不動遊星の初体験を奪いたい   作:うおのめちゃん

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24話 神と悪魔!信念を懸けたタッグデュエル!

 綴と謎のD・ホイーラーがジャックとドラガンに挑戦状を突きつけた。

 テイルが魂に封印していた“アレ”によって予定は多少狂ったが、元の計画通りに進めんとする。当然、過去の因縁に決着がついていない二人は反発した。

 

「フン、なぜオレがこんな男と組まねばならん!」

「それはこっちの台詞だ!」

「ジャックはバーニング・ソウル、ドラガンは《トール》の力に自信があるみたいだけど……テイルのデュエルを見たでしょう?強者は他にもいるということがわかったはずよ。そして僕達も、同等の実力を持っているわ」

「私達に勝てぬようでは、この世界の命運を担うことなど到底できはしない!」

 

 断言された。それは沸点の低い二人を煽るには十分な効果を持つ。

 

「そこまで言われては、引き下がるわけにはいかん!仲間がブレイブを負かしたからといって調子に乗るな!《極神皇トール》の力、見せてやる!」

「いいだろう。この男と組むのは気に入らんが……とくと拝ませてやる!バーニング・ソウルの力を!」

 

 層を成した気迫が異空間に広がっていく。常人ならば一歩どころか三歩引く威圧感。

 

「いいのかいハラルド?ドラガンの奴、ああなったら止まらないぜ?」

「……このデュエルに意義はある。止める理由はないとも」

「ジャックもやる気になっちまったぜ」

「綴も謎のD・ホイーラーも、これまで俺達に力を貸してくれた。あの二人を指名したのもきっと何か考えがあってのことだろう。ここはおとなしくデュエルを見守ろう」

「そうそう、きっと激しい闘いになるだろうぜ」

 

 ギャラリーが沈黙し、4人が一斉にデュエルディスクを構える。

 

「ルールを決めるわね。フィールドは4人それぞれ別。最初のターンは全員攻撃が出来ない。全体破壊などの効果はフィールド全てに及ぶ。そして、タッグ2人でライフ8000を共有するわ」

「ライフ共有だと……」

「ここで求められるのは、結束の力だ。互いにいがみあっている状態で勝てる程、タッグデュエルは甘くない」

「言われずとも理解している!今は目の前の相手と向き合い、雑念を捨てるべきだということだろう!」

「こんなところで負けるわけにはいかん。パートナーを無視した闘いなどせんわ!」

「わかっているのならいいわよ。じゃあ、始めましょうか」

「「「「デュエル!!」」」」

 

 男達のプライドを懸けた闘いが火蓋を切った。

 

「先攻は僕達ね。ドロー!早速I2社のテスト用カードを使うわね。《混沌の召喚神》を召喚!」

 

 現れ出でるは異形の悪魔。その攻撃力は0。

 

「《混沌の召喚神》をリリースして効果発動!手札から召喚条件を無視して「三幻魔」の内1体を特殊召喚する!おいで、僕の雷の魔王!―――魔法を司りし三幻魔が一角、《降雷皇ハモン》!!」

 

 決闘場が曇天へと塗り替わる。夥しい程の雷が鳴り響く。全身が禍々しい黄土色に染まり、骨と皮で絞り込まれた狂える魔界の裁判官。天雷の化身がブレックファースト感覚で登場した。

 

《降雷皇ハモン》ATK4000

 

「いきなり幻魔を召喚するとはな……侮れんやつだ」

「これが綴だ。容易く最上級モンスターを操る才能を持っている」

「さらに墓地の《混沌の召喚神》を除外して効果発動。デッキから《失楽園》を手札に加え、発動!」

 

 曇天の空の下、荒涼と化した大地が広がる。その中心には《ナチュルの神聖樹》とは異なる枯れた一本の樹木と禁断の果実。魔界めいた風景が三極神の敷いた光の空間を穢す。

 

「《失楽園》が場に在る限り、三幻魔とそれらを束ねた《アーミタイル》は相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。そして、《失楽園》の第二の効果!《ハモン》が場に存在することでカードを2枚ドローする!」

「なんだよそのインチキ効果は!」

「三幻魔が場にいないとどうしようもないカードよ?耐性のない最上級モンスターをサポートするにはこれくらいやらなくちゃ。それに驚くのはまだ、早い!永続魔法《失楽の霹靂》を発動!1ターンに1度、《ハモン》が攻撃表示で存在する場合、相手の魔法・罠を無効にし、《ハモン》を守備表示にする」

 

 《ハモン》を囲むように魔界に青い結晶が生じた。綴の世界が広がっていく。

 

「くっ……厄介な効果を!」

「そして《ハモン》が守備表示で存在する場合、相手モンスターはこのカード以外を攻撃対象にできない。このタッグデュエルにおいては、あなた達2人に効果が及ぶ。攻撃誘導能力を持った耐性持ちの守備力4000は面倒な壁でしょう?魔法・罠を使うときには注意するのね。僕は最後に永続魔法《フィールドバリア》を発動し、カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

