回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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夜は続く!!

「フッ……私にとっても久しぶりのデニムナイトだ……心躍る!」

 

「……けっ!ンな大層なこと言いやがっても、結局六本木の夜の店で飲むだけじゃねーか」

 

「そうだな。そんな訳でデニムナイトあるあるだ。とりあえず自分を大物っぽく見せる為だけに意味もなく後輩をここに呼び出す」

 

「そんな訳で呼ばれたエッジショットだ」

 

シュッ!!と気配を消しながらBARに滑り込んできたトップヒーロー!!気配は察知してたけど忍者ぽいなこの人ほんと!!

 

「エッジショットさん!エッジショットさんじゃないですか!!」

 

「久しぶりだな回原くん……泥花市以来か」

 

「まさか……デニムナイトの為だけにわざわざエッジショットを呼んだのか……?」

 

入店からここまで戸惑いっぱなしの轟。そんな轟に、

 

「フッ……コイツと私は雄英高校の先輩後輩の関係でね。今でもこうして夜に集まってたまに飲んだりしているのさ。どうせ今日辺り呼び出されると本人も思っていただろうしな」

 

「ぶっちゃけ先輩の所に雄英高校の後輩2人がインターンにいったと聞いてから、毎晩出来るだけ早めに家に帰ってシャワー浴びて待機してました!!久しぶりのデニムナイト!!心躍る!!」

 

「アンタもデニムナイト楽しむ側かよ!!」

 

まさかのノリノリエッジショットさん。夜の街では全然忍ばないタイプだったとは!!

 

「まあとりあえず乾杯するとしよう。未成年は当然だがノンアルコールだ……ああ、店の皆もとりあえず一杯飲んでくれ。私のおごりだ」

 

「「「「ありがとー!!!頂きまーす♪♪♪」」」」

 

「……手慣れてんなぁ……」

「……ホントに久しぶりなのかよデニムナイトは……」

 

きゃーっと歓声を上げるお店の女の子達。

その歓声を楽しむベストジーニストさん。

 

「……ま、こういう場に最初に立ち会うと戸惑うのも無理はないさ。何を飲む後輩達よ。個人的には無難なウーロン茶とかよりはジンジャーエールやオレンジジュースなどがオススメだな。BARとかにあるようなこの手のジュースは、ファミレスとかで飲むものとは一味違う美味さがあるぞ」

 

歓声を楽しむベストジーニストを横目に、エッジショットさんが俺達にドリンクを聞いてくれる。

 

「へー!美味しそうですねえ。じゃあジンジャーエールお願いします」

「……ちっ。じゃあ同じの頼むわ」

「俺も2人と同じので」

 

俺達の注文を店の女の子に伝えながら、エッジショットさんも自分の飲み物を……ビールを注文する。

 

「……どんなヒーローでも、仕事終わりのビールの誘惑には勝てない……何と罪の大きいものなのか仕事終わりのビールとは……くぅっ!!」

 

お店の女の子が持ってきてくれた飲み物を受け取りながら、エッジショットさんが手に持ったビールをじっと……まるで乾杯の前に一杯飲みきってしまいそうなくらいの強い視線でじっと見ている。

 

「……そんな美味いんですかビールって?」

「ただのビールでなく、仕事終わりのビールだからこそ美味いんだ」

 

ほんとーのほんとーに乾杯前にビールに食らいついてしまいそうなエッジショットさんを見ての轟の最もな疑問。それへのノータイムの回答。相当美味いらしい仕事終わりのビールは。

 

「……んな酒飲んで大丈夫なのかよヒーロー活動はよ」

 

トンガリの苦言?に対しエッジショットさんは苦笑いし、

 

「当然、近隣エリアのヒーロー事務所と協力して、夜間のシフトはしっかり組んでいるから今の時間は大丈夫だ。それに念の為事前にアルコールの分解を早める薬は飲んできている。それは先輩もだけどな」

 

