グルメウマチューバー:ライスシャワー   作:ちいさな魔女

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豆腐カツ丼と烏龍茶

レースが始まり、最終コーナーに差し掛かる。芝を揺らすライス達の走る力。

 

ライスは先行でブルボンを見据えていた。

 

ラット「ヤバッ……無理ぃ……」

 

カク「速すぎます……」

 

ウルトラ「ライス先輩頑張れぇ……」

 

メイク「ウララちゃんにも勝てないなんて……」

 

ラットを含めた女学院のウマ娘達は途中で力尽き始める。ウマ娘と言ってもレース向けの身体作りをしてない為、プロとのレースだと頭打ちになってしまう。ましてやG1ウマ娘が相手で、しかも無敗クラシック三冠バだ。素人が勝てないのも仕方ないのだ。

 

更に、ウララにも勝てない事実に、レースには二度と出ないという気持ちが芽生えてしまいそうになる。

 

ブルボン(ああっ!やっぱりライスは、付いてきてくれる!)

 

ライス(凄い………オグリさん以来のG1ウマ娘とのレースなのに、ライスはまだ走れる!)

 

しかし、ライスはレースの感覚が何故か発揮出来ていた。レースなんて施設のグラウンドでお手伝いさん達と競ったり、この前オグリ達と走った位にも関わらず。

 

ライス(シャワーちゃん!ライス、シャワーちゃんの分まで、勝ってくるよ!!だから、力を貸して!!)

 

すると、ライスの脳内に、シャワーからの声が響いた。

 

シャワー(ライスの分までお願い。頑張れーライスちゃん!頑張れー!おー!!)

 

ライス「はああああああっ!!」

 

ダッ!!

 

ライスは加速する。最後の直線、ゴールまで200メートルの地点でブルボンと並び、そして追い抜いた。

 

ブルボン「っ!!ライス………やはり……」

 

ブルボンは思わず失速してしまった。二周目で漸く待ち望んだライスとの対決で、ライスに負けてしまった事のショックと、再び競えた事に対する嬉しさのあまり、走る集中力が切れてしまったのだ。

 

そして、ライスは一着でゴールした。ブルボンとはハナ差で決着が付いた。

 

ライス「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 

ライスはゴールした後、その場で座り込んだ。全力を出し、ブルボンを抜き去った。

 

全員『『『ワアアアアアアアアッ!!』』』

 

周囲から大歓声が響く。非公式の交流レースとはいえ、ブルボンがライスに負けたのだ。大どんでん返しに大勢の生徒達が驚愕と興奮に満ちた叫びを上げる。

 

菊花賞の時とは違い、ライスはブルボンに勝っても非難はされなかった。

 

ウララ「わぁー!!ライスちゃん……速いね!ブルボンちゃんに勝っちゃうなんて!」

 

ウララはヘトヘトになりながらも、ライスの勝利を称えた。

 

ライス「ホントに……負けると思ってたのに……」

 

ライスもまさか勝てるとは思っていなかったのだ。

 

ブルボン「ライス……貴女とまた走れて良かった……」

 

ライス「寂しい思いをさせちゃったね……でもブルボンさん。また走りたくなったら、何時でも遊びに来てね。ライス、また走ってあげるから」

 

ブルボン「はい。リベンジさせて頂きます」

 

ライスとブルボンは握手を交わす。その光景を見て、再び歓声が響き渡るのだった。

 

こうして、トレセン学園と女学院の交流レースは終わった。

 

しかし、このレースで勝つ事が何を意味するのか。

 

この女学院だけでなく、多くのトレセン学園生徒やトレーナー達、そして見学に来た一般人も多く目撃していた。

 

そうなればどうなるか。答えは簡単だ。過去のオグリキャップと似たような事になるのは。

 

ルドルフ「ライスシャワー」

 

ライス「はい?」

 

シンボリルドルフが、ライスの前に姿を現した。

 

ライス「えっと……どうしました?」

 

