《機動要塞フォルテシモ》の内部は、静寂に包まれていた。
先ほどまで響き渡っていた攻撃音も、苦痛に満ちた叫び声も、今はない。
倒れ伏すジャック。意識を失ったまま横たわる龍可。
そして、その二人を前に膝をつき、涙を堪えきれずに俯く龍亞。
そんな三人を、アポリアはただ無感動に見下ろしていた。
「オレ……守れなかった。ジャックも、龍可も……」
龍亞は何度も涙を拭う。
それでも、溢れてくる涙は止まらない。
――その時だった。
倒れていたジャックの指が、微かに動いた。
「……まだだ」
低く、掠れた声。
ジャックは地面に手をつき、震える腕に力を込める。
「オレが……こんなことで敗れると思っているのか!」
身体は限界を迎えている。
それでも、ジャックは立ち上がった。
よろめきながらも、決して膝をつかない。
「ジャック……」
龍亞が顔を上げる。
その直後、もう一つの影も動いた。
「……龍可!」
龍可もまた、傷だらけの身体を起こそうとしていた。
「龍亞……」
苦しげに息を吐きながら、それでも龍可は龍亞を真っ直ぐに見つめる。
「オレ達は負けてはいない。だからお前も……望みを捨てるな!」
「……!」
龍亞の目に残っていた涙が、静かに止まった。
震えていた拳を、強く握り締める。
「……そうだよ」
俯いていた顔が上がる。
「オレが……頑張らなきゃいけないんだ!」
涙を拭う。
もう、その瞳に迷いはなかった。
傷つき、倒れ、それでも立ち上がった二人の姿が、龍亞の心を再び奮い立たせていた。
「オレのターン!」
「ほう。まだ立ち向かってくるか」
アポリアは淡々と告げる。
「だが、《レベル・カノン》によって、モンスターの召喚時、プレイヤーはそのモンスターのレベル×200のダメージを受ける。そして《ロックオン・レーザー》により、魔法・罠ゾーンにカードをセットした相手プレイヤーは200ポイントのダメージを受ける。さあ、どうする?」
(今の状態じゃ、ライフの少ないジャックと龍可は動けない)
龍亞は二人を見る。
そして、自分の残されたライフを思い浮かべる。
(ライフが2400あるオレが、なんとかしないと!)
もう、失敗は許されない。
ここで自分まで倒れれば、三人とも終わる。
「ドロー!」
龍亞はデッキからカードを勢いよく引き抜いた。
そして、そのカードを見た瞬間――瞳に光が戻る。
(これなら……!)
「オレは《一時休戦》を発動!お互いのプレイヤーは、カードを1枚ドローする! そして、次の相手ターンまで、お互いが受ける全てのダメージは0になる!」
「ほう……」
アポリアが僅かに目を細める。
「うまいぞ、龍亞!」
「これで、《レベル・カノン》も《ロックオン・レーザー》も《機動要塞フォルテシモ》も、次のターンまで怖くない!」
龍亞は倒れた龍可へ視線を向ける。
「龍可、ゆっくり休んでくれ!」
「……うん!」
張り詰めていた空気が、ほんの僅かに緩む。
わずか一ターン。
それだけでも、今の三人にとっては大きな意味を持っていた。
追い詰められていた彼らに、ようやく呼吸を整える時間が与えられたのだ。
「さらに、お前のフィールド魔法《機動要塞フォルテシモ》の効果を発動! 手札からレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚できる!《D・ラジカッセン》を守備表示で特殊召喚!」
要塞のハッチが開く。
そこから赤いラジカセが勢いよく射出され、龍亞のフィールドへと着地した。
「さらに、セットしていた《D・ステープラン》を反転召喚!」
伏せられていたカードが光に包まれる。
現れたホッチキスは機械音を響かせながら変形し、四肢を備えた小型ロボットへと姿を変えた。
少しずつではある。
だが、龍亞のフィールドにも戦うための力が戻り始めていた。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
決して有利になったわけではない。
それでも――希望を繋ぐための一手は、確かに打った。
「わたしのターン!ドロー!……ふぅ」
龍可は引いたカードを手にしたまま、ゆっくりと息を吐いた。
身体はまだ重い。先ほど受けたダメージも抜けきってはいない。
だが、目の前に広がる光景を見れば、弱音を吐いている暇などなかった。
機皇兵が四体。そして、それらを従える《機皇神マシニクル∞³》。
さらに、アポリアの伏せカードは三枚。隙のない布陣。
一つの判断を誤れば、それだけで命を削られる。
(龍亞がくれたこの1ターンを、無駄にするわけにはいかない……)
「わたしは、《妖精獣レグルス》を召喚!」
光の粒子が渦巻き、煌めきを纏った猛々しい獅子がフィールドへと降り立つ。
『龍可!力を貸すぞ!』
その咆哮は、龍可の耳にだけ届いていた。
彼女にしか聞こえない精霊の声。
レグルスは機械の軍勢を睨みつけ、低く唸り声を上げる。
「お願い!《妖精獣レグルス》が召喚に成功したことで効果発動!デッキから《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の名が記された魔法・罠カードを1枚手札に加える!」
「サーチなどさせはしない。永続罠《手違い》を発動。このカードがフィールドに存在する限り、お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることはできない」
「うっ……」
龍可の表情が僅かに歪む。
せっかく掴みかけた一手が、またしても封じられた。
だが――その瞳に、諦めの色はなかった。
「なら、獣族・光属性の《妖精獣レグルス》が存在することで、墓地に存在するチューナーモンスター、《妖精胞スポーア》の効果発動! このカードを特殊召喚するわ!」
フィールドの大地から小さな光が弾ける。
無数の胞子を纏った妖精が姿を現し、ふわりと宙を舞った。
「《妖精胞スポーア》が特殊召喚に成功したことで、効果発動! わたしのフィールドにいるモンスターの数まで、このカードのレベルを上げる!フィールドには2体のモンスターがいるわ。よって、《妖精胞スポーア》のレベルを1から3に変更!」
「龍可の場に、チューナーとチューナー以外のモンスターが揃った!」
龍亞の声が弾む。
「レベル4の《妖精獣レグルス》に、レベル3となった《妖精胞スポーア》をチューニング!」
レグルスが光となって舞い上がる。
その光を追うように、《スポーア》もまた光の輪へと変わっていく。
「聖なる守護の光、今交わりて永久の命となる―――シンクロ召喚!降誕せよ、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!」
眩い光が弾けた。
その中から、長い身体を金色の装飾で彩った妖精竜が姿を現す。
羽衣を思わせる優雅な翼が大きく広がり、柔らかな守護の光がフィールドを包み込んだ。
それはまるで、幼い龍可を守るように。
妖精竜は彼女の頭上に悠然と浮かび、機械の軍勢を静かに見据えていた。
《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》DEF3000
「シンクロ召喚……」
アポリアが妖精竜を見上げる。
「あさましい進化の果てに、破滅が齎されたことを忘れたか」
「違うわ!シンクロ召喚は、希望を繋げるためのもの!あなたが与える絶望には屈しない!」
龍可は怯まず、妖精竜へ手を伸ばす。
「《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果発動! フィールドゾーンのカードを全て破壊し、わたしは1000ポイント回復する!《機動要塞フォルテシモ》を破壊!」
「させるものか。罠カード《ブレイクスルー・スキル》を《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を対象に発動。対象モンスターの効果は、このターン無効化される」
妖精竜を包んでいた光が、一瞬にして掻き消えた。
「……っ」
龍可は唇を噛む。
またしても、届かなかった。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド……」
力なくカードを伏せる。額から汗が一滴、頬を伝って落ちた。
それでも龍可は倒れない。
大きく息を吸い、震えそうになる足に力を込める。
今にも崩れそうな身体を、それでも意志だけで支えていた。
「オレのターン!」
ジャックは迷いなくカードを引き抜いた。
だが、その視線は一瞬だけ龍可へ向けられる。
(長期戦になれば、龍可の体力が持たない)
傷ついた身体で、それでも立ち続けている龍可。
ならば、自分が果たすべき役割は一つしかない。
(オレが……ここで道を切り拓く!)
