「あれ?ねぇねぇ不思議不思議!!今からどこかに出かけるのオールマイト?ねぇねぇ何処に行くの?不思議不思議!?」
「おや波動少女と回原少年か」
クリスマスパーティーが夜に控えるお昼休み。
学校の敷地内をねじれ先輩と並んで散歩していると、車のキーを指に引っ掛けて何処かに出かける様子のオールマイトさんに出会った。
「うん……ちょっと野暮用でね……ああ、それで思い出したよ回原少年。遅くなってしまい申し訳なかったけど、私は君にお礼を言わなければいけないと思っていたんだ」
「オールマイトさんが俺に?」
「えー!!オールマイトが旋くんにお礼するの!?なんでなんで?不思議不思議!?」
ねじれ先輩の反応ご尤も。
俺だって不思議不思議である。
何せお礼をされるような事に全く心当たりがないのだ。
「うん。そうだね。少し私の事情で説明しにくい所もあるんだけど」
そう言うと、オールマイトさんは俺にペコリと頭を下げ、
「泥花市で死柄木弔を止めてくれてありがとう回原少年……彼はね、私の恩人の……お師匠と呼べる人のお孫さんなんだ」
ああ!そう言えば神野区の事件でそんな話も聞いた気がするな!!
「顔を上げてくださいオールマイト!!あれは俺だけの力じゃなくて!!エンデヴァーさんとか皆の成果ですよ!!」
「当然、それはわかっているつもりだよ回原少年。でも……だけど、君が最前線で活躍したという話も聞いている。真っ先に君があの場で死柄木弔の前に立ちふさがったからこそ、あれ以上の被害は抑えられたと私は思うんだ。私の恩人のお孫さんが、恐ろしい破壊の力をあれ以上使うのを防いだ……その立役者は間違いなく君だよ。だから、私は君にお礼を言いたい。本当にありがとう回原少年」
そう言われると……まあ、ね…、
それに正直嬉しい気持ちもある。
あのオールマイトにお礼を言われるだなんて……なかなかあるもんじゃないしね!!
「ねぇねぇ!!スゴイスゴイ!!オールマイトにお礼言われるだなんてなかなかないよ!!頑張って良かったね旋くん!!」
「ですね。顔を上げてくださいオールマイトさん。貴方の為に何か出来たなら俺も嬉しいです」
今まで人々の為に頑張って来たオールマイトさん。
その彼の為に何かができたなら、それは今までの彼の貢献に対する恩返しみたいなものだ。
少しでも恩返しが出来たのなら嬉しい。
「そうか。そう言ってくれるか。ありがとう……と、はは!!これではキリが無くなってしまうね!!うん。実はこの後死柄木弔と面会の予定なんだ」
「死柄木弔とですか?」
オールマイトさんはとても穏やかな顔で、
「うん……ヒーローは身体だけでなく、心も救ってこそヒーローだと思うんだよ私は。この身体ではもう戦ったりする事は出来ないけれど……死柄木弔に寄り添って、彼の心を少しでも救えるなら……それなら、今の私にも出来るんじゃないかと思ってね。こうして誰かと寄り添ってじっくり長い時間をかけて誰か1人を救う……というのはこれまでやったことないんだけどね。お師匠への恩返しになるとも思うし、じっくりと死柄木弔に寄り添ってみようと思ってるんだ」
ヒーローを……この世界を憎む死柄木弔に、ヒーローの象徴であったオールマイトさんが寄り添う。
……それはきっと簡単な話ではなくて、これから数々の苦難があるのだろう。
決して良いことばかりではなくて……逆に辛い事が多いと思う。
しかし……それでも、この人はそうすると決めたのだろう。
「……やっぱり、オールマイトさんはオールマイトさんですね」
この強さは、やはり俺たちが憧れたオールマイトさんの強さだ。
肉体でなく心の強さ。
それはまだ一欠片も衰えていないのだろう。
「はは!!そう言ってくれるか!!ありがとう回原少年!!って!!これだとまたお礼を言うばかりになってしまうな!!面会の時間もあるし、私はこれで失礼するよ!!では!デートの邪魔してすまなかったね2人とも!!また授業でよろしく!!」
「はい、また」
「またねー!!」
そう言って去っていくオールマイトさんを2人で見送る。
「ねぇねぇ!!旋くん旋くん!!デートだって!2人で歩いているのデートに見えたって!!」
オールマイトを見送ると、くるりとねじれ先輩がこちらに振り向き、とてもとても嬉しそうな笑顔を向けてきた。
「みたいですね」
「ねぇねぇなんでだろうね!!不思議不思議!!別に腕組んだり手をつないだりしてる訳じゃないのにね!!うん!不思議不思議!!」
