「なんだ……ありゃ……」
「周囲の建物の大きさと比較して身長は……20……いや、25m程もあるか……なんという巨大なヴィランだ……」
サー・ナイトアイさんからの警告。
それからしばらくして死柄木弔を拘束している俺達からも……その超大型ヴィランの姿が見えた。
周囲の建造物を薙ぎ倒しこちらへと一直線に走ってくるヴィラン!!
その大きな身体の大きな一歩は凄まじいスピードを生み出し、どんどんと俺たちの方へと迫って来ていた。
「狙いは……俺達、ですかね?」
「……もしくは死柄木弔か……ヤツがこの直進する先にある何かか?……とも考えられるが、どちらにしろやる事は変わらん」
「……ですね!」
今も街を破壊しながらこちらへと近づいて来る大型ヴィラン。
「……あんな奴を他の街で暴れさせる訳にはいかん……奴はここで止めるぞスパイラル!!」
「……はい!!」
何かを振り切るような……そんな力強いエンデヴァーさんの言葉。
……彼にもわかっているのだろう。
……おそらく……おそらく、これで荼毘の……息子さんの元に行く事は出来なくなってしまった、と。
……それでも……それでも!!
あれを放置する事は……ヒーローとして!絶対に出来ない!!
「……全く、水臭いですねえ本当に!!楽しいお祭りがある時は俺にもちゃんと声かけてくださいよエンデヴァーさん!!」
「ホークスか」
「ホークスさん!」
決意を固めた俺とエンデヴァーさんの元に、ホークスさんが超スピードで空を飛びやって来た。
その背後の背中の翼は万全の状態。
「助けられるだけのヒーロー・異能解放軍の避難は完了しました!!ここからは俺も戦線に加わりますよ!!」
人々を救う為にばら撒いていた羽の全てを回収し、万全の状態になったホークスさんが力強くそう宣言した!!
ホークスさんと。俺。
2人をじっとエンデヴァーさんは見つめ、
「……ふっ!福岡の時の3人がまた集まった訳か」
「ですねえ」「はい!」
そんな俺達にエンデヴァーさんが力強く声をかける!!
「奴は必ずここで止める!!力を貸してくれ2人とも!!」
「もちろんですとも!!」
「はい!!やりましょうエンデヴァーさん!!」
そして先頭に立ち空に飛び上がるエンデヴァーさんを追いかけ、俺とホークスさんも空に飛び上がる!!
確かに!No.1ヒーローの座は取り上げられたけれど!
それでも!!それでも俺達が頼りにし、信じてついていける!!あの大きな力強い背中!!
その背中を追いかけて俺は空に飛び上がった!!
「おおおおお!!!!!!」
そして!吠えながらこちらへと近づいて来る超大型ヴィラン!!
「死柄木弔はとりあえず俺の羽で避難させときますねえ!!ついでに!!ヤツにも一当てしてみますか!!」
数本の羽で死柄木弔を捕獲班の方へと運びながら、ホークスさんがまず先手を取った!!
ホークスさんが操作する羽が勢いよく空を飛び大型ヴィランへと襲いかかる!!
……が!!
「くぅ〜!!硬った!!アイツめちゃくちゃ硬いですよ2人とも!!」
「……体表が硬化しているように見えるな……ホークスの反応も頷ける。ヤツが高い防御力を持っていると確定していいだろうな。次は俺だ!!赫灼熱拳!!ジェットバーン!!」
「背後に回って俺も仕掛けてみます!!ギガドリルブレイク!!!」
正面からはエンデヴァーさんの炎!!
俺は空を飛び大きく迂回し、背後からギガドリルブレイクによる攻撃!!
しかし!!
「ぬっ!!」
「くっ!!」
硬い!!マジで硬い!!
正面のエンデヴァーさんの方はどうかはわからない!!
が!!しかし!!
「素手でのドリルじゃ厳しいかこれ!?」
俺のギガドリルブレイクは接触した所から少しづつ少しづつヤツの体表を削り前へと前へと進んでいた、が!!
「コイツが全速力で前に走ってる状態で!!俺だけだと貫ききれない!!」
何せかなりのスピードでターゲットが前に逃げているような状態での攻撃なのだ。十の力をそのまま十伝えるのが難しい!!
雄英高校の訓練用ロボットを苦も無く貫く俺のギガドリルブレイクだが、これでは全力をぶつけられない!!
「うぉぉぉ!!!邪魔ぉ!!!するなぁ!!!」
「うおっと!!」
武術的な洗練さなど欠片も感じられない動きで、超大型ヴィランは俺達3人にがむしゃらに手を振り回す!
しかし!!それがとてつもなく恐ろしい!!
何せ俺の身長の約15倍の巨体!!
更に個性で強化もされている!!
そんな恐ろしい破壊力を秘めた手足がぶんぶんと振り回されているのだ!!
当たれば一撃でやられるだろう!!いくら稚拙に見えたとしてもそれくらい恐ろしい攻撃!!