「バトルだ!《レッド・デーモンズ・ドラゴン》で《機皇兵スキエル・アイン》を攻撃!」
紅蓮魔竜が大地を踏み砕くように踏み込み、右腕を大きく振りかぶる。
その拳が、空を駆ける機皇兵へと迫った。
「そして《レッド・デーモンズ・ドラゴン》が攻撃宣言をしたこの瞬間、《クリムゾン・ヘルガイア》の効果発動!相手フィールドのモンスターを全て裏側表示にする!」
「なんだと!?」
それまで要塞を埋め尽くしていた機械の軍勢が、紅蓮魔竜から放たれる熱波を受け、一斉にその姿を伏せた。機械兵たちが次々と裏側表示へ変わっていく。
圧倒的な数でジャックたちを追い詰めていた軍勢が、瞬く間にフィールドから姿を消した。
「攻撃続行!『アブソリュート・パワーフォース』ッ!」
紅蓮魔竜の剛腕が、《スキエル・アイン》を真正面から貫いた。そして――。
「《レッド・デーモンズ・ドラゴン》の効果発動!守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算後に守備表示モンスターを全て破壊する!『デモン・メテオ』!」
轟音と共に、天井を突き破るように無数の炎塊が降り注ぐ。
紅蓮の隕石群が裏側表示となった機械兵を次々と直撃し、要塞の床を焼きながら粉砕していく。
炎が晴れた時――アポリアのフィールドから、モンスターは一体残らず消えていた。
「やったぁ!流石ジャック!」
「あの布陣を……突破できたのね……!」
龍亞と龍可が歓喜の声を上げる。
しかし――
「……」
アポリアは何も言わない。
微動だにせず、ただ自らのフィールドを見つめている。
その無感情な沈黙が、かえって不気味だった。
「メインフェイズ2に入る!《クリムゾン・ヘルガイア》の効果により、墓地から《ヴィジョン・リゾネーター》を手札に加える!そして、フィールドにレベル5以上の闇属性である《レッド・デーモンズ・ドラゴン》が存在することで、このカードを特殊召喚する!」
炎の残滓が渦巻く。
その中から、運命に翻弄された者を思わせる装束を纏った音叉の悪魔が舞い降りた。
「さらに、《フォース・リゾネーター》を召喚!」
電撃を纏った新たな音叉の悪魔が現れ、《ヴィジョン・リゾネーター》の傍らに並び立つ。
「これでジャックの場にはチューナーモンスターが2体!」
「いくぞ!バーニング・ソウル!」
ジャックの身体から、炎のような闘気が噴き上がる。
「オレはレベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に、レベル2の《ヴィジョン・リゾネーター》と《フォース・リゾネーター》をダブルチューニング!」
二体の悪魔が炎に包まれる。
四つの紅蓮の輪となった彼らが、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を取り囲み、巨大な炎の渦を形成していく。その中心で、紅蓮魔竜が天を仰いだ。
「王者と悪魔、今ここに交わる!荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!」
次の瞬間――世界を焼き尽くすような閃光が迸った。
「―――シンクロ召喚!!出でよ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ッ!!」
爆発的な炎熱が周囲を薙ぎ払う。燃え盛る炎の奥から、巨大な緋色の影が姿を現す。
その巨体がゆっくりと翼を広げる。荒々しく、それでいて揺るぎない威容。
《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》が、ジャックの前に降臨した。
その姿はまさしく、絶望に抗うために生まれた炎の化身だった。
《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500
「《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の攻撃力はオレの墓地に存在するチューナー1体につき500ポイントアップする!墓地には《クリムゾン・リゾネーター》、《ヴィジョン・リゾネーター》、《ソウル・リゾネーター》、《フォース・リゾネーター》の4体。よって攻撃力は―――」
《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》ATK3500→5500
「攻撃力5500!すごいや!」
「……」
しかし、ジャックの表情は晴れなかった。
(おかしい……あまりにも、あっさりしすぎている)
視線の先には、焼け落ちたアポリアのフィールド。
あれほどの機械兵を揃えていたアポリアが、何の抵抗もなくその全てを失った。
(何を、待っている?)
胸の奥に嫌な予感が走る。だが、ジャックはそれを振り払う。
(だが、オレに他の手はない……!)