そう言って俺の隣でくるくる回りながら先輩は笑う。
本当に妖精みたいな愛らしさである。
「あ!そうだ旋くん!!」
少し俺の前に回りながら進んだねじれ先輩は、突如ピタッ、と止まり。
「じゃーん!!見て見て!!」
来ていた冬物コートを脱ぐと、その下に来ていた衣装を見せてくれる。
「おお!良いですね!!サンタコスですか!!」
「うん!!あれ?コートの中に確か帽子も……あ!あった!!これを被って……うん!これで完璧!!」
目の前に完璧に可愛いミニスカサンタのコスプレをしたねじれ先輩が立っていた。
「うん。目茶苦茶可愛いですよねじれ先輩」
「本当!!良かったぁ!!夜はうちのクラスもパーティーするから会えないし、先に旋くんに見せたかったの!!」
そう言ってとても幸せそうに笑うねじれ先輩。
スーパー眼福な光景である。
峰田とかは金払っても見たいと言いそうなレベルであった。
「ううー!!でも寒いぃ!!もうダメ!!コート着るね!!」
残念だけどコートを着てしまう。まあ冬だし仕方ない。
でもわざわざ寒いとわかってても見せに来てくれたんだろうなねじれ先輩は。その気持ちがとても嬉しかった。
「ありがとうございますねじれ先輩」
だから、ちゃんとお礼を伝える。
ねじれ先輩はとても嬉しそうに笑って。
「私が見せたかったから良いんだよ!!」
その後は適当に自販機で温かい飲み物買って飲みながら、2人でもう少しだけ散歩した。
んで夜。
「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」
「ん」
寮でクリスマスパーティーが始まった。
テーブルにはデリバリーした各種豪華な料理。
俺も小大に手伝ってもらい数品用意している。
「んん!」
「ナスとトマトのチーズ焼きが美味くない訳がないんだよなぁ!!!」
「熱っつ!!美味!!」
なかなか好評なようで何よりである。
「回原。コーヒー淹れたけど飲む?」
「拳藤か。ありがとうもらうわ」
拳藤が近寄って来てコーヒーをくれる。
皆に合わせてミニスカサンタのコス。とても可愛い。
「……あれ?これもしかしてこの前買ったやつで淹れてくれたの?」
「うん!!あれから何度か練習してみてね!!かなり奥が深くてハマっちゃいそう!!」
そう楽しそうに笑う。
「ん」
「ああ。料理取って来てくれたのか。ありがとうな小大」
「ん」
いくつか料理を皿に取り分けて小大が持って来てくれた。
こちらも皆に合わせてミニスカサンタコス。当然可愛い。
ちなみに興味無いかもだけど、俺も軽くサンタコスをしている。
はい、興味ないですよね。知ってる。
「……もうすぐ今年も終わりかあ。なんだか色々あり過ぎて信じられないね」
「そうだな」
「ん」
「確かに!!唯の言う通りだ!!年明けて2月になったら!!私たちが出会ってちょうど1年になるんだね!!」
「ああ!!確かにそうだな!!」
「ん」
「……そうだな。あの試験からもう1年かぁ……なんか色々あったな本当に」
「あっという間な感じがするよね」
「ん」
そんな感じでしばらく3人で話す。
サツバツ!!みたいな事を期待する人もいるかもなのだが、ジッサイそんな事は無い。
俺も小大も拳藤もその辺は落ち着いて考えてるし、クラスの皆もなんとなくわかりながら見守ってくれている。
「これからも……こうしていれると良いんだけどな……」
「……うん、そうだね……」
「……ん」
そのこれからが……いつまでを指すのかは3人ともわからない。
……でも……出来ればこの心地良い空間をこれから先もずっとずっと続けたいってのは、俺のワガママなんだろうか……うん、冷静に考えるとワガママですわ……ワガママなんだよなぁ……
……でも、それが偽りの無い俺の気持ちであった。
ねじれ先輩の告白から今まで色々考えて来ていたけれど。
正直な俺の本音はそれである。
とてもとても都合の良い、男の身勝手な気持ち。
受け入れてもらえるかはわからないけれど。
3人にも。
世間にも。
「よっし!!んじゃそろそろプレゼント交換するか!!」
料理食べながら話しているうちに、どこからかそんな声が聞こえて来た。
「ふっふっふ……オイラ厳選の特選プレゼントだぜ……スゲェもん見せてやるよ!!」
意気込む峰田。
正直男子高校生的には予算1000円で峰田が選んだ特選セットに心惹かれる気持ちはあるのだが。いや本当に峰田はマジで何を選んで来たんだろ?
