回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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ここを天王山とする!!

異能解放軍の襲撃、その少し前……

 

ここはデトネラット社臨時株主総会が行われている貸しホール。そこから少し離れたビルの屋上。

空を飛べる俺やトンガリはここで待機していた。

 

『総員、傾聴』

 

耳につけたインカムからベストジーニストさんの声が聞こえてくる。

 

『間もなく臨時株主総会が開催される。そして事前の予測通りに、高確率で異能解放軍の襲撃があるだろう。まあ当然無ければそれでもいい。それだけの話だ』

 

耳によく響く、ベストジーニストさんの声。

 

『泥花市の決戦前の本来の異能解放軍の計画。それは、日本全国各地で11万を超える異能解放軍のメンバーが一斉に武装蜂起。ヒーロー達が対処出来ないほど治安を悪化させ、市民達が強力なサポートアイテム……デトネラット社などが安価で売り出したもので武装させ自警させる事でさらに社会を混乱させる。そしてその混乱を背景にトランペット……花畑孔腔が自分の政治団体心求党の影響力を国政の場で強めていき、最終的には国家転覆を狙う……まあ、ざっくりと言えばこのような物だ。この計画は、泥花市で花畑孔腔を捕らえ、心求党を実質的に無害にしたことで既に破綻させている。その為、異能解放軍は大幅な計画変更を余儀なくされ、そして今に至る』

 

「……へっ、今更わかりきったこと言いやがって」

 

トンガリが毒づくが、当然インカム越しには聞こえないので話は続く。

 

『デトネラット社からの資金援助を断つ事により、今後の入念な作戦準備を一から整えての大規模作戦が困難になった彼らにとって、必然的に取りやすい作戦はテロリズム……そう、人々の注目を集めるテロを成功させる事で、解放思想を民衆に受け入れさせ、自分達の支持者を増やす……そういった活動となる。その中でもこの臨時株主総会への襲撃は、一般市民への被害は少なく、しかし人々の関心は高く、ヒーロー・公安委員会という公権力の関わりが強いという、彼らにとって理想的なテロの標的なのだ。この襲撃を成功させる事で、異能解放軍は自らの力強さを、そして解放思想の素晴らしさを世に強くアピール出来る。そう確信している事だろう。なので、おそらく高確率で異能解放軍は襲撃してくる』

 

ビルの屋上から見上げる空は青く、風は肌寒い。

そんな空の下。ベストジーニストさんの言葉が響く。

 

『諸君。断言しよう。もしこれから本当に異能解放軍の襲撃があったとすれば……それは我々ヒーロー全員が死力を尽くす必要がある大決戦になると。作戦活動に制限のかかっている異能解放軍がこの場を襲撃するのならば……それは戦力を集中させた大攻勢になるだろうと。彼らは残り少なくさせられた作戦活動の機会を最大限に生かす為に、多くの戦力をここに集中させるだろうと。故に、これは決戦だ。大決戦となるだろう。そして我々ヒーローは、必ずこの戦いに勝たなければならない!!』

 

肌寒い空気。少し冷えた身体。

その身体に熱を叩き込むように!!ベストジーニストさんの力強く響く声が叩き込まれる!!

 

『後世の歴史家は!!今ここが歴史の転換点だと!!分岐点だと!!そう!!後で歴史を振り返った時に!!今ここが異能解放軍との戦いの天王山になったのだと!!きっと後日偉そうに後講釈するだろう!!ああ!机上の空論で偉そうに講釈を垂れる奴らはそれでいい!!それでも構わない!!だが!!我々ヒーローは違う!!そんな甘えは許されない!!今ここが天王山かどうかだと!?そんなの知った事か!!』

 

「……ふ」

「……へ」

 

冷えた身体に強制的に叩き込まれた熱。

その心地良さに思わず俺達2人、自然と笑みが浮かぶ。

 

『今!!ここだ!!この戦い!!この戦いを!!我々自身の手で天王山とするのだ!!敵の襲撃がどれ程の規模だろうと関係無い!!敵は百か!?千か!?それとも万を超えるのか!?そんな事は我々ヒーローには関係無い!!関係無いのだ!!敵がいくら来ようが関係無い!!その全ての敵を圧倒的な力で打ち破り!!絶対の勝利を収め!!そして!!今日この日を!!この戦いを!!我々自身の手で天王山とする!!』

 

互いに獰猛な笑みを浮かべ、トンガリと視線を躱す。

 

『既に勝利のデニムを作り出す為の型紙は用意されている!!総員!!心にハサミを持て!!そして異能解放軍という名の余計な布地を切り裂け!!滾る激情のままにミシンペダルを踏み抜き勝利へと続く勝機という名の生地を縫い合わせろ!!噛み合わされるジッパーの如く仲間たちと協力し!!そして熱く燃えるリベットを敵に打ちつけるのだ!!これから生まれる平和の世で自らが履く為の勝利という名のデニムを!!これより我々は我々自身の手で作り出す!!』

 

流石ベストジーニストさん!!

テンションぶち上げですわ!!

 

『総員!!死力を尽くせ!!ここを天王山とする!!』

 

だから!!俺とトンガリは叫ぶ!!

 

「「シュア!ベストジーニスト!!」」

 

 

 

……そして、このしばらく後……予測通りに異能解放軍の襲撃が始まった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideホークス

ここはデトネラット社臨時株主総会が行われていた貸しホール。

そこに今は俺と物間くん……ファントムシーフの2人だけが立っている。

 

異能解放軍の襲撃からある程度時間が経過した。

 

……そろそろ、これは様子がおかしい、と考えた異能解放軍の先頭がこのホールへとたどり着く頃だろう。

 

そして、その予測通りに貸しホール入り口の扉が蹴破られ、異能解放軍の連中が大勢貸しホールの中に侵入してきた!!