そう言われて今もドリンクを受け取りながら女の子に囲まれているベストジーニストさんを見る。そんな諸々を全く考えず楽しんでいるようにしか正直見えないのだが、見えない所で色々苦労はあるのかもしれない。

 

「ま、そんな訳で俺達プロヒーローが楽しく仲間内で飲むのは大変で、結構これでも気を遣いながら飲んでいたりするのさ。戸惑っているかもしれないが、まあ今日はこういう夜のインターン活動だと思って楽しんでくれ」

 

「……夜のインターン活動……はい、わかりました。楽しみます」

 

「……おい半分野郎……そのフレーズ気に入ったのかもしれねえが、絶対学校で使うんじゃねえぞボケ」

 

「……ダメなのか?」

 

「……すまん轟……これはマジでトンガリに賛同する……頼むからホントに学校ではこのフレーズは使わないでくれ」

 

「……そうか、わかった」

 

今ここに将来起こり得る悲劇が一つ食い止められた。

 

「……さて、皆飲み物は持ったな。では乾杯をしよう!!デニムナイトの始まりだ!!」

 

「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」

 

ベストジーニストさんの声に合わせ、手慣れた感じでエッジショットさんやお店の女の子達と乾杯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて何食べる君たち?この店は酒だけでなく食べ物も色々あるぞ。個人的にオススメはカレーだな」

 

「後はパスタやピザトーストなどだな。昼間のインターンで体を動かし腹は減ってるだろう?ここの支払いは私が持つから遠慮無く頼むといい」

 

そんな訳で始まったデニムナイト。

とりあえず大きめのソファー席に座らせてもらい、食べ物を注文する。

 

「何だか意外ですね……」

 

「何がだい?」

 

「ベストジーニストさんやエッジショットさんがこういうお店に来てるのがです」

 

そら以前職場にお邪魔したとき昔遊んでたのかなー?とか思ったりはしたけど。

 

「はっはっは!何を言う回原くん!」

 

俺の疑問に笑いながらエッジショットさんが答える。

 

「この方はな、顔も悪くないしトップヒーローと言う事で地位も名誉も名声も、何ならお金もたくさんたくさん持っているしコミュ力も高い。にも関わらず30半ば過ぎても特定の相手を作らずいつまでも独身を続け、何ならお洒落なタワマンに独り暮らしだ。何処をどう見てもお手本の様ないつまでも遊んでいる仕事が出来るビジネスマンタイプだろう?」

 

「説得力という名の火力が高すぎませんかそれ!?」

 

「フッ」

 

「おいコラデニム遊び人疑惑に反論したらどうだ……って髪整えてんじゃねーよクソが!!」

 

「遊び人という程ではないが……まあヒーローという職業柄……特に私達のようなトップヒーローになると、安心して飲んだり遊んだり異性と出会える場所は少なくなる。どうしてもヒーローという仕事に理解のある同業者とばかりの人間関係になりがちだ。下手にファンなどにDMでも送ってみろ?翌日には大騒ぎに発展している……結局、私達はこういう店で同業の理解ある人達と遊ぶしかなくなる訳だ」

 

また芸能界の闇を暴くマンガに出てきそうな話が飛び出る……俺達はヒーローを目指しているのであって、アイドル目指している訳ではないのだが……似たようなものなのか?

 

そんな事を考えている俺と、隣のトンガリを見てベストジーニストさんは笑い、

 

「……ま、そう言う訳で、トップヒーローを目指すならば、学生のうちに恋仲の相手をしっかり作っておくのは良いことだ。トップヒーローになってから付き合ってしまうと熱愛発覚!!とかで騒がれるが、学生カップルがそのままヒーローになれば最初からそう言うものと受け入れられる事もある」

 

「……学生のうちに良い相手いないと、ヒーローになってから恋愛は大変だぞ。ファンと付き合えばファンに手を出したと騒がれ、仲のいい女性ヒーローと付き合ったりすると熱愛発覚とかで煩い。じゃあ事務所スタッフと付き合ったらそれはそれでマスコミとかに見つかると面倒だ」

