「回原テメエ!!何拳藤自分で投げておいて自分でお姫様抱っこで助けてんだよ!!マッチポンプじゃねえかコラ!!!拳藤柔らかかったですかオイラにも教えてグエ!!」
「やめろ!私も恥ずかしい!」
モニタールームに戻ると、講評より先に峰田の嫉妬が火を吹き、速攻で拳藤に殴られていた。
一応心の中で回答しておくと、柔らかかったですよん。
何をとは言わないけどね。
口に出したらまた殴られそうだしさ。
「ん」
さっきから小大は不機嫌である。
ヤレヤレだ。
「見事だったぞヴィラン側の2人!黒色少年の個性を警戒し、自分達の有利な場所を勝負のポイントに設定した判断が素晴らしい!小大少女の個性を上手く活用していたね!実に良かった!!回原少年も無傷でヒーローを確保していたな!見事だったよ!」
「ヒーロー側も作戦は良かったぞ。ただ、回原が少々規格外だったな。ただ『自分1人で強力なヴィランを抑えられない』という状況は今後も出てくるだろう。そういった際の立ち回り方を考えるいいケースだったな。今後に活かすように」
オールマイトのお褒めの言葉を頂く。
グレンラガンに憧れたとはいえ、オールマイトも当然好きだ。
なので正直にめちゃくちゃ嬉しかった。
「頑張って良かったな、小大」
「ん」
2人で喜びを噛み締めた。
そうして残りの対戦が終わった。
「…本来であればこれで授業は終わりだ。だが、すまないが回原と小大は残ってくれ。相澤も呼んだので、先ほどの不思議な現象を調べたい」
ブラキン先生の言葉。
願ったり叶ったりである。
俺だって先ほどの現象は気になっている。
先生立ち会いで検証出来るなら大歓迎だ。
「先生!!俺達も残って見てていいですか!!」
鉄哲がそう言う。
その言葉に皆が頷いていた。
先ほどの現象を見て俺を心配してくれたのかな?
クラスメイトがそう言ってくれるなんて。
ありがたい。
俺はいいクラスメイトを持ったと思う。
「…そうだな!よし!皆で特別授業と行こうか!」
ブラキン先生が少し涙腺ウルッとさせながらそう言った。
こういうの好きそうだもんな先生。
俺も好きだけどさ。
先ほどの対人戦闘訓練の講評を皆で更に掘り下げて話していると、やがて相澤先生が来てくれた。
相澤先生の個性は抹消。
自身が見た人間の個性を消す事が出来るらしい。
万が一俺が危険と判断したらすぐ止める為だそうだ。
ここまで配慮してくれるのだから、やっぱいい先生だわブラキン先生。
「…事情は軽く聞いた。早速だが回原、先ほどと同じ事をやってみろ」
相澤先生とブラキン先生、クラスメイトが見守る中、俺は手元のコアドリルを先ほどの要領で同じ事を試みる。
…うーん…何かしっくりこない。
小大の個性が力を失い、小さくなったコアドリル。
それに対し、俺は先程の感覚…自分の体の延長のように個性の力を伸ばす感覚を持てなかった。
「…出来ないのか回原」
「…はい」
相澤先生の問に正直に答える。
「確か先ほどは小大の個性で大きくしたドリルでやっていたな。小大、ドリルを大きくしてみてくれ」
「ん」
小大が個性で俺のドリルを大きくする。
それを受け取ると。
「お!これは!」
「出来そうか?」
「はい!」
先ほどと同じ感覚だ!!
俺の個性 旋回の力。
腕や脚を回す為の力。
その力をドリルまで伸ばすイメージ。
回転を司る、螺旋の力。
…まるでグレンラガンに出てくる螺旋力だな。
DNAに二重螺旋構造を持つ生命体に秘められた神秘の力。
信念と気合があれば無尽蔵にエネルギーを増幅出来る力。
生物の進化を象徴するエネルギーであり、グレンラガン作内で物理法則すら超越した無茶苦茶な変形合体の元となる力である。
いやこれマジで螺旋力じゃん…
なんて事を考える。
その螺旋力(仮)を、俺は小大が大きくしてくれたドリルに伸ばす。
瞬間!カッ!と先ほどと同じ光が手元で広がる!!
