不動遊星の初体験を奪いたい   作:うおのめちゃん

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27話 決戦!チームニューワールド!

 夜空に、星が瞬いている。

 WRGP決勝戦の会場となるスタジアム。そこで最終調整を行っていたチーム5D’sと綴、テイルは一斉に空を見上げていた。

 

「またあの浮島が見えるの?」

「ええ、また少し近くなってる」

 

 龍亞が龍可の痣に触れ、視線を上げる。その先には漆黒の逆螺旋の島、アーククレイドルが現れていた。

 

「うわぁ!思ってたよりもっと近づいてる!」

「あれが人類最後のモーメント。あれを近づけてはいけないと、父さんは言っていた」

「結局出てくる上に、最終決戦の地になってしまうのだけどね。この街全体のモーメントをマイナス回転したあっちのモーメントが相殺して機能停止させるのよ。……あなた達のDホイールやデュエルディスクは赤き竜の加護で守られるけど、人々の混乱は必至になる」

「そのためにゲストをお呼びしてるんだけどな!おーい、イェーガー長官殿!」

 

 後ろを振り向けば、観客席の入り口からイェーガーと、治安維持局捜査課課長の狭霧、課長補佐の牛尾、取材のために勝手についてきたカーリーが出てきた。

 

「直接顔を合わせるのは初めてですね。テイル・バウンサー、湯上綴」

「遊星達を通じてメッセージや図案は送ったでしょ?決勝戦でニューワールドがこの会場や街に齎す稲妻による被害の軽減や、アーククレイドル降下による住人の避難の準備はどのくらいできそう?」

「この会場に避難所の設置や、そこへの誘導について人員を割くことはできたのだけど、街からの避難については、やっぱり準備が難しいわ」

「そのアーククレイドルとやらの存在が普通の人間には見えねえってなると、関係各所には非常事態への対策としか伝えられねえ。ガソリンや電気で動くバスや護送車を十数台用意する程度しかできなかったぜ」

「湯上綴、あなたが観測した未来を元に我々に情報提供してくださったことには感謝いたいたします。しかし、やはり現状では限界があるというもの……」

 

 狭霧、牛尾、イェーガーが申し訳なさそうな表情をする。カーリーはどういうこと?と首を傾げたままだ。

 

「こちらこそ、無理を言ってしまってごめんなさい。そんな中で融通をきかせていただいたこと、感謝いたします」

「じゃあ、各々シグナーと手をつないでみよう。そしたらアーククレイドルが見えるからさ。長官殿はクロウ、狭霧さんはアキさん、牛尾さんは遊星、カーリーさんはジャックに」

(私もアトラス様がよかった……)

 

 狭霧が内心ぼやく中、全員が手を握れば、視界の上部に黒々しいアーククレイドルが視認できた。

 

「ひぃ!実際に目にするとやはり違います!あんな巨大な建造物がこの街に落ちてくるというのですか……」

「住人全員が視認できるようになったら、どんなパニックが起きてもおかしくないわ……」

「あんなもんが落ちてくる中で避難誘導しようって奴がどんくらい残ってくれるんだかな……」

「落ちてくるの!?記録にとって、たとえガセだって言われようとみんなに伝えないといけないんだから!」

 

 カーリーがカメラで黒い浮島を撮影しようとするも、映らない。

 

「え?どうなってるの?」

「―――そんなモノ如きで聖廟たる神の居城を記録できると思ったか、女」

 

 プラシドの声と共にホログラムにイリアステルの三皇帝の姿が映し出される。ひっ、と再びイェーガーが声を上げた。

 

「やはりお前達赤き竜のシグナーが決勝に上がってきたか」

「きっひひひ、予定通りだけどね!」

「湯上綴から詳細は聞いているだろう。我々チームニューワールドとお前達チーム5D’sの決戦を以て、アーククレイドルは出現し、この街に降下する。その時……」

「このネオドミノシティは消滅し、世界は生まれ変わるんだ!ひっはっはははっ!」

「勝敗に関わらず、アーククレイドルは出現する。だから貴様ら虫けらはオレ達が前座だと思っているだろう。だが、オレ達が本当の力を解放した時、その認識が間違いだったと後悔させてやる!明日の決勝戦、待っているぞ」