 濃度の高まった圧迫感が決闘場を包み込む。それに対して果敢に挑むはジャック。

 

「オレのターン、ドロー!永続魔法《闇の護封剣》を発動!発動時、相手フィールドのモンスターを全て裏側守備表示にする!」

「流石ねジャック。そのカードなら《失楽園》の効果をすり抜けて《ハモン》に対処できる。だけど、当然《失楽の霹靂》の効果発動!《ハモン》を守備表示に変更し、その効果を無効にする!」

 

 電撃を四方に飛ばし、三本の漆黒の剣が齎す闇を跳ね除ける。そして腕を交差させた黄土色の悪魔は前衛に繰り出て、一部の隙間もない結界を生み出す。

 

「だが!《闇の護封剣》は相手ターンで数えて2ターンの間、モンスターの表示形式を変更することは出来ない!つまり!次のお前のターンの終了時まで、《ハモン》は守備表示のままだ!」

「けれどこれで《ハモン》は厄介な壁となった。最初のターンは全員攻撃できない以上、どうするのかしら?」

「相手フィールドにのみモンスターが存在することで、《バイス・ドラゴン》は特殊召喚できる!そして、チューナーモンスター《ダーク・リゾネーター》を召喚!」

 

 肥大化した筋肉を持った紫の竜と、音叉を持った小さな悪魔が並ぶ。これぞジャックの基本戦術。

 

「レベル5の《バイス・ドラゴン》に、レベル3の《ダーク・リゾネーター》をチューニング!王者の鼓動、今ここに列を成す!天地鳴動の力を見るがいい!―――シンクロ召喚!我が魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》ッ!」

 

 ジャックの号令と共にシンクロ召喚特有の演出がなされれば、炎が舞い、ジャック・アトラスという男を象徴する紅の竜が吼える。立ちはだかる敵を打破せんという意思の表れとして。

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン》ATK3000

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

「では私のターン、ドロー!」

 

 経歴不明。年齢不詳。正体不明。曖昧模糊な己の中に在るのは使命と仲間との絆。謎のD・ホイーラーが動く。

 

「《TG カタパルト・ドラゴン》を召喚!その特殊能力により、手札からレベル3以下の「TG」と名のついたチューナーモンスターを特殊召喚する!来い!《TG ジェット・ファルコン》!」

 

 1本角と射出機が一体となった蜥蜴のような竜と、ジェットブースターを装備した鳥人。チューナーと非チューナーが揃えば、とられる戦術はジャック同様シンクロ召喚。

 

「レベル2の《カタパルト・ドラゴン》に、レベル3の《ジェット・ファルコン》をチューニング!リミッター解放、レベル5!レギュレーターオープン!スラスターウォームアップ、OK!アップリンク、オールクリアー!―――GO!シンクロ召喚!カモン!《TG ハイパー・ライブラリアン》!」

 

 計器が表示される中、星と輪が一直線に並びシンクロ召喚のエフェクトが魔界と化した異空間を照らす。

 白いローブを纏った、電子端末を手に携えた司書風の男。近未来的に見えるバイザーが、紅蓮魔竜の姿を捉える。

 

「《ジェット・ファルコン》がシンクロ素材となったことで、相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

ジャック・ドラガン:LP8000→7500

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

《闇の護封剣》:継続残り1ターン

 

「ようやくオレのターンか。ドロー!」

 

 チームラグナロクの先鋒を務める巨漢、ドラガンは静かにカードを選ぶ。

 

「……モンスターをセット。カードを3枚伏せターンエンドだ」

「貴様、自慢の三極神はどうした!?」

「無理に召喚しようとすれば、奴らが伏せている6枚ものリバースカードに阻まれるに決まっているだろう!幸いにしてお前のおかげで《ハモン》は動かん。準備を整え、奴らを十全な形で仕留めることこそが最善と判断したんだ」

「いいだろう。オレが攻めてあいつらの動きを牽制する。だが、悠長にしていられる相手ではないぞ!」

「わかっている!次のターンにはお前と二人で攻勢に出る!」

 

 綴がいきなり脅威となる《ハモン》を喚びだしたからか、いがみあうことを忘れ、共闘の姿勢を取りはじめる二人。感心したかのようにギャラリーが微笑む。

 

「あいつら、なんだかんだでうまくやれるんじゃねえか?」

「眼前に強敵が現れれば嫌でも手を取らなければならない……彼の狙い通りというわけか」

「あの二人は負けず嫌いだ。案外、気が合うのかもしれない」

「とはいえ、まだ始まったばかりだぜ?ちゃんと連携が取れるか心配だな」

「そうそう、綴は素直な戦法を取る傾向にあるが、かき乱すのも実は得意だったりするんだな。さて、どうなるやら?」

 

 観戦者の視線はターンが移行した綴に移る。彼の、その女性らしい指先がデッキトップにかかる。

 