「「「「「「「「おおおおお!!!!」」」」」」」」
光が収まると、そこにはドリルと一体化した俺の手があった。
「成功したようだな。回原どうだ?体調が悪くなったりしていないか?」
「……大丈夫です。先ほどと同じく体調に問題はありません。ドリルも自分の体の一部のように馴染んでいます」
これは本当だ。
俺の体の一部のように、ドリルは馴染んでいた。
体調にも変化はなかった。
「……よしわかった。とりあえず一度先ほどと同じくドリルを手から外す?外すでいいのかわからんが外してみろ」
ブラキン先生の言葉に従って、ドリルと俺の体を結ぶ力を解除する。
すると…
「ドリルと手が分かれたな」
「ああ…非合理的だが、今目の前で起こっている以上受け入れるしかないだろうな」
俺の手は元の手に戻り、ドリルもまた大きいだけのただのドリルになっていた。
「回原。何でもいいから気付いた事を言ってみろ」
「はい」
相澤先生の問に従って答える。
最初の小さいドリルの時は何も感じがなかった事を。
小大がドリルを大きくしてくれたら、ドリルとの間に不思議な感覚を持った事を。
その感覚に従って、自分の個性を伸ばして繋ぐイメージで個性を使ったら、手とドリルが一体化していた事を。
「普通の物には反応せず個性に反応したのか?」
「そう感じました」
「ふむ…」
相澤先生は少し考える。
「ブラド、お前の個性を回原に伸ばしてくれ」
「わかった」
ブラドキング先生は血を操る個性。
相澤先生の言葉に従い、その個性を、ゆっくり俺に向けて血を伸ばした。
「回原、ブラドの個性にも何か感じるのか?」
「……はい、感じます」
確かに感じる。
先程の、ドリルと同じ感覚を。
「いいなブラド」
「かまわん当然だ。試してみろ回原」
「はい!いきます!」
先ほどと同じように。
ブラド先生の伸ばした血に触れて、俺の個性の力を伸ばして繋ぐイメージで!!
「「「「「「「おおおお!!!」」」」」」」
血が、ドリルのように回転していた!ちょっとわかりにくいけど!
俺の手足と同じように!!
「血のドリルだな…ブラド、体調などに異常はないか?」
「……ああ、何も問題ないな。回原、今の状態を維持出来るか?少し動かしてみたい」
「大丈夫です」
ブラキン先生はそのまま回転している血を色々操作した。
回りながらぐにゃぐにゃと血が動く。
「……血の操作は俺がするみたいだな」
「……回転スピードだけを俺が操作してますね」
色々2人で試し、そう結論づけた。
「しかし不思議な力だ…合体…個性が合体するような…個性合体とでも呼ぶべきか?初めて聞く類の力だな」
「不思議だが、実際今目の前で起こってる事象を否定する方が非合理的だな。そもそも、手足をドリルみたいに回転させて竜巻起こす時点で非合理的だしな。出来るものは出来る。そういった個性なんだろ」
あ、言っちゃった…
まあ、手足回転させて竜巻起こすってなんなのさ!
って話ではある。
「他、もう少し試してみたいところだな…そうだな、骨抜。この辺りを少し個性で柔らかくしてみろ」
「はい、わかりました」
骨抜が前に出て、床を少しだけ柔らかくした。
「回原、行けるか?」
「……行けそうですね」
「よし、やってみろ。不味そうなら俺がすぐ個性で止める」
骨抜の柔らかくした地面に触れて、俺の力を伸ばす、
すると…
「スゲェ!!柔らかくなった地面がまるで機械で混ぜられてるセメントみたいに回転してやがる!!!」
「これはスゴイな…」
「ああ、正直今すぐプロの現場でも使える組み合わせだ」
先生2人のコメント。
確かに、骨抜が広範囲の地面を柔らかくし、その地面を俺の旋回で回転させられるなら、空を飛べないヴィランはひとたまりもないだろう。
骨抜と思わず顔を合わせる。
お互いにやりと笑う。
…どうやら、卒業してからもコイツとコンビを組むことは多そうだ。お互いそう考えたと思う。
「他は…」
「あ、先生!!良かったら私が!!」
拳藤が手を挙げて名乗り出る。
相澤先生は少し考えて。
「……確かに、そのパターンの検証もいるか。よし、やってみろ。ただし、危険と判断したらすぐ止めるぞ」
「はい!!やるよ回原!!」
拳藤は自分の手を大きくし、俺の前に差し出す。
……うーん…何だろ…少し違和感が…
さっきと少し違う気がする。
「……回原?」
「……ああ、悪い。とりあえず試してみるか」
拳藤の大きくした手に軽く触れる。
だが…
「……何も変わらないね」
「少し違和感あったんだよな。出来そうで出来ない予感というか…こうじゃない感というか…」
俺の言葉を聞いたブラキン先生が、
「……ならば、逆に拳藤の大きな手を回原の…例えば肩に置いてみたらどうだ?」
その言葉に拳藤が俺の背後に回り、肩に手を置いた。
お!
