回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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もうすぐクリスマス!!

泥花市の件も……少なくとも俺に関しては、であるが、少し落ち着いた頃にはもうクリスマスが間近に迫って来ていた。

 

「せっかくだし皆でクリスマスパーティーしようよ!!」

 

というクラス委員長である拳藤の声かけで寮の1階でクリスマスパーティーをすることが決定。

まあ当然だけど反対するヤツなんていないわなこのメンツで。

トンガリに聞いた所A組もA組でやるらしい。

まあ皆同じようなこと考えるよね。寮生活なんてしてるとさ。

 

パーティーでは俺の麻婆豆腐が出禁を食らうなど一波乱はあったのだが、まあトントンとパーティーの準備は進む。

 

そして『プレゼント交換とかしたいよね面白そうだし』という意見への賛同も多かったのでプレゼント交換が決定。

 

休みの日に予定合うやつ皆で外出許可を取り、雄英近くのショッピングモールへと繰り出す事になったのだが……

 

 

「うわぁぁ!!スパイラル!!スパイラルだ!!」

「子どもが大ファンなんです!!是非サインを!!」

「一緒に写メ撮ってくれませんか!!」

「これ私の連絡先です!!良かったら連絡ください!!」

 

 

 

まさか……まさかこんな事になるとはなあ……

 

 

「サインありがとうございます!!」

「写メありがとー!!」

「いえこちらこそー!!これからも応援よろしくお願いしますー!!」

 

……慣れないファンサをなんとか疲れながらもこなしようやく一段落。マジ疲れた……。

 

「……福岡でも目立ってたし、今回の泥花市でも目立ってたからね君は……はいこれ変装用の帽子と伊達眼鏡。念の為と思って用意してたけど、無駄にならなくて良かったというべきか何というべきか……って感じだねこれは」

 

「物間か……なんか悪いな」

「いいさこれくらい」

 

……どうも自覚はあるのだが……ここ最近の出来事で俺は大分目立ち、名前と顔が売れてしまったようだ。

当然、それは正直嬉しい事でもあるのだが……プライベートでの友達達との買い物でこうも騒がれると……なかなか心中は複雑なものがある。

ファンからの好意は正直言って嬉しい。

しかし……しかし、これプライベートとかしんどいなぁ……

 

周囲を見ると物間以外にクラスメイトはいない。まあ俺がファンサが長くなりそうだから先に行ってくれ、と言ったから当然なんだけど。

 

物間から受け取った帽子と伊達眼鏡で軽く変装した俺を、物間はじっと見ながら、

 

「……ま、これもトップを走るヒーローが背負うべき責任って事なんだろうね。エンデヴァーも言ってただろう?君は、もう自分がそういう立場に立っているのだと……そういう自覚を持つ必要がある場所に立っているのだって、つまりはそういう事だよ。逆に考えよう。今日、こうして早めに気付けて良かったじゃないか。女の子と2人でデートしてる時にこんな事になったらもっと大変だったんだしね」

 

「……まあ、そう言われるとそうだなあ」

 

おっしゃることご尤もである。

 

トップヒーローに集まる視線。それに注意する必要性はエンデヴァーさんに教えてもらったばかりだ。

 

だったら、だったら今回のこれは俺の思慮不足から起こった事故みたいなものなんだろうなあ。

今後気をつけないと。

 

そんな事を考え込む俺を見て物間は笑い、

 

「……ま、お互い多くの人の目に晒される立場になると大変だね回原……じゃあ、僕はちょっとナンパ行ってくるね」

 

「物間さん物間さん……何やら前後の話の流れをぶった切っておりませんかなそれは……」

 

はっはっは!!なんて笑いながら去っていく物間を見送る。

 

「……まあ、元々プレゼント交換のプレゼントを誰かと相談しながら買うのはどうよ?って話もあるしな……」

 

……そう1人呟いて、俺はショッピングモールを1人寂しく歩き出した。

 

……せっかくクラスの皆と来たのになあ……寂しいぞクスン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『予算は1000円くらいな!!それで誰のプレゼントが一番センスいいか決めようぜ!!』

 

この手のイベントを全部競争事にしたがるのは鉄哲であるが、まあ皆面白がってその意見に賛同。

よってこれは俺の大好きな勝負である。

 

勝負事である以上負けたくない訳だ。まあそれなりに何を買おうかとかは考えている。

 

無難なのだと食べ物とか飲み物みたいな飲食関連かなあ?

