回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

82 / 135
ストレス限界突破RTA

sideホークス

 

「では資料の内容を順番にご説明させて頂きます」

 

ヒーロー公安委員会の所有する建物の一室。

ファントムシーフ……物間くんが俺とヒーロー公安委員長の二人に新白連合の立案したプランを順に説明していく。

 

「先の泥花市で起こったヴィラン連合と大規模ヴィラン組織の衝突事件……そこで大規模ヴィラン組織の幹部として現行犯逮捕したトランペット・キュリオス・外典。この3名への取り調べの結果、デトネラット社の代表取締役社長の四ツ橋力也が当大規模ヴィラン組織のリーダーと判明しました。特にトランペット……花畑孔腔……現役国会議員であり心求党の党首である彼との私的・公的・金銭的なやり取り……逮捕後に彼の事務所を捜査し発見した様々な物的証拠。そして大規模ヴィラン組織が企んでいた計画……組織による武装蜂起による日本の治安悪化、デトネラット社謹製のサポートアイテムによる民衆の武装化、悪化する治安を背景とした心求党の政界への大がかりな進出を狙った悪質な計画……これらを元に、デトネラット社をヴィラン組織のフロント企業と認定」

 

長台詞をここで一拍、さらに彼は続ける。

 

「反社会的活動を行っているデトネラット社。そのデトネラット社のメインバンクである2つの銀行……三菱系と三井系の2大銀行に対し、デトネラット社の法人口座の凍結を要請します」

 

(……えぐいなあ……)

 

言うまでもなくどんなに巨大な会社だとしても、お金が使えなければ何も出来ない。

そして、普通は巨額のお金は現金として金庫などには入れず、銀行に預けておくものだ、

 

(……反社会的法人として認定し法人口座凍結かあ……たしかに、それをされたら何も出来ないね……)

 

物を作るための素材も、運ぶための送料も、何なら従業員の給料も、事務所の家賃や電気代も払えない。

 

あらゆる企業活動を停止させる策である。

 

「法人口座凍結解除をして欲しければ、デトネラット社代表取締役社長である四ツ橋力也本人が、疑惑を晴らすだけの証拠を持った上でヒーロー公安委員会へ直接出頭し、弁明するように……こう大々的にあらゆるメディアで発信します」

 

「……これでもしも本当に四ツ橋力也本人が出頭したら?」

 

「個性・真言吐きで事実を証言させて正式に逮捕します」

 

「……詰みね」

 

公安委員長の問いにサラッと返す物間くん。

まあ確かに本当にそうなったら即詰みだ。

 

真実を喋らせる個性……嘘をつかせるのでなく本当の事を喋らせるだけなのだ。何も問題なく即逮捕である。

実際に四ツ橋力也はリ・デストロ……異能解放軍のリーダーなのだから。

 

「……じゃあ、大人しく四ツ橋力也が出頭しなかったケースは?」

 

俺の問いかけ、それに物間くんが回答する。

 

「法人口座の凍結は続きます。そしてこういう状況で四ツ橋力也はヒーロー公安委員会に出頭せず自身の疑惑を晴らそうと行動するでしょうね……具体的にはSNSでの発信。無料動画サイトへの釈明動画のアップなどでしょうか?ですが……」

 

ですが……と物間くんは続ける。

 

「我らが誇る民度最悪ジャパンの民衆は、そんな甘い対応を決して許さない。あのエンデヴァーですら……何十年も人々の為に活動してきた彼ですら、ヒーロー活動と全く関係ない家庭の問題一つであそこまで叩かれる程の異常な民度の悪さ……ヒーロー公安委員会が直接出頭を要請しているのに、言い訳のようにSNSと無料動画サイトで釈明しても、最悪な民度の人々は絶対納得しない。四ツ橋力也の印象は更に更に悪化するでしょうね。同時に、彼が代表取締役社長を務めるデトネラット社の印象も悪化します」

 

「……まさか、ここに来て我らが民度最悪日本(ジャッパーン)!!が役立つ日が来るとはね……」

 

まあこの流れは簡単に予想出来る。

エンデヴァーさんの時の大炎上を思えば、燃えない訳がないのだ。

しかもあの時はエンデヴァーさんだけでなく、サイドキックにまで飛び火していた。

 

「……今回は息子ではなく本人そのものがヴィラン……そして日本転覆のような悪質な計画……間違いなくエンデヴァーの一件以上に炎上するでしょうね」

 

