回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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5分!!

side蛙吹

 

「フィィクサァア!!!!!」

 

まるで役者のようね物間ちゃん。彼の言葉と同時の大げさな身振り手振り。その両腕の動きに合わせて黒いモヤが……私達A組が4月にUSJで見たものと同じ、不思議な不思議な黒いモヤが出現した。

 

「我々新白連合と組んでおいてラストエリクサー症候群だなんて甘えは断じて許されない。使えるものは何でも使うし、出し惜しみなんてもってのほかだ。それが優秀な個性で僕がコピー出来るのだとしたら……例えそいつがタルタロスの奥に引っ込んでいたとしても、交渉でも何でもして個性コピーでの使用許可を取りに行くのが我らの流儀だ!!」

 

ヴィラン連合の黒霧というヴィラン。

彼の持っていた個性。ワープゲートを作る個性!!

 

「日本全国各地に仲間を自由自在に送る程の練習時間は流石に取れなかったけどね!!まあ!!ここが戦場になるとさえわかっていれば貸しホール周辺のエリアへのワープは問題無く出来るように仕上げてきたさ!!」

 

私達はこれからこのワープゲートを使いこの戦場を引っ掻き回すのだ!!

 

「とはいえ、流石に血や体組織などの遠隔での個性コピーが可能になる遺伝情報の持ち出しまでは許可されなかった!!だから!!だから5分だ!!僕が一度の接触で個性をコピーし使える最長時間である5分!!ここから5分で!!僕達の力で!!この戦局を!!この盤面をヒーロー優位へと傾ける!!」

 

 

「よし!!行こうみんな!!飛び込め!!」

 

物間ちゃんの言葉を拳藤ちゃんが引き継ぎ、そして指揮官自ら先陣を切り黒いワープゲートへと飛び込んだ!!

 

「行こう梅雨ちゃん!」「ええ!!お茶子ちゃん!!」

 

そしてお茶子ちゃんが!!私が!!皆が次々ワープゲートへと飛び込んだ!!

 

 

……ほんの一瞬。

……極々短時間の、不思議な不思議な浮遊感。

 

水の無い水中を泳いでいるような不思議な感触。

 

……その、短時間の不思議な時間が過ぎて、

 

「よし!!狙い通りのポジションだ!!事前の打ち合わせ通り!!轟は右を!!骨抜は左だ!!やっちゃえ!!」

 

「任せろ!!」「やるぜ!!」

 

ワープゲートを潜った先。そこはとある異能解放軍の大集団の後方のポジション!!

眼前には数えるのも億劫になるほどの大多数の異能解放軍のメンバー!!

 

「ん?なんだ?」

「後ろから声?」

「おいおい流石に気の所為だろ……さっきまで後ろは誰もいなかったぜ……そんな、まさか急にヒーロー共が来るだなんて事は……」

 

その異能解放軍の大集団の……最後方のグループが、その数人がこちらに振り向こうとして……

 

……だが!!遅い!!

 

「凍れ!!」

「沈め!!」

 

それぞれ轟ちゃんの大規模氷攻撃・骨抜ちゃんの広範囲地面柔化攻撃が発動した!!

 

「「「「ぎゃあああ!!!」」」」

「「「何だよ!!急に何が!!何が起こってるんだ!!」」」

 

振り向こうとした異能解放軍メンバーごと大多数の異能解放軍達を凍らせる巨大な氷が炸裂し、また別方向では一瞬で柔らかくなった地面に大多数の異能解放軍達が沈み、その後の個性解除で元の硬さに戻った地面に囚われていた。

 

「けろけろ……私、思った事は何でも言っちゃうの。ワープゲートで敵集団の後方に気づかれないよう瞬時に移動して、初手開幕ブッパで轟ちゃんと骨抜ちゃんの広範囲面制圧個性攻撃は流石に鬼畜の所業過ぎると思うのよ」

 

そう、つまりこれは……

 

「けろけろ……ヒーロー見習いによる、テロリストへのワープゲートを使用したゲリラ戦術……それが貴方の策なのね物間ちゃん」

 

私の言葉に物間ちゃんは役者のようにちょっとキザな仕草で髪をかき上げながら笑い、

 

「学生らしいイタズラだろう?ワープで移動しながら『ちょっとだけ』敵集団に後方からイタズラして、さっさとトンズラかましてやるのさ」

 

「けろけろ……やられた方はたまらないわね。さぞかし頭にくるでしょうね……こんな『規格外のイタズラ』をされたら」

 

「おしゃべりはそこまでだよ2人とも!!上空の唯からドローンも使って集めてもらった情報から次の襲撃に丁度いいポイントを見つけたよ!!物間!!もういっちょワープ頼む!!」

 

上空を巨大ドローンで飛行し情報収集を担当してくれている小大ちゃんと情報交換していた拳藤ちゃんが、次のワープゲートによる襲撃ポイントを物間ちゃんに伝える。

 

 

「フィィクサァア!!」

 

物間ちゃんは叫びながら瞬時にゲートを開く!!

