今日はよく動いた。病み上がりであるから、身体を動かさずにはいられなかった。
そのせいで彼女には多分な心配をかけた。実際に、「動かないで。」と注意された。しかし、その言葉に籠もっている嬉しさが感じ取れた。なんせ、昨日まで死ぬかもと心配していた人が元気な姿をみせてくれているのだ。
その嬉しさを感じ取れた私は動いた。精一杯に動きまくった。
私は限度というものを知らなかった。その日彼女には怒られた。
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ゲホッ。その声が私の耳には届いた。私は、その声とともに揺れた。彼女に無理をさせてしまっていたらしいと私は猛省した。
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「あなたが元気になって良かったわ。」
静まり返った私に向かってそう言ったと思う。この時の記憶は私は朧気にでしか覚えていない。もしかしたら私が作り出した夢の話なのかもしれない。
眠気に襲われていた私が覚えていたと思われることはここまでだった。
眠りにつく前に撫でられたような気がする。私はその撫で方によって眠りに落ちたのだと思う。
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「彼女は眠ったかい?」
私の夫にそう尋ねられて「多分。」と答えた。寝息は聞こえないけども、私の経験からすると寝ていると感じた。初めは彼女が寝ているかも▓▓▓いるのかも分からなかった。しかし、こう半年以上の付き合いとなると段々と何故か感じ取れるようになった。
「そうか。……ところで体調は?」
「この子に比べたらとても元気よ。」
私の返答にどう答えたものかと悩んでいる夫を他所に私はこの子を撫でた。半年くらい前からの習慣であったこの撫でる行為は私の心を落ち着かせてくれる。可愛いこの子を撫でる行為は半年も経った今尚、飽きさせないものだった。
こんなにも私の心を沸かせてくれるこの子には感謝しかない。彼女が動いてくれる、元気でいてくれるそれだけで私の心は沸いてしまう。
夫よりも大切な存在となってしまったこの子に会わせてくれてありがとう。と心の中で呟く。
ふと、この子が動いた気がする。そんなこの子が可愛いと微笑んでしまう。そんな私の顔を見て訝しんだ夫に「どうした?」と問われた。正直に全部答えようか、と悩んだ。全部言っても夫はより一層微笑んでくれるだろう。しかし、私はそれを選びはしなかった。
「この子との秘密よ。」
夫よりも遥かにこの子と仲が良い私は、この子と私の秘密とした。いや、私の独りよがりかもしれないけれどもそう答えた。夫よりも仲が良い優越感も味わえるとも考え、私は秘密にした。
「……撫でてもいい?」
私の心中を知って知らずか、しばらくの沈黙の後に夫は話しかけてきた。私達の仲の良さ、心が通じ合っている様を見せられて嫉妬しているような声色に私は感じた。
「眠っているから、そっとよ。」
その言葉を聞き、飛び込んできた手は優しいと感じた。慈愛に溢れていたと感じた。この子とはもっともっと仲良くなりたいと感じた。
この子が死ぬのは6日後。当時の私はそのことを夢にも思わなかった。