『チームニューワールドのセカンドホイーラーはプラシド!さあ、どんな戦略で挑んでくるのか!』
MCの解説が響く中、プラシドが駆るT・666がジャックのWOFの後方に着く。
不敵な笑みを浮かべ、突きつけるは鋼鉄の意志。
「来たな、くたばり損ないが!貴様もルチアーノ同様、オレが叩き潰してくれる!」
「虫けらの癖に口だけは達者だな。身の程を思い知らせてやる!」
一瞬の言葉の応酬。そして。
「「デュエル!」」
闘いの火蓋は切られた。先攻はプラシド。
「オレのターン!」
ジャックSPC5→6
プラシドSPC5→6
ジャック
LP:6100
SPC:6
Hand:1
Monster:《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》(ATK5000)《神禽王アレクトール》
FieldMagic: 《スピード・ワールド2》
Magic&Trap:《スカーレッド・ゾーン》+Set3
プラシド
LP:4000
SPC:6
Hand:6
Monster:
FieldMagic: 《スピード・ワールド2》
Magic&Trap:《無限霊機》(霊機カウンター:40)+Set2
カードを引く音すら無機質。プラシドの視線は、ジャックのセットされたカードたちの奥を見据えるように鋭く光る。
「《ワイズ・コア》を召喚!」
卵のような楕円形の白い外殻が、上下にゆっくりと割れる。
その中心には、静かに青い光を灯した白い機械体―――《ワイズ・コア》。
「さらにSPCが2つ以上存在することで《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動!《ワイズ・コア》と貴様の《神禽王アレクトール》を対象に取り、そのカードを破壊する!」
「だが!その効果の発動に対し《スカーレッド・ゾーン》の効果をチェーン!破壊する対象は《無限霊機》だ!」
不気味に佇む機械を狙う。それがチームニューワールドの戦術の核であることを、ジャックは既に見抜いていた。だが、プラシドは嗤う。
「はっ、無駄なことを!それにチェーンし、SPCを2つ取り除くことで手札から《Sp—サイクロン》を発動!《スカーレッド・ゾーン》を破壊する!」
「ぬぅ……ッ!」
プラシドSPC6→4
ジャックの場から熱が失せ、怨霊の顔を模した機械は何事もなく佇むまま。
そして猛禽の王と機械の核が破壊されれば、それが呼び水となった。
「カードの効果によって破壊された《ワイズ・コア》の効果、発動」
爆発とともに散った《ワイズ・コア》の残骸が、空中で青白い光を帯び始めると、プラシドのデッキから、5枚のカードが自動的にスロットから吐き出される。
「デッキから《機皇帝ワイゼル∞》、《ワイゼルT》、《ワイゼルA》、《ワイゼルG》、《ワイゼルC》を特殊召喚する!」
五つの機械が、次々にフィールド上へと舞い降りる。
それぞれが各部位へと自律的に組み上がっていき、空中に浮かぶシルエットが次第に“皇帝”の姿を帯び始める。
「シンクロキラーの力、特と味わうがいい」
プラシドが右腕を真っ直ぐ前に突き出す。
「合体せよ、《機皇帝ワイゼル》!!」
機体が組み上がる音。ギアの噛み合う轟音。空間そのものが“歪む”ような振動。
完成したその巨体は、人型の自律兵器。
白の装甲が不規則に光を弾き、仮面のような頭部からは紅い視線が走った。
「《機皇帝ワイゼル∞》の攻撃力はパーツの攻撃力の合計と同じ数値になる!」
《機皇帝ワイゼル∞》ATK0→2500
《ワイゼルT》ATK500/DEF0(守備表示)
《ワイゼルA》ATK1200
《ワイゼルG》ATK0/DEF1200(守備表示)
《ワイゼルC》ATK800/DEF600(守備表示)
「来たか……ッ!」
「さらに、《ワイゼルT》をリリース」
プラシドが冷たく告げると同時に、フィールドの《ワイゼルT》が静かに分解されていく。
その残骸は粒子となって空へと昇り、
「手札から《ワイゼルT3》を特殊召喚!」
粒子が凝縮するように再構築され、頭部ユニットが新たな形状へと切り替わる。
角のような翡翠色のエネルギーブレードを生やした鋭角なパーツが、《ワイゼル∞》の頭部に装着された。
《ワイゼルT3》 ATK600
「パーツの再構成により、攻撃力の合計が変化。よって、《ワイゼル∞》の攻撃力が上昇する」
《機皇帝ワイゼル∞》 ATK2500 → 2600
「そして《機皇帝ワイゼル∞》の効果発動!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を吸収する!」
機皇帝が胸部装甲を展開し、無数の光線が紅蓮の竜を呑み込もうと唸りを上げる。