 

なんて、漠然と考えてはいた。

 

正直小物とか選ぶセンスは無いのよね俺。

マジほんとその方面はマジ無理ゲー。

ならば自分がめっちゃ美味そうとかそういうもの選んだ方が勝機があると思うのだ。

 

んでそういう方面に注目しながらショッピングモールを歩く。

ぶらぶらと歩き、ぶらぶらと気になる物を見ながら。

変装のおかげかな?あれ以来俺に気がついて声をかけて来た人はいなかった。おかげでのんびりと見て回れる。

 

そして……

 

「コーヒーとか紅茶……後は雑貨の店か。なんか皆と被ってそうだけど、良いのありそうだなここ」

 

ショッピングモールをぶらぶらとしながら気になった店に入った。

そこには、

 

「……あれ?拳藤?」

「……ん?ああ、回原か……帽子と眼鏡で一瞬わからなかったよ」

 

その店には、1人真剣な顔でじっとコーヒーミルを見ている拳藤がいた。

 

その手にはプレゼント交換用らしき何かの買い物袋。

どうも交換用らしき買い物を早めに終えて、空いた時間で自分の趣味の物を見に来ていたようだ。

 

「そっか。コーヒー好きだもんな拳藤は。コーヒーミルで豆からコーヒー淹れるのって何かロマンあるよね」

 

俺のその言葉に彼女は笑い、

 

「そゆこと。バイクも買いたいからあんま無駄遣いは出来ないんだけど……今は雄英の寮からあまり外出とかも出来ないからインターンでお金は貯まるし、こういう趣味もいいかなと思ってさ」

 

拳藤はコーヒーが好きで、前まではおすすめの喫茶店とかに一緒に行ったりもしてた。あれぐらいコーヒー好きなら自分で豆から挽くコーヒーとかも淹れたくなるよねそれは。

 

……ふむ……コーヒーミルか……

 

ふと、自分の指先をじっと見る。

 

「……何考えてるか大体わかるけど、それはやる気ないからね回原……コーヒーミルの代わりにアンタのドリルなんて使ったら、コーヒー豆の風味とかも全部貫いちゃいそうじゃん」

 

呆れた感じの顔と声。

 

「……ちょ、調整とか頑張るし……」

 

「……アンタ基本やり過ぎタイプだからなあ」

 

「……しゅ、修行すれば多分なんとか……」

 

「……もう!!こんなのに負けず嫌い発揮して張り合うんじゃないよ全く!!コーヒーミルと張り合うより他にやる事あるでしょ回原は!!」

 

「はいぃ……」

 

「もう」

 

そんな感じで楽しく2人で話しながらコーヒー関係の雑貨を色々見たりする。

 

拳藤は取りあえず安いので一式道具を揃えてみる気らしく、スマホで必要な物を確認しながら買い物かごにそれらを入れていく。

 

……まあ、その買い物かご持ってるのは俺なんですけどねえ……

 

……ま、俺も楽しいから良いけどさ。

 

そして2人でコーヒーカップが並ぶ棚の所に来た。

 

「……せっかく豆からコーヒー淹れるならさ……飲む器もこだわりたいよね」

 

「まあそれはわかる」

 

「……回原はどういうコーヒーカップが好みなの?」

 

「いやそれが……あんまこだわった事なくてな」

 

「そんなの私もおんなじ様なもんさ。ここにあるのだとどんなのが好みなの?」

 

「ううん……」

 

そう言われて、棚に並ぶ多種多様なコーヒーカップ見る。

正直あんま派手なの好みじゃないのよね。

 

ここにあるのって全部オシャレ!!みたいな感じなんだもん!!

 

正直俺の苦手なタイプ。

 

あんまこういう綺羅びやかなのはなあ……そう思いながら棚に並ぶコーヒーカップを見ていると、とある一つのコーヒーカップで目が止まる。

 

「……あ、これか……うん、何か回原らしいね」

 

「……気づくの早くね拳藤さんや?」

 

「そう?アンタにしてはわかり易すぎただけじゃないの?」

 

そう言って拳藤が手に取ったコーヒーカップ。それは土色の色合いの強い、和風の陶器製のコーヒーカップだった。

 

何焼きとか多分あるんだろうけど知らん。 

 

まあでも俺好みの感じだった。

 

「……こんだけ色々華やかな色合いのコーヒーカップがある中でこれ選ぶのがアンタらしいよね」

 

……そう言って、拳藤はそのコーヒーカップを゙買い物かごに入れた。  

 

「ん、買うのかこれ?」

「うん」

 

彼女の買い物はこれで終わりらしく、そのままレジへゴー。

 

「会計してくるからその辺の見ててよ。自分の買い物あるんでしょ?」

 

「まあな」

 

そう言ってレジで別れ、会計する拳藤を置いて商品が並ぶ店内に戻る。 

……さて、プレゼント交換何にしよかな?