「僕のターン、ドロー!《失楽園》の効果を発動し、さらにカードを2枚ドロー。さて……」

 

LP:8000

Hand:3

Monster:《降雷皇ハモン》(守備表示)

FieldMagic:《失楽園》

Magic&Trap:Set3+《失楽の霹靂》《フィールドバリア》

 

謎のD・ホイーラー

LP:8000

Hand:1

Monster:《TG ハイパー・ライブラリアン》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set3

 

ジャック

LP:7500

Hand:1

Monster:《レッド・デーモンズ・ドラゴン》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set2+《闇の護封剣》

 

ドラガン

LP:7500

Hand:2

Monster:Set《???》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set3

 

 フィールドに切り札を並べたのは綴とジャックのみ。互いのパートナーの動きはおとなしい。しかして、十面埋伏の罠が仕掛けられているのも明白。

 

「このままターン終了よ。そして《闇の護封剣》の効果は破壊され、《ハモン》は解放される」

「ふん、何もせずターンを譲渡するとは侮られたものだな!オレのターン、ドロー!チューナーモンスター《チェーン・リゾネーター》を召喚!その効果により、デッキから同名カード以外の「リゾネーター」モンスターを特殊召喚する!現れろ!《フレア・リゾネーター》!」

 

 音叉の連鎖により、きしし、と笑みを浮かべる悪魔が紅蓮魔竜の元に集った。

 

「……荒ぶる!荒ぶるぞ!オレの魂が!」

 

 ジャックの全身に赤き闘志が滾る。バーニング・ソウル、荒ぶる魂の覚醒。

 

「レベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン》にレベル1の《チェーン・リゾネーター》とレベル3の《フレア・リゾネーター》、2体のチューナーモンスターとダブルチューニング!!」

 

 小悪魔の身体の端々が轟々と燃える4つの輪となり、紅蓮魔竜の身を囲う。そしてジャック自身の身体もまた、轟々と燃える炎の闘気を迸らせる。

 

「王者と悪魔、今ここに交わる!荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!―――シンクロ召喚!!出でよ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ッ!!」

 

 一瞬の閃光、巻き散らされる赫灼の炎熱。敢然たる佇まいの緋色の巨影が咆哮を上げる。暗き赤宿す体躯。堂々とその威容を誇る巨竜の圧倒的存在感が傲然と決闘場を揺さぶった。

 

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500

 

「これが、貴様の切り札か!ジャック・アトラス……!」

「早速来たわね。けど、謎D!」

「ああ!自分、または相手がシンクロ召喚に成功した時、《ハイパー・ライブラリアン》の効果発動!私はカードを1枚ドローする」

「自分のシンクロ召喚を補佐し、相手のシンクロ召喚を抑制するのか……だが!まずは《ハモン》を仕留める!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の永続効果!墓地のチューナー1体につき、攻撃力を500ポイントアップさせる!墓地のチューナーは3体、よって攻撃力は1500ポイント上昇!さらに、《フレア・リゾネーター》がシンクロ素材となったことで、さらに攻撃力が300ポイントアップする!」

 

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500→5000→5300

 

 炎熱の勢いが増す。燃え盛る炎が、雷が降り注ぐ荒涼の地を赤く染めた。

 

「バトルだ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》で《降雷皇ハモン》を攻撃!『バーニング・ソウル』ッ!!」

 

 超新星の竜は巨大な紅蓮の弾丸となって、魔界の支配者へと突貫する。小細工なし、莫大な輝きを伴った一撃がその身を貫く―――はずだった。

 受け止められている。攻撃力が上回っているはずなのに、雷の結界に受け止められている。

 

「なにが起きている!?」

「ダメージステップに罠カード《D2シールド》を発動したわ。《ハモン》を対象に発動。対象モンスターの守備力は、元々の守備力を倍にした数値になる!チェーンはあるかしら?」

「ならばオレが!リバース・カード・オープン!カウンター罠《トラップ・ジャマ―》!バトルフェイズ中に発動した相手の罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

 

 ドラガンが防御の布陣を打ち破るためにジャックをサポートする。しかして、サポーターは綴の側にもいるのだ。

 

「私はカウンター罠《ギャクタン》を発動!罠カードの発動を無効にし、デッキに戻す!さあ、チェーンはあるか!?」

「……くっ、これ以上何も発動はしない」

「やってくれたな……!」

「じゃあ、効果解決ね。《ハモン》の守備力は4000の倍となって―――」

 

《降雷皇ハモン》DEF4000→8000

 

「守備力8000の壁モンスターだと!」

「《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を押し返しなさい!」

 

 綴の命に従い、前進防御で突貫の勢いを殺し、分厚い甲殻に覆われた両腕で勢いよく《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を弾き飛ばす。その余波が、ジャックとドラガンを襲う。

 

「「ぐっ……」」

 

ジャック・ドラガン:LP7500→4800

 