「付け加えるなら、四ツ橋力也は1代でデトネラット社をあそこまでの大会社に育てた有能な経営者であり、金持ち・成功者です……妬み僻みも燃料に追加でエンデヴァー以上に間違いなく燃えます」

 

「うーん!!ほれぼれしそう!!民度最悪ぅ!!」

 

「利用出来る時はですけどね」

 

利用してる側の策士がよくもまあぬけぬけと言うものだ……しかし、それも込みで策を練ってくる辺り流石新白連合の仕込みである。

 

「敵にはスケプティックという凄腕ハッカーがいるので情報操作も多少はするでしょうが……こちらは真実の情報しか使っておらず、あちらは嘘や操作で固めた偽の情報ばかりとなります……多少の押し引きはあっても、こちらは終始優勢に事を運べるでしょう」

 

まあそれはそう。 

嘘の情報には事実をぶつけて片端から否定していけばいい。

何せこちらは真実の情報しか使っていない。

あちらが嘘ならいくらでも綻びはあるだろう。

 

「説明を続けます。法人口座の凍結。にも関わらずいつまでも出頭しない四ツ橋力也……この状況が続く事により、デトネラット社には深刻な危機が……具体的には倒産。法人としての存続の危機が迫っている……人々はそう思うでしょう」

 

「つまり?」

 

先を促す公安委員長。

 

「デトネラット社の株価は大暴落します。何せ、倒産したら株は無価値になる……株の投げ売りが始まるでしょうね」

 

「……そこを我々政府系の息がかかった企業でTOBを仕掛けて株を買い占める……つまりは、そういう作戦と」

 

(……おっそろしいなあ)

 

俺と公安委員長の2人の視線が物間くんに集中する。

そして彼は、

 

「その通りです。暴落したデトネラット社の株を買い占め、可能であれば議決権を支配出来る51%以上の株を購入する。これを背景に臨時株主総会の招集を要請します。臨時株主総会の目的はもちろん現代表取締役社長である四ツ橋力也含む、全ての取締役の解任。そして新たな代表取締役と取締役の選任です」

 

淡々とした口調でそう作戦を説明する。

 

「デトネラット社は四ツ橋力也が1代で急成長させた企業です。それ自体は非常に素晴らしい……しかし、急成長にはそれなりの反動があります」

 

「それは?」

 

俺の問いに物間くんが答える。

 

「デトネラット社は増資……新たに株式を発行し資金調達を繰り返し、それを元手とし設備投資・人材投資含む投資活動を行い急成長してきました。その反動として、上場当初は30%を超えていた四ツ橋力也本人の持ち株比率は大幅に低下……現在の彼の持ち株比率は5%程度まで減少しています。増資を懸念し社内の持ち株会の制度も利用者は少なく、その9割方の株式は各投資会社と個人株主が保有しているのです」

 

「……なるほど、代表取締役個人の持ち株比率が低い以上、株主総会での議決権は少ない訳ね」

 

「言うまでもなく会社は社長や社員のものではなく株主のものです。故に51%以上の株を買い占め、臨時株主総会で正当な手続きの元に四ツ橋力也を代表取締役から追放します」

 

「……政府主導での社長を貶める情報を流し、それを買い占め臨時株主総会……更に社長を追い出すだなんて……政府主導の会社乗っ取りと思われないかしら?」

 

……なるほど、そういう考え方もあるのか。

 

公安委員長の懸念。それに物間くんは、

 

「普通の法人であればそう思われるでしょうね。しかし、今回は証拠も完全に抑えた上でヴィランである四ツ橋力也を追い出し、新たな取締役達を送り込み会社を再生する事でデトネラット社とその社員、取引先を保護するという大義名分が使えます……ま、後は政府の皆様の手腕ですね。最初にご説明した通り、この作戦は政府皆様方のお金と労力だけを使うと……まあ、そういう計画ですので」

 

「……政府が上手く救世主側に見えるように上手く情報操作しながら立ち回れ……と……全く……大義名分があるとは言え中々の要求だわ」

 

「その辺りは皆様の手腕を信頼しておりますので」

 

にっこり笑ってそう言う物間くん。よく言うよほんと……

 

「……でも一つ気になるのだけど……確か臨時株主総会の開催は3%以上の株式を半年ほど保有していないと要求出来ないのではなかったかしら?」

 

「え!?そうなの?」

 

まじかよ!!じゃあ今から買い占めしてもダメじゃん!!