「ちょい待ちな」

 

 締めくくってホログラムから消えようとした三皇帝を、テイルが呼び止めた。

 

「なんだよ?お前如きに構ってらんないんだけど」

「ふうん、その物言いからしてなんも知らされてないんだろうが、一応聞いとくぜ?《tierra》ってどこまであんた達の計画に組み込まれている?」

「伝えられることはただ一つ。我らが創造主からはお前を生かせ、と命じられた。湯上綴の絶望のためにな」

「僕の、絶望……?」

「アリア・ラスティに続き、あの聖なる地でテイル・バウンサーも離反する。孤独になった貴様がどこまで足掻けるか、創造主は試してやっているのだ。無力なその身で、未来を変えることができるとは到底思えないがな」

「それなりにわかった。用件は済んだからもういいぜ」

「勝手な奴だよなお前は!じゃあな!」

 

 ぷつん、とホログラムは消えた。残されるは顔が曇った綴と不快そうなテイル、それを心配そうな表情で見つめるチーム5D’sと4人の社会人達。

 

「おい、どういうことだテイル・バウンサー?離反ってことはテメェも湯上を裏切るってのか!」

「落ち着いてくれ牛尾さん。簡単に言うとおれは悪い奴に取りつかれているけど、そいつはおれの中に今封印されている状態。けど、今のあいつらの言葉でその封印が解かれることが半ば確定。おれが“テイル・バウンサー”じゃなくて取りついてる方の悪い奴……《tierra》に身体の主導権を奪われる可能性が高いってワケ」

「なんだそりゃあ?なんにせよそれがわかってるってんなら、何かしらの対策はできるんじゃねえのか?」

「それが生易しい話ではないのだ」

 

 いつの間にか観客席にチームラグナロクの3人が立っていた。ハラルドは尚も言葉を紡ぐ。

 

「チームラグナロク!」

「その《創星神 tierra》は何の因果かテイルの魂と融合している。無理に引き剥がしたり、テイルを殺したりすれば、《tierra》はまた別の時空間に転移することで逃亡するだろう」

「完全な状態の奴は星界の三極神ですら捉えられん。文字通り世界をリセットするという」

「だが、幸いなことにそいつの封印を解くカギはあのアーククレイドルの中にある。完全消滅させるための舞台まで用意されてるって神は言っているぜ。それまでは、安全って言っていい」

「……つまり、アーククレイドルでテイルとデュエルすることで《tierra》を引きずり出して倒せばいいのね」

「そういうことになる。もっとも……テイル自身の命の保証はしかねるが」

「へえ?ま、おれはみんなが幸せになるんならいいけど。流石に自分の命まで助かることを含めるのは強欲に過ぎるかもな」

 

 自分の生死がかかっているというのに、テイルの感情は平坦だ。既に、覚悟を決めているのか。

 

「よくないよ!敵になるからって、何も死ぬことないじゃないか!」

「そうよ、アーククレイドルに関わらずにおとなしくしていることを選んだっていいじゃない!」

「何より、綴の一生の傷になるかもしれないだろう。キミの強欲さはその程度なのか」

 

 龍亞、龍可、ブルーノがその態度を咎める。テイルは困ったように頭を掻いた。

 

「んん、仮にも決勝戦の前だってのにおれを心配しすぎだっての。先にそこに集中してくれ。もう遅いし、チーム5D’sのみなさんは解散しろ。おれら大人はイリアステルの連中が齎す被害の対策についてもうちっと話し合いするけど」

「だが……“仲間が死ぬ”と聞いては黙ってはいられない」

「ありがとね、遊星。けど、僕達は大丈夫よ!テイルを死なせない手段もデュエルの中で見つけられるかもしれないし……ね?だから、心配しないで」

 

 綴は一生懸命取り繕った。そして、遊星達に甘えないことを選択した。

 