「オレはこれでターンエンドだ!」
「……それで絶望を乗り越えたつもりか?」
冷たい声が、静まり返った要塞の中に落ちた。
その声には怒りも焦りもない。
ただ、目の前に築かれた希望など、最初から取るに足らないものだと言わんばかりの、凍てついた確信だけがあった。
「私のターン!」
アポリアは何の感情も見せず、デッキからカードを引き抜く。
その動作すら、これから起こることを淡々と告げる儀式のようだった。
「永続罠《手違い》を墓地に送り、《マジック・プランター》を発動。カードを2枚ドローする」
カードが二枚、アポリアの手札へ加わる。それだけのこと。
だが、龍亞たちには、その一枚一枚が死を手繰り寄せる刃のように思えた。
「私は《根絶の機皇神》を発動。甦れ、《機皇兵ワイゼル・アイン》、《機皇兵スキエル・アイン》、そして《機皇神マシニクル∞³》!」
次の瞬間。要塞の各所から機械の駆動音が轟いた。
沈黙していたハッチが一斉に開き、鋼鉄の兵士たちが次々と姿を現す。
そして、その中央。純白の巨神が再び姿を現した。
先ほどジャックたちが必死に打ち破ったはずの布陣が、まるで何事もなかったかのように蘇っていく。
「また《マシニクル》達が……!」
龍亞の顔から、わずかに残っていた余裕が消える。
「《機皇神マシニクル∞³》の効果発動。《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を吸収する!」
巨神の胸部が、ゆっくりと開いた。
そこに存在するのは、底の見えない暗黒と明滅する赤いコア。
無限の機構が唸りを上げ、無数の光の鎖が《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》へと牙を剥く。
「やらせん!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》をゲームから除外し、このターンの攻撃を1度だけ無効に――」
「墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外し、効果発動。《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果を無効にする!」
紅蓮の竜を包んでいた炎が、ふっと掻き消えた。
超新星の力を宿した竜は、巨大な吸収機構へと引きずり込まれていく。
最後に響いた咆哮だけが、無情な要塞の中を虚しく駆け抜けた。
「ああ!《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》が!」
龍亞が叫ぶ。
だが、それだけでは終わらない。
「そして《機皇神マシニクル∞³》の攻撃力は、吸収した《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の元々の攻撃力――3500アップする!」
《機皇神マシニクル∞³》ATK4000→7500
数字が跳ね上がる。
先ほどまで希望の象徴だった巨竜が消えた代わりに、アポリアの場には、それを喰らってさらに巨大化した絶望が立っていた。
「おのれ……!」
「まだだ。《ハーピィの羽根箒》を発動。相手フィールドの魔法・罠を全て破壊する!」
「えぇっ!?」
羽根箒が巻き起こした暴風が、三人のフィールドを容赦なく薙ぎ払う。
伏せカードも、《クリムゾン・ヘルガイア》も。
これまで積み上げてきた備えが、一瞬で吹き飛んでいく。
「そして、墓地の《根絶の機皇神》を除外し効果発動。《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を破壊する!」
機皇神から放たれた波動が、妖精竜を貫く。
「《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!そんな……!」
黄金の光が砕け散った。
龍可の瞳から、希望の光までもが消えかける。
だが、アポリアは止まらない。
「……お前達人間が貪る望み。世界を破滅へと導いたシンクロ召喚という望み!そんなものに縋ることがいかに愚かか教えてやろう」
その言葉に呼応するように、要塞の奥で巨大な機構が唸り始める。
「自分フィールドに『機皇』と名の付くモンスターが3体以上存在することにより、《機皇神龍アステリスク》を特殊召喚!」
アポリアの背後で、巨大なハッチが開いた。
三つの∞の紋章が重なり合い、巨大な「*」を形作る。
それが凄まじい竜巻となってフィールドへと飛び出した。
旋回する風圧。そして竜巻が晴れたとき――そこには、一体の機械龍が立っていた。
純白の装甲は生物の肉体とは思えぬほど滑らかでありながら、神話の神獣を思わせる荘厳さを備えている。
その姿そのものが、機械によって造られた「神」の姿だった。
《機皇神龍アステリスク》ATK0
「《機皇神龍アステリスク》の攻撃力は、このカードを除く私の場の攻撃表示の機械族モンスターの攻撃力の合計となる」
《機皇兵ワイゼル・アイン》ATK1800→2100
《機皇兵スキエル・アイン》ATK1200→1800
《機皇神マシニクル∞³》ATK7500
《機皇神龍アステリスク》ATK0→11400
「攻撃力……11400だって!?」
龍亞の声が震える。桁外れの数字。
しかも、それだけではない。
「《アステリスク》の効果により、お前達は《アステリスク》以外の機械族モンスターを攻撃できない。そして、シンクロモンスターを特殊召喚したプレイヤーは1000ポイントのダメージを受けることになる!」
「これじゃ……シンクロ召喚を封じられたのと同じ……」
龍亞が呟く。
先ほどまであれほど頼もしく見えた《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》も、もういない。
《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》も消えた。
魔法も罠も破壊され、フィールドには守るべきモンスターすら残されていない。
そして相手には、攻撃力一万を超える機械龍と、攻撃力7500の巨神。
希望を掴んだはずのフィールドは、わずか数分のうちに――死を待つだけの場所へと変貌していた。
「バトルだ!《機皇兵ワイゼル・アイン》で、《D・ステープラン》を攻撃! 『クォーク・カーブ』!」
人の機皇兵が跳躍する。
左腕から光の刃が伸び、ホッチキス型ロボットへと迫った。
「《D・ラジカッセン》の効果発動! 1ターンに1度、『D』と名の付いたモンスターへの攻撃を無効にする!」
ラジカセがけたたましい騒音を響かせる。
音波に怯むように、《ワイゼル・アイン》が攻撃を中断した。
「一度攻撃を防いだところで無駄だ。《機皇兵スキエル・アイン》で《D・ステープラン》を攻撃。『ツイン・パルス』!」
空の機皇兵が二基の小銃を構える。
連続する銃撃が、《D・ステープラン》を撃ち抜いた。
「だけど、攻撃表示の《D・ステープラン》が戦闘で破壊された時、このカードを破壊したモンスターの攻撃力は300ポイントダウンする!」
《機皇兵スキエル・アイン》ATK1800→1500
《機皇神龍アステリスク》ATK11400→11100
「些事だ。《機皇神マシニクル∞³》で《D・ラジカッセン》を攻撃! 『ザ・キューブ・オブ・ディスペアー』!」
巨神の砲門が開く。
放たれた砲撃は、もはや一体のモンスターを倒すための攻撃とは思えなかった。
都市一つを焼き尽くしかねない破壊の奔流が、《D・ラジカッセン》を呑み込む。
赤いラジカセ型ロボットは、抵抗する間もなく消滅した。
「これでお前達のフィールドは全滅した。カードを1枚伏せて、ターンエンド。そして《一時休戦》の効果は消え、《レベル・カノン》、《ロックオン・レーザー》、《機動要塞フォルテシモ》の効果が機能するようになった」
静まり返っていた機械群が、再び動き始めた。
砲台が軋み、機械兵が首をもたげる。
無数の照準が、三人へ向けられた。
「うっ……」
龍亞が思わず後ずさる。
逃げ場はない。守るカードもない。
そして、ライフポイントは――そのまま三人の命だ。
「少年。死という絶望を迎える前に出来ることもあるぞ。サレンダーをすればライフを失うこともなく、勝負を終わらせることが出来る。命は助かる。お前も、そして仲間も」
「なんだって!?」
「お前が率先してサレンダーすれば、絶望の淵を見ることもない」
龍亞は俯いた。
目の前には、立っているのもやっとのジャックと龍可。
そして、圧倒的な力を誇示するアポリア。
誰が見ても、勝ち目など残されていなかった。
それでも。龍亞はゆっくりと顔を上げた。
「……オレはまだ生きてる」
震える拳を、強く握りしめる。
「生きている限り……絶望はしない!」
「なに……?」
「オレのターン!」
絶望に覆い尽くされた戦場で。
少年は、それでも未来へ手を伸ばした。
アポリア
LP:3200
Hand:0
Monster:《機皇神マシニクル∞³》《機皇兵ワイゼル・アイン》《機皇兵スキエル・アイン》《機皇神龍アステリスク》
FieldMagic:《機動要塞フォルテシモ》
Magic&Trap:Set1+《レベル・カノン》《ロックオン・レーザー》《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》
龍亞
LP:2400
Hand:3
Monster:
FieldMagic:
Magic&Trap:
龍可
LP:500
Hand:2
Monster:
FieldMagic:
Magic&Trap:
ジャック
LP:900
Hand:1
Monster:
FieldMagic:
Magic&Trap:
「オレは《機動要塞フォルテシモ》の効果発動! 手札から《D・ライトン》を守備表示で特殊召喚!」
龍亞の声に応じ、要塞のハッチが開く。
そこから飛び出したのは、一台の小さな懐中電灯だった。
「《D・ライトン》のレベルは1。《レベル・カノン》の効果により、200ポイントのダメージを受けてもらう!」
四基の砲台が一斉に火を噴いた。
光弾が一直線に龍亞へ殺到する。
「くぅ……!」
爆発の衝撃に身体を弾かれながらも、龍亞は踏みとどまった。
龍亞:LP2400→2200
(《D・ライトン》の召喚には成功した。後は……もう賭けになる)
恐怖がないわけではない。身体は痛い。足は震える。
それでも――
(命を懸けてでも、龍可とジャックを守るんだ!)