 

「よし!!次だ!!行くよ皆!!」

 

そのゲートに拳藤ちゃんがまず真っ先に飛び込む。近接戦闘能力が高く、かつ指揮官適性の高い拳藤ちゃんだからこそ出来る行動。ワープ先で何か不足の事態が起こったとしても、彼女がまず先にそこにいれば色々な対応策を見つけてくれるだろう!!

 

続いて骨抜ちゃん、轟ちゃん、塩崎ちゃんと飛び込み、私とお茶子ちゃんも続く。

 

またもワープによる不思議な空間の不思議な時間。

その一瞬のワープによる移動を終えて、

 

「骨抜!!轟!!」

 

「「オラァァァァ!!!」」

 

「な!何が!!」

「アイツラ!!いつ背後に!!ぎゃあああ!!」

「どうなって!!ぐわぁぁぁぁ!!!」

 

ワープによる移動+開幕ブッパ轟&骨抜コンビによる黄金コンボが炸裂し、先ほどと違う別の異能解放軍の大集団を凍らせたり地面に沈み&拘束する。

 

「チィ!!あのガキども!!」

「殺せ!!殺しちまえ!!」

 

2人の広範囲攻撃から運良く逃れた異能解放軍の数人がこちらを攻撃しようと殺気立ちながら向かって来るけど……

 

「物間!!次だ!!座標Dの24!!」

「フィィクサァア!!」

 

拳藤ちゃんの素早い指示で物間ちゃんが次のゲートを開く、そして皆が急ぎそのワープゲートに飛び込んだ!!

 

「待てぇこのクソガキども!!」

「ふざけんな!!こんな真似しでかしやがって!!許さねえぞクソガキどもがぁ!!」

「逃げるなボケェェェ!!!」

 

怒り心頭のその声を背に、飛び込んだゲートで移動。

またも不思議な極小短時間を過ごし、また新たな敵大集団の後方へ、

 

……そして、また先ほどまでと同じ光景が繰り返される。

ワープゲートからの奇襲広範囲面制圧個性攻撃×2は極悪コンボ過ぎると思うのよ……

 

物間ちゃんが個性を使える制限時間は5分。

この5分を最大限に使い、ゲリラ戦で敵に甚大な被害+混乱を与えるのが私達の目的だ。

 

私達はこの後も敵のヘイトを盛大に最大級にかき集めながら、ワープゲートによる移動+轟ちゃん&骨抜ちゃんによる個性攻撃によるゲリラ戦を続けていった。

 

……でもだけど、まあ当然毎回毎回そんな理想的に事は運ばない訳で……

 

「……主よ。皆さんを守る為の力をお与え下さい」

「梅雨ちゃん!!」「お茶子ちゃん!!」

 

広範囲攻撃を避けてこちらに攻撃をしかけてくる敵もいる訳で、まあ毎回毎回こちらにとって理想的にばかり事は運ばないわよね。

 

そういった敵への対処が私とお茶子ちゃん、塩崎ちゃんの役割だった。それぞれがそれぞれのやり方で敵を迎撃する。

 

この作戦の要は言うまでもなく物間ちゃんだ。

次いで轟ちゃんと骨抜ちゃん。

その次が指揮官の拳藤ちゃんだろう。

 

この4人を傷つけさせる訳には行かないのよ!!

 

物間ちゃんが倒された時点でこの作戦は終了だ、

轟ちゃんと骨抜ちゃんのどちらかが倒されるとこの作戦の有効性は著しく下がるだろう。

拳藤ちゃんも重要だ。戦闘中に上空の小大ちゃんと情報交換しながら次の襲撃ポイントを探しつつ、かついざとなれば自分も前線に出て私達のフォローも出来るようにしている。

 

……でも、出来れば指揮官の拳藤ちゃんは直接戦闘ではなく指揮に専念させたい。

 

だから、だから私とお茶子ちゃん、塩崎ちゃんの役割も重要なのだ。

この作戦の攻め手が轟ちゃんと骨抜ちゃんならば。

守り手は私達3人に任されているのだもの!!

 

「よし!!次だ物間!!ポイントYの57!!」

 

「了解!!」

 

(フィィクサァアって言わなくなったわね物間ちゃん!!)

 

それでもこれまでと同じようにワープゲートを作り出し皆を移動させる物間ちゃん。

でも……これは?