「無理はするんじゃねえぞ」

「今は難しいけれど、全てが終わったら頼っていいのよ」

「ふん、こいつは案外図太いぞ。明日に備えることを優先しろ!」

 

 クロウ、アキが励ます。ジャックは綴を信じているからこそ、突き放した物言いを敢えてした。

 

「そうだぜ!最初の難関と言えど、楽に勝たせてくれる相手じゃあない。文字通り命がけのデュエルの始まりになる。ちゃんと集中して闘えよ!」

「……わかった。みんな、今日はここで解散しよう」

 

 遊星が号令をかけて、チーム5D’sは会場を去っていく。残るは大人達。

 

「カーリーさんもここで帰った方がいいわよ」

「え、あの、その。私も何かお手伝いできることは……?」

「ここからは私達治安維持局の仕事よ。一般人は帰りなさい!……認めたくないけれど、貴方になにかあったらアトラス様の心が乱れてしまうのは自覚していてほしいわ」

「わ、わっかりました!失礼します!」

 

 自分の所為でジャックのコンディションを崩すわけにはいかない。カーリーは狭霧の言葉を受け止め、そそくさと出口へと向かった。

 

「チームニューワールドが稲妻を放つ件に関して対策したいんだが、三極神の力は借りれねえ?後、避難誘導についても『WRGPの選手の中で誰がキスが一番上手いと思う?』アンケート1位のブレイブ君がいるからそっちも手伝えるんなら手伝ってほしいかも」

「どこの雑誌が載せてるんだよそれ!人々を守るためだから異論はないけどな」

「人員が足りないのは確かなのです。猫どころか神の手を借りるのは不遜かもしれませんが……」

「構わないとも。それが我々に課された使命なのだから」

「僕達も避難誘導を手伝うわ」

「それなら配置は……」

 

 こうして、人々を守るための会議も踊り、翌日を迎えた。

 

 

『さあ!第1回WRGPも、いよいよ大詰めの決勝戦だァァ!長い長い闘いを勝ち抜いて、今日この場で雌雄を決するのは、あのチームラグナロクを打ち破ったチーム5D’sとデュエルの新世紀を切り拓く不敗の巨人チームニューワールドだ!』

 

MCの実況で大いに盛り上がる会場。雲一つない快晴の青空の下、デュエル・スタジアムに多くの人々が集まっていた。

 スタジアムに詰め掛けた彼ら、市民達は、これから始まるWRGP決勝戦を見ようと胸を躍らせながら、その開幕を待ちわびているのだ。観客達の歓声には今まで以上の熱気が篭る。

 

「気をつけろジャック。奴らの手の内はある程度把握しているが、それでも真の力の正体が判明していない以上、油断は出来ない」

「わかっている!そのためにオレたちも新たな力を得たのだ。行ってくるぞ!」

 

 ホイール・オブ・フォーチュンがスタート位置に着く。瞬間、後方からDボード、A・クツァルカートルが迫る。ルチアーノがトリックを決め、デュエルディスクを展開した。

 物珍しさに観客が沸く。

 

「見せてもらおう。それがどこまでホイール・オブ・フォーチュンに張り合えるのか!」

「きっひひひひっ!やってみればわかるよ」

『ファーストホイーラーのジャックとルチアーノがスタートラインに着き、間もなくラスとデュエル開始となるッ!!』

「フィールド魔法《スピード・ワールド2》セット!」

『DUEL MODE ON』

 

世界の色が変わる。

 ここから先はスピードに支配された世界。通常の決闘とはまた別の理で運営される別世界だ。二人の目の前にカウントが表示される。

 

『さあ、ワールドライディングデュエルグランプリ決勝戦、いよいよ試合開始だァァッ!』

 

一瞬が永遠に引き伸ばされたかのような感覚がスタジアムを支配する。

 まだか……まだなのか――誰もがそう思い固唾を呑む中、とうとうその言葉は放たれた。

 

『ライディングデュエル・アクセラレーション!!!!!』

 

 MCが打ち鳴らした戦鐘と共に、DボードとDホイールが地面に轍を刻み付ける程加速。

 