「まだわからんか!そんな効果は通じん!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果発動!自身を除外し、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」
刹那、紅蓮の龍体は炎となって霧散し、異空間へと姿を消えかける。
「進化を果たそうと、所詮は虫けらだな!ルチアーノが伏せたリバースカードを発動するぜ!罠カード《無限泡影》!そのシンクロモンスターの効果を無効にする!」
だが、その瞬間を待っていたかのように紫紺の衝撃波がフィールドを駆け抜け、除外されんとする竜へと放たれる。
「やらせるか!リバースカードオープン!SPCを1つ取り除き、《Sp-禁じられた聖槍》を発動……」
ジャックSPC6→5
ジャックは躊躇なくD・ホイールのコンソールを叩く。カウンターが一つ消滅し、黄金の槍が虚空より降り立たんとする。
「愚かだな!《ワイゼルT3》の効果を発動!1ターンに1度、相手の魔法・罠カードの発動を、無効にして破壊する!そのSpは無意味だ!」
機皇帝の補助ユニットが閃光を放つ。放たれた迎撃光線は聖槍を真正面から撃ち抜き、その輝きを粉々に砕いた。
「ならば!永続罠《デモンズ・チェーン》!《ワイゼルT3》を対象にし、その効果と攻撃を封じる!」
間髪入れず、新たな鎖が地面を這う。黒き呪縛は蛇のようにうねり、《ワイゼルT3》へと絡みついていく。
「チッ……」
プラシドがわずかに舌打ちを漏らす。結果として紅蓮の龍はフィールドから消滅。機皇帝の吸収機構はむなしく空を掴んだ。
だが、その瞳から余裕の色はまだ消えていなかった。
「フン、これで貴様のフィールドはがら空きだ。まずは《ワイゼルA》でダイレクトアタック!」
「馬鹿な! 機皇帝は五つのパーツで一体のモンスター! 本体しか攻撃できないはず……!」
「貴様らが進化したように、機皇帝もまた最適化されたということだ! 喰らえ!」
「その攻撃は、《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果で無効にする!」
紅蓮の陽炎がジャックの前へ揺らめき、射出された《ワイゼルA》の一撃を大きく逸らした。
――だが、プラシドの狙いは最初からそこにはない。
「これは止められまい! 《機皇帝ワイゼル∞》でダイレクトアタック! 『ステンレス・スチール・スラッシュ』ッ!!」
五つのパーツが再び一つへと収束し、人の姿を模した鋼の巨人が剣を掲げる。
振り下ろされた一閃は、空気さえ切り裂きながらジャックへ襲い掛かった。
「ぬおおおおッ!」
ジャック:LP6100→3500
凄まじい衝撃にホイール・オブ・フォーチュンが大きく跳ねる。だが、ダメージはソリッド・ビジョンによるもの。車体は激しく軋みながらも体勢を保ち、クラッシュだけは免れた。プラシドが鼻を鳴らす。
「しぶとい奴め。カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
「このエンドフェイズ! 《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》はフィールドに帰還する!」
虚空に散っていた紅蓮の炎が一点へ収束する。渦巻く業火は巨大な翼を形作り、咆哮とと もに《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》が戦場へ舞い戻った。
「オレと《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を倒せなかったこと、後悔させてやる! オレのターン!」
燃え盛る紅蓮の竜が主の咆哮に呼応するように翼を広げる。
反撃の狼煙は、今まさに上がった。
ジャックSPC5→6
プラシドSPC4→5
ジャック
LP:6100
SPC:6
Hand:2
Monster:《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》(ATK5000)
FieldMagic: 《スピード・ワールド2》
Magic&Trap:《デモンズ・チェーン》+Set1
プラシド
LP:4000
SPC:5
Hand:0
Monster:《機皇帝ワイゼル∞》《ワイゼルT3》《ワイゼルA》《ワイゼルG》《ワイゼルC》
FieldMagic: 《スピード・ワールド2》
Magic&Trap:《無限霊機》(霊機カウンター:40)+Set3
「SPCが3つ存在することで、オレは《Sp-エネミーコントローラー》を発動!《ワイゼルG》を攻撃表示に変更する!」
「ほう……」
自身への攻撃誘導効果を持つ《ワイゼルG》だが、その攻撃力は0。攻撃表示となってしまえば格好の的となる。
