代星-我らが母国はいかにして勝利したか、あるいは我らの祖国はいかにして滅びたか-   作:ライト鯖

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第三十六話 ホルエムアケト

 

 

避難が間に合わず逃げ惑う市民達は鷹鸇(ようせん)にとって好都合であった。

起源軍から身を隠し、盾とし、彼らの照準を狂わせるに充分だからだ。

 

勝敏は軍に誘導された市民の列に目を付け、そちらに部下達を指揮し、隊列を向けた。

 

「て、敵襲!!」

 

市民を警護していた起源軍部隊は大慌てで勝敏(かつとし)指揮下の鷹鸇との戦闘に入った。

しかし、急な襲撃であり、市民を警護するという使命も帯びている起源軍は目標が自動的に分散し、果断な対処を取ることは出来ずに終わる。

混乱に陥った市民は逃げ惑い、それを宥め、避難経路を誘導する軍。

それを撃つ、鷹鸇。

混沌、という二字では現しきれない程に騒然とする周辺。

 

勝敏は部下達に、可能な限り起源民を巻き込まないように指示は出しているものの、"可能な限り"でしかなく、流れ弾による犠牲は殆ど無視していた。

勝敏も、同じく星京にて指揮を執る烏も、起源民はあくまで後々、人質として使うモノとしてしか考えていない。

基之の本当の懸念等、彼らは知る由もなく、そして、起源国に対するこれまでの憎悪が、怒りが、その適当な指示を生んでいた。

 

仮に厳格に市民への犠牲を避けるよう指示していたとしてもゼロには出来なかったろう。

それが、然程強い禁止もしていない。

結果、かなり多くの市民が、巻き添えを喰う形となってしまうのだった。

 

もし基之がこれを知ったとしても彼とて起源民に対する嫌悪感はあり、結局のところ祐輔に指摘された言葉が引っ掛かり、義務感から保護するべきではないか、と主張していただけである為、この惨事を知って強く反発することも、問題視することもなく終わっただろう。

 

「よし!敵を混乱させることに成功!烏さん!」

 

通信で連絡を受けた烏は、市民保護に割かざるを得ず、多少なりとも手薄となった中央区へ突撃を敢行。

先程までよりは拮抗し、暫くの間は幹線道路において互角の勝負が繰り広げられたものの、元々の物量差はやはり圧倒的で、次々と補充されていく起源軍に対して、鷹鸇の抜けた穴は埋まらない。

 

今度も突破は叶わず、勝敏も烏も一度態勢を立て直すべく、下がるしか無かった。

 

『長くは保たんぞ』

「やはり、基之の成功を待つしかないようですね」

 

基之の作戦、その最後のフェーズは半分賭けに近い。

その為、それに頼らずとも首府を陥落させることが出来ればベストであった。

しかし、仮に基之らの部隊や、他地域からも部隊を参集し、首府に攻撃を仕掛けていたとしても首府の陥落を成功させられたかは怪しい。

それ程までに絶対数が違うのだ。

 

故に、結局、賭けをするしか無い、というわけだ。

 

そして、その賭けのチップを握る基之は部隊を率い、起源軍の星京近郊基地にて、ついに目的の格納庫、その直ぐ近くまで辿り着いていた。

だが、冷静に事態へ対処し、基地の秩序を取り戻した、現在基地司令代理となっている一人の中佐が指揮する起源軍によって彼らは足止めされていた。

 

「っ…!何て頑強な…!」

 

基之の指揮は的確であり、味方の犠牲を最小限にしつつ、敵に出血を強いていたが、しかし、司令代理の中佐はその穴を埋める部隊運用を行い、確実に基之を足止めする。

起源軍側の狙いは明白だ。

時間を稼ぎ、援軍の到着を待っているのだ。

 

惑星全体では起源軍が絶対数において勝っているが、この基地においては限定的に、鷹鸇の絶対数が上回っている。

故に、司令代理の中佐は正面からのぶつかり合いを避け、時間稼ぎに徹しているのである。

 

「早く突破せねば…!」

 

焦燥。

ここを逃せば後はない。

基之は相手の罠にかからない為にも冷静さを維持するよう努めていたが、それに使う精神力は膨大になっていた。

手汗が思わず服で拭うほどに吹き出ており、背中にも嫌な感覚が襲っていた──。

 

