side緑谷
異能解放軍との戦闘開始。
……から、一体どれだけの時間が経ったのだろうか?
30分は過ぎたと思う。
1時間は経ったのだろうか?
戦局は、見る人の立場や考え方によってどちらも優位と見えるのではないだろうか?
……そんな奇妙な硬直状態になっていた。
「ぬん!!」
「どっせい!!」
「ん!」
上から順にベストジーニスト、マウントレディ、そして同級生の小大さん。
対多数の相手を得意とするヒーロー達の攻勢!!
ベストジーニストの操る繊維は多数のヴィランを捕らえ。
マウントレディの投げる地引き網も、小大さんが遥か上空から投げる数多の拘束アイテムも多くのヴィランを捕らえていた。
その他、多くのヒーロー達によるその激しい攻勢。それを真正面から受けて立つのが圧倒的大多数の異能解放軍!!
「怯むなぁ!!」
「行けぇ!!進めぇ!!」
「「おおおおおお!!!!」」
……単純にヒーロー達の攻撃で捕まるよりも、その数よりも更に更に多くのヴィラン達が僕たちヒーローサイドへと激しい抵抗を続けている。
一騎当千の活躍をするヒーロー達が優位と見る人もいるだろう。
倒されても倒されても、なお抵抗を辞めることの無い異能解放軍を優位と見る人もいるだろう。
……結論を言えば、どちらが優位とも断言することのできない、そんな硬直状態だと言うのが正解なのだろう。
一騎当千の活躍を見せるヒーロー VS 数の暴力で戦線を維持する異能解放軍。
フラットな視点で見るならば、そんな、どちらが優位と断定出来ないような、そんな戦いが続いていた。
一見ヒーロー達が押しているが勝ちきれず、異能解放軍は押されているがまだまだ戦力は沢山控えている。
……普通に……これを普通と言うのが正しいのかわからないけど、本来であれば、この硬直状態が続くのが正しい……そう、それこそが正しい姿なのだろう……
「「「おおおお!!!!」」」
「「「ぎゃあああ!!!!」」」
「クソ!!またやられたぞ!!」
「誰か!!誰かアイツラを止めろぉ!!」
「こんなん!!こんなんどうしろってんだよぉ!!」
……そんな理屈の上に成立するような頭でっかちの正しさを、まるで道理を蹴っ飛ばすようにして異能解放軍ごと蹴散らしている規格外の3人のヒーローがいた。
エンデヴァー
ホークス
スパイラル……つまり、回原くんだ。
空を制圧する炎の羽ドリル。
対・大多数のヴィラン相手に対し、最強とも言える極悪個性合体で猛威を振るう3人のヒーロー。
瞬きの間に多くの敵を打ち倒すその圧倒的な力が、この硬直した戦線を少しずつ少しずつヒーロー側へと優位へ戦線を傾け始めていた。
「アイツラを!!アイツラを何とかしろぉ!!」
「被害は気にするな!!あの3人に攻撃を集中しろぉ!!」
「何としてもあの3人を倒せぇ!!!」
炎、氷、雷、風……異能解放軍の連中が放つありとあらゆる攻撃がエンデヴァー、ホークス、スパイラルへと迫る!!
それを!!
「……一時、合体解除だ」
「了解!!」
「……攻撃ばかり意識してその後の事をあんま考えてない奴ら近くに来てます!!」
「……それぞれ各個撃破だ。しかる後にもう一度個性合体を行う!!」
「「了解!!」」
個性合体を解除し、自分達に向かって来た個性による攻撃を回避する3人!!
回避しがてらそこらの近づいて来ていた異能解放軍をそれぞれ4、5人ぶちのめし、からの再度3人合流し!!
「「「個性合体!!フェザー!!スパイラル!!ヘルフレイム!!!」」」
再度敵にとっては悪夢のような個性合体を行う!!
ドリル属性を付与され、炎で加速された無数の羽が異能解放軍をドンドンドンドンと打倒していく!!
「ぐわぁぁぁぁ!!」
「ぎゃあああ!!!」
「どうすりゃいいんだよ!!」
「マジで誰かなんとかしろあのゲッターチーム!!」
攻撃回避のための合体解除のついでにそれぞれが近くのヴィランを撃破し、再度合流し個性合体の攻撃をしかけるあの3人はほんとゲッターチームなのかな?