「まだまだ!チューナーモンスター《D・スコープン》を召喚!」
顕微鏡型の小さなロボットが、龍亞の前へと現れる。
「チューナーだと……?《レベル・カノン》の効果で、600ポイントのダメージを受けるがいい!」
「くぅううッ!」
再び砲台が火を噴く。
光弾が龍亞の身体を直撃し、その小さな身体を宙へと浮かせた。
龍亞:LP2200→1600
床へ叩きつけられそうになった身体を、龍亞は両手で支える。
「龍亞!なにを考えている!?この状況では、攻勢に出ても……」
「わかってるよ、ジャック!」
龍亞は顔を上げた。その瞳には、まだ消えない光があった。
「これが、今のオレが取れる唯一の方法なんだ!」
「龍亞……」
「さらにオレは《ジャンクBOX》を発動!墓地から《D・ステープラン》を守備表示で特殊召喚!」
墓地からホッチキス型のモンスターが飛び出す。
「……《レベル・カノン》の効果で800ポイントのダメージを受けてもらう」
「うわぁぁああッ!」
無慈悲な光弾が龍亞を吹き飛ばした。
龍亞:LP1600→800
地面を転がり滑ることを足枷が許さない。胸元の装置が激しく赤く明滅する。
危険信号。その光が、龍亞の命が残り僅かであることを告げていた。
「龍亞、やめて!」
龍可の悲鳴。龍亞はふらつきながら、それでも立ち上がった。
「大丈夫……オレを信じてよ!」
苦痛を隠すように、無理やり笑う。
「……うん」
龍可は震える声で答えた。その一言が、龍亞の背中を押した。
「いくぜ!オレはレベル4の《D・ステープラン》に、レベル3の《D・スコープン》をチューニング!」
二体のモンスターが光となって舞い上がる。
「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング!」
幾重もの光が絡み合い機械竜の姿を形作る。
「―――シンクロ召喚! 愛と正義の使者、《パワー・ツール・ドラゴン》!」
黄色い装甲に包まれた竜が舞い降りる。
工具を思わせる武装を備えたその姿は、龍亞がこれまで積み重ねてきたもの、そのものだった。
《パワー・ツール・ドラゴン》ATK2300
「ふん、血迷ったか。シンクロモンスターを特殊召喚したプレイヤーは《アステリスク》の効果により1000ポイントのダメージを受ける。さらに《レベル・カノン》の効果によるダメージも受けてもらう!」
龍亞の表情が強張る。
「合計2400のダメージだ!」
《機皇神龍アステリスク》が咆哮した。
その巨体が一瞬で竜巻へと変貌する。
「―――『ネメシス・トルネード』ッ!」
巨大な竜巻が龍亞へ迫る。
逃げ場はない。
前には、絶望そのものと化した機械の軍勢。
「そうだ。それでも人間はシンクロから逃れることは出来なかった。そして、破滅したのだ……少年。絶望して死ぬがいい」
龍亞は震えた。怖い。恐ろしい。それでも――龍亞は顔を上げた。
「違う!絶望はしない!僅かな希望でも、繋いでみせる!」
「愚かな……!」
竜巻が龍亞を呑み込んだ。
同時に、四基の砲台から放たれた光弾が次々と直撃する。
「うあぁあああああッ!」
龍亞:LP800→0
最後の一撃が身体を貫いた。
龍亞の力が抜ける。膝から崩れ落ち、そのまま倒れ伏した。
「龍亞!」
「いやぁッ!」
ジャックと龍可の叫びが響く。しかし、龍亞は動かない。
その身体から、生命の気配が消えかけていた。
「そんな……龍亞……」
龍可が胸を押さえる。
呼吸が乱れ、身体が震えた。
龍可:LP500→499→498→497
「馬鹿な!ライフダメージを受けていないのに、何故だ!?」
「言っただろう、ライフと命はリンクしていると。命の鼓動が弱まれば、ライフは削られていく」
「龍可が……おい、龍亞!龍亞!龍亞ッ!」
ジャックが何度も呼ぶ。だが、返事はない。
その時だった。龍可のデュエルディスク――墓地のカードが、淡い光を放った。
《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》。妖精竜の光が龍亞の身体を包み込む。
『龍亞……』
その声は、優しく、しかし強い。
『貴方の使命は、まだ残っています。龍亞。龍可を救えるのは、貴方だけなのです』
その言葉に呼応するように、龍亞のフィールドに残されていた《D・ライトン》が輝き始める。
その輪郭が、緑と黄色――二色の光へと変わっていく。まるで命の灯火を試すように、光が円環の中を回り始めた。
「この効果は……」
ジャックが息を呑む。
「そうか!守備表示の《D・ライトン》は、ライフポイントが0になった時……点滅が緑で止まれば、ライフは0から100に戻る!」
光の回転が、少しずつ遅くなっていく。
龍亞の運命を決める、最後の瞬間。
「龍亞はこれを狙って……!」
黄色。緑。黄色。緑。光が、さらに速度を落とす。
そして――緑。止まった。
その瞬間、《D・ライトン》が眩い光を放った。
緑色の光が龍亞の身体を包み込む。
龍亞:LP0→100
「……!」
龍亞の胸が、大きく上下した。
そして。ジャックの身体に刻まれた赤き竜の痣が、突如として輝きを増す。
「これは……!」
龍可の痣もまた光を放った。
それだけではない。
遠く離れたアーククレイドルの内部。クロウ。アキ。そして遊星。
三人の痣までもが、同時に光り――消える。
その光が、一本の赤い奔流となって龍亞へ集まっていく。
そして、龍亞の背中に赤き竜の紋章が刻まれた。
その手に新たに宿るは、ひとつの心臓。
同じ印が龍亞の右腕にも浮かび上がる。
「龍亞がシグナー……!?」
龍亞の指が動く。ゆっくりと、身体を起こす。
そして――立ち上がった。
「……え?」
龍亞自身も、自分の右腕を見つめていた。
そこに刻まれた、見覚えのない痣。
『龍亞……貴方が六番目のシグナーなのですよ』
「オレが……シグナー……?遊星やジャック、龍可と同じ力を?」
『そうです。こうなることを、私も龍可もずっと望んできました。貴方が成長することを、信じていたのです』
「……龍可も?」
龍亞は振り返る。
「あ!」
龍可は苦しそうに胸を押さえていた。
龍可:LP487→486→485
「龍可!」
その姿を見た瞬間、龍亞の中で迷いが消えた。
「だったら!シグナーの力で、龍可を助けるんだ!」
右腕の痣が、強烈な光を放つ。
(赤き竜の痣よ!オレに力を!)