『勝敏さん!ポイントCはこれ以上固守は不可能です!』

「そうか…仕方ない。撤退し、ポイントEに合流しろ。そこを防衛線とする」

 

勝敏達は押されていた。

中央区にまで踏み込んだ彼らだったが、昼頃に突入し真夜中となっていた今、中央区のみならずその周囲を囲むようにして設置されている三つの地区、その半分を其々失陥していた。

 

起源軍がついに守るだけではなく、反撃に出たのだ。

本格的な反撃が開始されてから僅か数時間で勝敏らは中央区から追い出され、そして、朝日が昇る前に星京外縁へ追い出されかねない勢いだ。

 

「武器の質もさることながら、やはり数がキツイな」

 

倒しても倒しても湧き水のように溢れ出る起源軍の部隊にすっかり勝敏も、合流した烏も辟易していた。

 

「基之の賭け無しでは勝算など無いようなものだったな、こいつは」

 

自分達の戦ってきた相手、その全力の一端を知り、烏は自身のこれまでの楽観を反省していた。

戦いようによっては奇策を弄さずとも勝てる。

そんな考えはただの驕りに過ぎなかったことを今、実弾でもって教えられている故に。

 

「どうにか朝までには成功させて欲しいですね…」

 

勝敏も同じ想いなのだろう、悔しさをその顔に除かせながら、成功を祈っていた。

 

多くの都市で劣勢となりつつある鷹鸇、その例外は星城(ピョルソング)であった。

ハヤブサ連邦奪還政府によって一度陥落、いや解放された経験を持つこの街は、本来二度と同じ轍を踏まぬよう、起源国は配置戦力を増強するべきであったし、防衛方針の見直しも行う必要があっただろう。

 

しかし、起源国という独裁的で巨大な官僚組織は、1年程度の時間ではそれら全てを整えることが出来なかったのだ。

まず、責任者の追及が行われ、果てしない押し付け合いの末に前総督や第二大陸の行政官らが更迭。

不安定な地域に自ら手を挙げて行く者もおらず、此方も押し付け合いの果て、生贄が派遣された。

そして官僚主義的な行政機構がその後でえっちらおっちらと対策を立て始めた。

勿論、奪還政府による"置き土産"も無関係ではない。

監視網を破壊されたことで、鷹鸇含むレジスタンスによるサボタージュ活動を阻止する術が非常に限られてもいたのだ。

 

それ故に、奪還政府に付かれた脆弱性の幾らかはそのまま残っており、結果としてこの都市は再び陥落を経験することとなったのである。

 

とは言っても、大勢に影響を及ぼす結果ではない。

奪還政府とは異なり、星城から更に制圧地域を拡大させられるほどの余裕はないからだ。

つまり、ポツンと、星城周辺だけが起源国の支配から一時的に離れたに過ぎない。

 

その上、星京の方は酷い有様であった。

勝敏や烏らの奮闘虚しく、配備されていた強力、かつ多数の主力を前に敗北を重ね続けた鷹鸇は、都市の一角に追い詰められていた。

海岸線から万が一にも逃げられないように、中央区と外縁地区の間にある中流階級が主に居住するエリアの一つに彼らは押し込められていたのだ。

 

空は徐々に、朝陽が1時間もしない内に昇るだろう予感を感じさせる空色となっていたが、勝敏達にとってそれは、死を通告する光にも見えていた。

二人は陽光が頭をのぞかせる前に、ビルの地下へと逃れ、彼等を燃やすだろう光から時間稼ぎを試みる。

 

「基之も間に合わなかったか…あるいは…敗北したか…」

「何れにせよ、失敗だろうな」

 

命をチップとした賭けに負けた。

二人は、絶望など塔に通り越し、諦観に包まれていた。

全ては無意味に、虚しく終わるのか、と。

 

勝敏(スンミン)さん!』

 

そこに通信が入る。

次は何処の敗北が報告されるかな、と諦めながらも彼はマイクに返事を返した。

 

「何だ?」

『テレビをご覧になれますか?!』

「あるにはあるが…」

 

今更なんだ。とテレビを付けた2人の目に飛び込んできた映像は、朝陽と、それに照らされ空を悠然と飛ぶ、"宇宙戦艦"の姿であった。

 

少し時間を遡り、基之はというと。

 

