不動遊星の初体験を奪いたい   作:うおのめちゃん

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21話 未来からの一撃

 朝日差し込む雑居ビル、万屋『大嵐』。そのガレージにて綴、テイル、謎のD・ホイーラーは集結していた。

 

「さて、今日あんたに来てもらったのは、あの三皇帝に直に接触できるチャンスだからだ」

「彼らはこの後スタジアムでプラクティスを行う予定よ。たぶん、プラシドの新しいボディのチェックのためにね」

「確かに奴は遊星に敗れ、身体が損壊していたな……」

 

 見事なまでに上半身が千切れていた。プラ/シド。

 

「んで、おれ達はそこに奇襲をかける。想定されるシンクロ封じの戦術に関しちゃ何十回も練習したけど、本番で何繰り出してくるかわかんねえし、遊星達のために敵情視察」

「それに、アリアが今どうしているか聞き出せるなら聞き出しておきたいわ」

「わかった。彼女の安否が気になるのはもっともだ。行くぞ!」

 

 

 スタジアムは不思議なほどに人の気配がなかった。神聖さを謳う無機質、それでいて感情のある三皇帝を除いては。プラシドはコースをDホイールで駆けている。ぎらついた感情と共に。ルチアーノとホセは、ピットでそれを静観していた。

 

「ボディのチェックとT・666走らせるだけのために人除けの手間と時間かけさせがってプラシドの奴。そんなに不動遊星に負けたことを気にしてるのかよ?ま、あそこまでズタボロにされちゃ仕方ないか!」

「絶対的な敗北を味わったのだ。いかに奴のプライドが高かろうと、万全を期したくもなるというもの。それに、元々我らは……」

「見つけたぞ!」

「よう!元気みてえだな!」

「あなたたちに用があるの。悪いけど、時間をちょうだい」

 

 3人がチーム用出場口からDホイールに騎乗して現れた。ホセは冷静に敵を見据え、ルチアーノは冷笑する。

 

「ほう、湯上綴とテイル・バウンサー、そしてお前は……」

「なんだ、アリア・ラスティがいなくなったからって今度はそいつと手を組んだのかよ?きひひ!ひっでえ奴だな!今頃あいつは悲しんでるぜ?」

「そのアリアが無事か聞きに来たのよ」

 

 綴の声には怒りが混じっていた。ふ、と息を零すホセ。

 

「心配になったか?だが、我々は人間と違い約束は必ず守る。お前達が条件を達成出来たか確認するまでは五体満足で生かしてやろう」

「だから、その様子を確認させろっての」

「きひははっ!タダで見せるわけないじゃん!」

「ならばデュエルだ!私達が勝てば、彼女の状態を見せるんだ。そして質問にも答えてもらおう。WRGPとネオドミノシティの消滅がどう関わっているかを!」

 

 謎のD・ホイーラーの気迫にも拘わらず、ルチアーノは冷笑を深める。

 

「……はぁ?前者はともかく、後者は湯上綴に聞けばいいじゃん?大体、WRGPでもう負けた連中と、参加すらしてないお前と闘う理由なんてないね」

「僕が観測したものはあくまでもしも。あなた達の口から直接聞いた方が確実でしょ?」

「つーか、やらねえのかよ。本物のデュエリストに用があるとか宣ってんのに、自分は挑まれた勝負から逃げるんだ、へぇー?神に選ばれし三皇帝の名が泣くぜ?」

 

 テイルが煽る。勝負に乗ってこさせるように。当然、怒りを露わにするルチアーノ。

 

「シグナーでもない雑魚が調子乗ってんじゃねえぞ!」

「―――面白いじゃないか。オレが相手をしてやろう」

 

 プラシドがT・666と共にピットに戻ってきた。挑発的な笑みを浮かべながら。

 

「プラシド!なに勝手なこと言ってんだよ!?こいつらの相手をしてるほど僕達は暇じゃないだろ!大体、お前のせいで時間喰ってるんだぞ!」

「構わん。遊んでやれ」

「……って、えぇ?いいの!?」

 

 ホセがなんでもないことのように認可を下す。ルチアーノは素で驚いた。

 

「そこの青いヤツとは以前、やりあったことがある。肩慣らしにはちょうどいい相手だ。そして湯上綴!貴様から与えられた屈辱を晴らすいい機会だ」

「だったら、僕も参加させてもらおうかな。プラシドでも2対1じゃ厳しいだろ?」

「お、受けてくれるか。だったらルール決めようぜ。WRGP形式で引継ぎ戦。おれ達は、最初がおれ、次に謎D、最後に綴の順番でやりてえんだけど」

「……その形式か。まあ、いいだろう。ただし、我々にも時間というものがある。時が来れば試合は強制終了。その場合、残りライフ差で勝敗をつける」

「この場でデッキのチューンナップをしないならそれでいいわ。無理にライフ回復カードを積んで不利になるのはお互いに嫌でしょ?」

「ちゃっかりしてやがる。じゃあプラシド、僕が先に邪魔なテイル・バウンサーをさっさと片付けてやるよ。お前はその後で残った二人をまとめてやっつければいいさ」

「生意気な奴め、そこまで言うからには仕事は果たせ」

「わかってるよ」

 