「だからって!!調子にのるなよ!!」
空を飛びながらその腕を掻い潜り!!
動きを止めた超大型ヴィランに脇腹に再度突撃!!
「ギガドリルブレイク!!」
「ごあぁぁぁ!!!煩い羽虫があ!!」
「うおっと!!」
先程よりは深く!!肘の辺りまでの相手の肉体を削りとる!!
しかし!!そこで敵の肘打ちが俺に襲いかかった為慌てて避難!!
「援護するよ!!まともにぶつかったら俺の羽なんて効果ないかもしれないけどさ!!じゃあこういうのはどうかな!!」
ホークスさんが羽を敵に!!大きく空いた鼻の穴!口!!耳の穴めがけて勢いよく飛ばして攻撃!!
「いくら身体の表面が硬くても!!内蔵はどうかな!!」
ホークスさんの苛烈な攻撃!!
しかも目で見えない所へ勢いよく羽を飛ばして攻撃するだなんて!!流石はホークスさん!!
「ぐがぁぉぉぉ!!!」
「おおっと!!多少は効いてるみたいですねえ!!」
身体の内側を襲う激しい痛み!!それを与えているのがホークスさんと察して、超大型ヴィランがホークスさんへ向け手を振り回す!!が!それをホークスさんが上手く掻い潜る!!
そこに!!
「赫灼熱拳!!プロミネンスバーン!!!」
エンデヴァーさんの超火力が炸裂!!
「がぁぁぁぉおおおお!!!!」
「ぬう!!」
身体の表面を焼き焦がし、ジリジリと前へ前へと侵攻するエンデヴァーさんの炎!!
それを止める為!!ホークスさんが与える痛みを全て無視し大型ヴィランがエンデヴァーさんに襲いかかる!!
その伸ばされた凶悪な手の攻撃を躱す為エンデヴァーさんは攻撃を一時中断!!慌ててその巨腕を回避する!
「こりゃ想像以上に厄介だな……」
空を飛び、奴への警戒を緩める事なく思考を巡らす。
タチが悪過ぎる!!!
「超HPと超防御力……後、命中率は低くても当たれば一撃必殺の攻撃力か……」
「エンデヴァーさんと君の攻撃は効いている……が、決定的なダメージを与える前に一撃必殺の反撃が飛んでくる訳か……それを避ける為に攻撃を中断しなければいけない……厄介だね、本当に……」
今も体内からダメージを与えながら、ホークスさんが俺たちに聞こえるようにそう言った。
……そう、この状況……かなり厳しい。
それくらい凶悪なヴィランだった。
この超大型ヴィランは。
「……状況の確認は終わったか?」
……そんな俺達の元に、エンデヴァーさんが来た。
「……状況確認が終わったのなら……後は、今出来るあらゆる手段を駆使し、奴を止める方策を考えろ……普通の連中であれば……普通のヒーローであれば状況の確認……それだけでもいい……許される……だが……だが、今この場にいる俺たちにそれは許されん!!」
ゴォッ!!
俺たち二人を守るように前に立ち……飛びながら、エンデヴァーさんは……その力強い背中で、俺達に告げる。
「状況を整理する」
超大型ヴィランを睨みながら、エンデヴァーさんが、
「必要なものは2つだ……今の状況……一件難しいようで、その2つさえあれば打開が可能だ」
そう……静かに、俺達に告げる。
「1つ目……極小の短時間で奴を貫く圧倒的な攻撃力」
……静かに……とても落ち着いた声で、
「2つ目……極小の短時間であっても、奴を足止めする能力」
……静かに……とても静かに、そんなどちらも極小ながらとびきり高難易度の要素を俺達に告げ、エンデヴァーさんが俺たち2人に振り返る。
「……簡単に言いますねえ……その2つが……その2つだけを用意する!!たったそれだけがとびきり大変な状況な訳ですが!!」
「……泣き言を言うなホークス……貴様、仮にもNo.1ヒーローだろう?」
「そうだった!!くそぉ!!!やっぱ俺No.1むいてねえ!!」
空中でとても楽しそうに地団駄を踏むホークスさん……それをとても落ち着いた顔で……しかし、強い意志を秘めた瞳でしっかりと見ているエンデヴァーさん。
その瞳を……ホークスさんはしっかりと見返し、
「……で、元No.1ヒーローには、とびっきりの何かいい方策がある……そういう事でいいんですよね?」
「ふん」
楽しそうな……どこか甘えるようなホークスさんの言葉。それをエンデヴァーさんが適度にスルーしながら受け入れている……
全く……この2人は……
「……全く……2人とも……」
「……ふ」
「あはは!全く!!真面目だねえ君はスパイラルくん!!」
「があぁぁぁぁ!!!邪魔を!!するなぁ!!!」
襲いかかってきた超大型ヴィランの攻撃を躱し、3人、目を合わせる。
なんだこりゃ!!
なんだこりゃ!!
なんなんだこりゃ!!