「そうたやすく突破させはしないわ。次の手はあって?」

「……ターンエンドだ!」

 

 苦々しげにターン終了を宣言する。そこには、力を手にし慢心していた自分への苛立ちも含まれているのか。

 

「私のターン、ドロー!《TG ドリル・フィッシュ》を召喚!」

 

 頭部にドリルを装着した魚が、空中を揺蕩う。

 

《TG ドリル・フィッシュ》ATK100

 

「《TG ドリル・フィッシュ》は、相手に直接攻撃できる!バトルフェイズ!ドラガンに―――」

「させん!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果発動!このカードを除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

「無駄よ!僕は永続罠《王宮の鉄壁》を発動!お互いに、カードを除外することは出来ない!」

「ええい、ならば永続罠《スクリーン・オブ・レッド》を発動!相手モンスターは、攻撃宣言できない!」

「……僕はチェーンしないわ。謎Dは?」

「私もしない。効果解決に入る」

 

 透き通る紅の幕が二組の間に現れた。複雑に光を乱反射させる緞帳が戦場に境界線を引く。

 

「バトルフェイズは終了。このままターンを終了する」

「ジャック・アトラス、良いサポートだった。後はオレに任せろ!オレのターン、ドロー!まずは《極星獣タングニョースト》を反転召喚!」

 

 リバースしたのは漆黒の山羊。《トール》の戦車を牽引した逸話を持つ。

 

「《タングニョースト》が守備表示から攻撃表示に変更されたことで、デッキから「極星獣」と名のついたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!来い!チューナーモンスター《極星獣グルファクシ》!」

 

 金の鬣を持った黒馬が嘶きながら決闘場に現れる。

 

「そして、《極星獣タングリスニ》を通常召喚!オレはレベル3の《極星獣タングニョースト》、《極星獣タングリスニ》にレベル4の《極星獣グルファクシ》をチューニング!」

 

 黒馬が自身を四つの光輪へと変じると、歯軋りする黒羊と白羊を囲み、その2体は六つの星となる。融けあう輪と星が一際巨大な光の柱を生み出す。それと同時、ドラガンの左目に「巨人」や「力」を表すルーン文字が浮かび上がる。

 

「星界の扉が開くとき、古の戦神がその魔槌を振り上げん!大地を揺るがし轟く雷鳴とともに現れよ!―――シンクロ召喚!光臨せよ、《極神皇トール》!」

 

 光の柱から、《ハモン》に劣らぬ雷鳴を轟かせ、巨神が降誕。上半身を包む重鎧に、複数のビルを包み込めるほど広い外套。《ミョルニル》と呼ばれる稲妻を象徴する大きな槌を振り上げ、自らを含む神々が生み出した空間を穢す魔界の王を睥睨する。

 

《極神皇トール》ATK3500

 

「シンクロ召喚が行われたことで、《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果により、私はカードを1枚ドローする!」

「構うか!《極神皇トール》の効果発動!このターンの終了時まで相手フィールドのモンスター全ての効果を無効にし、その内1体の起動効果まで得る!『エフェクト・アブゾーバー』ッ!!」

「なんですって!(アニメ版だと1体を対象に取る効果だったのに強化されているの!?)」

 

 雷が《ハモン》と《ライブラリアン》、《ドリル・フィッシュ》に落下し、能力を一時的に失わせる。そして迸った電気が《トール》に吸収される。

 

「ふ、その3体に起動効果はないか。だが、情報が知れただけでも十分!バトルだ!《極神皇トール》で《降雷皇ハモン》を攻撃!『サンダー・パイル』ッ!!」

「あら?守備力8000に真っ向から挑むのね。何をするつもりなのかしら?」

 

 雷を纏った大槌が、堅牢なる魔王に振りかぶられた。

 

「ここだ!ダメージステップに《反転世界》を発動!それにチェーンして《極星宝メギンギョルズ》を発動!このターン《極神皇トール》の攻撃力と守備力を倍にする!」

 

 トールが巨大な帯を握りしめれば、大槌の勢いは増した。《ミョルニル》を使いこなすには、この帯と鉄の籠手が必要だったという。

 

《極神皇トール》ATK3500→7000 DEF2800→5600

 

「そして、《反転世界》の効果が適用!フィールドに存在するすべての効果モンスターの攻守を逆転させ、固定する!」

「あらら?つまり……」

 

《極神皇トール》ATK7000→5600 DEF5600→7000

《降雷皇ハモン》ATK4000→8000 DEF8000→4000(守備表示)

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK5300→3000 DEF3000→5300

《TG ハイパー・ライブラリアン》ATK2400→1800 DEF1800→2400

《TG ドリル・フィッシュ》ATK100→800 DEF800→100

 

 利が仇と変わり、仇が利に変わる。《ハモン》の堅牢であった守備力は実質元の数値へと戻り、《トール》は倍加した数値を固定したまま保持することとなった。

 力を増した大槌が振り下ろされきると、雷の魔王の身体はひしゃげ、砕け散る。

 