「カードを1枚伏せ、バトルだ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》で《ワイゼルG》を攻撃!」
「馬鹿め、リバースカード――」
(待て、プラシド)
カードへ伸びた指先が止まる。
脳裏へ、静かだが絶対の威圧を帯びたホセの声が響いた。
(そのカードは温存しろ。我らの使命を忘れるな)
「……チッ。わかったよ。作戦通りにやればいいんだろ」
舌打ちとともに指先は伏せカードから離れ、代わりに別のカードを開く。
「罠発動!《闇のデッキ破壊ウイルス》!攻撃力2500以上の闇属性モンスターである《ワイゼル∞》をリリースすることで発動!」
機皇帝が毒の霧となって霧散。核が消滅したことにより、残るパーツは破壊される
「魔法か罠を宣言し、相手のフィールド・手札、そして発動後3ターンにドローされたカードも確認し、宣言されたカードがあればそれらをすべて破壊する。オレは罠を宣言!」
「なんだと!」
想定外のカードの発動。ジャックが瞠目する。
「さあ、見せてみろ!」
フィールド:《強化蘇生》《スカーレッド・レイン》
手札:0枚
黒い病毒がカードへ絡みつく。
次の瞬間、二枚の罠は音もなく腐食し、墓地へと崩れ落ちた。
ジャックは苦々しく眉をひそめる。
――だが、違和感はそこではない。
(今の場面……奴には迎撃する手段があった)
伏せカードを使えば、《ワイゼル∞》を失わずに済んだ。
それにもかかわらず、自ら切り札を墓地へ送った。
(《闇のデッキ破壊ウイルス》は確かに強力だ。だが……)
胸中に、小さな疑念が芽吹く。
(まるで……自ら敗北を選んだような戦い方だ)
「どうした、ジャック・アトラス? 攻撃しないのか?」
プラシドは余裕の笑みを浮かべて挑発する。
その笑みすら、不自然に見えた。
(ならば……)
迷いを断ち切るようにジャックは腕を振る。
「バトル!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》でダイレクトアタック!『バーニング・ソウル』ッ!!」
紅蓮の竜が炎そのものと化し、一直線に突き進む。
プラシドは――避けない。
いや、避けようともしなかった。
「ぐぉぁあああッ!!」
プラシド:LP4000→0
《無限霊機》(霊機カウンター:40→80)
『ジャック・アトラス、まさかまさかの二人抜きィ!怒涛の快進撃だァ!!』
スタジアムは割れんばかりの歓声に包まれる。
だが、その熱狂とは裏腹に。
チーム5D'sのピットだけは、誰一人として笑ってはいなかった。
「……明らかに、おかしい。奴は好戦的で、人を見下す男だ。自ら敗北を選ぶような戦い方は、あいつの性格じゃない」
遊星は視線をデュエルコースから外さないまま、静かに言った。
「うん。あの動きは、プラシド個人の意思じゃない」
ブルーノも頷く。
「でも、《闇のデッキ破壊ウイルス》だけは確実に意味がある。ジャックの防御札を奪って、次の相手へ繋いだんだ」
「ってことはよ、嫌な予感しかしねぇぞ……」
クロウの表情が険しくなる。
「チームニューワールドには、まだ切り札が残っているってことね……」
アキがその言葉を引き継ぎ、ピットに重い沈黙が落ちた。
一方、チームニューワールドのピット。
敗北を喫したプラシドは、不機嫌そうに腕を組んだ。
「やることはやった。文句はないだろ。奴を丸裸にしてやったんだからな」
「あるよ! 勝手な真似をしようとしてたじゃないか!」
噛みつくようにルチアーノが声を荒らげる。
「やめろ、二人とも」
低く、それでいて有無を言わせぬ一声。
ホセが静かに口を開くと、それだけで二人は言葉を飲み込んだ。
「今は諍いを起こしている場合ではない」
「だけど――」
「後は私に任せろ」
その一言には、絶対の確信があった。
ホセは静かに《無限霊機》へ視線を向ける。
「霊機カウンターは予定通り80」
淡々と告げる声に、迷いはない。
「我らと奴ら、その双方が全力を尽くすことでサーキットは完成する」
ホセはゆっくりと目を閉じる。
「――すべては、神の意志のままに」
そして目を開き、かくしてプラシドからバトンを受け継いだホセは、足裏のブースターを稼働させ、尋常ならざる足音を響かせて走り出した。
その足取りは軽快。その表情は何物をも恐れず。辿り着く場所が見えているかのように。
「なっ……あいつ、何やってんだ!?」
思わずクロウがコースへ身を乗り出す。
「Dホイールに乗らないのかよ……!?」
「何をするつもりだ……」
龍亞も遊星も言葉を失う。
ピットを飛び出した《G・ヘカトンケイル》が、自動走行のままホセを追う。
だが、異様なのはDホイールではない。
老人の姿をしたデュエリストが、その巨体と肩を並べて疾走しているのだ。
観客席が大きくどよめいた。綴もテイルも知識としては知っていたが、一瞬噴き出しそうになるのを堪えた。
(実際見るとおかしいわよあんなの!)
