ハロウィン前日の空気感が漂う中、施設のキッチンはいつも以上に賑やかな活気と、甘いお菓子の香りに包まれていた。
ライス「かぼちゃに、さつまいも、たっぷりのバターとチョコレート……!それからアーモンドにマシュマロ、クッキーの生地もたくさん用意しなきゃ!」
調理台の上には、明日の一大イベントに向けて買い揃えた大量の材料が山のように積まれている。
明日はハロウィン当日。見てくれるみんなに「トリック・オア・トリート!」と言ってもらえるような、手作りお菓子の数々を配信でたっぷりお届けする予定なのだ。
ライス「ふぅ……これだけあれば、みんなに美味しい魔法をかけられるかな?」
たくさんのお菓子作りに胸を弾ませつつ、ライスはテキパキと下準備を進めていく。かぼちゃの皮を丁寧に剥き、生地をこね、焼き菓子の型を並べる。その手つきは、もうすっかり一人前のパティシエや料理人のそれだった。
ひとまず仕込みの区切りがついたところで、ライスは額の汗をぬぐう。
ライス「よし、一度お風呂に入ってすっきりしてこよっと。汗を流して綺麗になってからじゃないと、可愛いお洋服に着替えられないもんね」
お風呂上がり。
湯上がりでほんのりと頬を染めたライスは、自室の鏡の前に立っていた。
いつもお世話になっている美容師のスタッフに整えてもらったウマ耳と尻尾は、今日もツヤツヤで手触り抜群だ。
そして、今日の配信のために選んだ衣装は―吸血鬼を模して作られたとっておきの勝負服『Make_up_Vampire!』。白色の服に黒と紫を基調としたスカート、そして悪魔の翼が目を引くひたすらに可愛いヴァンパイアの仮装をしている。
そして、吸血鬼の牙を模した義歯を口の中に身に着けると、まるで絵本の中から飛び出してきた吸血鬼そのものの雰囲気が漂う。
ライス「……うん、やっぱり似合ってる、かな?」
ラット「ライスちゃーん!手伝いに……うわ!?ライスちゃん可愛いー!!」
鏡に映る自分にこっそり微笑みかけ、気合いを入れるように小さく深呼吸をする。すると、友人のラットが
準備は万端。いよいよ、ハロウィン前日のスペシャル配信の時間がやってきた。
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19:00
ー皆、待っててね……ー
(愛のシュプリーム:前奏バージョン)
数分後……。
ライス『み、皆さん!こんライスでしゅ!グルメウマチューバーの、ライスシャワーでしゅ!』
画面の向こうに映し出されたライスの姿に、コメント欄は一瞬にしてお祭り騒ぎとなった。
ブロンズコレクター:こんライス〜!?って、うわっ、可愛い!?天使が降臨したぞ!!
ターボエンジン:こんライスー!おおー!、すっごくハロウィンっぽくて可愛い!
大器晩成:こんライスですぞ〜!待ってました!今日はどんなお菓子を作るんですか?
鉄の女:こんライスです。……ふむ、その衣装、ハロウィンの仮装にしては破壊力が……(落ち着け私!)
ライス『ふえぇっ!?みんな、挨拶とコメントありがとう!今日の衣装にびっくりしちゃった?今日はね、ハロウィン前日ということで、みんなにたくさんのお菓子を手作りしてお届けしたくて、この『Make_up_Vampire』を着てみたんだよ!全国のお兄様、お姉様、リスナーの皆!チューチューしちゃうね?ガオー!』
コメント:ァ
画面の向こうのファンたちが「尊死」しかけていることとは露知らず、ライスは少し照れくそうに、しかしハッキリとした口調で今日のメニューを説明し始める。
ライス『今日の配信は、ハロウィン特大号!カボチャの濃厚プリンに、ザクザク食感のクモの巣チョコタルト、それから焼き立てのハロウィンクッキーと、マシュマロを挟んだ特製ブラウニーを作っちゃいます!ぜーんぶ手作りで、アーカイブや概要欄にレシピも載せるから、みんなもぜひ作ってみてね!』
大器の英雄:ぜ、全部手作り!?凄いです!
わがまま魔法少女:わあぁ!お菓子パーティー!アタシも絶対作るわよ!