『おおっと、先に飛び出したのはルチアーノだ!』

 

 未来の技術によるスペックの差か。距離が徐々に開いていく。

 

「なに!?だが!」

 

 唸るような低音を伴って、ホイール・オブ・フォーチュンが飛び出した。冴えた蒼を星の尾にして月夜を疾駆する白い機体は、まるで彗星のようだった。

 

「ホイール・オブ・フォーチュンを舐めるなァ!」

「むきになっちゃって。譲ってあげるよ!」

 

 コーナーに同時に突入した瞬間、A・クツァルカートルがわざと脇に逸れた。余裕の表れか。

 

『第一コーナーを制したのはチーム5D’s、ジャック・アトラスだ!』

「「デュエル!!」」

「オレの先攻だ、ドロー!」

 

ジャックSPC0→1

ルチアーノSPC0→1

 

まず先手を取ったのはジャック。

 デッキからカードを引き抜いた彼は手札の内容を確認すると、先鋒を繰り出した。

 

「オレはチューナーモンスター《ソウル・リゾネーター》を召喚!」

 

 ホイール・オブ・フォーチュンの傍らに小柄な悪魔が飛び出した。頭部に赤い羽飾りをあしらったそれは、頭上で音叉を鳴らし、静謐な音色がレーンに響いた。

 

「このカードが召喚に成功したことで効果発動!デッキからレベル4以下の悪魔族モンスター、《ボーン・デーモン》を手札に加える!」

 

 広がる音波に呼応してデッキホルダーが波打ち、指定したカードが差し出される。それを抜き取ったジャックは手札を1枚墓地へ送った。

 

「《ボーン・デーモン》の効果発動!このカードは手札か場のカード1枚を墓地に送ることで特殊召喚できる!来い!」

 

 新たに白髪の骸骨が這い出る。骸骨の悪魔は傍らに黒い渦を生み出すと、そこに真白い手を差し入れる。

 

「《ボーン・デーモン》のさらなる効果!自身を対象にデッキから悪魔族チューナーである《クリムゾン・リゾネーター》を墓地へ送り、レベルを1つ下げる。いくぞ!オレはレベル3の《ボーン・デーモン》にレベル3の《ソウル・リゾネーター》をチューニング!」

 

 《ソウル・リゾネーター》が再び音叉を打ち鳴らすと、反響音と共に二つの光の環となって宙に浮かぶ。その中に《ボーン・デーモン》が収まり3つの星となって交われば、閃光が走った。

 

「紅き竜よ、琰魔を呼び起こす道を照らし出せ!—――シンクロ召喚!《レッド・ライジング・ドラゴン》!!」

 

 中空に炎が噴き出し、竜の形を成してばさり、と翼を打つ。それは燃え盛る炎が象る《レッド・デーモンズ・ドラゴン》だった。牙から溢れる吐息も、羽搏く度に吹き荒れる風も炎。だが、その威容すらジャックのデュエルにおいては通過点に過ぎない。

 

「へえ?今までに見せたことがないシンクロモンスターか。けど、レベル6如きじゃ……」

「《レッド・ライジング・ドラゴン》の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、墓地の「リゾネーター」モンスターである《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚する!」

「まだシンクロする気かよ!」

 

 闇色の穴から、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》の意匠が見受けられる「リゾネーター」が復活。

 

「《クリムゾン・リゾネーター》の効果!自分フィールドにこのカード以外のモンスターがドラゴン族・闇属性モンスター1体の場合に発動できる。デッキから同名カード以外の「リゾネーター」を2体まで特殊召喚できる!来い!《レッド・リゾネーター》!《ヴィジョン・リゾネーター》!」

 

 火炎を背負う「リゾネーター」と、運命を司る「リゾネーター」がレーンに集結。

 

「《レッド・リゾネーター》の効果発動!このカードが特殊召喚した時、フィールドのモンスター1体を対象とし、その攻撃力分ライフを回復する!《レッド・ライジング・ドラゴン》の攻撃力、2100ポイントの数値を得る!」

