sideホークス
「エンデヴァーさーん!!俺らの休憩の番が来ましたよー」
「うむ」
襲撃してきた異能解放軍の一部メンバーが立て籠もった貸しホールのある建物。
それを黙ってじっと睨みつけているエンデヴァーさんに俺は声をかけた。
(まあ結構無茶しましたからねぇ!!)
何だかんだで休憩は大切だ。
それはこの人もわかっているのだろう。
占拠された建物を包囲するヒーロー達。
休憩が終わりこちらに来たヒーロー達に包囲の役割を引き継ぎ……それを最後までしっかり見届けると、ようやくエンデヴァーさんは警戒を少しだけ解いた。
(……ほんと、真面目過ぎて損ばかりする人ですよねぇ)
包囲した建物に背を向け歩き出すエンデヴァーさん。
今交代で来たヒーロー達が休んでいた、仮設の休憩スペースに向かい僅かな休みを取るつもりなのだろう。
休息の大切さを知らない人では無いのだ。ただ単にその休息の優先順位が低いだけで。
横に並び歩きながら、
「……おそらくこの休憩が終わり次第、建物に立て籠もった異能解放軍に向けて攻勢をしかける事になるだろうな」
「ですねえ」
真面目か。休憩なんだから休憩せんかい!!
休憩中くらい頭切り替えて仕事の事なんか忘れてればいいものを!!
「……貸しホールという大規模空間を備えた建物への襲撃……ホール自体は狭くないが、その道中となる通路などは決して広くはなく、かつ建物内の様々な部屋に隠れて奇襲や罠をしかけて来る事は当然想定するべきだろうな……攻め手にとって決して有利とは言えない状況だ。何か攻略に向けていい案は無いのかホークス?」
そんな休憩に入ったばかりにも関わらず真面目なエンデヴァーさん。そんな彼を軽く茶化すようにして、
「いやぁ~すんません俺この手の貸しホールとかって『金払って借りた事しかなくって』!!『不利な状況で襲撃する』のは初めての経験なんですよぉ!!それで流石に有効なアイデアとかないですわ!!お力にもなれず期待にも応えられずすみませんねえ!!」
そんな感じで戯けた一言。
俺のそんな言葉にエンデヴァーさんは微かに笑い、
「ふっ……それならそれでかまわん……元々……貴様にその辺りはさして期待していないしな」
「酷っでぇ!!酷くないすかエンデヴァーさん!!」
「ふっ」
「……ったく」
そんな感じで楽しく話しながら仮設の休憩スペースに到着。
飲み物や栄養補給用のゼリーなどを受け取り、用意された椅子に座りちょっと休憩。
(……何だかんだで座るとこれまでの疲れがどっと出ますねえ!!)
椅子に座り水分&栄養補給をしていると、戦闘開始からこれまでの疲労がどっと押し寄せてきた。
3人の個性合体による大暴れ。
敵のヘイト買い過ぎて集中砲火&からのその迎撃。
俺の個性合体は殲滅力が高過ぎる為にヘイト買い過ぎて集中砲火受けまくるのが欠点だなぁ、まあそれでも有効過ぎるから使うんだけど……
こうなると優秀なタンク役が欲しいところではあるが、パッと思いつく中で一番優秀なタンク役がウチのドリル3なのである。中々世の中上手く行かない。
そんなドリル3こと回原くん……スパイラルがルミリオンとこちらに歩いて来るのが見えた。彼らもようやく休憩の準備が来たのだろう……
これは俺達大人の責任だ。
学生にも関わらずこの鉄火場の最前線に立たせてしまい、かつ休憩の順番までこの2人は俺達と同じ最後のシフトにしてしまったのだ。
年末からのゴタゴタで社会の混乱は加速し、辞めたヒーローのシワ寄せが彼らのような優秀な学生ヒーロー達へと向かってしまっている。本当に良くない。
良くない。良くないのだ、
(……だから、だから……ここで、その流れを終わらせたい)
丁寧に仕掛けた異能解放軍に対する極上の罠。
その一連の罠の集大成とも言える臨時株主総会からのハメ殺し。
ここだ。ここで決めるのだ。
ここで、天秤を動かす。
「……ここまでご苦労だったなスパイラル、ルミリオン」
そしてその思いはエンデヴァーさんも同じなのだろう。
「お疲れ様ですエンデヴァーさん!ホークスさん!」
「お疲れ様なんだよね!!」
彼らに労いの言葉をかけるエンデヴァーさん。それに2人が応える。
彼にはわかっているし、彼らもわかっているのだ。
「……ふむ。ちょうど役者デニムが揃っているな」
「は!!生意気やら脇の臭いやつやらよりどりみどりだな!!蹴り飛ばしてえ!!」
「……ここだけだ…、今……今だけ頑張れば夜はお楽しみタイム……頑張れ……頑張るぞ俺……」