ルドルフ「単刀直入に言おう。君を、中央へ招待したい」

 

ライス「お断りします」

 

………が、即断られた。

 

全員『『『ええええええええっ!?』』』

 

当然の反応である。皇帝からの中央への誘い。G1ウマ娘に勝った上に、相手はクラシック三冠を達成した英雄だ。そんな相手に勝ったウマ娘に誘いが来るのは、ライス自身も分かっていた。分かった上で断ったのだ。

 

ルドルフ「即答過ぎるだろ……」

 

ライス「ライスの好きに出来る場所ではないと思ったからです。ライスは好きなように走りたいし、好きな事で生きていきたい。レースだってさっきみたいにお遊び感覚でやる方が良い。走るのだって健康の為ですし、トレーニングも料理を作る体力の為にやってますから。それに……ライスはこの学園が好きですから」

 

色々言ったものの、要するにレースの世界へ足を踏み入れるつもりはないのだ。

 

ルドルフもそれを聞いた時、ライスを無理して勧誘する気は無かった為に、すぐに気持ちを切り替えた。

 

ルドルフ「そうか。すまなかったな。だが君はトゥインクルシリーズに来れば伸びると思うが………気が変わったりしないか?」

 

ライス「しません」

 

ルドルフ「そうか………なに、無理強いはしないさ。君は君の好きなようにやれば良い。この国で好きを通すのは難しいが、応援しているぞ」

 

ライス「ありがとうございます」

 

交流会はこうして幕を閉じた。しかしこの日を境に、ライスはより多くのトレセン学園生徒達と出会うようになるのであった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

場所は変わって、部室となる家庭科室。因みに家庭科室は、ライスの所属する料理部の使用する教室だ。配信道具は綺麗に片付けられている。

 

其処でライスは、ブルボンに料理を作っているのである。

 

何故ブルボンが居るのか?それは、理事長やルドルフ達生徒会、自分のトレーナーや女学院教師達から許可を貰い、ライスと二人切りになれるよう居残りにしてもらったのだ。

 

ライス「お待たせ。ライス特性の大盛りカツ丼だよ。ようこそ、新世界へ♡」

 

ライスは巨大な丼をブルボンに差し出す。蓋を開けたブルボン。其処には湯気と共に卵と衣に身を包んだ厚めのカツが、ホカホカの白米に乗っていた。典型的なカツ丼であるが故に、美味しそうと感じられるのである。

 

ドォォォ〜ン!!

 

但し、それは普通の量ではなかった。誰もが想像するカツ丼の3倍…いや、5倍はありそうな超特大サイズのカツ丼だったのだ。

 

ブルボン「」

 

ブルボンは一瞬垣間見る。水着で三叉槍を手にし手漕ぎ船に乗り、海坊主を思わせる巨大なカツの怪物に立ち向かう自分の背後のイメージが。

 

ブルボン「すす…………ステータス異常『空腹』を確認。あああ………ありがとうございます、ライス………」

 

サイボーグネタが乱れるブルボン。表情は無理矢理無表情を作っているせいか、顔が青ざめていた。

 

ライス「良いの。疲れた後に食べるのが一番だよ。寧ろ食べた後に運動するのは逆効果だからね」

 

ライスは笑う。優しい笑顔の筈なのに、今は忌々しく見えるブルボン。

 

しかし、やるしかない。

 

ブルボンは箸を取り、カツ丼を食べ始める。

 

ブルボン「頂きます………ハムッ……モグモグ……ッ!?なんですかこれ!?この肉、お肉じゃない!?豆腐ですか!?」

 

ブルボンはカツを摘んで食べた時、噛んだ食感と味から肉ではないと理解出来た。

 

ライス「うん。この大盛りでも上手く食べられる方法が無いか考えたんだよ。そしたら、豆腐もカツ丼に使える事が分かったからね。それで肉よりも食べやすくて消化に良い豆腐を使おうって考えたの。それに、肉と比べて栄養も良いからね。それでいて沢山食べられてお腹もいっぱい。どう?食べられそうかな?」

