この世界では、ヴァンガードが最もメジャーなスポーツとなっている。人々の多くがプロのファイターと成ることを夢に見て幼い時から研鑽を積み重ねていて、人生の全てを1枚のトリガーに賭けることが普通によくある世界である。なので若い内から大成すると大々的に注目されるワケで、高校生なんかが第1回デラックスに優勝なんてしてしまうと高校全体での盛り上げが始まるワケで・・・隠キャのくせに第2回デラックスも優勝して連覇なんてしてしまうと、それはもう大変だった。
高校の正門に集まる取材陣。クラスどころか学校中から向けられる視線。学食で食べようものなら食堂のオバチャンから謎のエールを受けるし、学年集会に呼び出されて壇上に立たされるなんてまだ序の口。知らない人からファイトを申し込まれることもあれば、包丁を持ったストーカーに襲われるし、デッキが盗まれそうになったかと思えば学生カバンごとどこかへ紛失したりと、1年で消化して良いハズがないほど激動の毎日を送ることになった。
だからだろうか(多分そう)。後輩が急に突撃してきても、もう何も思わなくなっていた。
「あの・・・ここ3年の教室・・・」
「はい!知ってます!!!」
「よ、良くないよ??」
「分かってます!でも、俺はデラックスを連覇したショウマさんにヴァンガードを教えてもらいたいんです!!」
「え、嫌だけど・・・」
「そこを何とか!!!そこを何とかお願いします!!!あ!肩でも揉みましょうか!?パン買ってきますよ!」
「いらない・・・」
明導アキナと名乗ったこの後輩。凄まじく前向きな正面突破型の陽キャらしく、何度断っても決して折れなかった。多分営業とかしたら凄そう。
アキナ後輩が大暴れしていると、クラスの男子連中がガードに入ってくれた。
「おい後輩!ショウマさんは今昼休み中だぞ!!!」
「そうだぞ!ショウマさんから離れろ!」
「まずは俺達に話を通せ!」
「出ましたね噂のショウマ親衛隊!!!見事なまでに男ばっかりですね!!!」
「当たり前だ!!!親衛隊に女なんて入れたらショウマとくっ付くかもしれないだろ!!!」
「むしろ女をショウマから遠ざけるための親衛隊だからな!!!!」
「少しは頭を使え後輩!!!ショウマを1人にしたら彼女こさえちまうだろうが!!!」
「校内で彼女を作られたら俺達の可能性が減るだろうが!」
「な、なるほど!よく分からないけど分かりました!」
「ちなみにテメェは、学外に美人の知り合いはいるか?」
「え、まぁ、はい(ナオ先輩)」
「後輩。テメェは今から俺の敵だ」
「何の話ですか!?」
隠キャな俺が何も言わない間に、今日も親衛隊の方々がガードに入ってくれた。いつもお世話になっております・・・。心の中で合掌していると、アキナ後輩は諦めなかったのか親衛隊の方々と取っ組み合いを始め、やがて相撲に変わり、何度か組み合う内に親衛隊の方々と仲良くなってしまった。
・・・・・・え???
「後輩!なかなかやるな!お前は女じゃないし親衛隊に入れてやるよ!!!」
「ありがとうございます!!!」
「おいショウマ!!!アキナ後輩から話があるってよ!」
「えっ・・・・・・???」
あれ?ガードしてくれるって話だったのでは???