そして、今来た彼、彼女……ベストジーニスト、ミルコ、エッジショットにもわかっている。
「おおう!!こりゃぁ千両役者のそろい踏みじゃねえか!!おいコラジジイの座る場所はちゃんと残ってるんだろうなあオイ!」
「優秀な……本当に優秀なメンバーが揃っている……揃っているが……いささかユーモアの方向性がイマイチではないかなこのメンバーは……」
そして少し遅れてやってきたグラントリノ、サー・ナイトアイ……彼らもわかっているのだろう。
「ふん……本当に……図らずも役者が揃った訳か」
「ん?……んだよオッサン?」
受け取った飲み物を飲みながら、ミルコがエンデヴァーさんに問いかける。
「わからんか?」
「うぜえ。わかんねえから聞いてんだよ。細かいとこツッコんでばかりだとモテねえぞオッサン」
「……この過酷な戦場……その戦場で最後の最後に休憩を取った我ら……俺達こそがこの戦場における最大戦力……これからの異能解放軍への最後の一押しをする最大最強の戦力……それが俺達という事だ」
(……あ、スルーするやんエンデヴァーさん……)
だからモテないんやぞ、と、
ミルコだけではなく俺も喉から出かけた言葉は胸に秘めておくけれど。
まあ言ってる事は間違っていない。
罠にはめて異能解放軍へ大攻勢。
それに耐えきれず建物に籠城した異能解放軍。
そんな連中へと最後の最後に極悪な正義の鉄槌を下す、ヒーロー側の最強最大のメンバー……それが、最後に休憩を取った俺達だと。
「……休憩が終わり次第、立て籠もった異能解放軍へと攻勢をかける」
エンデヴァーさんが言葉を重ねる。
「スパイラル……次は貴様の番だ」
「はい!!」
エンデヴァーさんの言葉に、スパイラルくんが大きな声で応える!!
「……異能解放軍が立て籠もった建物は新白連合を通じてすでに政府が買収済みだ……思いっきりやれスパイラル!!次は貴様の番だ!!」
「はい!!」
………そうして、この作戦の最後のフェーズ……最後の最後のフェーズが始まる。
「個性合体だ、スパイラル」
「はい!!」
応えるスパイラルくん。
「さぁて!!やりますか!!」
さらに応える俺!
そんな俺達2人を見て、俺達以外の残りのメンバーを見て、エンデヴァーさんが告げる。
「完膚なきまでの勝利だ」
そう、告げる。
「必要なのは完膚なきまでの勝利だ。ベストジーニストが開戦前に言ったように、ここを俺達……この場にいる俺達でこの戦いを異能解放軍との戦乱の天王山にする……力を、力を貸してくれ皆」
そのエンデヴァーさんの……このメンバーだけに頭を下げて告げた言葉に、この場にいる全員がそれぞれやり方で力強く応えた!!
……そして、この長い1日の……その、最後の演目が始まる……
side回原
「……個性合体……」
異能解放軍の立て籠もった建物。
それを眼前にして、俺は静かに呟く。
そんな俺の背後にはエンデヴァーさんとホークスさん。
そんなトップヒーロー2人を背後に控え、俺は静かに強くそう呟く。
個性合体で繋がる力。
ホークスさんの力。
「音波振動付与、風切太刀」
その極悪な羽…、その羽が俺の両手の五指……一本一本の指と合体していく。
さらに……
「赫灼熱拳……プロミネンスバーン……」
エンデヴァーさんの凶悪な炎……その炎を俺の足から出る竜巻が取り込んでいく……
ホークスさんの力で、貫通力を超強化!!
エンデヴァーさんの力で加速力+爆発的な推進力を強化!!
そう!!これが俺をベースとした3人での個性合体!!
「「「超ぉぉぉ!!!」」」
だから叫ぶのだ高らかに!!
「「「ギガァァァ!!!」」」
本来個性合体は合体する3人の個性の名前を組み合わせるのが習わしだが、
(……ふん、若造の名乗りを邪魔するほど飢えてはおらんわ。お前はお前の好きに名乗れ……お前が……お前がヒーローとして高らかに叫びたい必殺技の名前!!それを力強く叫べ!!)
「「「ドォォリイィィィルゥゥ!!!」」」
だから!!叫ぶ!!
そう!!これが!!これこそがエンデヴァーさんとホークスさんと俺ベースでの!!俺メインの個性合体だ!!
「「「ブゥレレレェェエェェイイィィィクウゥゥゥ!!!」」」
熱い!!熱い3人の叫びとともに!!俺は突撃する!!
個性合体により超強化されたギガドリルブレイク!!!
異能解放軍との戦いの終末を告げる為に、俺は天を翔けた!!
知ってますかぁ……この後に決戦も控えてるんですよぉ……大決戦がなぁ……(白目)