「どうだ!同じ雷を操るものと言えど、神には勝てん!」

「ドラガン、貴様……誇るのはいいが、《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の攻撃力まで固定化されたではないか!」

「こうでもしなければ、突破できなかったのはお前にもわかっているだろう!」

「ぬう……まあいい、補える範疇ではある。だが、綴は切り札一つ失った程度で止まるデュエリストではないぞ」

「その通り。《ハモン》が破壊されたことで《レベル・レジストウォール》を発動。デッキからレベルの合計が《ハモン》のレベルである10と同じになるように、モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!レベル1、チューナーモンスター《ヘル・セキュリティ》2体!レベル1、《混沌の召喚神》!レベル7、《幻魔の召喚神》!」

 

 悪魔が4体勢揃い。次なる切り札の召喚に向けての準備は整えられた。

 

「なるほど、厄介だな……カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

「僕のターン、ドロー!」

 

LP:8000

Hand:4

Monster:《ヘル・セキュリティ》《ヘル・セキュリティ》《混沌の召喚神》《幻魔の召喚神》

FieldMagic:《失楽園》

Magic&Trap:《失楽の霹靂》《フィールドバリア》《王宮の鉄壁》

 

謎のD・ホイーラー

LP:8000

Hand:3

Monster:《TG ハイパー・ライブラリアン》《TG ドリル・フィッシュ》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set2

 

ジャック

LP:4800

Hand:1

Monster:《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set1+《スクリーン・オブ・レッド》

 

ドラガン

LP:4800

Hand:1

Monster:《極神皇トール》

FieldMagic:

Magic&Trap:Set1

 

 ジャックとドラガンのフィールドには存在感の暴力の化身たる、超新星の竜と雷を司る三極神が一柱。だが、手札のアドバンテージは明らかに綴と謎のD・ホイーラーのタッグが優勢だ。

 

「僕はレベル1の《混沌の召喚神》にレベル1の《ヘル・セキュリティ》をチューニング!これぞ新たなる可能性の扉。資格持つ者を遥かなる地平へと誘え!―――シンクロ召喚!シンクロチューナー、《フォーミュラ・シンクロン》!!」

 

 輝く一つの輪に、一つの星が重なれば、その中心から光の柱が立ち昇る。その中から現れ出でるは、カラフルに塗装されたレーシングカーを模したモンスター。

 

「《フォーミュラ・シンクロン》がシンクロ召喚に成功した時、カードを1枚ドローする!」

「そして《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果発動!シンクロ召喚が行われたことでカードを1枚ドローする!」

「シンクロ召喚を利用したドロー加速だと?やらせるわけにはいくか!永続罠《極星宝スヴァリン》を発動!オレのフィールドに「極神」が存在する時、このカードの効果により、相手フィールドの表側表示のカードの効果はターン終了時まで無効化される!」

 

 ブレイブも使用した「極星宝」の一種。巨大な漆黒の盾の中心に埋め込まれた紅の宝石が輝き、綴達のカードが放っていた威容が全て失われた。

 

「ここで切るのね。大量ドローが怖いのは仕方ないけれど。でも、そのカードの効力はあくまで発動時に在ったカードの効果を無効にするのみ。発動後に出したカードの効果は無効にできない!僕はレベル7の《幻魔の召喚神》にレベル1の《ヘル・セキュリティ》をチューニング!錆も磨けば鋼に変わり、塵も積もれば炎と変わる!鋼を纏いて火を吹かせ!」

 

 綴の言葉に導かれ、八つの星々は一直線に並ぶ。

 その星々の集まりは光の道となり一筋の道へと列をなす。その一瞬の後、光の道が弾け空から鉄屑で構成された竜が降臨する。

 

「―――シンクロ召喚、おいで、テイルの破壊竜!《スクラップ・ドラゴン》!」

 

 錆びた肉体からあふれ出すエネルギー。螺子と鉄板の裏には轟々と熱が燃え盛っている。立ちはだかる敵からすれば矮小である自覚はありながら、その竜は咆哮する。

 

《スクラップ・ドラゴン》DEF2000(守備表示)

 

「折角貸したんだ。うまく使えよ?」

「ええ、勿論!《失楽園》とジャックの《スクリーン・オブ・レッド》を対象に《スクラップ・ドラゴン》の効果発動。対象カードを破壊するわ!」

 

 ぱりん、と世界の割れる音がした。魔界も緞帳も鉄屑の竜が起こした竜巻によって引き裂かれる。

 

「自分からフィールド魔法を破壊するだと……?」

「ご心配なく。ケア出来るのよ。《王宮の鉄壁》の効果が無効化されていることで、墓地の《混沌の召喚神》を除外することが出来る!そして、その効果により2枚目の《失楽園》を手札に加え、発動!《フィールドバリア》も無効にしてくれてありがとね!」

 