龍亞の瞳に、これまでにない強い意志が宿る。
「オレは、レベル7の《パワー・ツール・ドラゴン》に、レベル1の《D・ライトン》をチューニング!」
赤き竜が姿を現す。大きく翼を広げ、咆哮する。
《パワー・ツール・ドラゴン》と《D・ライトン》が光へと変わり、その巨体の中へ吸い込まれていく。そして――赤き竜が、その二つの力を受け止める。
「世界の未来を守るため、勇気と力がレボリューション!」
閃光が弾けた。
赤き竜が吐き出した光の中で、《パワー・ツール・ドラゴン》の装甲が次々と砕け散っていく。
黄色い装甲の奥から、新たな姿が現れる。
大地を思わせる力強い色彩。二対の翼。
全身を走る、生命の鼓動を思わせる輝き。
命を繋ぎ、未来を守るために生まれた、新たな竜だった。
「―――シンクロ召喚!進化せよ!《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!!」
大地を揺るがす咆哮が、絶望に支配されていた要塞を震わせた。
その姿はまるで、絶望の底から這い上がった龍亞自身の、生きようとする意志そのものだった。
《ライフ・ストリーム・ドラゴン》ATK2900
「なにが進化だ!許さんぞ!シンクロ召喚など!《アステリスク》の効果発動!シンクロ召喚をしたプレイヤーは1000ポイントのダメージを受ける!」
神龍から紫電が迸り、その身を竜巻に変える。
「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の存在により、効果ダメージは受けない!」
生命の竜が翼を広げ、再び咆哮する。竜巻はほどけるように消えた。
「なに!?」
「龍可、今助けるからな!《ライフ・ストリーム・ドラゴン》はシンクロ召喚に成功した時、2000以下のプレイヤーのライフを2000にする!」
《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が虹色の光を放つと、生命エネルギーが三人の身体に染みわたり、傷が癒えていく。
龍亞:LP100→2000
ジャック:LP900→2000
龍可:LP485→2000
「わたしのライフが……」
「龍可、よかった……!」
龍亞が、心から安堵したように笑った。
「あ、龍亞。それ……」
龍可の視線が、龍亞の右腕へ向けられる。
そこには、今まで存在しなかった赤き竜の痣が刻まれていた。
「へへっ……」
龍亞は少し照れくさそうに右腕を掲げる。
「オレ、頑張って……頑張ったら、シグナーになっちゃった!」
自分でもまだ信じられない。嬉しいような、恥ずかしいような。
その目には、いつの間にか小さな涙が浮かんでいた。
「……驚きだろ?」
「驚かないよ。龍亞は、いつもわたしを守ってくれてたから」
「龍可……」
「自分のことより、わたしのことを考えてくれてたから」
龍亞の表情が、少しずつ変わっていく。
「だから、ずっと変わらないよ。龍亞は、わたしのヒーローだから!」
「……へへへっ」
龍亞は涙を拭い、いつもの調子で笑った。
「ヒーローが涙ぐんでちゃ、様にならないよな!」
その二人の姿を見つめていたジャックが、満足そうに頷く。
(愛する者を守るために自分の身を惜しみなく投げ出した龍亞に、赤き竜が応えたのか)
絶望の底でさえ、守りたいという想いを失わなかった。
その意志こそが、龍亞を新たなシグナーへと導いたのだ。
「やめろ!くだらん!ライフ2000のつかの間の休息が、まやかしの希望がなんだというのだ!」
アポリアの怒声が、その空気を切り裂いた。
「わからないのか!お前は龍亞に絶望を与えた!だが、その絶望から龍亞は希望をもぎ取った!絶望の先にも希望はあるのだ!龍亞のシグナーへの進化!それがオレ達の希望だ!」
「ふざけるな!そんなもの!この状況を見てわからないのか!《アステリスク》がいる限り、このカード以外に攻撃することは出来ないのだぞ!」
《機皇神龍アステリスク》ATK11100
機皇神と機皇神龍。
そして、その左右に並ぶ二体の機皇兵。
圧倒的な戦力が、三人の前に立ちはだかっている。
「確かに、オレは希望を繋げただけかもしれない。だけど!オレは一人じゃない!みんなで力を合わせて闘っているんだ!ターンエンド!」
「わたしのターン!わたしは《死者蘇生》を発動!《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を復活させる!」
墓地から眩い光が立ち上り、光の中から妖精竜が舞い戻る。
「《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド魔法を破壊し、ライフを1000回復する。《機動要塞フォルテシモ》を破壊!お願い!『プレイン・バック』ッ!」
妖精竜が咆哮すると、要塞に罅が入り、アポリアと接続していたコードも僅かに破損した。
龍可:LP2000→3000
「小娘が!」
「さらにデッキからフィールド魔法1枚を手札に加える!そして、手札に加えた《精霊の世界》を発動!」
三人の背後に要塞には似つかわしくない、透き通る風が吹く草原が出現する。
「《精霊の世界》の発動時の効果処理として、デッキから《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》のカード名が記されたモンスター―――《妖精霊クリボン》を手札に加える!さらに、この子は《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》が存在する時、手札から特殊召喚できる!おいで!」
草原を一陣の風が駆け抜けた。
その風の中から、小さな栗毛の精霊がふわりと姿を現す。
《妖精霊クリボン》は龍可の肩ほどの高さまで浮かび上がると、嬉しそうに妖精竜の傍らへ並んだ。
《妖精霊クリボン》DEF200
「まだよ、墓地の《妖精胞スポーア》は、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》が存在する時復活できる!お願い!」
草原の大地から無数の小さな光が舞い上がった。
その光は一つに集まり、やがて小さな胞子の姿へと変わる。
ふわり、と《妖精胞スポーア》が、生命の息吹を受けるように龍可のフィールドへ舞い戻った。
その瞬間だった。龍可の痣が光る。次の瞬間――赤き竜が現れた。
巨大な翼を広げ、天を覆うほどの威容を見せながら、赤き竜は高らかに嘶く。
だが、その咆哮に敵意はない。彼女の決意を祝福するかのような――力強く、温かな咆哮だった。
「これは……?」
龍可が呆然と見上げる。
すると、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の身体から、今までにはなかった光が溢れ始めた。
黄金。緑。そして――虹色。
それらが妖精竜の身体を包み込み、まるで《ライフ・ストリーム・ドラゴン》から受け取った生命の力を、妖精竜自身が取り込んでいるかのように輝きを増していく。