この場には多くの一騎当千のヒーロー達がいる。
……しかし、あの3人は明らかに別格だった。
この戦場にオールマイトはいない。
誰か一人の背中に、オールマイトは背負えない。
……でも、だけど……
(オールマイトとは全く違う……一人だけでなく、誰かと力を合わせる事でオールマイトを超える……そんな、そんな、オールマイトとは全く違う平和の象徴が……)
……もしかしたら、今、ここで産まれようとしているのかもしれない!!
「「「「「おおおおおお!!!!」」」」」
……そんな!!そんな僕の甘い幻想を打ち砕くような!!そんな危険な気配を秘めた声!!
「あれは!!海外製の
そのトリガーを打った異能解放軍のメンバー達!!
数は20を!!ひょっとしたら30を超えるのか!!
「行けぇ決死隊!!エンデヴァー!ホークス!スパイラルの3人を命をかけて殺してこい!!」
敵の前線指揮官らしき男が叫び!!それに応えるようにトリガーを打った異能解放軍の決死隊が走り出す!!
「ぬう……」
タイミング悪く、炎の羽ドリルは遠くの敵を倒す為にあの3人から離れてしまっている!!
「不味い!!」
「デクくん!!」
麗日さんの声が何処かから聞こえる。
でも、考えるより先に僕は動いてしまっていた!!
「おおおおおぉぉぉ!!!!」
トリガーで強化された異能解放軍の集団。
その中に!!僕は全身を強化して飛び込んだ!!
今!!この状況で!!エンデヴァー!ホークス!そして回原くんのうち誰か一人でも倒させる訳にはいかない!!
絶対に!!絶対にそれは許されない!!
「おおおおおぉぉぉぉ!!!」
無茶とか無謀とか!!僕はよくそう言われる!!
でも!!だけど!!
「ここは!!無茶を通すところだろぉ!!!」
あの3人を!!絶対に!!やらせる訳にはいかない!!
僕の無謀とも言える突撃!!それに!!
「……クソナードが……アホなことしてんじゃねえよボケ……テメエが突っ走った所為で、切り札一個ココで見せちまっただろうがクソが……」
「かっちゃん!!!」
その、僕の無謀な突撃に合わせるようにして!!遅れたところから追いつくようにして!!かっちゃんが!!かっちゃんが後方から追いつき僕に並んだ!!
嘘だろ!!かっちゃんは空も飛べるくらい機動力にも長けているけど!!こんな!!こんな超スピードでの突撃が出来るなんて知らなかったよ!!
そこで!!気づいた!!
「かっちゃん!!足!!足の裏!!足の裏でも爆破出来るようになったんだね!!」
「汗腺は足の裏も多いんだよ!!クソ!!隠しておいて対ドリル戦用の切り札に取っておいたのにテメエの所為で台無しだクソナードが!!!」
かっちゃんは!!かっちゃんはこれまで見せていた手の平からの爆破に加え、足の裏からの爆破による加速も加えて僕に追いつき並んだ!!
細かく見ると!!これまでとは靴のデザインも変わっている!!冬のインターンの経験で、かっちゃんもまた大きく成長したのだろう!!
そんなかっちゃんが!!
「やるぞデク!!癪だが!!癪だが!!ドリル含めたあの3人は個性合体の攻撃に専念させた方がいい!!露払いは俺らですんぞ!!」
回原くんへの対抗心は強いけど、この手の判断では絶対的に優れているかっちゃんの言葉!!
僕はそれに頷く!!
「うん!!行こうかっちゃん!!ここは僕たちで食い止める!!」
「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
そして!そして僕とかっちゃんの2人はトリガーで強化された異能解放軍の集団へと突撃した!!
side麗日
「デクくん!!爆豪くん!!」
私の静止の声を振り切るようにして飛び出したデクくん。
そのデクくんを追いかけるようにして飛び出した爆豪くん。
……その2人が!!その2人が!!違法薬物で個性を強化したヴィランの集団に飛び込み!!そして大暴れしている!!
殴り殴られ飛びかかり避けられ更に飛びかかり殴り合う!!
そんな!!そんな激しい戦闘!!
私も!!私も!!デクくん達の助けになりたい!!でも!!
(私には!!私には!!あの場所に飛び込み活躍出来るだけの力が無い!!足手まといになってまう!!)
そんな!!そんな自分の力不足が!!その悔しさが心を抉る!!