 

ブルボン「凄い……肉ではこうならなかったかもしれません!美味しいです!食べ進められます!」

 

ブルボンは食べる速度が上がり始めた。卵もたんぱく質が豊富で走るウマ娘にはピッタリであり、沢山入っている玉ねぎも消化を助けてくれる。

 

しかし、ご飯の下に豆腐カツが隠れているという罠もある。

 

しかしブルボンは、時間を掛けて豆腐カツ丼を食べ進めていく。

 

軈て、ブルボンは食べるのが難しい筈の大盛りカツ丼を食べ終えてしまった。

 

ブルボン「ご馳走様でした……こんなに満足したのは久々です………」

 

厳しいトレーニングやレース後なだけあって、精が付く料理をご馳走してもらい、満足出来た。

 

ライス「はい。烏龍茶」

 

ライスはコップに入れたお茶をブルボンに差し出した。

 

ブルボン「ありがとうございます」

 

ブルボンはお茶を飲み始める。飲み終えた後に息を吐いた。

 

ブルボン「ふぅ………」

 

ライス「ブルボンさん、これからどうするの?」

 

ブルボン「菊花賞や有マ記念を終えた後なので、マスターからは休息を提案されました。暫くは休むつもりです」

 

ライス「そっか。また走れるようになれると良いね」

 

ブルボン「はい。貴女の分まで、私は頑張りたいと思います」

 

ライスがブルボンと二人きりになりたかったのは、話したいことも沢山あるからだ。

 

自分だけの秘密も、彼女になら話しても良いと思ったからである。

 

ライスは全てを話した。自分が神様の手で転生し、ライスシャワーの身体に憑依した事。未来で自分がレースに出た時のバッシングの運命に耐えられる勇気が無く、他の方法で皆を幸せにする道を選んだ事を。そして、夢の中でこの身体の本来の持ち主である本来のライスシャワーことシャワーと再会し、仲良くなった事も話した。

 

ブルボン「そうでしたか………」

 

ライス「ごめんねブルボンさん……ライス、寂しい思いをさせちゃって……」

 

ブルボン「いいえ。咎めたい訳ではありません。ですが、寂しかったのは事実です。其処で提案があります。療養を終えたら、また一緒に走りませんか?ライスの言うように、フリースタイルで好きなように、でも本気で競い合いたいんです」

 

ライス「い、良いの?」

 

ブルボン「はい。それに、ライスの人生はライスのものです。私がどうこう言う事ではありません。あの時みたいに、無理に引き止めて走らせて、宝塚記念みたいな事にしたくありませんから」

 

ブルボンは一周目の記憶がある。ライスと出会う事で、前世の記憶を思い出したのだ。恐らく原作通りか、或いはもっと酷い事になった世界線なのだろうとライスは理解する。

 

ライス「ライス、ブルボンさんの話も聴きたいな。向こうのライスがどうなったのか、色々と」

 

ブルボン「はい。あまり良い話でないのですが」

 

ライス「大丈夫だよ」

 

ライスとブルボンはお互い話し合う。下校時間になるまで、二人は話し合うのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

その日の夜、ライスは施設で眠っていた。

 

夢の中で再びシャワーに出会う。

 

シャワー『豆腐料理って奥が深いんだね』

 

ライス『うどんも作れるからね』

 

料理の話で盛り上がり、今回の夢の中も美味しい夢で満たされたのだった。




料理名

豆腐カツ丼
原作:『班長一日外出録』に登場するカツ丼を豆腐バージョンにアレンジしたもの。大槻班長や利根川が食べたあの大盛りカツ丼はインパクトが凄い。アニメや原作を見ず、調べただけの私だが、思わず思考が止まった一品。ウマ娘なら大歓迎かもしれないが………。
更に、今回のカツ丼はライスのアレンジが加えられており、肉ではなく豆腐を使っている。元のカツ丼よりもヘルシーかつ同じ位美味しい。
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