『龍可……龍亞が繋いだ命の光が、私にも新たな力を与えてくれました』
「龍亞が?」
『ええ。あの子が希望を繋いだように、私もまた、生命を繋ぎます』
「……うん!」
彼女は一歩、前へ出る。その眼差しには、もう恐怖はなかった。
自分を守ろうとしてくれた龍亞。倒れても立ち上がったジャック。
そして、未来を託してくれた仲間たち。そのすべてを胸に抱いて――龍可はカードを掲げた。
「わたしは、レベル7の《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》に、レベル1の《妖精胞スポーア》をチューニング!」
《妖精胞スポーア》が一筋の光となって舞い上がる。
その光は無数の光の粒へと分かれ、妖精竜の周囲を巡り始めた。
やがて、その光が一本の道となる。
生命の輝きが、天へ向かって伸びていく。
「母なる世界を救うため、命の光が今、永久に交わる!」
光が弾けた。
大地から無数の花が咲き誇る。
風が渦を巻き、生命の粒子が舞い上がる。
その中心で、妖精竜の姿が変わっていく。
金色の光が新たな装甲となり、胸部には生命の鼓動を思わせる輝きが宿る。
羽衣のようだった翼はさらに大きく広がり、その一枚一枚から虹色の光が溢れ出す。
「――シンクロ召喚!《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》!」
それは傷ついた命を癒やし、失われた希望を繋ぎ、未来へと導くための力。
《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が切り開いた「生命」の力を受け継ぎ、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》もまた、新たな境地へと辿り着いたのだ。
《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》DEF3300
その姿を見上げ、龍可は静かに息を呑んだ。
「……綺麗」
隣では、龍亞が目を輝かせていた。
「すげぇ……!龍可のドラゴンも進化した!」
「これが……龍亞の覚醒によって生まれた新たな力か」
ジャックもまた、満足げに口元を吊り上げる。
「《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》がシンクロ召喚に成功したことで、カードを《エターナル・サンシャイン》を手札に加える!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
「やめろ……!シンクロ召喚など……また私に絶望を与えようというのか!」
小さな声だった。だが、確かに震えていた。
絶望を与える側だった男の声に、初めて動揺が滲む。
「まだわからんようだな!オレのターン!」
ジャックは迷いなくカードを引き抜いた。
「お前の切り札の《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》は吸収されている!これ以上何ができるというんだ!」
「ならば見せてやろう。オレの……人の可能性を!」
ジャックの瞳に宿る炎が、いっそう強く燃え上がる。
「自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から《パワー・バイス・ドラゴン》を特殊召喚!」
大地を踏み砕くほどの勢いで、漆黒の巨竜がフィールドへと降り立った。隆々とした筋肉を思わせる装甲が軋み、その巨体から迸る力が周囲の空気を震わせる。
「《パワー・バイス・ドラゴン》が特殊召喚に成功したことで、効果発動!デッキからチューナーモンスター《ダークネス・リゾネーター》を手札に加える!そして、このカードを通常召喚!」
漆黒を思わせる闇を纏い、音叉の悪魔が姿を現した。
「《ダークネス・リゾネーター》の効果発動! チューナーであるこのカードのレベルを1にする!」
音叉が高らかに鳴り響く。澄み切った音色がフィールドを駆け抜け、その響きに呼応するように悪魔の力が一点へと収束していく。
「レベル5の《パワー・バイス・ドラゴン》に、レベル1となった《ダークネス・リゾネーター》をチューニング!」
《ダークネス・リゾネーター》が再び音叉を打ち鳴らす。
甲高い音色が幾重にも反響し、一つの光の輪が生まれた。
その中へ《パワー・バイス・ドラゴン》が飛び込む。
五つの星が一直線に並び、そして――一つに重なる。
「紅き竜よ、琰魔を呼び起こす道を照らし出せ!―――シンクロ召喚!《レッド・ライジング・ドラゴン》!!」
中空が爆ぜた。
吹き上がった炎が巨大な翼を形作り、紅蓮の竜が咆哮とともに舞い降りる。
その姿は、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を彷彿とさせるものだった。
牙の隙間から漏れる吐息さえ炎。翼を打つたび、灼熱の風が決闘場を駆け抜ける。
だが――ジャックにとって、これはまだ終着点ではない。
「《レッド・ライジング・ドラゴン》の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、墓地の《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚する!」
足元に黒い渦が生まれる。
そこから、紅き悪魔の意匠を宿した「リゾネーター」が飛び出した。
「《クリムゾン・リゾネーター》の効果! 自分フィールドにこのカード以外のモンスターがドラゴン族・闇属性モンスター1体の場合に発動できる!デッキから同名カード以外の「リゾネーター」を2体まで特殊召喚できる!来い!《チェーン・リゾネーター》! 《レッド・リゾネーター》!」
鎖を携えた悪魔と、燃え盛る炎を纏った悪魔が次々と姿を現す。
三体の「リゾネーター」が、ジャックを中心に並び立った。
「《レッド・リゾネーター》の効果発動!このカードが特殊召喚した時、フィールドのモンスター1体を対象とし、その攻撃力分ライフを回復する!《機皇神龍アステリスク》の攻撃力、11100ポイントの数値を得る!」
「なんだと!」
《レッド・リゾネーター》が両手を掲げる。
すると、機械の神龍から莫大な生命エネルギーが引きずり出され、紅い奔流となってジャックへと流れ込んだ。
ジャック:LP2000→13100
傷ついた肉体が瞬く間に活力を取り戻す。だが、ジャックはそれを一瞥しただけだった。
これは勝利のための力ではない。次なる進化へ至るための、ほんの一歩に過ぎない。
「レベル6の《レッド・ライジング・ドラゴン》に、レベル2の《クリムゾン・リゾネーター》をチューニング!」
《クリムゾン・リゾネーター》が翠色の光輪へと変わり、《レッド・ライジング・ドラゴン》が無数の星へと分解される。
再び、眩い閃光が要塞と草原の入り混じった決闘場を白く染め上げた。
