先生達が何も言わないのは……多分緑谷を武力で鎮圧するだけなら……多分ここにいるメンバーで何とか出来ると考えてるからだろうな」

 

轟の言葉に全員が頷く。

 

「だろうね……まあ最悪の事態にはならないだろうって思ってるだろうね」

 

だから、緑谷の……緑谷自身の力に……制御に期待して待っているのだろう。

 

けど……

 

「……へえ」

 

「……あれは……麗日か?」

 

「けっ」

 

けど……それでも緑谷を一人で……アイツ一人で放っておけない人もいるんだろうねきっと。

 

麗日が、緑谷の元に飛んだ。

……近くには心操もいるようだ。

 

そして、麗日が緑谷の暴走を止める。

 

いや、緑谷が自分で止めたのかな?

 

まあそれはどちらでも良いんだけど。

 

結論、緑谷の暴走が止まった。

 

「……結論、汝の隣人を愛せよ、で何とかなったってことで良いのかねトンガリ?」

 

「……は!知るか!!俺に聞くなよボケドリル!!」

 

「……はた迷惑な話だねホント……あの中断が無ければ僕たちB組の完勝ペースだったのに」

 

「物間……完勝の陰に俺の貢献があるのを忘れるなよ……」

 

俺、トンガリ、物間、泡瀬……その言葉に、轟は……

 

「……緑谷のヤツ……アイツ、これまで力を隠してたのかな?」

 

「……轟?」

 

その、少し危うさを秘めた轟の言葉。

 

それに……

 

「……勘違いすんなよ半分野郎……んな便利な力に見えっかよあれが……」

 

「……そうか……」

 

トンガリに諭され意見を下げた轟。

 

「……俺は、やっぱ遅れてるんだよなお前らより……」

 

「轟?」

 

轟の……その、悩みに悩み……思い詰める寸前のような、そんな辛そうな顔。

 

「……俺だけ……俺だけ仮免に落ちてさ……A組もB組も皆仮免受かってるのに俺だけ落ちて……物間なんか、インターンで目茶苦茶伸びてるのに……俺だけ……俺だけ……俺だけ遅れてる……今は……今こそ力が……力が必要なのに……俺には力が必要なのに……」

 

「……轟」

 

その、辛そうな顔。

 

……最近、コイツには色々な事があり過ぎた。

それが、コイツの心を……精神を痛めつけているのがよくわかる。そんな事が伝わって来てしまった。

 

 

「……俺さ、お前に上手いこと……今、お前を楽に出来るような……お前の苦境を、心の辛さを全て丸ごと取り除くような、そんな言葉は……そんな魔法のような言葉は持ってないんだけどさ」

 

「……回原?」

 

……それでも、それでも、コイツを、轟を助けてやりたい。

……少しでも、楽にしてやりたい。

 

……そう思う事が、間違いな訳が、無い!!

 

「辛いことがあったら言ってくれよ。吐き出す言葉があれば言ってくれよ。それだけでお前が……お前の心が楽になるなら……少しでも軽くなるなら聞いてやりたいんだよ俺は」

 

……あの時の後悔。

エンデヴァーさんに、何も言えなかった、その後悔。

 

……でも、今!今!間に合うのなら!!

 

 

「俺達友達だろ?クラスは違うけど俺達友達じゃんか。だから……愚痴でもストレス発散に遊ぶのでも暴れるのでも、何か言ってくれよ轟……自分一人で抱え無いでくれ……友達が辛そうなのは、やっぱ嫌だよ俺」

 

 

「……回原……」

 

俺を……俺の目をしっかりと見る轟。

 

「けっ!!愚痴なら聞かねえよ!!だが!!暴れるならなんぼでも付き合ってやるよ半分野郎!!」

 

「爆豪……」

 

そんな俺達の言葉に……少しだけ……少しだけ、轟の顔が……曇り顔が晴れた気がする……

それは本当に……本当に少しだけかもしれない。

……でも、ほんの少しでも、友達の曇り顔を晴らすことが出来たのなら……それはそれでいいじゃないか。

 

そんな事を考える。

 

俺達3人の様子を見て物間は、

 

「やれやれ……全く……このお話はここでおしまい、みたいに締めてるんじゃないよ君たち……この後戦闘始まったらちゃんと戦えるのかい全く……」

 

「「「……あ」」」

 

それで3人思い出す。

 

そうだ!!まだ戦闘中なのかこれひょっとして!!

 

『……緑谷の状態が落ち着いたのを確認した。これから戦闘訓練中断前の時点にきっちり戻るように指示を出す。全員大人しく従うように』

 

「まじかよぉ……もぉ終わりでいいじゃんかよぉ……」

「そうは言っても始まらないよ泡瀬。さあもう少し頑張ろうか」

「ちっくしょー!!俺が一番貧乏くじ引いたぞこれ!!」

 

相澤先生の言葉に絶望する泡瀬。

 

そんなこと知ったこっちゃないとばかりに2人の教師から指示が出され、戦闘中断前の状態に俺達は戻っていく。

 

「テメエとの再戦はまた今度だボケドリル」

「おーまたなトンガリ」

 

去っていくトンガリと物間に泡瀬。

 

ここに残ったのは俺と轟。

 

「……強えなお前らB組はさ」

「……轟?」

 

先程よりも穏やかな轟の声。

 

「……奇襲で最初に八百万を倒して、続いて飯田。仕切り直しての再戦では物間の奇策から骨抜と吹出の個性で戦場を区切り、相性のいい相手に対して的確な仲間をぶつけてる。そんで俺達A組相手に絶賛有利な状況を作ってる……強えよB組はさ」

 

「まあな」

 

轟の賛辞をありがたく受け取る。

実際、上手くいった。

真正面からバカ正直には戦わず。策を弄してメタって優位に立ち続けた。

 

故の。この結果。

 

「……強さって……強さって、本当に色々あるんだな」

「だな」

 

それは本当にそう思う。

 

「……俺も……俺も、今までよりももっと……もっと強くなるよ……単純な戦いだけの強さじゃなくて……もっと視野の広い強さをもてるようにさ」

 

少しだけ曇りの晴れた顔で、轟がそう続けた。

 

「……だから、これからも……これからも色々付き合ってくれよな回原」

「ああ……もちろんだ。友達だろ、俺達さ」

 

「……ありがとう」

 

轟は穏やかな笑みを浮かべて、

 

「さあ、相澤先生から戦闘再開の声がかかったぜ……とりあえずさっきの続きだ回原……俺さ……俺は、色々な強さを身に着けたいけど、それでも単純な強さを極めるのも諦めてないからな」

 

「……ああ、それは俺も同じだよ、轟……だから……」

 

だからさ、轟……

 

「……だからさ轟……ここで楽しく俺たちのヒーローアカデミアをしようや。俺ももっと強くなるから、お前ももっと強くなれよ。お互い頑張ろうぜ」

 

俺の言葉に、轟は笑って。

 

「ああ!!やろうぜ回原!!ここが俺たちのヒーローアカデミアだ!!!」

 

 

……そして!!俺達は戦った!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しばらくの後……

 

『……轟が回原に拘束され牢屋に入れられた!!これでA組は10人が拘束された!!よって!!この勝負はB組の勝利だ!!』

 

……こうして、A組とB組の戦闘訓練は終わった。

 

 




ようやく終わった……想定より長くなってしまった……
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