 

 炎がジャックの中に吸収される。闘志をさらに滾らせるためにくべられる炎。

 

ジャック:LP4000→6100

 

「いくぞ!レベル6の《レッド・ライジング・ドラゴン》にレベル2の《ヴィジョン・リゾネーター》をチューニング!」

 

 《ヴィジョン・リゾネーター》は翠の輪に、《レッド・ライジング・ドラゴン》は瞬く星に。再び眩い閃光がレーンを真白く照らす。

 

「王者の鼓動、今ここに列を成す!天地鳴動の力を見るがいい!―――シンクロ召喚!我が魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》ッ!」

 

 炎が舞い、ジャック・アトラスという男を象徴する紅の竜が吼える。

 

「墓地に送られた《ヴィジョン・リゾネーター》の効果により、デッキから「レッド・デーモンズ・ドラゴン」の名が記されたカードである《スカーレッド・ゾーン》を手札に加える。そして、ここからだ!燃え上がるオレの魂、バーニング・ソウル!」

 

 ジャックの身体から轟々と燃える炎の闘気が迸る。

 

「レベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン》にレベル2の《クリムゾン・リゾネーター》と《レッド・リゾネーター》をダブルチューニング!」

 

 チューナーが変化したのは翠の円環ではなく、赤く燃える4つの炎の輪。それらが紅蓮魔竜の身体を包み込む。

 

「王者と悪魔、今ここに交わる!荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!―――シンクロ召喚!!出でよ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ッ!!」

 

 一瞬の閃光、巻き散らされる赫灼の炎熱。現れ出でた敢然たる佇まいの緋色の巨影が咆哮を上げた。此処に在るのは禍々しくも、何よりも雄々しき紅蓮魔竜の進化形態。その頂上存在の猛々しさは見る者を圧倒し、魅了する。

 力強く一つ羽ばたけば熱風が吹き荒れ、王者の裂帛はフィールドのあらゆるものにその力を刻んでいく。覇気と威圧、強者であることの象徴。

 

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500

 

「《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の攻撃力は墓地に存在するチューナー1体につき、500アップする!」

 

 墓地のチューナーは《ソウル・リゾネーター》、《クリムゾン・リゾネーター》、《レッド・リゾネーター》、《ヴィジョン・リゾネーター》の4体。よってその攻撃力は―――

 

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500→5500

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ!」

『ジャック・アトラス、先攻1ターン目からエースモンスターを召喚したッ!セットカードも3枚と、その布陣は堅牢にして盤石!果たしてルチアーノはどう挑むのか!』

「きえへへへっ!これくらい、どうってことないね!僕のターン、ドロー!」

 

ジャックSPC1→2

ルチアーノSPC1→2

 

「現れろ!《スカイ・コア》!」

 

 卵のような外殻を上下に分け、その中心に青い光を宿した空色の機械が現れる。

 

「さらにSPCが2つ以上存在することで《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動!《スカイ・コア》とお前の伏せカードを対象に取り、そのカードを破壊する!」

「……墓地の《ソウル・リゾネーター》の効果発動!オレのフィールドのカードが破壊される場合、このカードを代わりに除外する!」

 

《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK5500→5000

 

「そんなに破壊されたくないカードだったのかよ?けど、《スカイ・コア》は破壊される!」

 

 卵型機械が自壊。それが呼び水となる。

 

「《スカイ・コア》の効果発動ぉ!このカードがカードの効果によって破壊されたとき、自分フィールドのモンスター全てを破壊し、手札・墓地・デッキから《機皇帝スキエル∞》、《スキエルT》、《スキエルA》、《スキエルG》、《スキエルC》を特殊召喚する!」

 

《機皇帝スキエル∞》ATK0

《スキエルT》ATK600/DEF0(守備表示)

《スキエルA》ATK1000/DEF0(守備表示)

《スキエルG》ATK200/DEF300(守備表示)

《スキエルC》ATK400/DEF0(守備表示)

 