 再び荒涼とした大地が広がる。不滅なる魔界。

 

「僕はまた通常召喚を行なっていない!《暗黒の招来神》を召喚!召喚成功時、効果を発動!デッキから「三幻魔」にカテゴライズされるモンスターの名が記されたカードを手札に加える。僕が加えるのは《七精の解門》!」

 

 三幻魔それぞれの特徴を反映したかのような悪魔が甲高い声で鳴くと、綴の手札に新たなカードが加わった。

 

「永続魔法《七精の解門》を発動!発動時、デッキから「三幻魔」か、それにカテゴライズされるモンスターの名が記されたモンスターカードを手札に加える。僕が手札に加えるのは《幻魔皇ラビエル-天界蹂躙拳》!さらに、《七精の解門》第二の効果!手札を1枚捨てることで、墓地の攻守が0の悪魔族モンスターである《幻魔の召喚神》を復活させる!」

 

 7つの石碑が円を描くように出現すれば、電撃が隙間を繋ぐように生じ、完全な輪を形成した。そこから生まれ出でるは、三幻魔の配色やパーツを組み合わせたかのような悪魔。

 

「《幻魔の召喚神》の効果発動。このカードをリリースして、「三幻魔」の内1体を手札に加える。その後、手札から攻守が同じ炎族・雷族・悪魔族且つレベル10モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する!僕は《幻魔皇ラビエル》を手札に加え、そのまま特殊召喚!おいで、僕の青き魔王!―――悪魔族の頂点が一角、《幻魔皇ラビエル》!」

 

 霧がある。決闘場には黒い霧が蔓延っていた。禍々しい瘴気の中心には、威風堂々、三極神には及ばずともその身体は巨大。聳え立つは群青色に染め上がった強靭な肉体。堅固たる霧の巨人にして魔界の重鎮が、閉塞感を生み出す。

 

《幻魔皇ラビエル》ATK4000

 

「やはり来たか、2体目の幻魔!」

「これが、湯上綴というデュエリスト……!」

「《ラビエル》が存在することで、《失楽園》の効果で2枚ドロー。まだまだいくわよ!レベル2の《暗黒の招来神》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!集いし勇気が、勝利を掴む力となる。僕達の道を拓け、破壊の籠手!―――シンクロ召喚!《アームズ・エイド》ッ!」

 

 シンクロ召喚のエフェクトによる光の中から、赤く鋭い爪を持つ機械的な片腕がフィールドに降り立つ。それは腕というよりは手甲に近い。

 

「《アームズ・エイド》の効果発動!《ラビエル》の装備カードとなり、攻撃力を1000アップさせる」

 

 手甲が宙に浮かび、その身を徐々に赤く輝く光の玉へと変じさせていく。やがてその光は《幻魔皇》の腕へと吸い込まれていき、その体を淡く赤い光が包みこんだ。

 

《幻魔皇ラビエル》ATK4000→5000

 

「だが、攻撃力5600の《極神皇トール》には及ばん!」

「僕の手札、まだ5枚あるんだから油断しないの。手札の《幻魔皇ラビエル-天界蹂躙拳》を捨て、《ラビエル》本体を対象に効果発動。このターン、《ラビエル》の攻撃力は倍となり、相手モンスター全てに攻撃できる!」

「ならば、その攻撃力は―――」

 

《幻魔皇ラビエル》ATK5000→10000

 

「攻撃力10000、だと……!?これが、湯上綴の実力……!」

「さあ、なにもなければこれでおしまい!バトルフェイズ!まずは《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を攻撃!『天界蹂躙拳・極』ッ!!」

「《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果発動!このカードをターン終了時までゲームから除外し、相手モンスター1体の攻撃を1度だけ無効にする!」

 

 悪魔の力を宿した紅蓮魔竜は炎の残滓を残してフィールドから亜空間へと転移。発生した障壁により必殺拳が弾かれる。

 

「まあ、そうなるわよね。けどドラガン、あなたに攻撃を防ぐ術はない!《ラビエル》で《トール》を攻撃!」

 

 雷を司る極神の土手っ腹を蒼き拳が貫く。寝耳に水の豪拳一発。異空間をそのものを揺らす衝撃波が、容赦なくジャックとドラガンを襲う。

 

「「ぬぅおおおおッ!?」」

 

ジャック・ドラガン:LP4800→400

 

「モンスターを戦闘破壊したことで、《アームズ・エイド》の効果発動!破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!《トール》の攻撃力は3500。その数値分のダメージを受けて、あなた達は終わり―――」

「させん!カウンター罠《地獄の扉越し銃》を発動!オレが受けるはずの効果ダメージを相手に与える!」

「えぇ!?」

 

 ジャックによる想定外のカウンターが綴達へ一撃を与える。

 

綴・謎のD・ホイーラー:LP8000→4500

 