 

「……なんか実感こもってませんかエッジショットさん……」

 

「聞いてやるな。コイツはその手の炎上は一通り経験済みでな。それなりに苦労している」

 

「先輩……それはもう答えを半ば言ってるようなものですが……まぁ、そういうのを一通り経験すると、結局こういう店で遊ぶしかなくなる訳だ……君たちがこちらに来ない事を祈ってるよ」

 

「来たら来たで歓迎するがな」

 

「誰が行くかクソがぁ!!」

 

「お前それ……いや何でもねーや」

 

「アアン!!」

 

トンガリそれお前塩崎とそのまま付き合って一緒にヒーローになってそのままゴールイン宣言なのだが……コイツ気づいてんのか?

 

気づいてる目の前のOB2人はニヤニヤしてるがいーんかそれでトンガリよ……

 

「……え、あ、す、すみません……じゃあジンジャーエールおかわりで」

「はーい♪ちょっと待っててねー!」

 

「ってお前もちゃっかり楽しんでんじゃねーよ半分野郎!!」

 

ギャースカギャースカ騒いでた俺達を他所に、隣に座っていたお姉さんと楽しそうに話していた轟を見て吠えるトンガリ。

 

「……楽しむ?いや、普通に話していただけだが?」

「あーそうかよボケ」

 

いつもの轟の天然に毒気を少し抜かれるトンガリ。

 

「……よくわかんねえな爆豪」

「へん!」

 

ぷいと横を向くトンガリ。キョトンとする轟。

そんな2人を見て。

 

「ふむ……轟くんはあまり女性には興味無いタイプなのかな?」

 

エッジショットさんが轟に質問する。

轟はそれに、

 

「女性に興味?」

「……あ〜、恋愛的な意味で何だが」

 

天然に対し丁寧に対応するエッジショットさん。いい人だなあ。

 

「恋愛……ですか……正直、あまり考えた事がありません」

「ほう。そうなのか?」

 

ベストジーニストさんも気になったのか会話に参加する。

年長2人の視線を集めながら轟は、

 

「ウチは……知ってると思いますけどウチはちょっと家庭が特殊で……色々あったから。正直、今までも恋愛とかはあまり意識して考えた事がないんです」

 

「ああ……」

 

その言葉にその場の全員が思い出す。

荼毘の告発動画。

 

轟の重い家庭の事情。

コイツただ単に天然なだけかと思ってたけど……ひょっとしたら家の事もあって恋愛関係無意識にブレーキ踏んでたりしたのかもな。

 

「……すまない、そういう意図は無かったのだが……君には言い難い事を言わせてしまったな」

「……俺もすまない」

 

大人2人が轟に謝る。

 

轟は軽く首を振り、

 

「……いえ、大丈夫です。正直、俺が考え過ぎてるだけな所もあると思います……実際、もう一人の兄は恋人もいるみたいですし」

 

「そうか」

 

「……でも、せっかく何で聞いても良いでしょうか?」

 

「何だい?」

 

轟は目の前のトップヒーロー2人をしっかりと見て、

 

「お二人から見て親父は……エンデヴァーは……轟炎司という男はどういう大人に見えますか?」

 

うおお!!オッマ!!急に重い話ぶっ込んできやがったな!!

 

「……はーい!!ジンジャーエール置いとくねー!!」

「どうも」

 

重い話を察したのか?先ほどまで轟の隣にいた女の子が席を離れていく。まあ聞いていい話かわからんもんね。

 

「……君が聞きたいのはヒーローとしてというより、一人の大人としての轟炎司……そういう事でいいのかな?」

 

「はい」

 

轟の返答に一瞬ベストジーニストさんは瞑目し、

 

「これはあくまでも私の考えだ……そして、君がこれを聞いて納得するかもわからない。それでもいいかな?」

 

「はい」

 

「そうだな……あくまでも私の考えになるが……轟炎司という大人はスゴイ男だと思うよ」

 