「行けそうです!」
「よし、やってみろ」
拳藤の手に力を伸ばす。すると!
カッ!と光が俺の手元から溢れる!
光が収まると、
「回原の手が大きくなっているな」
そう、俺の手が大きくなっていた。
対称的に拳藤の手は小さくなっている。
「拳藤の手の大きさよりだいぶ小さいな」
相澤先生のコメント通り、俺の大きな手は、当初の拳藤の手の大きさよりサイズが小さかった。
「拳藤が手を置く場所で変わるのか?肩と手は遠いしな。試しに掌近くの腕を触って試してみろ」
その言葉通りに同じようなテストをしたら、さっきより大きな手になった。
どうやら、掌との距離で俺の手のサイズが変わるらしい。
後は両手で片手を掴むテストもする。
元の拳藤の手より大きな手が出せた!!
拳藤との結果をまとめると。
拳藤が個性を使い俺に触ると俺の手が大きくなり、拳藤の手は小さくなる。
手に近い所を触るほど元の拳藤の手のサイズに近い大きさになる。両手で触ると更に大きくなる。
拳藤が俺に触るのをやめると、手は元のサイズに戻る。
「……色々わかったが、とりあえず今日はこんなものか」
試すうちに結構時間が経っていた。
確かにそろそろ締めの時間という感じ。
「回原、お前は最後に試してみたい事はあるか?」
ブラキン先生の言葉。
最後に誰かと試して、それで締めとするらしい。
そうだなあ…
個性合体…で、いいのかな?
誰かの個性と俺の個性を合わせ、全く別の力とする。
「そうですね…俺は…」
クラスメイト達の顔を見る。
誰一人帰らず、俺を心配して残ってくれた優しいクラスメイト達を。
その中の、1人。
…彼女と目があった。
「取陰、最後頼めるか?」
「私?いいけど私でいいの?」
取陰が前に出る。
「「「「「「あ!!!!!!」」」」」」
「え!?な、何!?」
気付いたのか、男子生徒達が声を上げる。
その声に驚く取陰。
「……大丈夫だ。すまないが俺の肩に手を置いてもらえるか?」
「……いいけど、あんま変なことはやめてよ」
急にテンション上がる男子達、ブラキン先生含むそれに気圧されながら俺の肩に手を置く。
……行ける!
行けるぞ!行ける!!
取陰の手に力を伸ばし、繋ぐ。
「回原あぁぁ!!!!」
物間が、叫ぶ!!
「回原ー!やるんだな!?今…!ここで!」
ふっ…とその物間に笑って答える。
同時に、右手を前に突き出す。
そして、旋回で回転させる!!!
さて、それでは皆さん!!ご唱和お願いします!!!
「「「「「「「ドリル!!!!」」」」」」」
ぎゅんぎゅん回転する手。
皆が前に体を乗り出し、
「「「「「「「ロケット!!!!」」」」」」」
叫んだ!!!!
「「「「「「「「パァーンチ!!!!」」」」」」」」
その叫びとともに俺の手が回転しながら飛んでいく!!!
うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
スタンディングオベーションであった。
何ならブラキン先生も込み。
相澤先生ですら手元でこっそりガッツポーズしていた。
ドリルロケットパンチ。
ロケットパンチですらロマンだ。
それにドリルがついたらもうたまらない。
男達の大喝采である。
今、この瞬間、全員の気持ちが1つになっていた。
湧き上がる男達。
シーン…と冷めた目でそれを見る女子達。
「……私さ、悪いんだけどクラスの男連中は皆いい奴だけどガキだなーって思ってたんだけど」
背後から、取陰の冷めた声。
「違ったわ。男って幾つになってもガキだわこりゃ」
そんな事を言われました。
でもいいじゃんドリルロケットパンチ。
男のロマンである。
後悔はなかった。
多分、男なら皆そう思うと思う。