「2人とも!!何でそんなに楽しそうなんですか!!全然追い詰められてない!!全然絶望とかしてないじゃないですか!!」
この2人は!!いや!!俺もか!
呆れたもんでこの3人!!
敵は凶悪なヴィラン。
倒すのは高難易度!!
でも決して!! 誰一人として!!全然!辛そうな顔一つ見せていないのである!!
誰一人!!絶望していない!!
こんな!!厳しい状況なのにだ!!
「……ふっ……ヴィランがたまたまとてつもなく強い、というだけだ……周囲は廃墟で遠慮の必要も無い……この3人が揃えば……正直、どうとでもなるだろう?」
「あーあ!言っちゃいましたねえエンデヴァーさん!!もう少し引っ張って楽しみたかったのに!」
「貴様の軽口に付き合う方が疲れそうだな……早く終わらせて飯でも行くかスパイラル」
「おおっとぉ!!相変わらず!!この状況でも!!俺にだけ厳しい!!」
今もがむしゃらに手を振り回す超大型ヴィラン……凶悪な破壊力ではあるが……正直、周りに守るモノが何も無ければ……躱すだけならこの3人ならば何とでもなるのである。
だから……そう……
守るものが何も無い……ハンデ無しの状況でこの3人が集まれば……大体の絶望は……絶望くらいは、どうとでもなるのである!!
「方針を伝える」
今も超大型ヴィランの攻撃を躱しながら……エンデヴァーさんが方針を告げる。
「俺でもスパイラルでも……1人1人の力だけでは……奴の防御を短時間で貫けなかった……ならば!!」
俺としっかりと目を合わせ!!エンデヴァーさんが!!
「個性合体だ!!スパイラル!!」
エンデヴァーさんが!!叫ぶ!!
「俺の炎だけでは奴を貫けなかった!!お前のドリルだけでも奴を貫けなかった!!ならば!!俺に力を貸してくれスパイラル!!俺の炎とお前のドリル!!2つの力を合わせて奴を貫く!!俺達の力で奴を!!あの超大型ヴィランを貫くぞ!!」
そのエンデヴァーさんの力強い言葉!!
それに俺の心が燃え上がる!!
「はい!!やりましょう!!エンデヴァーさん!!」
「ふ」
行くぜ!!個性合体だ!!
燃え上がる俺たち。
そこに……
「……いーなー……楽しそうだなぁ……んで、エンデヴァーさーん!!エンデヴァーさーん!!俺の!!俺の!!暫定No.1ヒーローである俺の役割は!!」
「……決まってるだろう。奴を……奴を足止めするのが貴様の役割だ!!俺たちが奴を仕留めきるまで足止めするのが貴様の仕事だホークス!!」
「No.1なのに役割が地味ぃ!!」
またも器用に敵の攻撃を躱しながら空中で地団駄踏むホークスさん……いや本当に余裕あるなこの人……
そして……
『こちら!!司令部のファントムシーフ!!エンデヴァー!ホークス!!スパイラル!!聞こえていますか!』
インカムから、物間の……ファントムシーフの声が聞こえてくる。
『敵の!!トランペットの個性をコピーしました!!……正直!!スパイラル以外は初対面の僕を信じてくれ!!というのは難しいかもしれません!!でも!!でも!!今だけは!!今だけは僕を信じてください!!必ず!!必ず僕が!!御三方に力を!!御三方のフォローしてみせます!!』
その物間の……遠くにいながら必死な声に、俺たちを代表し、エンデヴァーさんが答えた。
「ファントムシーフ……確か、今回の脚本を書いたのは貴様だったな?」
『……はい!!』
エンデヴァーさんは一瞬目を閉じ、そして、
「俺を囮に使った手腕……実に見事だった。俺も……俺以外の全員も、今さらお前の能力を疑う事はないだろう……それだけの実績をお前はすでに積んでいる。今さら謙遜するなファントムシーフ!!俺たちはすでに!!お前の事を信じている!!存分にやれ!!ファントムシーフ!!」
『……はい!!』
そして!!物間が叫ぶ!!
『エンデヴァー!!ホークス!!スパイラル!!ここが分水嶺だ!!この後に起こり得るかもしれない悲劇!!その全て!!その全てを防ぐ!!今!!貴方達は!!貴方達3人は!!そんな奇跡のような分水嶺に立ち会っている!!』
……その物間の言葉……インカム越しのその言葉に、何故か不思議だが……身体の奥底から力が湧いてくる!!
個性・扇動!!!
演説を聞いた人の!!演説をする人への信頼やら何やらでバフをかけるという強個性!!
『起こり得る悲劇を止めてくれ!!誰も悲しまない方が良い!!誰も死なない世界の方が幸せじゃないか!!だから!!だから!!ここで奴を!!奴を倒してくれ!!僕たちは全力でフォローする!!だから!!だからスパイラル!!回原!!』
そこで一拍。そして!!
『だから!!だから回原!!行け!!君のドリルで運命を貫け!!』