起源軍を指揮する司令官代理をのみ狙った作戦を展開し、それなりに手痛い犠牲を払いながらもそれを成功させていた。

 

本来、個人を狙うがために多数の犠牲を出すなど愚策に数えられてもおかしくはないが、ことこの状況下に於いては、混乱を鎮め、兵を的確に動かせる"英雄"がいなくなることは大きな意味を持つ。

それ故に断行したのだ。

 

結果は成功だった。

起源軍は再び指揮が滞り、今度は全ての責を負う覚悟で運命を引き受ける者が現れなかったのだ。

そして、敵の防衛ラインを突破した基之達はそのまま格納庫へと侵入するのだった。

 

「あった…」

 

基之は目当てのモノを見つけ、目当ての"宇宙戦艦"が誇る巨体に感嘆の息を漏らした。

 

「基之!こいつ…か…」

 

坂東も隊舎の方は制圧が済んだようで、基之に合流しにやって来た。

その彼も間近で見る戦艦の迫力に圧倒されたようだった。

 

「でけえな…」

「ええ。分かってはいましたが、実際に目にすると…」

 

他の隊員達も立ち尽くしていた。

それは、戦艦そのものの迫力によるところもあった。

なるほど確かに都会の中心に聳え立つ高さも、地上面積も巨大なビル、摩天楼をそのまま横倒しにしたかのような巨体はそれだけで恐ろしさを感じるに充分だろう。

しかし、実際の所、真に彼等を凍りつかせていた理由の大半はこの巨体を大量に保持している起源国という彼等の敵、その国家としての巨体を見たことによる畏怖であった。

基之はその中でいち早く気を取り直し、気後れしている場合ではないと周りに指示を飛ばす。

 

「艦内のクリアリングをしろ!技師はコックピットへ急げ!動かし方を1秒でも早く特定するんだ」

 

それで漸く我に帰った面々は大慌てで持ち場へと散っていった。

 

それから二時間程経ち、基之達はついに、威容を誇る巨大な船を動かすことに成功。

まだ星の瞬く、地平線の先が僅かに白む空に向けて飛び出した。

 

『第三星系総督府市民の皆様、ご覧になっていますでしょうか…。これは…どういうことなのでしょう』

 

国営放送のキャスターが唖然とした様子で首府の上空を覆う、2隻の戦艦の映る映像を伝える。

 

『首府の、総督府ビル真上に戦艦が…起源軍のモノであるはずの戦艦が浮遊しています。…総督府は何らコメントを発表しておらず──』

 

勝敏と烏は互いの顔を見合わせ、二、三度の瞬きの後、勢いよく立ち上がった。

 

「基之だ!!」

「やってくれたか!!」

 

報告にやって来ていた部下を向き、勝敏は喜色を湛えながら命じる。

 

「君!直ぐに上で戦ってる連中にも伝えてくれ!あと少し耐えれば、勝利だと!」

「!…っはい!」

 

そして、渦中の総督府はというと。

 

「上空の艦より通信です…」

「繋いで」

 

ギリッと側にいた副官に聞こえるほど強く歯をしぎらせながらクセナキスは指示を出す。

 

『……此方は第三星系総督府総督政務ビル上空の…名前は…ああ、"戦艦チュニス"、というらしいな。

この艦と他にも幾つかは我々が頂いた。

…と、すまない。まだ偽の名前しか名乗っていなかったか』

 

通信の声だけが届き、幾つもの軍用通信が惑星中から届く影響で中々映像が入らない。

暫く画面が乱れ、偶然にも声の主が名乗る瞬間、映像がはっきりとした。

 

『我々は"鷹鸇"。惑星ハヤブサを解放せし軍隊だ』

「っ…!」

 

鷹鸇その名にクセナキスは覚えがあった。

総督府でもある程度警戒されてきた組織。

そして、ウィリアムズ死亡の原因であり、第五指定居住区の治安を一時的に壊滅させた連中。

だが、しかし──。

 

第五指定居住区 保安隊支部

 

「いつの間にこれほどの力を…」

 

マーカスは全惑星に電波ジャックで流されている"鷹鸇"の映像に愕然としていた。

彼としても軽視していたわけではない。

確かに第五指定居住区以外にも組織力が及んでいることは分かっていた。

総督府が警戒していたことも。

しかし、指定居住区の支部襲撃に始まり、大きな事件は基本的に第五指定居住区で起き続けていた。

それに所詮は"逃亡者"の組織。

大した力はない。あったとして、起源軍の前には無力。

そう、考えていた。

そうである筈だった。

 

指定居住区に限定すればあのような事件も起こせたのだろうが、所詮はテロ。

そうだ。システムの間隙を付いたテロが精々だったはず。

何故、首府の上空に奴等がいる?。

では、今、この居住区で戦っている鷹鸇は?