 ルチアーノのデッキから飛来する5つの機械。機皇帝を構成するパーツであり、合体することで真の力を発揮する。

 

「きひははははっ!合体しろ!《機皇帝スキエル∞》!」

 

 ルチアーノの指揮に合わせて《機皇帝スキエル∞》を中心にパーツ達が変形し、1体のモンスターとして組み上がってゆく。天を統べる鳥を模した巨大ロボット。

 胸部の無限の穴の奥に蠢く青白い光。シンクロモンスターを吸収するという恐るべき能力を秘めた、破滅の未来からの使者にして、絶望の象徴。

 

「《機皇帝スキエル∞》の攻撃力と守備力は全てのパーツの合計となる!」

 

《機皇帝スキエル∞》ATK0→2200

 

(《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果は奴も知っているはず……だというのに攻撃表示だと?何かある。ならば!)

 

 ジャックは直感に従い、リバースカードを発動した。

 

「永続罠《スカーレッド・ゾーン》を発動!このカードと「レッド・デーモンズ・ドラゴン」の名が記されたシンクロモンスターが存在し、相手がカードの効果を発動した時、フィールド上のカードを1枚対象にとり破壊する!」

「そいつはさっき破壊し損ねたカード……何かされる前の牽制のつもりかよ。だったら僕は、カードを4枚伏せターンエンド!」

『ルチアーノ、折角のシンクロキラーもジャック・アトラスの敷いた布陣の前では無力か!効果を発動することなくターンを終了したぞ!』

「ひっはははっ!無力なわけないんだけどね!さあ、かかってこいよ!」

 

 嘲笑するルチアーノ。何か仕掛けたと言わんばかりに。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

ジャックSPC2→3

ルチアーノSPC2→3

 

ジャック

LP:6100

SPC:3

Hand:3

Monster:《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:《スカーレッド・ゾーン》+Set2

 

ルチアーノ

LP:4000

SPC:3

Hand:0

Monster:《機皇帝スキエル∞》《スキエルT》《スキエルA》《スキエルG》《スキエルC》

FieldMagic: 《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set4

 

 4枚のリバースという厄介事を突きつけられたジャック。しかし、それで立ち止まる彼ではない。

 

「バトルだ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》で―――」

「かかったな!このバトルフェイズに永続罠《超古代生物の墓場》発動!」

 

 スピードの世界に超低温の冷気が混じりかける。

 

「このカードがある限り、特殊召喚されたレベル6以上のモンスターは攻撃も効果の発動も出来ない!そいつのレベルは12!これで何も出来なくなったな!きひゃひゃははっ!そしてこれはカードの発動であり効果の発動ではないため、《スカーレッド・ゾーン》は起動しないぜ!」

「その程度の戦術、読めていないと思ったか!《砂塵の大竜巻》を発動!《超古代生物の墓場》を破壊する!」

「無駄なんだよ!さらに永続罠《宮廷のしきたり》を発動!このカード以外の永続罠は破壊されな……」

「まだ終わらん!《荒野の大竜巻》を発動!《宮廷のしきたり》も破壊する!」

「なにぃ!?」

 

 大竜巻二つがルチアーノの永続罠を破壊しつくす。チームニューワールドが取る戦術への対策としてのデッキ調整。

 

「これで障害は《スキエルG》のみだ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》で《機皇帝スキエル∞》を攻撃!『バーニング・ソウル』ッ!!」

 

 超新星の竜は巨大な紅蓮の弾丸となって、空の機皇帝へと突貫する。

 

「ちっ、《スキエルG》の効果発動!1ターンに1度、相手モンスターの攻撃を無効にできる!」

 

 尾から4つのコードが飛び出し、障壁を展開。炎の弾丸を受け止める。

 

「だが、貴様がカードの効果を発動したことで《スカーレッド・ゾーン》の効果発動!《スキエルG》を破壊する!」

 

 防御用の尾のパーツが破壊され、飛行バランスをどうにか保っている状態となった《スキエル》。ルチアーノが歯噛みする。

 

《機皇帝スキエル∞》ATK2200→2000

 

「くっ……よくもやってくれたな!」

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!」

 

ジャックSPC3→4

ルチアーノSPC3→4

 

「ふん、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

『シンクロキラーの活躍ならず!このまま終わってしまうのか!?』

 

 静かにターンが譲渡される。しかしジャックは油断なくデッキトップに指をかけた。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

ジャックSPC4→5

ルチアーノSPC4→5

 

(奴が伏せたカード、あれがまた《超古代生物の墓場》のようなカードの可能性もある。だが、ここは攻めるのみ!)

