「ありがとうベストジーニスト……正直、今すぐ納得は難しいけど……参考にさせてもらいます」
「それでいいさ。私も自分の意見が正しいと強弁するつもりはない。あくまで君が色々と考える為の参考程度に捉えてくれ」
「はい」
ペコリと頭を下げる轟。
色々悩むことも多いんだろうけど、少しでも前向きに進める材料が増えたのなら良いことなのかな?
「……フッ、少し真面目な話に場が偏ってしまったな。せっかくのデニムナイトだ。少し不真面目な方にも場を盛り上げるとしようか」
「いや別に真面目なままで良いんだよ真面目でよ!!」
当然のようにトンガリは無視。ソファー席から立ち上がり『パチン!』と指を鳴らしベストジーニストさんがポーズを決める。
「よしシャンパンをいれるぞ!未成年は当然シャンメリーだがな!!!」
「おお!!流石先輩!!誰かの誕生日だとか何の特別な日でもない平日にシャンパンをいれるだなんて!!流石先輩!!これぞデニムナイト!!」
「フッ……デニムナイトあるあるだな。何の変哲もないただの平日の夜にシャンパンをいれる」
「「「「キャー!!流石ベストジーニスト!!カッコいい!!」」」」
先ほどまでの重い話を避けて離れていた女の子達が集まってくる。空気が切り替わったのを察したんだろうなあ。
「デニムナイトあるあるのウンチクでも語ろうか。本来、シャンパンとはシャンパーニュ地方で厳しい条件を満たし作られたモノだけをシャンパンと呼ぶのだ。それ以外はスパークリングワインと呼び区別するのが本来の形。今日は皆で本物のシャンパンを味わうとしよう!!」
「いや俺等飲めねーんだろが!!」
ギャースカ吠えるトンガリを見てベストジーニストさんはフッと笑い。
「そうだな爆豪……今の君にはまだ早い。名は願いであり、シャンパンは夜の華だ。君はまだ
「余計だわ!!普通の
「二十歳を超えたら、もう一度私の元に来るがいい。その時は君にスパークリングワインではない本物のシャンパンをご馳走するとしよう」
「何良い話風に言ってんだよただの二十歳超えてからの飲み会のお誘いじゃねーかアホか!!」
そんな感じで賑やかにシャンパンとシャンメリーでの乾杯の準備が進んでいく。洗うのがとても大変そうな細長いお洒落なグラスに、大人はシャンパンで俺達はシャンメリー、それぞれの飲み物が注がれていく。
お店の女の子達にも飲ませてあげるのかな?
グラスの数は俺たちよりも明らかに多かった。
「はいスパイラルくんどーぞ♪」
「あ、ありがとうございます……」
若干戸惑いながら女の子からグラスを受け取る。
「……さて、全員グラスを持ったな?では……2度目の乾杯といこうか!!乾杯!!」
「「「「かーんぱーい♪」」」」
とりあえず俺達プラスお店の女の子達全員で2度目の乾杯をした。
「はじめましてスパイラルくん♪福岡でも泥花市でも大活躍してたよね!!おねーさん君のファンなんだ!!握手してもらってもいい?」
「あ、はいどうも」
先ほどシャンメリーのグラスを渡してくれた女の子が話しかけてきてくれて、なんと握手まで求められてしまった。
握手した手がやたらと柔らかい気がするね?シャンメリーのせいかしら?
「……ハッ!三股ドリル……四股でも狙うつもりかよ!!」
「……えっ……さ、三股?……す、スゴイね最近の高校生って……」
「あ、あははは……」
さっきまで握手してた女の子がサッと後ろに下がっていく。否定出来ないのが何とも辛いところである。
「……回原?おまえ……三股なんてしてるのか?」
「と、轟……いや、まあ……真面目にそう聞かれると回答に困る話なんだが……」
そして天然の轟が真面目な顔してそんな事を聞いてくる……いや、まあ、正面からそう聞かれると困っちゃうよなあ。
「けっけっけ!!『《姦淫してはならない》とあなたがたは聞いています。しかし、わたしは言います。情欲を抱いて女を見る者は、すでに心の中で女と姦淫を犯したのです』……ってな。実際何処までも進んでんのか知んねーけどよ。まあもう人様に何か言われても反論出来ねー程度にはなってんだろ色ボケドリルよお!!」
「はっはっは……反論のしようもねーわ。流石純愛ルート一直線のトンガリくんですねえ……一途な男は言う事も一々カッコいいですねー痺れますー!!」
「んだゴラァ!!!」
「アアン!!褒めてんだよ!!何キレてんだボケトンガリ!!」
がるるるる!!と額を突き合わせる俺とトンガリ。
その横で、
「爆豪が一途?……ひょっとして爆豪?おまえ……彼女がいるのか?」
轟の天然が炸裂した!!