 ルチアーノがヘルメットを装着し、デュエルボードに乗る。

 テイルがもまたヘルメットを装着し、スーパーライザーに騎乗する。

 高まる緊張。そして軛は解き放たれる。

 

「フィールド魔法《スピード・ワールド2》セット!」

『DUEL MODE ON』

「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!!」」

 

 今ここに戦いの火蓋が斬って落とされた。

 先を行くのはルチアーノ。デュエルボードはDホイールと比較するとどうしても出力が出ない。だが、大胆にもレーンの外壁を昇りトリックを決めると、第一コーナーを鮮やかに奪う。痛みを感じない身体を用いた巧みなプレイ。

 

「は!ノロマ!僕が先攻をいただくよ!」

「どうぞお先に。好きにやればいいんじゃねえの?」

「その余裕……むかつくぜ!後悔させてやるよ!僕のターン!」

 

TURN1

ルチアーノSPC0→1

テイルSPC0→1

 

「現れろ!《スカイ・コア》!カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

 卵のような外殻を上下に分け、その中心に青い光を宿した空色の機械が現れる。その攻撃力は0。テイルは思考を巡らせる。

 

(はいはいいつもの初手コア。けど、今回は遊星達の参考になるように戦わねえといけねえからな。ちゃんと本気でやってくれよ?)

「おれのターン、ドロー!」

 

TURN2

ルチアーノSPC1→2

テイルSPC1→2

 

「《黒き森のウィッチ》を召喚。バトル!《スカイ・コア》を攻撃!」

「ちっ、破壊された時に効果を発動するモンスターかよ。けど関係ないね!リバース・カード、オーープン!《ツイン・ボルテックス》!僕のフィールドの機械族モンスター《スカイ・コア》とお前の《ウィッチ》を破壊する!」

 

 フィールドに稲妻が走り、魔女と機械の卵を感電させ、爆発させる。

 

「そんじゃ、《ウィッチ》の効果発動。デッキから守備力1500以下のモンスターを手札に加える」

「その効果にチェーンして《スカイ・コア》の効果発動ぉ!このカードがカードの効果によって破壊されたとき、自分フィールドのモンスター全てを破壊し、手札・墓地・デッキから《機皇帝スキエル∞》、《スキエルT》、《スキエルA》、《スキエルG》、《スキエルC》を特殊召喚する!」

 

《機皇帝スキエル∞》ATK0

《スキエルT》ATK600

《スキエルA》ATK1000

《スキエルG》ATK200

《スキエルC》ATK400

 

 ルチアーノのデッキから飛来する5つの機械。機皇帝を構成するパーツであり、合体することで真の力を発揮する。

 

「きひははははっ!合体しろ!《機皇帝スキエル∞》!」

 

 ルチアーノの指揮に合わせて《機皇帝スキエル∞》を中心にパーツ達が変形し、1体のモンスターとして組み上がってゆく。天を統べる鳥を模した巨大ロボット。

 胸部の無限の穴の奥に蠢く青白い光。シンクロモンスターを吸収するという恐るべき能力を秘めた、破滅の未来からの使者にして、絶望の象徴。

 

「《機皇帝スキエル∞》の攻撃力と守備力は自分フィールドに存在する『ワイゼル』『スキエル』『グランエル』と名のついたカードの合計になるぜ!」

 

《機皇帝スキエル∞》ATK0→2200

 

 本体を除く4つのパーツのステータスが中核となる《機皇帝スキエル∞》1体に集約された。テイルが感想を漏らす。

 

「……そこらの上級モンスターに倒されるステータスを誇られてもな。《スキエルG》以外の補助パーツはバニラだし」

「うるさいな!さっさと《ウィッチ》の効果処理をしろよ!」

「んじゃ、守備力0の《バトルフェーダー》を手札に加える。カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!」

 

TURN3

ルチアーノSPC2→3

テイルSPC2→3

 

ルチアーノ

LP:4000

SPC:3

Hand:3

Monster:《機皇帝スキエル∞》《スキエルT》《スキエルA》《スキエルG》《スキエルC》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set3

 

テイル

LP:4000

SPC:3

Hand:4(1枚は《バトルフェーダー》

Monster:

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2

 

「僕は《スキエルC》をリリースして、《スキエルC3》を特殊召喚!」

 

《スキエルC3》ATK600

 

 《スキエル》の翼が、電気を帯びた鋭利なものへと換装される。その瞬間、テイルが動いた。

 