 

しかし、物間くんはにっこり微笑み。

 

「ご心配なく。我ら新白連合がその臨時株主総会開催に必要な3%以上の株式を半年以上保有しておりますので。こちらで臨時株主総会の開催を要求いたします」

 

まじかよ!!もう持ってんのかよ!!

 

え……つまりそれって……

 

「……新白連合は……新白連合は元々今回の件が無かったとしても、いつか何処かのタイミングでデトネラット社に対し取締役全員交代の臨時株主総会を仕掛けるつもりだった……つまり、そういう事なのかしら……」

 

(そういう事かよ!!)

 

確かに!!確かに事前に異能解放軍の事を調べていれば!スパイを送り込んでいれば!!リ・デストロが四ツ橋力也とはいずれわかるだろう!!

 

11万人を超える大規模組織。それが新白連合の情報網に引っかからない訳がない。

今回の件が無かったとしても、いずれ新白連合は……この代表取締役社長がヴィラン組織のトップという情報を使い、デトネラット社を合法的に乗っとるつもりだったのか!!

 

驚愕する俺達2人……しかし物間くんは穏やかに笑い、

 

「あはは……何をおっしゃっているのやら?我々新白連合はただ単にこれからデトネラット社の株価がもっと上がると思い株を買い集めていただけですよ」

 

「……わかったわ、そういう事にしておきましょう……どの道、おかげで助かったのだから……」

白々しい……そんな物間くんの言葉を、とりあえず額面通りに受け取る事に決めたらしい公安委員長の言葉。

 

それに、

 

「ええ、誤解が解けたようで何よりですね」

 

にっこり笑う物間くん。いやいい性格してんなあ本当!!

 

ジト目で睨む大人2人の視線。それを何のそのと飄々としたその姿。

これが総督の仕込みか……何とも凄まじい……

 

「ふう……もう良いわ。話を進めましょう。それで?こんな素晴らしい作戦を持ち込んでもらった事には感謝だけすればいいのかしら?貴方方、新白連合にはどの様な見返り……そうね、アイデア料を払えばいいのかしら?」

 

(……そうだね、そこがポイントだ)

 

今回の作戦の肝は異能解放軍のトップである四ツ橋力也の社会的地位の抹消。そして異能解放軍の資金源であるデトネラット社の合法的な乗っ取りである。

 

異能解放軍に協力するヒーロー達は、金銭的な利害関係で協力している者も多い。単純にそこの切り離しを狙える。

 

過去の資金の流れを詳細に調べれば、どのヒーローがデトネラット社から多額の資金を受け取っていたかもわかるだろう。そうすればそのヒーロー達を逮捕する事も可能。

 

そして単純に異能解放軍という大人数の組織を維持する資金源を丸ごと奪い、やつらの活動資金を消滅させることにもなる。

 

そう、物間くんの言った通り、政府が金と労力さえ払えば、だ。

 

何とも素晴らしい作戦である。

 

その素晴らしい作戦……本来は自分たちで乗っ取りを考えていたデトネラット社……それをこちらに譲る以上、失った新白連合の利益を補填するモノが必要な筈。

 

それは何だ?金か?

 

物間くんはにっこりと笑い、

 

「そんな多くのモノは要求しませんよ……ただ、我々の要求は……新たに臨時株主総会で選任する取締役の中に、我々新白連合からも取締役を選んでもらいたいと……つまりその程度の要望ですので」

 

(……くそ!!そういう事か!!)

 

隣では同じ事に公安委員長も気づいたようだ。

 

つまり、これは!

 

(本来!!新白連合が払う予定だった金と労力を政府に払わせておいて!!ちゃっかり自分達も取締役に入れろ!!と!!つまりそういう事か!!)

 

何とも抜け目ない!!

これが新白連合か!!

 

確かに!!これなら強引な買収のリスクを全て政府に押し付けておいて、身内を取締役として入れる事が可能!!

 

恐るべし新白連合!!

 

……そして何より恐ろしいのは、そうとわかっていてすらも、俺達はこの作戦の凄まじい有効性故に、それを受け入れるしかない、という事だった……

 

宇宙人の皮を被った悪魔

 

 

……そうしてヒーロー公安委員会は、その新白連合の申し出を全面的に受け入れる事となった。

 

 




実際やられたら絶対自分ならハゲそう
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。