ライスはもう一人のライスの前に、椅子に座る形で対面する。もう一人のライスも椅子に座って、ライスと対面していた。
ライス『貴女は………ライスなの?』
ライス?『うん。ライスシャワーです。この身体に眠ってたんだよ。でも、ややこしくなっちゃうから、ライスの事は好きに呼んでね』
ライス『う、うん………じゃあ………シャワーちゃん?』
シャワー『えっ?ま、まあ……良いと思うよ……』
ライス『ごめんね……ライス、名前のセンスが無くて。というかそれしか思い浮かばなくて』
シャワー『ううん。それに、二人でライスシャワーって感じがするよ』
ライスとシャワーは話を続ける。
ライス『それで、シャワーちゃんはどうして、ライスの元に?今まで勝手に身体を使ってきた事で、話をしに来たの?』
シャワー『うん。でも、勘違いしないで。ライスはね、寧ろ貴女に感謝してるんだよ』
ライス『えっ?なんで?』
予想外の答えに、ライスは驚く。
シャワー『ライスがどんな未来を辿るのか、貴女が身体に入って来た瞬間に、全部理解したんだ。そして、その時の記憶も思い出したんだよ。ライスは結局、皆を幸せに出来なかった。ブルボンさんに勝って皆を泣かせて、マックイーンさんに勝っても皆を悲しませて、その後で2年間も勝てなくなって皆に迷惑を掛けちゃったから………』
ライス『でも!シャワーちゃんは2年後の天皇賞・春でやっと優勝して、皆のヒーローになったんだよ!』
シャワー『淀の坂で開かれた宝塚記念』
ライス『…………あっ』
シャワー『そう。やっと勝てたのに、最期は京都で開かれた宝塚記念でライスは転んだ。もう走れない。走る事ももう出来ない。結局ライスは、一時の勝ちで得たこれからの未来も、生きる希望も全て失った。だから、ライスはトレセン学園に行きたくなくなったの。ううん、行けなくなったと言った方が良いかな……だから、ライスちゃんに感謝してるんだ』
ライスシャワーは走れば、自分が勝つと疑っていない。しかし、運命を知ってしまえば話は別だ。例え勝てても、最期は宝塚記念で全て失う。それを知ってしまえば、どうしてレースに関わりたいと思えるのだろうか。
ライス『……うん。でも、シャワーちゃんも走るのが好きなのに、レースから遠ざかる事をしちゃった………確かにライスは走るのにレースである必要が無いとは思ってたけど、自分のエゴでシャワーちゃんの未来を変えちゃった……』
シャワー『でも、ライスちゃんは別のやり方で皆を幸せにしてる。ライスには選べなかった道を歩んだんだよ。だから、ライスに代わって、皆を幸せにしてくれてありがとう。ライスも貴女の中に居ながら、ライスちゃんのやって来た事や学んだ事、苦労した事や楽しんだ事、色々体験したよ。レースをしてた頃には見えなかった世界を知れたんだ。でもブルボンさんが悲しんでる姿を見て、ライスちゃん落ち込んでたよね。ブルボンさんを悲しませたんじゃないかって。でも、ライスちゃんが悪いわけじゃないよ。ライスちゃんは自分の判断で決めて、自分の夢を実現したんだから。だからねライスちゃん。これからもライスと一緒に、美味しい料理を作って皆を幸せにしよう。色んな所を走ったり、好きな絵本やゲームをしたりして、楽しい青春を楽しもうね』
ライス『………えへへっ。シャワーちゃんに謝りたかったのに、ここまで言われちゃったら頑張るしか無いよ』
シャワー『うん。あっ、そうだ。おむすび食べる?』
ライス『えっ?おにぎりは好きだし、食べるよ』
シャワーは海苔で挟んだおにぎりを取り出すと、ライスに渡す。ライスは口にする。
ライス『モグモグ……あっ、鮭が入ってる。それも、ただの鮭じゃない!トキシラズだ!凄いこんな良い鮭が入ってるんだ!』
シャワー『エヘヘッ。此処は精神世界だからね。ライスちゃんの知ってるグルメ作品の食材とか、色々使わせて貰ったんだ。因みにおむすびの米は、有機栽培のコシヒカリだよ』
ライス『コシィ!?』
ライスは思わず米を吹き出しそうになった。
ライス『……アハハ……じゃあ、ライスからもおにぎりをどうぞ』
シャワー『ありがとう。それにしても、お互いにおむすびの呼び方が違うんだね』
ライス『あっ、ホントだ。ライスがおにぎりで、シャワーちゃんがおむすびなんだ』
シャワー『これも、ライス達が二人同時に身体の中にいるからかな』
シャワーはおにぎりを食べると、おにぎりの中にある梅干しの酸っぱさに口を窄める。
シャワー『んうう〜!酸っぱい!』
ライス『可愛い♡』
こうして、おにぎりを食べ終えたライス達。
ライス『ありがとうシャワーちゃん。お陰で元気が出たよ』
シャワー『ライスちゃん。これからも美味しい料理を待ってるからね。もし一人で悩んで苦しかったら、何時でも来てね。ライス、何時でもライスちゃんを待ってるからね』
ライス『うん!ありがとう!シャワーちゃん!』
こうして、ライスは微睡みから覚めていく。シャワーからの温かい笑顔に見送られながら、ライスは目を覚ますのだった。
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ライス「ふぁ〜ぁ………皆、おはよう」
ライスは目を覚ました後、洗面台で歯磨きと洗顔、髪や尻尾を可能な範囲までブラッシングを済ませ、ライスは食堂に入る。使用人達は全員起きており、メイド達が朝食を運んで来た。
お手伝いさん『『『おはようございます!お嬢様!』』』
挨拶の時だけ呼び方が統一されている事に、複雑な心境のライスであった。
料理人「おはようございますライス様。今日の朝食は、ベーコンエッグを乗せた食パンに大盛り豆腐の味噌汁、鮭の蒸し焼きとコーンフレークで御座います。ご飯派の皆は、ベーコンエッグパンの代わりに、ベーコンエッグとソーセージの丼だ」
ライス「美味しそう♡じゃあ皆、食べよ♡せーの……」
全員『『『いただきまーす!』』』
こうして、今日もライスの1日が始まる。
菊花賞後のライスが暗い雰囲気だった事が心配だった使用人達だったが、ライスが元気で幸せな様子と雰囲気を纏っているのを見て、問題が解決した事を心中で察した。
ライス(シャワーちゃんありがとう!ライス、何があっても頑張って生きてみるよ!相談に乗ってくれてありがとう!)
ライスは朝食を食べながら、もう一人の自分に感謝の言葉を述べるのだった。
次回から、また料理の配信を開始します。シャワーという名前にしたのは、それしか思い浮かばなかったからです。
次回は、またジブリ飯にしようかな。