「……麗日、気持ちは何となくわかるよ……私も同じ気持ちだし」
「……拳藤さん?」
……そんな私にB組の拳藤さんが声をかけてきた。
彼女は……拳藤さんは、ちょっと困ったみたいに笑い、
「アンタの気持ち……ある程度はわかるつもりだよ、麗日……ちなみに、私の想い人はあそこで絶賛大活躍中でね……緑谷はあそこで暴れてて、回原はあそこで暴れてる……そして、私もアンタもここにいる……お互い同じ気持ちでいるって事、わかってもらえるかな?」
「……うん……ごめん、拳藤さん……少し焦っちゃった」
拳藤さんの困ったような……悔しそうな顔を見て、彼女の気持ちがわかってしまう。
(……拳藤さんも……悔しいんやね)
わかるよ。うん、わかるよその気持ち。
自分の好きな人が大変な思いをしながら頑張っている、今この時。隣に立てないで、力になれない、その悔しさ……
情けなくなるよね。
泣きたくなるよね。
もっと普段から……いや、何なら入学前から頑張っていれば良かったとか……そんな事を思っちゃうよね。
今も目の前で活躍している人がいる。
その人が……その人が同級生で……自分の好きな男の子なのに、力になれないだなんて……本当に、本当に悔しくて情けなくて泣きたくなっちゃうよね。
……でも…、
だけど……
「「だからって。だからって。このまま終わって良い訳ないよね!!」」
そう、言葉が、言葉が不思議と被って、
「……えへ♪」「……ふふ♪」
……不思議と、笑顔も被った。
そして拳藤さんが私にこう言った。
「ウチのクラスのフィクサー……大人レベルでも性格とか頭脳のネジ曲がったおバカがさ、一発この状況で『かましてやろうぜ!』って、そんな素敵なアイデアがあるらしいんだけど……アンタも一口乗らないかい麗日?」
「フィクサーって物間くんやんね……うん……有効そうだけど大丈夫なんそれ……?」
「……本人は『学生は学生らしくイタズラして場を引っ掻き回そう』……って楽しそうに、すぅ……ごっく!!まあ、楽しそうにそう言ってるよ。私も正直不安だけど……不安だけど、仲間に不利益を与えるような奴じゃない。それは、そこは信じてるんだよね」
ちょっと疲れたような……そんな顔をする拳藤さんの指差す先。
そこには物間くんが……小大さんが、骨抜くんが、轟くんもいるの!!塩崎さんも何なら梅雨ちゃんもいた!!え!!逆に私が最後なん!?
「麗日はずっと緑谷見てたからねぇ……」
「あ、あは……あははは……」
それで声かけるのが遅れたとのこと。
何かごめんやん……
そんな私に、ふふ!!っととても綺麗な笑顔を向けて、
「さあ、やろうよ麗日……こんなとんでもない戦場だけど、ちょっと私達雄英生で、一発かましてやろうじゃないか!!」
そんな拳藤さんの力強い言葉、
それに……
「ああ……やろうぜ麗日……これが俺の……俺達のヒーローアカデミアだ!!」
「けろけろ……ほんとそのフレーズ好きなのね轟ちゃん……」
「あは……あははは……」
被せてきた轟くんと梅雨ちゃん。
今も激しい戦場。
戦っているデクくんと爆豪くん。
空にはエンデヴァーとホークスと回原くん。
一進一退の戦場。
……そんな中で、一体……一体、学生の私達に何ができるのだろうか?
でも……
「……うん。やろう!!やったろうよ皆!!」
「お茶子ちゃん」
梅雨ちゃんの言葉。
それに応えるようにして。
「やろう!!やったろうよ皆!!うん!!轟くんの言う通りやん!!」
拳藤さん。小大さん。骨抜くん。物間くん。塩崎さん。梅雨ちゃん。轟くん……皆の顔を見回して、
「やろう!!やろうよ!!私達に出来る事で!!ここを!!この状況を何とかしてみせよう!!やってやろう!!皆で!!皆でこの状況を何とかしちゃおう!!」
そうだ!!何か恥ずかしいからあんま言えないけど!!言えないけど!!でも!!でも!!轟くんの言う通りだ!!
「これが!!これこそが私達のヒーローアカデミアだって!!そう!!これが私達だって!!皆に見せつけてやろうよ!!」
私は1人だけじゃ何も出来ない。
1人じゃ何も出来ないけど、けど、何も出来ないままじゃいたくない!!
だから!!だから!!見せてやるんだ!!私達皆で!!
私達が!!私達皆が雄英高校で!!ヒーローアカデミアで学んで身につけた!!その皆の力を!!