(どうしてこいつらは真面目に奇行に走るかなあ)
「――ハハハハハッ!チーム5D'sよ、覚悟するがよい!これからが本当の勝負!我らの力を思い知らせてやる!!」
高らかな哄笑とともに、ホセは宙へ跳ぶ。
その瞬間――。
人の関節ではあり得ない角度まで下半身が折れ曲がった。
全身を迸る雷光がホセとG・ヘカトンケイルを結び、一つの光となって爆ぜる。
機械と肉体が境界を失い、合体していく。
そこに立っていたのは、人と機械が完全に一体化した異形。
半人半駆――ホセ獣輪態であった。
「なん……だと……」
ジャックが驚愕し、観客席はさらなるどよめきに包まれる。
「合体した?」
「な、なんなの……?」
『な、なんとォーッ!!DホイーラーがDホイールと合体したぁーッ!! これぞDホイールの最終進化形態!チームニューワールド、優勝にかけるデュエリストの魂を見たーッ!』
「これが奴らの本当の姿だ」
「とうとう本気を出してきたか……」
疾駆するホセを見て遊星とブルーノが呟く。
そして、ジャックの斜め後方に追いついたホセが、ジャックへ闘志を剥きだす。
「行くぞジャック・アトラス。まずは貴様から葬ってやる!」
「やれるものならやってみるがいい!貴様如きに倒される、ジャック・アトラスではないわ!」
「「デュエル!」」
決闘開始を合図に互いのデュエリストを繋ぐ無限を示す模様がコースに広がる。
「これは……!」
即ち、ダメージが現実のものになるということ。
「私のターン!」
ジャックSPC6→7
ホセSPC5→6
「《グランド・コア》を召喚!」
大地を思わせる色合いの核は、不気味な、静かな圧を纏っていた。
「さらにリバースカードオープン!《ボム・ブラスト》!このカードは自分のターンにのみ発動できる罠カードであり、このターン、戦闘を行なっていない機械族モンスターを3体まで破壊。そして、破壊したモンスター1体につき400ポイントのダメージを与える!私は、《グランド・コア》を破壊!400ポイントのダメージを受けてもらおう!」
《グランド・コア》の外殻が内側から裂け、熱波と衝撃波が一直線にジャックへと飛び込んできた。
「……ッ!」
ジャック:LP3500→3100
シートが跳ねるほどの衝撃が、胸元を直撃する。
そして砕け散る茶色の卵型機械。それは大地を震撼させる前触れだった。
「《グランド・コア》がカードの効果で破壊されたことでその効果が発動する。デッキから《機皇帝グランエル∞》、《グランエルT》、《グランエルA》、《グランエルG》、《グランエルC》を特殊召喚する!」
《機皇帝グランエル∞》ATK?