 

「ホークス!!……そしてあれは学生のヒーロー見習い!?」

「2人だけだと!?」

「エンデヴァーは!?エンデヴァーはどこだ!!」

「いやそれより公安委員長は!?他の株主達はどこだ!?」

 

俺とファントムシーフだけが立つホールを目にして、驚き戸惑い叫ぶ異能解放軍達。

 

そんな彼らに対し、

 

「臨時株主総会はもう終了しましたよ。元々議決権である総株数の3%を新白連合が。51%を政府系企業が保有してますからね。ぶっちゃけその2つからの委任状を持つ僕と公安委員長の2人だけで臨時株主総会は開催可能。よって進行はスムーズ。議案も少ないのでサクサク進みます。よって本日の臨時株主総会はもう終了です。いやあ!!遠路はるばるからのわざわざのお越しお疲れ様でした!!」

 

「な……ん、だと……」

 

「株主の皆様もホークスさんの羽でもう半強制的に退出済みです……まあ、高確率でヴィランの襲撃が予想されるって事前に伝えているのに、オンラインではなくここに来たがる民度の悪さには辟易しましたが……まぁ、流石にそこまで多くも無かったから良かったですけど……」

 

「いやぁ!!思ったよりいたよねえ!!俺もビックリしたよ!!」

 

「いましたねぇ。『臨時株主総会にリアルで出席するのは株主の権利だろう!!ヴィランの襲撃?そんなの知らん!!安全確保はそちらの義務じゃないか!!』なんてリアルに言う人いるんですねえ。流石に少し笑ってしまいましたが」

 

「いたねえ。それ聞いて引き攣るエンデヴァーさんの顔は中々の見物だったねえ」

 

大勢の異能解放軍の敵。それを目にしてのほほんと話す俺達。

 

「な……な、な……」

 

その異様さに、異質さに……動揺する異能解放軍達。

 

「予想通りに……本当に、予想通りに遠路はるばるご苦労様です。本日は電車でお越しですか?新幹線ですか?それとも近くまではお車でお越しですか?この近辺の異能解放軍の拠点は全て虱潰しに潰してますからね。本日はさぞ遠方からご来場頂いたんでしょうね。ご苦労さまです」

 

「公共交通機関使って、駅とかからは歩きですもんねえ……当然、様々なギミック仕込んだヒーローコスチュームみたいなものは注目されるから着れないし、強力なサポートアイテムも持って来てないですね……まあ、そんなの持ってたら道歩いてるだけで職質されるから当然だけど」

 

「あ……う、うあ……」

……状況を理解し、呻きの声を上げるヴィラン。

……だが、もう遅い。

 

「つまり、皆さん極端な武装は出来ず、身体一つで遠方からわざわざお越しくださったと……本当に、本当に……ご苦労さまですね」

 

「今回の臨時株主総会の『会場の警備』に関しては、わざわざエンデヴァー事務所とホークス事務所の『2つ』が担当すると告知してましたからね……武装してなくても、人数だけ大勢集めれば何とかなると思ってませんでした?」

 

 

「これは罠だ!!逃げ!!」

 

リーダーらしき男が叫び、慌てて会場から出ようとする異能解放軍達。だが!!遅い!!

 

「骨抜!!」

「あいよ!!」

 

物陰に隠れていた骨抜くん……マッドマンが現れ地面に手をつき個性を発動!!!

 

個性・柔化!!!

 

「「「「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」

 

地面が柔らかくなり、その柔らかくなった地面に会場内の異能解放軍達が囚われる!!

 

「臨時株主総会は異能解放軍壊滅への作戦の一環にして貴方がたを誘き寄せる罠でもあります。わかりやすく美味しそうなターゲット。臨時株主総会の開催にはあらかじめ開催日時と場所の告知が必要なので、日時も場所も一切の違和感無く世間に伝えられる。敵の襲撃場所と日時をこちらから指定出来るんですから、まあその気になれば罠なんて仕掛け放題ですよね」

 

「参考までに、ホントに襲撃が無いのならそれはそれで良かったんだけどね」

 

柔化した地面の中をもがく異能解放軍達に、ファントムシーフが告げる。

 

「……さて、そろそろ会場内にも会場の外にも異能解放軍の皆々様方が集まり終わった頃ですかね?この臨時株主総会を餌に貴方がた異能解放軍をこの会場に大量に誘き寄せ、その貴方がたをベストジーニスト事務所他、本作戦に協力頂いた多くのヒーロー達で包囲殲滅する……これが本日の『本当の』題目です」

 

「クソ!!ヒーローの癖に!!汚えぞ!!」

叫ぶヴィラン。

そんな彼に。

 

「この程度の策に引っかかるそちらが間抜けなんですよ」

「クソぉぉぉぉ!!!!!」

 

冷淡にファントムシーフが返す。

 

「さてホークス……ここは僕たちに任せてください。貴方は外へ」

「うん……わかった、ここは任せるよ!!」

 

頼もしい若きヒーローの言葉。それに背中を押され俺は会場を出て外に向かう!!

 

臨時株主総会を餌とした異能解放軍の包囲殲滅作戦。

 

ヒーロー達の長い長い1日が始まる!!

 

 

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