「モンスターが特殊召喚されたことで、《激流葬》発動だ!フィールドの全てのモンスターを破壊する!」

「やらせるわけないだろバーカ!墓地の機械族モンスター《スキエルC》を除外して罠発動!《ゴースト・コンバート》!相手が発動した効果を無効にする!その後、このカードは墓地に送られずセットされるよ!」

「じゃあチェーンして《つり天井》。こいつはフィールドに4体以上モンスターが存在する時に発動可能なカード。表側表示モンスターを全て圧し潰す!」

「……けっ!《トラップ・スタン》発動!このターン、このカード以外の罠の効果を無効にする!」

 

 罠の応酬を締めくくったのは全ての罠を封じる電撃。刺付き天井も激流も堰き止められるが、《ゴースト・コンバート》もまた、自身をセットする効果を失い消滅する。

 

「あん?有能カードである《ゴースト・コンバート》を消費してまで《スキエル》守るのか。じゃ、残り1枚の伏せカードは《サイバー・ドラゴン》の対策とかか?」

「誰が教えるかよ!《スキエル∞》はパーツが強化されたことで攻撃力が上昇する!」

 

 《機皇帝スキエル∞》ATK2200→2400

 

「攻撃力の上昇自体はどうでもいいんだけどな、《スキエルG》と《スキエルC3》の両方ともモンスターが攻撃対象となった時、その攻撃を無効にする効果を持ってるんだったか。ああ、めんどくせえ」

 

 肩を竦めるテイル。そこには余裕があった。

 

「一々癪に障る奴だな!バトル!《機皇帝スキエル∞》でダイレクトアタック!」

「そこは勿論《バトルフェーダー》……なんてな。発動せずそのまま受けてやるよ」

「はぁ?じゃあ直撃を喰らえよッ!」

 

 鳥型兵器に装着されたレーザーがテイルを襲う。爆風が巻き起こるも、その身体も搭乗する機体も無事だった。

 

テイル:LP4000→1600

 

「なんだ、ダメージが実体化してねえのか。ま、あんたもプラシド見たく二分割されたくねえよな」

「そういう臆病な理由じゃねえよ!これはただの遊びさ。本気でやるわけないだろ!むしろ付き合ってやってる僕達に感謝したっていいんだぜ?」

「ふーん。なら本気になってもらわねえと。おれが戦闘ダメージを受けたことで手札の《トラゴエディア》の効果発動!このカードを特殊召喚する!」

「なに!?」

 

 その名は悲劇。蜘蛛のような脚部をもった鬼面の悪魔。腕と背に生えた棘は世界に叛逆する意思の表れか。

 

「こいつの攻守はおれの手札枚数×600ポイント。今のおれの手札は3枚。よって攻撃力は1800だ」

「はん、大きくライフを削ってまで出すのがそいつかよ?本気を出させるカードじゃないね。カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

「おれのターン、ドロー!」

 

TURN4

ルチアーノSPC3→4

テイルSPC3→4

 

 テイルはドローカードを確認。そのまま行動に出ようとするが、ルチアーノがそれを咎める。

 

「きえへへへっ!お前のスタンバイフェイズに永続罠《超古代生物の墓場》発動ぉ!」

 

 スピードの世界に超低温の冷気が混じる。《トラゴエディア》の身体が凍った。

 

「このカードがある限り、特殊召喚されたレベル6以上のモンスターは攻撃も効果の発動も出来ない!そいつのレベルは10!残念だけど何もさせないよ!けど、「機皇帝」はレベル1。このカードの影響を受けないぜ!」

「そうかあ。しかし対して困らない。その布陣は散々予習したからな!この凍結した世界を食べろ、チューナーモンスター《トラップ・イーター》!」

「なぁにぃ!?」

 

 ばくり、と冷却した空気を吸い込む大きな口の悪魔。《超古代生物の墓場》は一瞬にして消えた。

 

「今食わせたカードはアクセルシンクロもバーニングソウルも封じうるいやーな効果を持ってるが……んなもん想定済みに決まってんだろ。そして墓地の《黒き森のウィッチ》を対象に《トラゴエディア》の第三の効果発動。対象モンスターとレベルを同じにする。《ウィッチ》のレベルは4。こいつも4になる」

「何をする気だ?たかだか永続罠の1枚が除去されようが、ただのシンクロ召喚如き怖くないんだよ!」

「ああ、じゃあ奪うか。レベル1の《スキエルG》を対象にして、手札から同じレベルのモンスターである《バトルフェーダー》を墓地に送り、《トラゴエディア》第二の効果発動。対象モンスターのコントロールを得る」

 

 《スキエル》の尾がテイルの場に移動する。どうやって飛行のバランスを保っているかわからない間抜けな状態。

 

「パーツが奪われたことで《スキエル》の攻撃力はダウンするぜ?」

 

《機皇帝スキエル∞》ATK2400→2200

 