「んだよまだいねーわ!!何か文句あっか半分野郎!!」
「そうか……爆豪もまだいないのか……」
「……チッ……素直に納得されんのもそれはそれで腹立つなクソが……」
ボソッと舌打ちしそう呟くトンガリ。武士の情けだ。聞かなかった事にしてやんよ。
「回原、爆豪……俺は……俺はお前達に比べて遅れている……俺は、俺は……頑張って何とかお前達に追いつきてえんだ」
「……おいコラ半分野郎……お前突然何言おうとしてやがる……」
「……落ち着け……落ち着けよ轟……」
真剣な顔してそんな事を言い出した轟。
あ、これやっべ!!と察知し慌ててそれを止めようとする俺とトンガリ。
だが、遅かった……
「回原、爆豪、俺はモテたいんだ」
「「おおい!!コラァ!!」」
とてもとても真剣な顔で俺達を見て轟がそんな事を言い出してしまう!!
「急にこんな事を言われても困るかもしれねえが、回原、爆豪。俺にモテる方法を教えてくれ」
「「困るわ!!困りすぎるわ!!」」
とても真剣な轟にギャースカギャースカ吠える事しか出来ない俺達。だが……
「……ほう……面白そうな話をしているな」
「フッ……これは我々が力を貸してやらねばならんな」
だが……ここには吠える以外に余計な事をしでかしそうな大人が2人もいたのである!!
そう!!ベストジーニストさんとエッジショットさんだ!!2人は轟を受け入れるようにして両手を広げ、
「轟焦凍くん……我々は……我々は君を歓迎しよう」
「ようこそデニムナイトの会へ。我々は君をデニムナイトの会の会員として受け入れる」
「ベストジーニスト……エッジショット……」
その声に招かれ招かれ、ふらふらと近づく轟。
「俺は……俺はアイツらに追いつきてえ……俺も……俺もモテるようになりてえんだ!!」
「ようこそモテを求める世界へ!!」
「我々が君に女の子にモテる為の術をしっかりと教えてやるとしよう!!」
「ありがとう!!ありがとう2人とも!!」
そうして……3人の男達がガッシと手を力強く重ねた。
そんな感じで、何か突然始まりだした感動的な茶番。それを脇で俺達はジト目で眺めている。
「なあ……ドリル……?」
「……なんだよ、トンガリ……」
「……帰っていいか?」
「……奇遇だな……俺もそれ聞こうと思ってたわ……」
「何を言っているんだ2人とも?」
「ベストジーニストさん?」
そんな俺達の様子を見て、ベストジーニストさんがこちらに話しかけてくる。
「デニムナイトはまだまだこれからだ……ここから更に盛り上がるのだ。定番のダーツなどのゲームを色々と楽しみ、歌いたければカラオケもある。食事も飲み物もまだまだ足りなければドンドンと頼め。そうしてデニムナイトを盛り上げ……そして!!その最後に!!」
「最後に?」
「どうすんだよ?」
ポケットからクシを取り出し髪を整え、ビシッ!!とベストジーニストさんはポーズを決め!!
「最後に!!私がデニムを脱ぐ!!」
「「いや脱ぐんかい!!!!!」」
綺麗に重なった俺達のツッコミ。
こうしてデニムナイトな夜がふけていった……
後日……
ホークスさんから着信があった。
『ねえねえ回原くん回原くん……』
『どうしたんですかホークスさん?』
スマホを取り出しとりあえず通話をスタート。
『焦凍くんが……焦凍くんが、博多の夜の女の子の店に行ってみたいとか……何か突然変な事を言い出したんだけど……ねえ!!ねえ!!君!!何か!!何か知らない!!??』
『……へっ?』
轟……おまえ……
『ねえヤバいのよヤバいのよ俺……俺さ……俺さ、エンデヴァーさんに「責任もって焦凍くんのインターン受け入れます!しっかりと焦凍くんを育てます!!」って約束してんのよ!!ヤバいのよ!!これ絶対ヤバいヤツなのよ!!俺のとこにインターン行って戻ったら夜の女の子のお店に興味津々に育ってましたとか!!どう考えてもヤバ過ぎ案件でしょ!!焼かれるよ!!あの炎で焼かれるよ俺!!確実にプロミネンスでバーンな焼き鳥にされちゃうよ!!ねえ!!ねえ回原くん!!君何か知らない!?助けて!!このままじゃ俺ホントにマズイ!!!』
『あ、あは……あははは……』
スマホの向こうでの大変そうな……本当に大変そうなホークスさんを思い、思わず合掌。
なんか……なんだかなあ……
こうしてインターンの日々は過ぎていった。
そして、デトネラット社へのTOBが正式に成立し、物語は新たなステージへと進むことになる。