 

そんな感じで色々見ていると、会計が終わった拳藤がこちらに来て。

 

「……はい。回原、これ」

 

……そう言って、一つだけ分けられた買い物袋を俺に渡してくる。

それは……

 

「……さっきの、コーヒーカップ?」

「そ」

 

……その中には、さっきまで一緒に店内ぶらぶらとしていた時に、俺が好みと言ったコーヒーカップが入っていた。

 

まじ?まさか買ってくれたの?

そんな感じの、何で?……みたいな感じの俺の視線を受け彼女は、

 

「これまでもずっと武術の訓練付き合ってくれただろ?まあ、これはそのお礼みたいなものかな」

 

「んーそっか……」

 

まあ、そう言われるとなあ……

 

個人的にはもらってばかりは苦手なんだけど……

 

今俺はコーヒーカップをもらった。

ならば俺も、

 

「なあ拳藤、あのさ」

 

ならば俺も彼女にコーヒーカップとかお返しでプレゼントするべきでは?

 

「ダメ。それはまだ買ってもらう理由がないから」

 

そんな俺の考えは、即、彼女に否定される。

 

彼女は……拳藤は、とてもとても静かな目で俺をじっと見ると。

 

「あくまでこれは日頃修行に付き合ってもらってるお礼だよ。なのに……なのに、なのにそれにお返しなんてもらえないだろ?理由もないけどちょっとした贈り物を贈る……そんな関係じゃ無いでしょ私達さ」

 

「…………」

 

……そう、踏み込んだ。

 

「だから……だから、もしアンタが……回原が私と……私とそういう関係になってもいいなら……その時、また一緒にコーヒーカップでも何でも買いに行こうよ。お互いに贈りあおうよ。それまでは……それまでは、私はそういう物は受け取らないの」

 

「拳藤……」

 

眼前のとても美しい女の子。

そんな彼女の、とてもとても真摯なその言葉。

 

「……ベタだけどさ……私は……私は……アンタと一緒に雄英高校卒業して……一緒にヒーローになって……活躍して……昼間はヒーロー活動をお互い一生懸命に頑張ってさ……夜は、夜は……私が淹れたコーヒーをお互いの選んだお気に入りのコーヒーカップで一緒に飲むみたいな……そんな、そんな……そんな事を夢に見るんだ」

 

「…………」

 

拳藤という……とびきり素敵な女の子。

 

「……だから…だから、もしも私を選んでくれるなら……その時に、その時に一緒にまたここに来ようよ。それまでには私もバイク買っておくよ。一緒に横に並んで……正直アンタはスゴイけどさ……私も頑張るから、一緒に隣に並んで、一緒にコーヒー飲めるように頑張るから……もしそうなったら、またコーヒーカップを一緒に買いに来よう」

 

とてもとても真摯なその言葉。

俺はそれに。

 

「……もしもそうなったらさ……別に、コーヒーカップでなくても……もっと高くていいものとかでもいいんだぜ」

 

……そう、そう答えるしかなかった。

正直まだ自分の思いを……全て整理し切れていない。

そんな情けない俺の言葉。

 

そんな情けない俺のその言葉……

それに、彼女は、

 

「別に高くなくてもいいんだよ」

 

そう、とてもとても綺麗に、優しく笑った。

 

「回原と一緒なら。貴方が特別に私の為に選んでくれたものなら……それだけで……それだけで私はいいんだよ。本当にそれだけでいいんだから」

 

そう、とても美しく笑った。

 

……こうして今日は終わる。

 

「あ!!!!!回原と拳藤いるぞ!!」

「峰田……そこはスルーする所ようらめしい……」

 

 

他のクラスメイト達と合流したので、まあこの話はこれで終わり。

 

お互い名残惜しさはある…、がここで終わって良かったのかもしれない。

 

一気に結論を、勢いに任せて出すのも……それはそれで失礼な気もするし。

 

 

こうして今日は終わりました……そして、寝る前に気づく。

 

「……あ、プレゼント交換のやつ買ってねえや俺……」

 

 

 

そうして今日は終わった。

後日、間抜けだが1人買いに行く事になったのは……まあ御愛嬌という事で許して欲しい。

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