「くそ!ふざけやがって!」

「まだまだ。おれは通常召喚をしていない。チューナーモンスター《グローアップ・バルブ》を召喚。そして、レベル4となった《トラゴエディア》にレベル1の《グローアップ・バルブ》をチューニング!その叡智は未踏の未来を切り拓く。新たな道を示す標となれ!―――GO!シンクロ召喚!カモン!《TG ハイパー・ライブラリアン》!!」

 

《TG ハイパー・ライブラリアン》ATK2400

 

 光の道が弾け、現れ出でるは近未来的な司書風の男。ピットで待機しているプラシドの顔が歪む。

 

「なぜテイル・バウンサーがあのカードを使っている?あれはあいつの使っていたシンクロモンスターの筈……」

「謎の秘密結社Kは僕が観測した未来もまた伝説として記録しているわ!謎Dさんに許可を得て使用させていただいているのよ!」

(私も最初に見せられた時は驚いたが……彼らの助けになるのであれば、惜しむ理由もない)

 

 実際には綴が手にしたカードの内の1種類であるのだが、あながち間違いでもない。秘密結社Kとは便利な言葉である。

 テイルはさらに展開を開始する。

 

「デッキトップのカード1枚を墓地に送り、墓地の《グローアップ・バルブ》の効果発動。こいつを復活させる。で、レベル1の《スキエルG》にレベル1の《グローアップ・バルブ》をチューニング!これぞ新たなる可能性の扉。資格持つ者を遥かなる地平へと誘え!―――シンクロ召喚!シンクロチューナー、《フォーミュラ・シンクロン》!!」

 

 光が溢れ返り、レーシングカーを胴体に装着した人型ロボットが登場した。

 加速する世界に在るものだと主張するように、車体の前輪が駆動する。

 

「うざいんだよ!よくも僕のカードを使ってシンクロ召喚なんてしやがったな!」

「あんたらもシンクロモンスター奪うんだからお相子だろ?《ライブラリアン》はシンクロ召喚が行われた時、カードを1枚ドローする。で、《フォーミュラ・シンクロン》もシンクロ召喚成功時にカードを1枚ドローする。合計2枚のドロー!」

 

 シンクロ召喚しながらの手札補充。これが新たな地平への進化を導く道か。

 

「さらにおれは手札から《ジェスター・コンフィ》を特殊召喚。で、レベル1の《ジェスター・コンフィ》にレベル4の《トラップ・イーター》をチューニング!虚無より生まれし正義の闇が、万の魔を断つ刃となる!―――シンクロ召喚!来い、おれの殲滅兵器!《A・O・J カタストル》!!」

 

《A・O・J カタストル》ATK2200

 

 立ち塞がる者を尽くなぎ払う白亜の機獣。金色の頭部に存在する翡翠色の単眼は、敵を薙ぎ払う光線を放つ装置だ。

 

「またシンクロ召喚したから、《ライブラリアン》の効果で1枚ドロー。これで準備万端。バトルフェイズ!《ライブラリアン》で《機皇帝スキエル∞》を攻撃!」

「やらせねえよ!《スキエルC3》の効果発動ぉ!1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが攻撃対象になった時、その攻撃を無効にする!」

 

 司書が装着した眼鏡から放たれた光線は障壁によって弾かれた。はっ、と嗤うテイル。

 

「けどまだ《カタストル》の攻撃は残ってる。こいつで《機皇帝スキエル∞》を攻撃!」

 

 白亜の機械はそれを迎え撃とうとした鳥型機械のレーザーを躱し、反撃として頭部からレーザーを照射。《スキエル》を紙切れのように切り裂いたのだった。残っているパーツもまた、核を失ったことで自壊する。

 

「クソッ!攻撃力は互角だけど……」

「《カタストル》のモンスター効果。このモンスターと闇属性以外のモンスターが戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わず戦闘したモンスターを破壊する。《スキエル》は風属性。問答無用で消えてもらったぜ?」

「ただのシンクロモンスターごときが調子にのりやがって!」

 

 ルチアーノは怒り心頭だった。自分が誇るシンクロ封じの戦術をあっさり突破され、あまつさえ特別でもないシンクロモンスターに自慢の《スキエル》が倒されたのだから。

 

「メインフェイズ2。そんじゃあ、ぷんすかしてるところ悪いけど、絶望してもらおうか。SPCが2つ以上あることで《Sp-魂の開放》を発動。あんたの墓地の《機皇帝スキエル∞》《スキエルT》《スキエルA》《スキエルG》《スキエルC3》を除外する!神から授かった機皇帝、パーツはそれぞれ1枚ずつしかねえだろ?」

「は……あ……?」

 

 間抜けな声が漏れた。テイルは本気でルチアーノの闘い方を否定しにかかっている。本来相性の悪いシンクロモンスターを用いたうえで、だ。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド。さあ、充分遊んだんだ、もっと本気出せよ!……出せるなら、だけど」

「テメェ!よくも!僕のターン―――」

「そこまでにしろルチアーノ。役割を果たせず、「機皇帝」が使えなくなったお前にもう出番はないぜ」

 