「王者がもたらすは血の饗宴!真紅の魔竜よ!戦場にその爪痕を残せ!――シンクロ召喚!現れよ、《スカーレッド・デーモン》!!」
紅蓮の炎が渦を巻く。
その中心から、一頭の真紅の魔竜が姿を現した。
燃え盛る紅い光を全身に纏い、咆哮を轟かせる。
「そして、シンクロモンスターが存在することで、手札から《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚!」
新たな音叉の悪魔がフィールドへ降り立つ。
その瞬間――赤き竜の痣が、強烈な光を放った。
「これは……」
ジャックの胸の奥を、熱い何かが駆け抜ける。
炎ではない。もっと根源的なもの。
自分がこれまで積み重ねてきた戦い、そのすべてを突き動かしてきた魂そのものが、いま新たな鼓動を刻んでいた。
「感じるぞ……!」
ジャックは右拳を胸――心臓へと叩きつける。
その鼓動に呼応するように、赤き竜の痣がさらに強く輝いた。
「魂の……新たな鼓動を!」
炎がジャックの全身を包む。それは肉体を焼く炎ではない。
王者として戦い続けてきた男の魂、そのものだった。
「オレはレベル8の《スカーレッド・デーモン》に、レベル1の《チェーン・リゾネーター》、《シンクローン・リゾネーター》、そしてレベル2の《レッド・リゾネーター》をトリプルチューニングッッ!」
「トリプル!?」
「ジャックも、新しい力を!?」
双子が驚愕する。
三体の悪魔が、同時に音叉を打ち鳴らした。それぞれ異なる音だったはずの響きが、やがて一つの巨大な共鳴へと変わっていく。
悪魔達はやがて、轟々と燃える鉄輪へと姿を変えた。
それらが《スカーレッド・デーモン》を取り囲み、紅蓮の魔竜をさらなる炎の渦へと包み込んでいく。
「王を迎えるは三賢人。紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ、天地開闢の時を刻め!」
《スカーレッド・デーモン》が天を仰ぎ、咆哮する。
その姿を猛々しい焔の渦が呑み込んだ。
炎は天へと昇り続け、やがて決闘場の上空に巨大な火球を形作る。
それは、まるで地上に落ちた太陽だった。
要塞の白い装甲も、草原の緑も、機皇神龍の巨体さえも、すべてが緋色に染まっていく。
そして――真紅の星の内部から、一本の巨大な炎が噴き出した。
続いて、もう一本。二対の翼が、炎を突き破って大きく開かれる。
「―――シンクロ召喚!新生せよ我が魂!《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》ッ!!」
轟ッ!!
一瞬、世界から音が消えた。
次の瞬間。閃光とともに、爆発的な炎熱が決闘場を駆け抜ける。
炎の中心から現れたのは、かつての《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を遥かに凌ぐ巨躯。緋色の装甲を纏った巨竜が、ゆっくりと翼を広げる。
身体の至るところから灼熱の欠片が零れ落ちる。一つ落ちるたび、大地が赤く染まる。
翼が一度羽ばたけば、炎の奔流がフィールドを薙ぎ払う。
そして、その巨竜は天を仰いだ。
――咆哮。
それは、機械の魔人が生み出した絶望を震わせるほどの轟音だった。
《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》ATK4000
龍亞が絶望の底から《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を生み出した。
龍可が生命の力を受け継ぎ、《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》へ至った。
そして今――ジャック・アトラスもまた、自らの魂を新たな竜へと昇華させた。
《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》。
それは、絶望に抗い続けた王者が掴み取った、さらなる力。
希望は、一人のものではない。三人の魂が繋がり、互いを支え、そして――新たな力を生み出していた。
「《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》の攻撃力は、オレの墓地に存在するチューナー1体につき、500ポイントアップする!墓地のチューナーは8体!よって攻撃力は4000アップする!」
墓地に眠る八体のリゾネーターが、一斉に呼応した。
《ヴィジョン・リゾネーター》。《クリムゾン・リゾネーター》。《ソウル・リゾネーター》。《フォース・リゾネーター》。《ダークネス・リゾネーター》。《レッド・リゾネーター》。《チェーン・リゾネーター》。《シンクローン・リゾネーター》。
それぞれの音叉が震え、澄んだ音色を響かせる。
八つの魂から放たれた赤い光が天へと昇り、一直線に《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》へと集束していく。超新星の竜が、そのすべてを受け止めた。
巨躯を覆う炎がさらに膨れ上がる。まるで、八つの魂が一つの炎となったかのように。
《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》ATK4000→8000
「だが!攻撃力11100の《アステリスク》には届かない!お前の手札は0。その希望は絶望に届きはしない!」
アポリアの声が、要塞に響き渡る。その言葉通りだった。
目の前に立ちはだかる《機皇神龍アステリスク》は、なおも攻撃力11100。
《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》の8000では届かない。
手札はない。伏せカードもない。
しかし。
「オレは信じる、仲間の力を!……龍可!」
「任せて!永続罠《エターナル・サンシャイン》を発動! 《機皇神マシニクル∞³》の攻撃力・守備力を半分にし、効果を無効化する!」
《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》の身体から、眩い光が溢れ出した。
大地を潤す陽光のように優しく、それでいて機械の巨神すら包み込むほど強烈な輝きだった。光は《マシニクル》の巨体を覆い、その内部へと浸透していく。
「な、なんだ……この光は……!」
無限孔から放たれていた禍々しい輝きが失われる。
巨神の身体が、ゆっくりと沈んだ。
浮遊していたはずの巨体が、重力に引かれるように地面へ落下し、大地が震えた。
《機皇神マシニクル∞³》ATK7500→3750
「おのれ……おのれ!」
「《マシニクル》の攻撃力が下がったってことは!」
「《機皇神龍アステリスク》の攻撃力も下がる!」
龍亞と龍可が叫ぶ。その言葉に呼応するように、《アステリスク》の身体から力が抜けていく。
《機皇神龍アステリスク》ATK11000→7350
「な……!」
初めて。アポリアの声に、明確な動揺が混じった。