 

(疲労かしら……いえ、当たり前よね)

 

物間ちゃんはコピーした個性を最大5分使うことが出来る。

でも使えるからといってそれは……

 

(疲労は……本人の疲労は、完全に度外視していたわ……)

 

コピーした個性を5分使えるということと、そのコピーを5分間使いまくる疲労というのは全く別の話。

 

(これだけの規格外の個性……それを使う物間ちゃんの疲労への配慮!!それが私達には足りなかったのではないかしら!!)

 

ワープゲートを出て、これまで通りに轟ちゃん&骨抜ちゃんの広範囲攻撃!!

 

「「「「「ぎゃあああ!!!!」」」」」

 

それにやられて悲鳴を上げる異能解放軍達。

それを横目に、

 

「……物間ちゃん?」

「……何だい?どうかしたのかな蛙吹?」

 

物間ちゃんに私は話しかける。良く見ると一見涼しい顔をしているようで、呼吸は少し早く、汗を滝のように流していた。

 

「……物間ちゃん……貴方……」

「……それ以上は言いっこなしだよ蛙吹」

 

私の言葉を遮るようにして、物間ちゃんは、

 

「僕のクラスメイトは……僕がウチのクラスのエースに勝手に任命して、悪友とも親友とも勝手に決めているアイツなら……アイツなら、こんな程度でへたばることは絶対に無いんだよ蛙吹」

 

「物間ちゃん……」

 

浅く早い呼吸。それを周りに心配させないように極力隠しながら物間ちゃんは、

 

「ヒーローってのは限界を超えるものさ。限界を超えてこそヒーローだろう。さあ蛙吹。Plus Ultraだよ。ここが、こここそが僕らが限界を超えていくところなのさ」

 

「……」

 

……正直、少し驚いてしまったの。

一見冷静でひねくれていて……理性的に、極力合理的に振る舞っている物間ちゃん……その彼の中に、

 

「さあ……笑いながら進もうじゃないか蛙吹。僕らは笑いながら、楽しみながら前へ前へと限界を超えて進んでいくのさ。笑いながら限界を超えて、世間の常識を蹴っ飛ばして更にもう一つ限界を超えていこう。楽しみながら限界を一つや二つ超えていった先で、きっとアイツは僕らを待っている……まあ、たどり着いた瞬間に、また少し先に勝手に進んでそうなのがアイツの困った所なんだけどさ……」

 

……その物間ちゃんの中に……

(……貴方は……貴方は、こんなにも熱いものを胸の奥に秘めていたのね物間ちゃん)

 

こんな、そんな、熱い気持ちを秘めていただなんて!!

 

「……梅雨ちゃんと呼んで」

「……蛙吹?」

 

……それは、極々自然にこぼれた言葉だった。

 

「私の事は蛙吹ではなく梅雨ちゃんと呼んで……さあ、あともう少し……約束の5分が終わるまで後どのくらいあるのかしら……最後まで……最後まで笑いながら、楽しみながらいきましょう物間ちゃん。それが、今日、今ここでの私達の流儀なのでしょう?」

 

私のその言葉。

それを聞き、物間ちゃんは虚をつかれたように……まるで子供のようにキョトンとした顔を一瞬だけ見せて、

 

「……ああ、そうだね。ではお言葉に甘えて、梅雨ちゃんと呼びせてもらうよ。うん、そうだね……僕らは笑いながら楽しみながら限界を超えていこう……あと残り一分だ……後少し、もう少しだけ力を貸してくれ梅雨ちゃん」

 

「ええ……もちろんよ物間ちゃん」

 

そうして、拳藤ちゃんから次の襲撃ポイントの指示が出て、私達はまた移動する。

 

……ここからの最後の一分。

私達は驚異的な戦果を上げる事に成功する。

 

私達は無事に限界を超えて……この作戦をやり遂げることに成功したのだった。

 

私達雄英高校生徒によるゲリラ戦。

それは後方撹乱+敵に甚大な被害を与える事に成功した。

 

……そして、後方で起こった大混乱だなんて絶好の機会を見逃すような、そんな無能なヒーローはこの作戦に参加していなかった!!

 

「ここだ!!こここそが勝機だ!!」

「ホークスさん!!」

「ああ!!わかってる!!力を貸してくれ2人とも!!」

「この機を逃すな!!」

「よくわかんねえな!!片っ端から蹴り飛ばす!!」

「ミルコォ!!ミルコォ!!……いや!!もういい!!ここはいい!!今はいい!!行け!!行っちまえミルコ!!」

 

……一部貧乏くじ係の悲哀の声が聞こえたりもしたそうだか、この勝機を逃す訳もなくヒーロー達の大攻勢が始まり、戦局は一気にヒーロー側優勢に傾いていったのだった。

 

 

 

 

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