 プラシドがルチアーノのデュエルディスクを通じて煽る。認めがたい事実を突きつけて。

 

「はあ?下っ端のお前が指図するんじゃねえぞ!」

「残念だがプラシドの言う通りだ。ライフが無傷と言えど、実質チェックメイトがかかった状態のお前がターンを引き延ばしたところで我々に益はない」

「ちっ、リーダーが言うんなら仕方ないね!ちゃんと奴を仕留めろよプラシド!」

 

 不承不承でルチアーノはピットに戻り、既にT・666に騎乗したプラシドが発進する。テイルの後方に着くと、不敵な笑みを浮かべた。

 

「調子に乗るなよ。オレはルチアーノの奴とは違う。貴様ら虫けらの戦法が、いかに無意味であるかを教えてやる!」

「調子に乗りやすい奴がなんか言ってるなあ」

「ほざけ!その減らず口が叩けないようにしてやる!」

「「デュエルッ!!」」

 

 闘いの第二幕が上がった。先攻はルチアーノから引き継いだプラシド。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

TURN5

プラシドSPC4→5

テイルSPC4→5

 

プラシド

LP:4000

SPC:5

Hand:6

Monster:

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1

 

テイル

LP:1600

SPC:5

Hand:0

Monster:《TG ハイパー・ライブラリアン》《フォーミュラ・シンクロン》《A・O・J カタストル》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2

 

「オレはSPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》を発動。カードを2枚ドローし、1枚捨てる。そして《機皇兵廠オブリガード》を召喚!」

 

プラシドSPC5→1

 

 現れたのは両肩と胴体に眼球を模したパーツを装備した機械兵。ただの下級モンスターのはずだが、テイルと綴に衝撃が走る。

 

(あん?「機皇兵」は知ってるけど、そいつは知らねえぞ。何してくるんだ?)

(あれはアニメ放送当時にはなかった未来のカード!想定していなかったわけじゃないけど、ここで出してくるなんて……!)

 

 混乱する二人を余所に、プラシドは愉しむように効果を発動した。

 

「《オブリガード》の効果発動!このカードを破壊し、デッキから《オブリガード》を除く「機皇兵」モンスターを2体特殊召喚する!現れろ、《機皇兵ワイゼル・アイン》!《機皇兵スキエル・アイン》!」

 

 スケールダウンした《ワイゼル》と《スキエル》に酷似した兵器が登場。「機皇帝」と違い、シンクロモンスターを取り込む機構が存在しない。

 

「さらに墓地に送られた《オブリガード》の効果発動。このターンのエンドフェイズに、オレのフィールドの「機皇」と名の付くモンスター1体につき100ポイントのダメージを与える。そしてオレはSPCが2つ以上存在することで《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動!《スキエル・アイン》とお前の伏せカードを対象に取り、そのカードを破壊する!」

「げ、《ミラフォ》が」

 

 逆転のカードの代名詞として挙げられるカードを除去され、少し焦りを見せる。

 

「まだだ!もう1枚の《ハイスピード・クラッシュ》を発動!対象は《ワイゼル・アイン》と最後の伏せカードだ!」

「チェーンして《強欲な瓶》発動。1枚ドローする。……やばいか?」

 

 展開したモンスター諸共に伏せカードを徹底的に除去したということは、即ち切り札の召喚を狙っているということ。テイルは猛烈に嫌な予感を覚えた。

 

「ははははははっ!これで条件は揃った!オレは墓地に存在する《機皇兵廠オブリガード》、《機皇兵ワイゼル・アイン》、《機皇兵スキエル・アイン》!3種類の「機皇」モンスターを除外して、このカードを特殊召喚する!」

 

 デュエルレーンに巨大な光の柱が立ち上り、それは降誕する。

 絶望が、三つ首の竜の形をしていた。合成された機械でありながら、洗練されたデザイン。胸部に存在する無限大を示すパーツの主張に変わりはなく、より強化されている。周囲に迸る蒼い稲妻は、その存在の強大さと脅威を心の底にまで感じさせる。

 三つ首は無機質に、目の前の標的を見据える。それでいて、ふとした瞬間にやはり無機質に標的を始末するのだ。

 鮮烈、圧倒、絶望的な存在感を放つその名は―――

 

「絶望せよ!恐怖せよ!これが驕れる人類に進化を許さぬ神の遣いだ!《機皇神龍トリスケリア》!!」

 

《機皇神龍トリスケリア》ATK3000

 

 スタジアムに、スピードの世界に、一様に混沌を齎す殲滅兵器。テイル、綴、謎のD・ホイーラーは体中に閃光が走ったかのような感覚を覚えた。

 

「……ははっ!やっと本気になったみてえだな。想定を超えたものを出してくれてありがとよ!」

「虚勢だな!この《トリスケリア》の前では貴様らは無力!バトルフェイズ―――」

「あんたのメインフェイズ終了時に《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動!このカードをシンクロ素材としてシンクロ召喚を行う!」