「相手フィールドに同じ属性のモンスターが2体以上存在することで、手札より《神禽王アレクトール》を特殊召喚!」

 

 彫像めいた肉体を持つ、白磁の鎧を纏った鳥人の王が赤い羽根を散らして舞い降りる。

 

《神禽王アレクトール》ATK2400

 

「バトルだ!《神禽王アレクトール》で《機皇帝スキエル∞》を攻撃!」

 

 紅の翼が矢の雨となって降り注ぎ、鳥型兵器の核を貫いた。核が消滅したことにより、パーツも砕け散る。

 

ルチアーノ:LP4000→3600

 

「ううっ……なんてね。くくっ、永続罠《無限霊機》発動!《無限霊機》はダメージ100ポイントにつき1個、カウンターを乗せる!」

 

 髑髏に似た不気味な壺が、失われたライフを喰らう。

 

霊機カウンター:4

 

「なんだそれは!?」

「ひゃっはっはっは!この永続罠《無限霊機》はダメージを受ける度に、その痛みを記憶する装置さ!これもチェーンに乗らない永続効果だから、《スカーレッド・ゾーン》は起動しない!」

「しかし、お前のフィールドはがら空きだ!この勝負もらった!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》でダイレクトアタック!『バーニング・ソウル』ッ!!」

 

 漲る闘志を熱量に変えて、新生した魂が猛りを上げる。ルチアーノに防ぐ素振りは見られない。

 

「うわああああっ!」

 

ルチアーノ:LP3600→0

 

「永続罠《無限霊機》の効果……ダメージ100ポイントにつき霊機カウンターを1つ乗せる……」

 

霊機カウンター:4→40

 

 ルチアーノは減速し後退。《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》が雄叫びを上げる。

 

『決まったァァッ!チーム5D’sの一番手ジャック・アトラスがチームニューワールドのルチアーノを撃破ッ!』

「やった!無傷で機皇帝を倒すなんて、ジャックはやっぱりすごいよ!」

「ようし、幸先いいぜジャック!そのまま二人目も倒しちまえ!」

 

 龍亞とクロウが喜ぶ中、遊星は疑念を抱いていた。

 

(妙だ。あの機皇帝があっさりと……永続罠への対策をしていたとはいえ、あそこまでうまくいくものなのか……?)

 

 観客席の後方に控えていた綴もまた、自分が観測した未来とは違う闘いに思考を巡らせていた。

 

(《超古代生物の墓場》や《宮廷のしきたり》を囮にして《無限霊機》を通すのはわかる。けど、ルチアーノは《無限牢》を発動しなかった。あのカードの召喚に必要なはずなのに……一体何を考えているの?)

 

 チームニューワールドのピットにルチアーノがイン。T・666に騎乗したプラシドが嗤った。

 

「いい負けっぷりだった、ルチアーノ」

「うるさいよ」

 

 デュエルディスクに残していた3枚のカードをプラシドに手渡す。

 

「けど、この表向きの作戦、湯上綴には見破られてるよ。《無限霊機》も期待できないかもしれないね」

「ふ、だからこそだ。見破られることを前提とした作戦の裏に本当の作戦を隠す……既に奴らは逃れられぬ地獄へ足を踏み入れている」

「終焉へのカウントダウンが今始まった。くくっ」

 

 プラシドがヘルメットを被り、T・666を発進させる。

 新世界の幕開けのために。

 




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ここからが作者の地獄だ……(ミスがあると修正が困難なWRGP形式、原作とは大きく異なるアーククレイドル最終決戦)
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