「さらに、《エターナル・サンシャイン》は《エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン》と《妖精霊クリボン》の2体が存在することにより、2回目の発動が可能!今度は、《機皇神龍アステリスク》の効果を無効にするわ!」
「なんだと!?」
再び光が迸った。《アステリスク》の全身を覆う。
その巨体が、ゆっくりと――落ちる。神龍でさえも、その光には抗えない。
《機皇神龍アステリスク》ATK7350→3675
「こんな……こんなことがッ……!」
先ほどまで、三人の前に絶対的な壁として立ちはだかっていた、攻撃力一万を超える機皇神龍。
それが今や、地に堕ちている。
「バトル!《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》で《機皇神龍アステリスク》を攻撃!」
超新星の竜が、大きく翼を広げる。その口腔が開いた。
内部で燃え上がる光が、赤から橙へ。橙から白へ。
瞬く間に、周囲の空間そのものが熱に歪み始める。
四枚の翼が大きくX字に開かれ、その縁が灼熱に染まった。
次の瞬間。白熱した光芒が、一直線に《アステリスク》へと向かう。
「絶望はせぬ!せぬぞ!罠カード《神風のバリア -エア・フォース-》発動!」
アポリアの前方で、猛烈な風が渦巻いた。
無数の風が一点へと収束し、巨大な防壁を形成する。
「相手フィールドの攻撃表示モンスター全てを手札に戻す!消えろ!《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》!」
巨大な風の壁が、三人へと迫る。
「私はもう絶望しない!絶望するのはお前達だ!」
神風が唸りを上げる。
「人間どもよ、絶望の果てに悟れ!己の無力を!そして預けるのだ!Z-ONEに、人類の未来を!」
風圧が大地を削る。
龍亞の髪が激しく舞い、龍可は思わず腕で顔を庇った。
ジャックもまた、迫り来る暴風を睨みつける。
――だが。
「まだだ!絶望はしない! 龍可!」
「罠発動!《トラップ・スタン》!このターン、このカード以外の罠の効果は無効化される!」
「馬鹿な!?」
瞬間。轟音とともに迫っていた神風が――止まった。
空中で凍りついたように、風が消える。巨大な防壁も。
《アステリスク》を包んでいた絶望的な威圧感も。すべてが一瞬、静寂の中へ取り残された。
「何故だ……何故だ!何故、人間を辞めた私の心が痛い!」
胸を押さえる。
そこにはもう、人間としての肉体など残されていない。
それでも。確かに、何かが痛んでいた。
「また私は……絶望の中にのたうつのか……!」
「いいや」
ジャックは真っ直ぐにアポリアを見据えた。
「お前は絶望などしない!」
「何を言っている!?」
「希望をもっているからな!龍亞が龍可の為に戦ったように、おまえはZ-ONEの為に戦っていた!」
「……」
「Z-ONEに繋げた希望がある限り、お前は絶望などしない!」
ジャックの声が、静寂を切り裂く。
「――オレ達の希望は遊星にある!だからオレ達も絶望しない!」
龍亞も龍可も頷いた。
「……!」
アポリアが、何かに気付いたように顔を上げる。
希望。絶望の反対にあるもの。それは、単なる勝利ではなかった。
誰かを想い。誰かに託し。そして、自分もまた誰かから託されるもの。
それこそが――。アポリアが、かつて失ったものだった。
だが。
「……そう、か」
その呟きは、誰にも届かなかった。
直後。《スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン》が咆哮する。
その口腔から放たれた灼熱の光線が、真っ直ぐに《機皇神龍アステリスク》を貫いた。
「ぐ……!」
神龍の純白の装甲が赤熱する。亀裂が走る。
そして――内側から、紅蓮の炎が噴き出した。爆炎が弾ける。
《アステリスク》の巨体が崩れ落ち、無数の破片となって四散する。
その余波は、背後にいたアポリアの身体をも呑み込んだ。
「うああああああッ!!」
アポリア:LP3200→0
アポリアのライフが、完全に消滅した。
その瞬間だった。《機動要塞フォルテシモ》全体が大きく震え始めた。
壁面に亀裂が走る。床が崩れ、巨大な機械の部品が次々と落下していく。
「なに!?」
「要塞が……!」
アポリアと一体化していた機械が、次々と機能を停止していく。
そして、三人の胸に装着されていた機械が外れた。同時に、足に嵌められていた枷も地面へ落下する。
「外れた……!」
龍亞が自分の足を見る。自由だった。
「脱出するぞ!」
「「うん!」」
三人は駆け出した。だが、要塞の崩壊は止まらない。
壁が崩れ、天井が裂ける。その隙間から――現実の空間が覗いた。
「しっかり掴まっていろ!」
ジャックがホイール・オブ・フォーチュンを走らせる。
龍亞と龍可はDボードに乗り、必死にジャックの身体へしがみついた。
瓦礫が次々と落下する。崩壊する要塞そのものが、三人を飲み込もうとしていた。
それでも。ジャックはアクセルを踏み抜いた。
「うおおおおおおッ!」
ホイール・オブ・フォーチュンが加速する。
迫り来る崩落を紙一重でかわし、最後の裂け目を――飛び抜けた。
次の瞬間。三人の身体が、現実の空間へと戻る。
足元にある遊星ギアが、ゆっくりと速度を落としていく。
そして――停止した。
「遊星ギアが……止まった!」
「やったぁ!」
「む……!」
しかし、喜びの声を遮るように、轟音が響いた。
三人が振り返る。そこには、大きく崩壊した《機動要塞フォルテシモ》。
その残骸の中から、一つの影がゆっくりと落下していた。
「アポリア……!」
崩壊する機械の残骸とともに、アポリアの身体が空間の底へと沈んでいく。
その表情に、もはや憤怒はなかった。絶望も。憎悪も。
ただ、静かな何かがあった。
(この痛みは……絶望ではないのか。違う……痛みではない)
胸の奥に残った、微かな感覚。かつてはとうに失われたと思っていたもの。
それは、冷たい絶望とは違う。
もっと温かく。もっと儚く。それでも確かに、そこにあるもの。
(疼き……)
ほんの僅かに、アポリアの口元が緩んだ。
(それは……希望)
遥か下方へと落ちていく。
それでも、その胸の内に残ったものだけは――消えなかった。
アポリアは、希望を抱いたまま。
静かに、空間の彼方へと落ちていった。
アーククレイドル編の中で作者が個人的に書くのが難しいと思っているのが、今回のデュエルです。進化した三人の闘いに賛否はあると思いますが、私は書き切れて満足しております。
私は書ける時に書くスタイルなので、次回以降、連休程の更新スピードにはなりませんが、次回も楽しみに待っていただけると幸いです。
今回のデュエルは
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満足できた
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満足できなかった