「なに!貴様もアクセルシンクロを!?」

「出来ればよかったんだが、生憎と限界を打ち破る境地を“まだ”持ってなくてな。折角合計レベルが12だってのに残念だ。だからこれは秘密結社K製《フォーミュラ・シンクロン》によるただの相手ターンシンクロだ。いくぜ?レベル5の機械族モンスター《A・O・J カタストル》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 白き四つ足の兵器が2つの光輪となったレーシングカーの中に取り込まれ、5つの星となる。合計7つの星を束ねるのは、テイルの祝詞。

 

「無礼な曲者ここにあり。軍配降ろし、同胞と共に戦陣を広げよ!―――シンクロ召喚!《カラクリ将軍 無零》ッ!!」

 

 星々が集い一際大きな輝きがデュエルレーンを包み込むと、新たに新生するはカラクリ仕掛けの軍配を持った将軍。

 

《カラクリ将軍 無零》ATK2600

 

「くくっ、所詮貴様は凡百のデュエリストか!そんなシンクロモンスターを出したところでなんになる!」

「まあ慌てんなよ。《無零》がシンクロ召喚に成功したことで、デッキから「カラクリ」モンスターを1体特殊召喚する。その効果にチェーンする形で《ライブラリアン》の効果発動。カードを1枚ドロー。ドローした後特殊召喚するのはこいつだ!チューナーモンスター《カラクリ参謀 弐四八》!」

 

 将軍の命に従い馳せ参ずるは、老獪な雰囲気を漂わせる「カラクリ」の1体。

 

「《弐四八》が特殊召喚に成功したことで《トリスケリア》を対象に効果発動。表示形式を変更する。守備表示になっちまえ!」

「雑魚が!ふざけた真似を!」

 

 無理矢理守備体勢を取らされる機械仕掛けの神龍。その守備力は0。

 

「あれれ?張り切ってだしたわりにゃ、効果耐性とかねえんだ。おれ達の神と一緒で使い手を試すタイプかあ。さて?攻め手を失ったあんたはどうする?」

「ええい、カードを2枚伏せ、エンドフェイズだ。《オブリガード》の効果で100ポイントのダメージを受けろ!」

 

テイル:LP1600→1500

 

「些細すぎるダメージで笑う。おれのターン、ドロー!」

 

TURN6

プラシドSPC1→2

テイルSPC5→6

 

プラシド

LP:4000

SPC:2

Hand:0

Monster:《機皇神龍トリスケリア》(守備表示)

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set3

 

テイル

LP:1500

SPC:6

Hand:3

Monster:《TG ハイパー・ライブラリアン》《カラクリ将軍 無零》《カラクリ参謀 弐四八》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:

 

 フィールドの状況を俯瞰。一見して自分が有利であるように見えるが、テイルは油断しない。

 

(どうすっかな。ちょいとリスキーだが、あいつの能力を見たいしこれ使うか)

「SPCが3つ以上存在することで、《無零》をリリースして《トリスケリア》を対象に《Sp-エネミーコントローラー》発動!そのコントロールを得るぜ?」

「馬鹿が!SPCを1つ取り除き《Sp-禁じられた聖槍》を発動!このターン、攻撃力を800ダウンさせる代わりに《トリスケリア》は魔法・罠の効果を受けない!」

 

プラシドSPC2→1

 

「しくったか。ま、いいや。《クリッター》召喚。で、レベル3の《クリッター》にレベル3の《カラクリ参謀 弐四八》をチューニング!」

 

 テイルは口元に笑みを浮かべながら星々を束ねる祝詞を紡ぎ出す。

 

「勝利導く神の槍、氷結を纏いて世界の全てを蒼へと閉ざせ!」

 

 導かれた六つの星々が空を飛び交い、一列の光をなした。

 その光よりいずるのは、投擲すれば必ず勝利をもたらすと云われた神の槍……。貫くものの意を持つ神造兵器と同じ名を冠した氷雪の龍。

 

「―――シンクロ召喚!!轟け!おれのファンタジスタ、《氷結界の龍 ブリューナク》!!」

 

 光の道が弾け、そこから六花の如き頭部を持つ青き氷雪の龍が周囲に雪光を煌かせながらスピードの世界へと舞い降りた。

 

「墓地に送られた《クリッター》の効果発動、で、シンクロ召喚に成功したことでチェーンして《ライブラリアン》の効果発動。カードを1枚ドロー。んでもって《クリッター》の効果でデッキから攻撃力1500以下のモンスターである《超電磁タートル》を手札に加える。いやあ、便利だな《ライブラリアン》」

「愚かな!シンクロ召喚が齎した破滅を貴様も知っているはずだ!」

「だったらその神龍様で違う未来を導いてみろよ。出来るものならな!《ブリューナク》の効果発動!任意の枚数手札を捨てることで捨てた枚数分、相手の場にあるカードを持ち主の手札に戻す!おれは手札を3枚捨てて、《トリスケリア》とセットカード2枚を対象にする!」