《グランエルT》ATK500
《グランエルA》ATK1300
《グランエルG》ATK500/DEF1000(守備表示)
《グランエルC》ATK800
巨体を支える本体。
魚を思わせる三つのユニット。
そして貝殻のような外殻を持つ補助パーツ。
五つの機械が、ジャックの後方で整列する。
「合体せよ――《機皇帝グランエル∞》!」
ホセが左腕を高々と掲げる。
呼応するように各パーツが変形を開始。
金属音を響かせながら本体へ吸い寄せられ、一つ、また一つと装着されていく。
やがて完成したのは、黄土色の巨人。
胸には無限を象る空洞。
その奥では青白い光が脈打ち、生き物の鼓動のように明滅していた。
赤い単眼がゆっくりとジャックを見下ろす。
まるで、獲物の最期を見届ける処刑人のように。
未来を滅ぼす絶望の使者。
第三の機皇帝、《機皇帝グランエル∞》が戦場へ降臨した。
「《機皇帝グランエル∞》の永続効果!このカードの攻撃力、守備力は自分のライフポイントと同じになる!」
《機皇帝グランエル∞》 ATK?→4000
「たかが攻撃力4000程度に慄くものか!」
「ほう。よほど己の力に自信があるようだ」
ホセの声音に嘲りはない。
ただ、事実を告げるような冷たさだけがあった。
「ならば、その鼻柱から折るとしよう。《Sp-テイク・オーバー》を発動!SPCが4つ以上存在する時、《無限霊機》を破壊し、乗っていた霊機カウンター×100ポイントだけライフを回復する!」
「なっ……あの永続罠を繋いだのは、このためか!」
《無限霊機》が砕け散る。
封じ込められていた膨大なエネルギーがホセへと流れ込み、その生命力を一気に膨れ上がらせた。
ホセ LP4000→12000
そして、それに呼応するように巨人が軋む。
「《機皇帝グランエル∞》の永続効果。このカードの攻撃力・守備力は、我がライフポイントと等しくなる」
黄土色の巨躯から放たれる威圧感が、一段、また一段と増していく。
《機皇帝グランエル∞》 ATK4000→12000
紅蓮の魔竜さえ、今やその影に呑まれようとしていた。
「《機皇帝グランエル∞》の効果発動。愚かなシンクロモンスターを吸収する」
胸部の無限孔がゆっくりと開く。
底知れぬ闇が、《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》へ牙を剥いた。
「やらせるものか!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果――」
「逃しはせん!」
ジャックの叫びを、ホセは一言で断ち切る。
「リバースカード《ブレイクスルー・スキル》発動。相手フィールドのモンスター一体の効果を無効にする」
「なに……ッ!?」
紅蓮の竜を包み始めていた炎が、ふっと掻き消える。
抵抗する術を失った超新星の竜は、そのまま吸収機構へと引きずり込まれ、最後の咆哮だけが戦場へ虚しく響いた。
「《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ッ!!」
「そして《機皇帝グランエル∞》の攻撃力は吸収した《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》元々の攻撃力――3500アップする!」
《機皇帝グランエル∞》 ATK12000→15500
「おのれ……!」
「露と消えるがいい……カードを3枚伏せる。バトルだ!《機皇帝グランエル∞》でダイレクトアタック!『グランド・スローター・キャノン』ッ!!」
ライフ、シンクロモンスターを糧にして強大な力を得た機皇帝が、人一人相手にするには似つかわしくない兵器の砲撃を以てジャックを屠る。
「ッ!―――!!」
ジャック:LP3100→0
ジャックのライフポイントを根こそぎ奪い去り、観客席からの悲鳴さえも飲み込んだ。
世界が揺れる。
轟音の中、ホイール・オブ・フォーチュンは蛇行しながらも辛うじて走り続け、ピットへと帰還した。
だが、その上に座るジャックは満身創痍だった。
現実となったダメージは全身を蝕み、意識は今にも途切れそうになっている。
「ジャック!」
駆け寄ったブルーノとアキがすぐさま担架を運び込み、医療班といつの間にかいたステファニーとカーリーへ引き渡した。
ジャックは一言も発することなく、静かに搬送されていった。
セカンドホイーラーであるクロウは、その背中を見送りながらフィールドへ視線を戻す。
ホセの場には、《機皇帝グランエル∞》。3枚の伏せカード。
そして、吸収された《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》。
「攻撃力15500……しかも、綴達が闘った時に見せた《グランエルT》の能力以外のパーツの効果はわからねぇ……」
クロウは舌打ちする。
「シンプルだからこそ厄介だ……!」
攻めるにも守るにも、情報が足りない。
それが何より恐ろしかった。
「駄目だよクロウ!あんなモンスター相手にしたら死んじゃうよ!」
「そうよクロウ!行かないで!」
龍亞と龍可がぎゅっ、と袖を掴む。
震える指先には、不安がそのまま表れていた。
互いに何度もデュエルを重ねてきた仲間だからこそわかる。
【BF】と機皇帝。決して相性のいい組み合わせではない。
まして今は、受けたダメージが現実となるライディングデュエル。無事に戻ってこられる保証など、どこにもなかった。
「何言ってんだテメェら!……ここで俺が逃げたらよ」
クロウは龍亞と龍可の手をそっと外し、笑う。
「ジャックが命懸けで繋いでくれた希望まで、全部無駄になっちまう」
その手が龍亞の頭にぽん、と乗る。
「心配すんなって!このクロウ様がこんなところでくだばるわけねえだろ!」
双子の表情が少しだけ和らぐ。
クロウはいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「あの程度じゃ、俺は止まらねぇよ。」
ブラック・バードへ飛び乗り、エンジンを轟かせる。
「じゃあ――行ってくるぜ!」
仲間たちの視線を背に受けながら、黒き翼はコースへと飛び出した。