「ねえねえ旋くん旋くん!!私と合体しよ!合体合体!!」
「ぶっほー!!!!!!」
「「「……は!!ぶっほー!!!!!」」」
開幕から突撃ねじれ先輩の巻である。
見目麗しいねじれ先輩から飛び出た合体の連呼。
興奮した峰田がまず鼻血を噴き出し、遅れて気付いた泡瀬や円場らが後に続いて鼻血を噴いた。
何この開幕地獄絵図…
昼休みに入ったばかりの教室は、突撃ねじれ先輩の所為で大変な状況となっていた。
「が、合体って!!つまりそれはセッ!!!」
「言わせないよ!!!!!!」
「ぐほぉ!!!!」
興奮した峰田が神聖な教室にあるまじき発言をしようとし、察した拳藤の物理的ツッコミで止められる。
ナイス拳藤。流石クラス委員長に選ばれただけの事はある。
今後もツッコミ役兼迷惑行為のストップ要員として活躍してくれる事だろう。ぜひ頑張って欲しい。
いやいやしかし何じゃこりゃ。
昼休み入って一分もしない割に、大分情報量が多すぎる。
「ねえねえ旋くん旋くん!!がっ…」
「あ、ストップですねじれ先輩。合体の前に必ず『個性』とつけてください。個性合体です。いいですね」
じゃないとウチの純朴なクラスメイトと邪なクラスメイトが失血死してしまいそうだった。
「え?何で何で??……あ!!」
しばらくして気付いたねじれ先輩がかぁっと顔を赤くする。
可愛いらしいので大変眼福ではある。
「うう…恥ずかしいよお…」
赤くなった両の頬を隠すように両手を顔に添える先輩。
実に可愛い。
午前の授業の疲れを癒してくれる大変結構な光景なのだが、これを放置すると話が進まないからなあ。
「…ま、とりあえずメシにしません?昼休みですし。俺はお弁当ですけど、食堂行くなら付き合いますよ」
話題を切り替える為にそう申し出ると、
「そ!そうだね!私もお弁当だから取ってくる!ちょっと待っててね!!」
そう言って急いで『バビュン!!』みたいな効果音が聞こえそうなスピードで俺の教室を出ていった。
お弁当取りに行ったんだろう。
照れ隠しとクールタイム欲しいってのもあるだろうし。
「回原!!お、オイラも2人と一緒にご飯食べてもいいか!?いいだろう!?頼むよぉ!!!」
俺のズボンをグイグイ引っ張りながら峰田がそう言う。
「まあ、あまり変なこと言わないなら大丈夫だろ多分」
絶対言うなよ、とは言わない。
人は、それを諦めという。
知り合ってからわずかな時間で、峰田という男はこういう奴だとすでにクラスの皆が知っていた。
知ってしまったともいう。
「……回原、良かったら私とレイ子も同席しようか?1人だと峰田抑えるので大変だろ?」
拳藤が柳を連れてこちらに来て、そう申し出てくれる。
「……そうね、せっかく3年のヒーロー科の先輩と仲良く出来ているんだもの。峰田で減点食らってこのいい関係崩したくないしね」
「そう言ってくれると助かる。正直、誰かに同席をお願いしようかと思ってはいた」
「じゃ決まりだね!購買でパンでも買ってくるから、波動先輩来たら先に食べて待ってて」
「それまで峰田よろしくね」
「ヒデェ!!ヒデェよ3人とも!!!オイラの事をなんだと思ってるんだよ!!!」
「「「聞きたいの(か)?」」」
「いやー!!!聞きたいけど聞きたくねえー!!!!」
そう言う峰田を放置し、俺は周囲の空いてる机を固めて5人で昼飯を食べるスペースを作った。
教室にいる奴には了承を取ったが、いない奴には後で借りたと伝えておこう。
まあ、昼休みの机の貸し借りなんてよくある事だしな。
「それでねそれでね!天喰に先生が旋くんの事を相談してたのたまたま聞いちゃったの!あ、ごめんね旋くん、勝手に聞いちゃった!」
「ああ大丈夫ですよ。そんな隠す事でもないし」
「良かったあ!ありがとうね旋くん!あ、天喰は私と同じ3年のヒーロー科の友達でね!!再現っていう個性が使えるの!!少し個性合体に近そうだから相談してたのかな?不思議不思議!」
弁当を取ってきたねじれ先輩と、購買から戻って来た拳藤と柳。
峰田も購買で何か買ってきたらしい。
一緒には連れて行ってくれなかったそうな、南無。
集まって5人でいただきますして昼飯スタート。
会話の中心はねじれ先輩だ。
とにかくよく喋る喋る。
自分で話してる間に、また何か不思議な事に気づき、またそれについて話し出すのだから止まる様子が無かった。
「再現ですか?それってどんな個性なんですか?」
「天喰先輩って可愛い女のこ…ぐへっ!」
「ちったあ大人しく食事出来ないのかコイツは…」