 

 ブリューナクが氷雪の嵐を巻き起こし、プラシドの敷いた布陣全てを吹き飛ばさんとする。だが、その逆境の中プラシドは嗤った。

 

「攻撃力1000以下である墓地の《ワイズ・コア》を対象に永続罠《リミット・リバース》を発動!対象モンスターを復活させる!」

「げ、《エンジェル・バトン》で墓地に送っていたのか。これはやっちまったか?」

 

 一瞬、白い卵型機械が復活するも、起点となるカードが吹き飛び自壊する。

 

「《トリスケリア》をフィールドから退かしたことは褒めてやる。だが!《リミット・リバース》がフィールドから離れた時、復活させたモンスターは破壊される。これにより、《ワイズ・コア》の効果発動。デッキから《機皇帝ワイゼル∞》、《ワイゼルT》、《ワイゼルA》、《ワイゼルG》、《ワイゼルC》を特殊召喚する!シンクロキラーの力、特と味わうがいい……合体せよ、《機皇帝ワイゼル》!」

 

《機皇帝ワイゼル∞》ATK0→2500

《ワイゼルT》ATK500/DEF0(守備表示)

《ワイゼルA》ATK1200

《ワイゼルG》ATK0/DEF1200(守備表示)

《ワイゼルC》ATK800/DEF600(守備表示)

 

 プラシドのデッキからもまた、5つの機械が飛来する。天地人の内、人を司る大型ロボット。このカード群も、絶望を齎す。特に、この盤面では効果的に見えた。

 

「通常召喚の権利は使った。攻撃は1回《ワイゼルG》に止められる。返しのターンにシンクロモンスターを吸収されるからピンチかこれ?」

「さあ、どうする?この状況をひっくり返せまい!」

「などと思っていたあんたは滑稽だぜ!手札1枚をデッキに戻して墓地のチューナーモンスター《ゾンビキャリア》の効果発動。このカードを特殊召喚!」

 

 腕が不自然に太いゾンビがフィールドに躍り出る。まだ、テイルには手が残されているのだ。

 

「レベル6の《ブリューナク》にレベル2の《ゾンビキャリア》をチューニング!錆も磨けば鋼に変わり、塵も積もれば炎と変わる!鋼を纏いて火を吹かせ!」

 

 テイルの言葉に導かれ、八つの星々は一直線に並ぶ。

 その星々の集まりは光の道となり一筋の道へと列をなす。その一瞬の後、光の道が弾け空から鉄屑で構成された竜が降臨する。

 

「―――シンクロ召喚、来い、おれの破壊竜!《スクラップ・ドラゴン》!」

 

 錆びた肉体からあふれ出すエネルギー。螺子と鉄板の裏には轟々と熱が燃え盛っている。眼前の機械に挑むように、その鉄屑の竜は吼えた。

 

《スクラップ・ドラゴン》ATK2800

 

「《ライブラリアン》の効果で1枚ドロー。で、引いたカードをセット。さらに!《スクラップ・ドラゴン》の効果発動!俺のフィールドの今セットしたカードとあんたのフィールドの《ワイゼルG》を破壊する!」

 

 《スクラップ・ドラゴン》の翼がはためき竜巻を生み出すと、2枚のカードを両方巻き込み、ミキサーのように粉砕した。

 

「ちっ……」

「さらに、破壊された《荒野の大竜巻》の効果で《ワイゼルA》も破壊だ!」

「なんだと!」

 

 両腕を失った《ワイゼル》。その姿は哀愁を誘い、攻撃力も減少する。

 

《機皇帝ワイゼル∞》ATK2500→1300

 

「じゃあ、容赦なくいくぜ?《ライブラリアン》で《ワイゼル∞》を攻撃!」

 

 今度は電子端末から記された未知の呪文を紡ぎ、端末から衝撃波を放つ。盾になるパーツは存在しない。正確に核を撃ち抜き、残ったパーツごと爆発四散させる。

 

「くっ!たかが、人間風情が!」

 

プラシド:LP4000→2900

 

「まだ終わりじゃあない。《スクラップ・ドラゴン》でダイレクトアタック!」

 

 バーナーを吹かせた鉄屑の竜による突貫。それは、かつて己を無惨な姿に変えた流星の竜の一撃にも似ていて、プラシドの視界が一瞬赤く染まった。そして、ソリッドビジョンによる衝撃が襲う。

 

「ぐうぅうううう!」

 

プラシド:LP2900→100

 

「お、残しちまったか。けど、SPCも次で2だろ?出来ることは限られてるはずだ。ターンエンド!」

「ふざけやがって……オレは神に選ばれし三皇帝だ!このままやられてたまるか!オレのターン、ドロー!」

 

TURN7

プラシドSPC1→2

テイルSPC6→7

 