変幻自在:カボチャのプリン、すごく気になるところだね〜
ライス『それじゃあ、さっそくハロウィンのお菓子作り、スタートしちゃいまーす!みんな、最後まで見ていってね!』
こうして、甘い香りとたくさんの笑顔が詰まった、ライスシャワーのハロウィン前日配信が幕を開けたのだった。
ライスは調理台に向かい、並べられた秋の味覚や製菓材料をカメラに見せる。吸血鬼の牙をのぞかせながら微笑む姿は、恐ろしさなど皆無でひたすらに愛らしかった。
ライス『まずは1品目!『かぼチャんの濃厚かぼちゃプリン』から作っていくね!材料はカボチャ、牛乳、生クリーム、卵、お砂糖、それからカラメルソース用のグラニュー糖とお水だよ』
ラット『はーい!助手としてお手伝いするよー!カボチャはレンチンして柔らかくしておいたよ!』
画面の外からエプロン姿のラットがスッと現れ、湯気の立つボウルを差し出す。
ライス『ラットちゃんありがとう!柔らかくなったカボチャは皮を取り除いて、温かいうちにフォークかマッシャーで潰すよ。皮は後で顔のパーツに使うから捨てないでね。潰したら、砂糖、牛乳、生クリーム、解き卵を入れてよく混ぜ合わせます!』
泡立て器でテキパキと混ぜていくライス。
ライス『ここでポイント!滑らかな食感にするために、必ずザルで1〜2回裏ごししてね。裏ごしが終わったら、あらかじめ作っておいたカラメルソースを敷いた耐熱カップに流し入れます。オーブンを160度に予熱して、天板にお湯を張って30分間蒸し焼きにするよ!』
ラット『蒸し焼きにしてる間に、2品目の『クモの巣チョコタルト』の準備だね!』
ライス『うん!市販のタルトカップを使えばとっても簡単だよ。温めた生クリームに刻んだチョコレートを溶かしてガナッシュを作ったら、タルトカップに流し入れます。仕上げに、溶かしたホワイトチョコで同心円を描いて、爪楊枝で中心から外側に向かってピッと線を引くだけで……ほら!綺麗なクモの巣模様になっちゃうんだよ!』
画面にカメラを寄せて、綺麗なクモの巣模様が浮き出たチョコタルトを見せるライス。
万能オタク娘:むほぉーーっ!爪楊枝一本でこんな綺麗なクモの巣ができるなんて凄いです!!
破天荒:おー!これならゴルシちゃんでもできそうじゃねえか!
名優:まあ……美しくて可愛らしいタルトですわね
ライス『えへへ、ありがとう!じゃあ次は3品目の『ハロウィンクッキー』と4品目の『マシュマロブラウニー』を一気に仕上げていくよ!』
薄力粉とバター、砂糖をこねたクッキー生地を伸ばし、かぼちゃやコウモリ、おばけの型で抜いていく。さらに型抜きしたクッキーの横では、焼き上がった濃厚なブラウニーの上にマシュマロを乗せ、軽くオーブンで炙ってトローリととけ出させる。
ラット『クッキーが焼き上がったら、アイシングや先ほど残しておいたカボチャの皮で、ジャック・オー・ランタンのお顔を描いていくよ〜!』
ライス『描くお顔によって表情が変わるから、みんなも好きな顔を描いてみてね!ライスのクッキーは……ニッて笑ったお顔にするね!』
そして焼き上がりと冷やし込みの時間を経て、調理台の上には色鮮やかで可愛らしいハロウィンお菓子のフルコースがズラリと並べられた。
ライス『はーい!『ハロウィン・スイート・ナイト・セット』の完成だよ〜!』
テーブルの上には、カボチャの皮で描かれた可愛いお顔が乗った濃厚プリン、クモの巣模様のチョコタルト、様々な形に模られたカラフルなアイシングクッキー、そしてとろけるマシュマロが溢れ出す濃厚ブラウニーが勢揃いしている。
大器の英雄:素晴らしいです!お店で売っているもの以上の完成度ですね!
変幻自在:どれも美味しそう〜!カボチャプリン食べたいな〜!
鉄の女:見事な手際です……マックイーンさんにも作って差し上げたいですね
ライス『それじゃあ、さっそく試食してみるね!まずはカボチャプリンから……いただきます!』
スプーンですくい、口に運ぶライス。
ライス『ん〜〜っ♡カラメルのほろ苦さと、カボチャの優しい甘みが口いっぱいに広がって……とろけるように滑らかで美味しい♡』
吸血鬼の牙を覗かせながら幸せそうに頬を緩めるライスの姿に、コメント欄の速度が一段と加速する。
ラット『ブラウニーもマシュマロがビヨーンって伸びて、チョコが濃厚で最高だよ!』
ライス『ふう……ブラックコーヒーや温かいミルクとも相性バツグンだね!……あっ、リスナーのみんな!トリート(お菓子)はたっぷり作ったから、イタズラはナシにしてね?……でも、もしお菓子をくれなきゃ……ライスの牙で、ちゅーってしちゃうぞ〜?がおー!』
ライスが両手を顔の横で曲げ、ヴァンパイアのポーズを決める。
ブロンズコレクター:ぐはっ(尊死)
ターボエンジン:イタズラするー!ちゅーしてー!!
大器晩成:もう……心臓が持ちませんぞ……!!
名優:ライスさん、可愛すぎますわ……!
画面の向こうで身悶える視聴者たちの反応に、ライスはまたしても少し顔を赤くした。
ライス『ふえぇ……照れちゃうな。あ、今日のレシピは概要欄に載せておくから、明日当日にみんなもぜひ作ってみてね!……それじゃあ皆さん、素敵なハロウィンを過ごしてね!おちゅライス〜!』
ーありがとうございます……ー
(BGM:愛のシュプリーム・前奏バージョン)
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配信終了後。
施設の大食堂では、お手伝いさん達やラットと共に、残ったたくさんのお菓子を囲んでにぎやかなハロウィンパーティーが催されていた。
主治医「お嬢様……本日のお姿、そしてお菓子……心身ともに満たされました……♡」
看護師「本当に素晴らしいハロウィンイブになりましたわ!」
お手伝いさん『『『お嬢様!いただきます!!』』』
ライス「みんな、いっぱい食べてね!明日の本番も、美味しいお菓子でみんなが幸せになれますように!」
吸血鬼の勝負服に身を包んだライスシャワーは、周囲を囲むスタッフたちの笑顔に包まれながら、自分もまた美味しそうにお菓子を頬張るのであった。