「なるほど、私がホセに効果ダメージで倒されたことを受けて、その対策となるカードを積んでいたのか」

「三皇帝が「機皇帝」以外で仕掛けてくる戦術と言えば永続罠と効果ダメージだ。仮想敵に対して準備をしない程愚かではないわ!」

「……助かった、ジャック・アトラス」

「ふん、礼を言われるまでもない。今回は偶然貴様も守る結果になっただけだ」

 

 確かに芽生え始めた絆。ギャラリーの心がほころぶ。

 それとは真逆に、焦りを見せる綴。

 

「見て、謎D。僕の魔法・罠ゾーン、《失楽の霹靂》《フィールドバリア》《王宮の鉄壁》《七精の解門》《アームズ・エイド》で埋まっちゃってるわ……後は頼めるかしら?」

「ああ、任せておけ。キミの計画通り進めてみせよう」

「なら心置きなくエンドフェイズに入るわ。まず、《ラビエル》の攻撃力が元に戻る」

 

《幻魔皇ラビエル》ATK10000→5000

 

「そしてこの瞬間!《極神皇トール》の効果発動!このカードが破壊され墓地に送られたターンのエンドフェイズ、このカードは復活し、相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

 異空間の大地を割いて、極神の一角が威風堂々と浮かび上がる。そして、雨のように雷が、綴達に降り注ぐ。

 

「きゃっ!」

「くっ……!」

 

綴・謎のD・ホイーラー:LP4500→3700

 

「そして、《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》もこのエンドフェイズに帰還する!」

 

 時間が巻き戻されたかのように炎の残滓が収束し、超新星の竜は舞い戻った。《反転世界》による影響はなくなり、その攻撃力は5000に戻っている。

 プライド高き男達の信念が籠ったカードは不屈だった。

 

「綴!前のターンでオレ達を仕留めそこなったこと、後悔するぞ!オレのターン、ドローだ!バトル!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》で《TG ドリル・フィッシュ》を攻撃!『バーニング・ソウル』ッ!!」

「攻撃力の差は4200かあ」

「この攻撃が通ればあいつらの勝ちだぜ!」

「だが、果たしてそううまくいくか……」

 

 周囲が懸念する中、超新星の弾丸は魚を焼き尽くす。しかし、綴達は障壁で覆われ、炎が及ぶことはなかった。

 

「僕は手札から《アルカナフォースXIV-TEMPERANCE》を捨て、僕達が受ける戦闘ダメージを0にしたわ。まだ粘るわよ」

「お前たち程のデュエリストがそう易々と倒されるわけがないからな。ターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー!……ドラガンの永続罠《極星宝スヴァリン》を墓地へ送り、チューナーモンスター《トラップ・イーター》を特殊召喚する!」

 

 ばくん!と盾を呑み込み、大口の悪魔が登場する。困惑したのは遊星。

 

「「TG」以外のカード……?いや、イリアステルの戦術への対策であるのなら、これも選択肢なのか……?」

「さて、待たせたなアスピッピ。出番だ。私は《TG ハイパー・ライブラリアン》と《トラップ・イーター》をリリースし、《地縛神 Aslla piscu》を召喚する!」

 

 強烈な紫の光の柱が放たれ、その中から誕生するように声を上げたのは巨大なハチドリの神。太陽と縁が深いからか、漆黒の身体に走るラインは夕陽色。複雑な事情の関係性となった《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》と、異なる神話の神である《極神皇トール》に真っ向から対峙する。

 

《地縛神 Aslla piscu》ATK2500

 

「な!?地縛神だと!?」

『くくっ、驚いたであろう?まさかこの男が我を召喚するとは思うまい!』

「邪神であるおまえを使って、あいつのクリアマインドに影響はないのか!?」

『真に澄んだ心ならば、今の我を扱った程度で穢れることはない!……まあ、忌々しく思わないでもないが。それよりも、だ。紅蓮の悪魔を取り込んだ存在であろうが、北欧神話が誇る最強の怪力の持ち主であろうが、我は止められん!』

 

 鳥とも上位存在ともとれる嘶きをもって、大きく羽ばたく体勢に入る。

 

「バトルだ!《地縛神 Aslla piscu》は直接攻撃が出来る!ドラガンにダイレクトアタック!」

「(ちぃッ!綴の《王宮の鉄壁》によって《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果は封じられている!だが!)相手の直接攻撃宣言時、手札の《バトルフェーダー》の効果を発動!このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」

「無駄だ!リバースカード《マインドクラッシュ》を発動!ジャックを指名し、《バトルフェーダー》を宣言する!効果は先程のデュエルでブレイブが使ったから覚えているな?宣言されたカードを相手は手札から捨てなければならない!」

「なに!?」

 

 戦場を調停する振り子の悪魔は効果を発揮する前に封じられた。残る術を探す。見つからない。迫りくる狂乱の嵐に、対抗する術はない!