プラシド

LP:100

SPC:2

Hand:4(2枚は《機皇神龍トリスケリア》《リミット・リバース》)

Monster:

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:

 

テイル

LP:1500

SPC:7

Hand:0

Monster:《TG ハイパー・ライブラリアン》《スクラップ・ドラゴン》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:

 

 渾身のドロー。ちっ、と吐き捨てるように引いたカードを振りおろす。

 

「SPCを2つ取り除き、墓地のワイゼルパーツ5枚を対象に《Sp-貪欲な壺》を発動!対象カードをデッキに戻し、カードを2枚ドローする!」

 

プラシドSPC2→0

 

「それでなんかいいカード引けたらいいな。パーツ来たら笑ってやるけど」

「ほざけ!ドローッ!」

 

 新たに引き入れたカードを見て、プラシドは嗤った。

 

「くくっ、まずは《Sp-オーバー・ブースト》を発動!SPCを6つ増加させる!」

 

プラシドSPC0→6

 

「そして、SPCが2つ存在することで《Sp-魂の開放》を発動!貴様の墓地から《超電磁タートル》、《フォーミュラ・シンクロン》、《A・O・J カタストル》、《氷結界の龍 ブリューナク》、《カラクリ将軍 無零》の5枚を除外する!」

「亀以外はシンクロモンスターじゃねえか。憎悪こもりすぎだろ」

「ふん、そしてSPCを3つ取り除き《Sp-異次元からの埋葬》を発動!除外されている《機皇兵廠オブリガード》、《機皇兵ワイゼル・アイン》、《機皇兵スキエル・アイン》を墓地に戻す!」

 

プラシドSPC6→3

 

「あ、やべ」

 

 テイルは気付いた。この後の展開に。冷や汗が頬を伝う。

 

「後悔してももう遅い!墓地に戻した3種類の「機皇」モンスターを除外し、《機皇神龍トリスケリア》を再度召喚する!」

 

 襲来するは近未来的な神龍。アドバンテージのあった先程と、リソースの切れた現在では脅威の度合いは大きく違った。スタジアムに暗雲が立ち込める。

 

「カードを1枚伏せ、バトルだ!《機皇神龍トリスケリア》で《スクラップ・ドラゴン》を攻撃!そしてこの瞬間、《トリスケリア》の効果発動!相手のEXデッキを確認し、その内のモンスター1体を選んで吸収する!さあ、暴いてやるぜ!」

 

 T・666のモニターにテイルのEXデッキが表示される。

 

《アームズ・エイド》

《アーカナイト・マジシャン》

《霞の谷の雷神鬼》

《クリムゾン・ブレーダー》

《氷結界の龍 トリシューラ》

《キメラテック・オーバー・ドラゴン》

《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》

《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》

《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》

 

 3枚もの《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》ガン積み。あからさまな対策を張られていたという事実。やはりこいつには痛い目を見せるべきではないか?ホセが禁止していなければダメージを実体化させていたというのに。

 とかく、トドメを刺すべく吸収するモンスターを選択した。

 

「貴様のEXデッキから吸収するのは《クリムゾン・ブレーダー》だ!そして、《トリスケリア》は吸収したモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップさせる!」

 

《機皇神龍トリスケリア》ATK3000→5800

 

「うわ、これ次謎Dやばいかもだ」

「最後まで余裕をかましやがって!とっとと退場しろ!トドメだ!」

 

 《トリスケリア》の3つの頭部から放たれる破壊光線が、鉄屑の竜を跡形もなく蒸発させ、その衝撃の余波がテイルに襲いかかる。

 

「ぐううぅうううッ!!」

 

テイル:LP1500→0

 

 スーパーライザーは敗北を示す白煙を上げ減速。ピットに帰還する。綴と謎のD・ホイーラーが駆け寄る。

 

「大丈夫!?」

「ああ、やばかった。向こうが折角再開したWRGPを中止しないようにダメージの実体化はやんないって踏んでたけど、あれ出されたから心臓がちょっとだけ縮まった。で、謎D次いけそう?とにかくあいつに攻撃させるな、効果を発動させるな」

「想定外のカードだが……問題はない。行ってくるぞ!」

「がんばって!」

 

 デルタイーグルがT・666の後を追う。それを見届けた後、綴は大きく息を吐いた。

 

「まさか《トリスケリア》を持ち出すなんて思わなかったわ。あれ、僕の観測した物語の終わりから9年くらい経って秘密結社Kが刷ったカードよ。どこからあんなものを……」

「ま、いい方に考えれば、相手がそういうのを使ってくることがわかっただけでも大収穫。後は、謎Dが勝ってくれるのを祈るばかりだ」

「そうね。アリアの無事を確認したいわ」

 

 果たして彼らの祈りは届くのか。混迷するスピードの世界の結末や如何に。

 




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味方には制限が掛かるが、敵にはそれが適用されない仕様。
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