「スゴイ男……ですか」

 

「うん。私のような独身男性からすると、長年No.2のヒーローとして活躍しながら家庭も持ち、子供もしっかり育てる……一人例外はいるが……それだけでスゴイことのように思える」

 

「ですが!!」

 

「わかっている。当然、君の家庭環境もある程度は聞いている。そして実際にその環境を体験していない私は想像でしか語る事は出来ない。だが、外でヒーローとして活躍しお金を稼ぎ、お手伝いさんを雇うなどしっかりした上で家庭を奥方にお任せする……当然それはパーフェクトではない……が、一人の大人から見るとスゴイ男だ、轟炎司という男は……」

 

「……」

 

「当然、彼にも良くない点はあったのだろう。一つではなくたくさんあったのかもしれない……それでも、それでも彼は……今も轟家を支えている。それは私から見るとスゴイことだ」

 

「だけど!!だけど母さんは!!母さんは個性婚で結婚して!!今も!!今も精神的に傷ついて!!」

 

轟の叫び、それにベストジーニストさんは落ち着いて……と目と手振りで轟をなだめる。

 

「………」

 

それを見て少し落ち着く轟。

 

「……少し落ち着いたかな?……そう、今も君が激昂した個性婚……にも関わらず轟家は今も昔のまま存続している……だから、轟炎司という男はスゴイのだよ私から見るとな」

 

「……どういう事ですか?」

 

戸惑う轟。それにベストジーニストさんは冷静に。

 

「単純な話だ。本当に個性婚だけで轟炎司が結婚し家庭を持ったのだとすれば、生まれてきた子供が期待通りで無かった段階でさっさと離婚すればいいのではないかな?」

 

「……あ!」

 

……確かに、な、

 

「一人目か二人目……三人目まで待つ理由があるかはわからない。が……正直、個性婚だけで結婚をしたのだとしたら……私から見ると少々やり方が迂遠に思える。二人目がダメだった時点で見切りをつけて、さっさと離婚しまた次のもっと良さそうな相手を探し再婚した方が効率が良いのではないか?」

 

「………」

 

「少なくとも、四人目まで待つ理由は絶対に無い。結婚から何年経っている?……だから、私は……私は最初はひょっとしたら個性婚が目当てだったのだとしても、その後の関係にはそれ以外の思いが……気持ちが轟炎司という男の中にあったのだと思うよ」

 

「………」

 

ベストジーニストさんの言葉を聞き、静かに考える轟。

……そうだ。確かに出会いのきっかけはそういった個性婚的な狙いがあったのかもしれない……

 

……でも、それだけで……それだけで何年も何十年も家族を続ける事は出来ない。

……そしてエンデヴァーさんがもしその気になっていれば……早めの段階で今の奥さんと離婚し、新たな家庭を作る事は難しくは無かっただろう。

 

「……すまない。無神経な事を言ってるのは承知している。所詮外部の人間の意見だ。なので参考程度に聞いて欲しい。私は君が経験した過酷な家庭環境を経験していない。あくまで外部からみた想像の話だ」

 

「……はい」

 

「……だが、それでも……轟炎司はそれでも……彼は彼なりに家族を゙大切に思っているのだろう。だから切り捨てる事なく、今もギリギリなのかもしれないが、家族関係を維持しようとしている……だから、独身でそういった苦労が何も無い私から見るとスゴイ大人なのさ彼は。最悪、私は私だけの事を考えればいい。彼は自分だけでなく家族も彼なりに考えている……それは私には無い彼のスゴさだ」

 

そう言ってベストジーニストさんは話を締めた。

……なるほどなあ。

同じ大人でも結婚してる人と独身でも考え方に色々違いが出るもんだ。

 

「……けっ!なーに独身貴族が偉そうに家族について語ってんだよ……」

 

そんなトンガリの毒舌に、ベストジーニストさんは笑った。

 

 

 




長くなったので分割!!
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