が、それを言ってしまうとクラスでの人権レベルが著しく低下するという事はわかっている。
だから皆口に出しては言えないのだが……
「……」
「ん」
両脇のサンタコスした美少女クラスメイト2人にジト目で睨まれている。いえいえ何でもないですよん。なのでお気になさらず。
「……峰田が何選んできたのか……正直興味はあるんだよなぁ……はっ!!」
「はい円場ダウト」
「くっくっく……奴は俺達B組常識人3人衆の面汚しよ」
だがしかし間抜けは1人見つかったようだ。
クラス女子全員の冷たい目線が円場に集中する。南無。
「一応峰田のプレゼントにはこのブドウのシール貼るからな。女子がもし当たったら一番近い男子と交換していいぞ」
「流石骨抜!!」
「素晴らしい柔軟性!!」
「相変わらず出来る男ノコ!!」
クラス女子の喝采を浴びる骨抜。
「何でだよぉ!!オイラのプレゼントを受け取った女子がどんな反応するか!!それが見たいんじゃねえかよぉ!!」
「峰田氏……それはマジもんのセクハラですぞ……」
「全く……峰田は相変わらずだなぁ」
「もう少しすると1年経つのにね」
「ん」
3人顔を合わせて笑い、そして俺達も皆の輪の中に混ざっていく。
そんなこんなで今年のクリスマスは楽しく皆で過ごした。
途中、ブラキン先生に連れられてエリちゃんが顔を出してくれた。
「先生……エリちゃんの角……少しづつ大きくなってきてませんか?」
クラスの皆……特に女子に囲まれ楽しそうなエリちゃんを見て、ふと気になった事を先生に聞いてみる。
「……ああ。彼女は力を溜め込むタイプの個性でな……相澤の個性が使えればこうはならなかったのだが……相澤の個性による強制ストップがかけられない為に、彼女の個性の練習はかなり安全マージンを確保して行っている」
「あまり力を使い過ぎると暴走の危険もありますしね……」
「そうだ。極小の力を少しづつ少しづつ使うような……どちらかと言うと使った力をすぐ自分で止めるような……かなり安全に配慮した練習だ。それで力がどんどん溜まっていっている」
相澤先生による個性の抹消。
それが出来ない為にエリちゃんは力を溜め込むことになっているらしい。
「……まあ、彼女も少しづつ制御は上手くなってきている。やがてこの問題は解決するだろう」
「……ですね」
そうして、楽しい思い出がまた一つ増えて、俺の今年のクリスマスが終わった。
side物間
『え?総督の代わりに僕がヒーロー公安委員会向けに例のプランの説明をするんですか?まあ僕が資料用意したので説明は可能ですが……え?総督はオセオンに行くんですか?場合によってはオセオンだけでなくクレイドにも?総督だけでなくウチの達人級の皆さん……え!!梁山泊の皆さんも連れて行くんですか!!……なんですかそれは……まるで世界の危機を救ってしまうような気概を感じるメンツですが……え?冗談じゃない?女宿のババアがいっちょかみして厄介な事になってる?マジで世界の危機……久遠の落日になるかもなので事前に止めると……よくわからないですが何となく大変だという事はわかりました。こちらはお任せください。総督達もお気をつけて』
そして人知れず終わる映画3作目。
一応真面目な理由がありまして、3作目をこの作品でやると冬のインターンがエンデヴァーのとこにデク、爆豪、轟の3人が固定になってしまうため、今作はご都合主義パワーの師匠達に解決してもらいました。