「ヴァンガードを教えて下さい!!!」
「え、いや、えぇ・・・」
「助けてウララちゃん!!」
恥も外聞も捨てて現役JCに泣きつく。ここはヴァンガードチーム『ブラックアウト』の総本山である廃墟の遊園地『ワンダヒル』。俺がどういう人間なのか知っている奴しかいないため、俺は盛大に年下に泣きついていた。
「ようやく追いつきましたよショウマ先輩!!凄いですねココ!!!一体どこなんですか!?」
「ウララちゃん!変な後輩がストーカーしてくるんだけど!!!」
「ショウマさんはミレイ様の彼氏ショウマさんはミレイ様の彼氏ショウマさんはミレイ様の彼氏ショウマさんはミレイ様の彼氏・・・はい!えっと、どういう状況ですか!?」
「はじめまして!!!明導アキナです!よろしくお願いします!」
「これはご丁寧にどうも・・・・いや誰なんですか!?」
「明導アキナです!今日はショウマさんにヴァンガードを教えてもらいに来ました!!!」
流石は友人の家に無許可で上がり込み、勝手に掃除して勝手に風呂に入ったと噂の男。ブラックアウトだろうが何だろうが一切物怖じしていなかった。
「凄いのが来たわね・・・」
「メグミさん!何か言ってやってください!」
ここでブラックアウトの大黒柱にして精神面の支柱、メグミさんが登場。メグミさんはアキナ後輩の様子を見て色々察したのか、苦い顔をした。
「君、ヴァンガードするの?」
「はい!昨日始めました!!!」
「それでいきなりショウマなんだ・・・何と言うか・・・凄いね」
「どうしても勝たなきゃいけないんです!お願いします!!!」
「えぇ・・・・・・。何か事情でもあるの?」
90度に頭を下げるアキナ後輩。メグミさんが詳しく聞こうとすると・・・。
「それは私が説明しよう!!!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「ぬいぐるみが喋ったぁああ!?!?」
「というか浮いてるんですけど!?」
「物理法則ガン無視だねぇ」
「まさか、プリ○ュアの妖精!?」
「先に言っておくがソレは断じて違うぞ!!」
あぁもう滅茶苦茶だよ・・・。
メグミさんがアキナ後輩に説明を求めると、割って入るようにして黄色の人形が出てきて高らかに宣言した。何を言ってるか分からないと思うが、俺も分からない。
謎のぬいぐるみ妖精は弁護士のようにビシッと指(?)を俺に向けてくると、大きな声で聞いてきた。
「伊勢木ショウマよ!問おう!!!貴様には叶えたい願いがあるか!!!」
「えっ何の話・・・?」
「ソレもしかして全員にやってるのか・・・?」
「少し黙っておれ明導アキナよ!伊勢木ショウマ、どうなのだ!!!」
「えっ・・・・・・まぁ、はい」
「では説明しよう!まずヴァンガードの世界『クレイ』は実在する!!!」
「「「え???」」」
「そして『クレイ』から6枚の運命者カードがこの地球にやって来た!!!6枚の運命者カードに選ばれた人間が勝ち抜きのファイトを行い、最後まで勝ち残った人間『運命者』が願いを叶える!それが運命大戦である!」
「「「???」」」
「そして伊勢木ショウマよ!貴様は運命者カードに選ばれなかったが、何故か運命者カードが持つ不思議な力『デザインフォース』を内包するカードを持っているな!?」
「い、いえ・・・」
「いいや自覚があるハズだ!ファイト中に不思議なことが起こったりはしなかったか!?」
「「「あーーーー・・・・・・」」」
「あー・・・・・・」
俺がデラックスを連覇できた理由。それは『必ず理想的なトリガーが出る』ため、そこから逆算してファイトを進めれば自然と勝っているからである。
「やっぱりショウマのトリガー運って何かあったんだ」
「まぁ誰も信じてなかったよね」
「トリガー率100%は流石にやりすぎですよね」
「そのデザインフォースを賭けるのなら!貴様も運命大戦に参加する資格があるのだが、どうする?」
「あれ?俺が教えてもらうって話じゃなかったっけ?」
「ちなみに明導アキナも運命者で運命者大戦の参加者だ。もし出場するのならヴァンガードを教えない方が良いぞ」
「おいどっちの味方なんだよ!」
「つまり・・・・・・聖杯戦争・・・ってこと!?」
「貴様は何を聞いていたんだ伊勢木ショウマよ!!!!」
つまりヴァンガード式の聖杯戦争ということらしい。ウチのカードにあるデザインフォース?とやらを賭けるという話だが・・・なるほど。
「・・・・・・分かった。参加する」
「ショウマさん!?良いんですか!?」
「まぁ。負けないだろうし」
「出たよショウマのぐう畜発言・・・」
「それに、その・・・・・・」
「?どうしたんですか?」
「やっぱり・・・高校生の内に誰かと付き合ってみたいし・・・」
その瞬間。ワンダヒルが静寂に包まれた。
「・・・・・・え?」
「ショウマさん???????」
「?????」
「え???」
「ん????」
「え、え???」
「ミレイさんが許婚って話でしたよね?」
「え?なにそれ初耳なんだけど」
「え???」
「え????」
「え????」
「次回に続く!!!!!」
スーパー奥手なミレイ様の敗北ENDでした!ちなみに今作でミレイ様は、名古屋城で和解した直後にショウマの本名を知り、許婚だと気づきました。