「助かった拳藤」
柳が気になった事を聞き、調子にのった峰田が拳藤にしばかれる。流れるような一連の美しい動作だった。お約束ともいう。
「天喰?男の子だよ?それがどうかしたの?」
「ちっ!男なら大丈夫です!どうもしません!」
「むしろ女の先輩ならどうかするつもりだったのかコイツは…」
「?ねえねえ?何で峰田くん急に興味失くしちゃったの?不思議不思議!」
「ああ、波動先輩は気にしないで下さい。むしろコイツとは口も聞かなくて結構です……ええ、穢れますので、魂が」
「魂が穢れる!?ヒデェよ拳藤!!」
「自業自得だと思うけど…」
「だな」
今だ吠える峰田。相手をしてくれる拳藤、本当にありがとう。
「ねえねえ旋くん旋くん!!このお弁当誰が作ってるの?」
また急に話題を変えるねじれ先輩。
気になった事は聞かずにいれないのだろうきっと。
「弁当ですか?自分で作ってますよ。大体は昨晩の夕食のおかずそのまま流用ですけど。朝作ったのは玉子焼きくらいかな」
「スゴイスゴイ!!ねえねえ!!何で朝からあんなお地蔵さまを両手で振り回しながら走ってるのにお弁当なんて作れるの?不思議不思議!」
「お地蔵さま?」
「振り回す?走りながら?」
「ああ、拳藤と柳はその辺はあんま気にするな。ねじれ先輩、単純に慣れるとそのくらい出来ますよ」
「アレに慣れるって不思議不思議!!今日だって途中からランニング参加したのについていけなかったし」
あれ以来、たまにねじれ先輩は朝のランニングに参加していた。
大抵ついてこれず途中で脱落するのだが、根性あるなーとウチの師匠達も褒めていた。
「私だったら絶対無理だよー!多分手が疲れてフライパン持てないと思うなあ不思議不思議」
そう言って手をこちらに向けてぷーらぷーらとさせる。
なんとも可愛らしい先輩であった。
その後は先輩とおかずを交換したり、拳藤と柳も俺の弁当が気になったのか?パン一口と適当なおかずを交換したりと楽しい時間となった。
そんなこんなで何だかんだ楽しく昼休みは終わった。
ねじれ先輩とはあらためて後日演習場を借りて個性合体を試してみる事になった。
先輩が施設の予約などしてくれるそうなので、ありがたくお願いする。
……この日くらいまでは、平和な日々だったと思う。
物間は煽りグセこそあるものの、この時までは割とマトモだった。
この翌日、事件が起きた。
ヴィランによる1年A組襲撃事件。
雄英高校の施設内にヴィランが侵入し、生徒を襲った事件。
USJ襲撃事件である。
そして更に翌日、学校は臨時休校となった。
学校が休みと言っても、当然やる事はやらねばならない。
学校休みの分普段よりハードな修行を終えた俺は、夕食の買い物をしにいつものスーパーに向かう。
そこで、麗日と出会った。
「よう麗日。大丈夫か?ケガは無いか?災難だったな」
「回原くん…うん、私は大丈夫だよ。だけど…」
そこで、目の端にじわっと涙を浮かべ、
「相澤先生が…皆を守る為に戦って大ケガして…目が…目が…」
目が、ヴィランに潰されてしまった。
「幸い命に別状はないんだって。今は性能が良い義眼もあるから目は見れるようになるそうなんだけど。個性が…2度と使えないだろう、って…」
「そうか…それは辛いな。すまん、辛いこと話させちまった」
「ううん。大丈夫」
そうは言うが大丈夫そうには見えない。
辛いよな。
自分達を守って先生が大ケガして、しかも個性を2度使えなくなるだなんて。
辛い。
自分だったら間違いなく辛い。
自分が傷つくよりも、他人が傷つくことの方が辛いこともあるのだ。
「呼びかけてすまん。今日は買い物すませたら早く帰って休んだ方がいい。明日からまた学校頑張ろうぜ」
「うん…そうだね、そうする。ごめんね。じゃあまたね」
そう言って、麗日が買い物の続きをする為、立ち去る。
通常だったら一緒に買い物する所だ。
やはり心のダメージが大きいのだろう。
心配だが、自分で立ち直るしかないしな。
明日までに少しは落ち着けばいいんだけど。
そうして、麗日と別れた。
昨日で、世界が大きく変わってしまった。
平和な学校生活。
それが、実は薄氷の上のものだと知らせるような、そんな大きな転機となる大事件であった。
長老「やったね旋ちゃん!相澤先生が個性が使えなくなったのう!!僕のヒーローアカデミア・難易度ハードで遊べるドン!!!!」
注・相澤先生は命に別状はありませんし、先生は続けます。ただ個性使用が不可となりました。