 

「「ぐうあああああっ!!」」

『ふはは!我は満足だ!』

 

ジャック・ドラガン:LP900→0

 

 膝をつくジャックとドラガン。勝利した綴と謎のD・ホイーラーが歩み寄る。

 

「どうだった?少しは仲良くなれたんじゃないかしら?」

「……ジャック・アトラスに助けられた場面は多くある。だが、オレは足を引っ張る結果に終わってしまったのやもしれん」

「いや、お前の力がなければ《ハモン》は突破できなかった。そして、《スヴァリン》がなければさらに圧倒的な差をつけられて敗北していただろう。オレも、お前に助けられた場面はあった。この二人が、オレ達よりも強かったのだ」

「過去の因縁や己の負の感情からは解放されたか?」

 

 謎のD・ホイーラーが問いかける。半ば答えがわかっていたとしても、本人が口に出すことが重要だからだ。

 

「ああ、オレは過去に犯した自分の行いをジャック・アトラスの所為にして、己を正当化しようとしていた……だが、このデュエルで理解した。この男は、王者という座の為に人を陥れるような奴ではないと!」

「ふん、それはオレとて同じようなものだ。お前が、どれ程の思いでデュエリストとしてのプライドを捨てざるを得なかったのか、ムキになって理解しようとしなかった。それを知らず、過去のオレがお前に暴言を吐いたのも事実。ここまで真っすぐな性根をした奴に対してそんなことをしたのだ。恨まれても仕方なかろう」

 

 二人はデュエルを通じて理解しあった。互いの中に滾っているデュエルへの情熱を。素直で真っすぐな心を持ったデュエリストだと。

 

「二人とも、どうやらわかってくれたようだな」

「ああ、過去の遺恨は今日限りだ。ジャック・アトラスよ!次に闘うときは、オレは自分の力を全て出し切って見せる!」

 

 ドラガンはここに来て、純粋な笑みを浮かべた。見ている者も嬉しくなる爽やかな笑顔だった。

 

「ふ、正々堂々、正面から受けて立つぞ!ドラガン!」

 

 ジャックも挑戦的な笑みを浮かべる。純粋な闘いを望む、一人の男として。

 

「おーしっ!こいつらのデュエル見てたら気合入ったぜ!みてろよ!チームニューワールド!」

「その前にオレ達がいることを忘れんなよ?油断してると決勝戦への切符、オレ達があっという間に頂戴しちまうぜ!?」

「へっ!油断なんかするかよ!お前の実力もテイルとの闘いでよくわかったからな!」

「お?あれで終わるブレイブ様じゃないぜ?明日の闘いではもっと強くなってるからな!」

 

 気持ちのいい笑い声をあげるクロウとブレイブ。その様子を見て、ハラルドは感慨深げに微笑む。

 

「準決勝を前に、ここまで士気高揚させてくれるとは、運命も粋なことをしてくれる」

「そうだな。お互い、悔いのない闘いをしよう」

 

 ハラルドと遊星も視線を交わし、ふ、と笑う。そしてハラルドは綴とテイル、謎のD・ホイーラーに向き直った。

 

「君達は三極神に認められた。チーム5D’sか我々のどちらかが優勝したとしても、イリアステルとの最終決戦の地、アーククレイドルに至れることを約束しよう」

「おお!やったな綴、謎D!」

「ええ!けど、これはまだ始まりに過ぎないのよね……」

(おそらく、私が死ぬ運命もそこにあるのだろう……)

 

 無邪気には喜べない。最終決戦がどれほど過酷なものになるか、想像以上のものが出てくることが、わかっているからだ。

 

「そうだ。湯上綴、君の実力は我々以上のものを持っているやもしれない。だが、君自身は前世の記憶を思い出したこと以外には、特別な能力を持っていない。……そして、この世界に君を輪廻転生をさせたのは、あの―――」

 

 異空間に聳えたつ《ナチュルの神聖樹》に視線を向ける。テイルのデュエルが終わった後も、巨大なオブジェクトは尚健在だった。

 

「ユグドラシルに匹敵するあの樹木によるものだ。そして、それを用いたのは……テイルの魂に封印されし破壊神だ」

「え……?」

「おいおい。綴とおれ、5歳しか違わねえんだけど。あれか?おれの記憶の空白期間にそいつがなんかやらかしてたわけか?」

「……流石の星界の三極神といえど、見通せないものはある。だが、その先の真実を知りたければ、やはりアーククレイドルに向かうしかないと告げている」

 

 綴とテイルがごくり、と唾をのむ。

 待ち受ける運命の大きさに、身体が硬くなる。

 ブルーノの死の回避、裏切ったアリアとの決着、Z-ONEとの対峙、そして輪廻転生の謎。

 決戦の時は、近い。外では水平線に落ち行く赤い陽がいま、そっと最期の眩いまでの閃光を残し、静かに消えていった。

 




お気に入り登録・評価・感想、誠にありがとうございます!

このペースだと一挙放送に追いつかれてしまいますね。
一気に12話も放送されると更新と情緒が、情緒が追い付かない!

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