ただの1部隊に過ぎないのか?

 

その疑問が頭をもたげた頃、漸く各地との通信が回復した。

いや、鷹鸇側が必要が無くなり妨害を止めたため繋がった、と言うべきか。 

 

「各地から鷹鸇らしき組織との戦闘報告が総督府に入っているようです…。そして、雅緂(かだん)市が先程、陥落した、と」

 

ジュノ准尉からの報を聞き、マーカスは椅子に崩れ落ちた。

 

「私は、何処で間違えたんだ?…軍人二人を殺して逃げる程度の組織だったはずだ…。何故、いつの間に…」

 

鷹鸇の戦略において、このタイミングでの雅緂市陥落に大した意味はない。

星城陥落とは真逆の観点ではあるが。

最早、都市一つの運命は大局に、鷹鸇の優勢に影響が出ないのだ。

ただ、マーカスという男の矜持と信念を打ち砕きはした。

 

彼は、ウィリアムズの言葉を思い返していた。

 

【人類統一の内実はどうだ?差別、差別、そこらに溢れている名誉起源民の扱い!これらが偉大だと?】

【君は疑問を持たないのか?下らん殺人事件一件に拘る正義とやらは、何も言わんのかね?

私は下らんと思っているよ】

【君らの思考のほうが余程下らないな。

そこらに満ちている矛盾を深く考えず受け入れて、疑問を持つことすらしない、君らの方がね】

 

「は、ハハハッ。…そうか、最初から間違えていたのか」

 

虚ろな表情で、彼は最早実を持たなくなっただろう執務机に戻り、権力の残滓たる保安隊支部長の部屋を眺めるのだった。

 

 

星京 総督府政務ビル上空 "戦艦チュニス"内部

 

「我々の要求は単純明快、諸君ら総督府の降伏である。これ以上の抵抗は無意味。直ちに武器を降ろし、代表者は連絡を。此方の首脳と会談していただく。返答期限は今から3時間。

返答のない場合は…君たちはよく知っているだろう。宇宙戦艦の兵装を。

この都市や、我々の艦が向かった都市全てが焼き尽くされることになるだろう」

 

基之が通信を切った瞬間、同乗していた坂東が良いのかよ?!と慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「俺達どうにかこれ飛ばしてるだけでまだ核ミサイルの撃ち方なんて分かってないだろ?!」

「問題ありませんよ。後数時間もすれば武器も使えるようになるでしょうし」

「でもよお。もし、あいつらが俺等が核ミサイル使えねえって判断したら…」

「その心配はありませんよ。相手が余程の無能かエスパーでもない限り、ほぼ百パーセントね。

その可能性を考慮する意味がないでしょうから」 

 

基之はそう余裕そうに笑ってみせた。

 

 

その下、総督政務ビルにて。

 

「それは考えるに値しないわね」

 

部下の、敵は動きからして戦艦の操縦もままならない可能性がある、という指摘を切って捨てていた。

 

「その可能性がないと言うわけじゃあない。でも、それを考慮する暇はないのよ」

 

周囲の要領を得ない様子に、クセナキスは説明をする。

 

「確かに連中が兵装を扱いきれない可能性はある。それなら万々歳、というわけね。

けれど、もし、使えたら?

私達が考えるべきことは何かしら?」

「せ、星系内の宇宙基地へ連絡し撃ち落として貰う為、調整を…」

「我々の戦艦のレーダー観測範囲は?」

 

聞かれ、部下はハッとする。

 

「仮にそれをしたところで到達前に気付かれる。

そうなるとまあ間違いなく街を巻き添えにするでしょうね。武装が使えなかったとしても、船をそのまま降下させるだけでも大きな被害を生むわ。

タダでやられるのを待ってくれる訳が無い」

 

そして、と彼女は別の部下を見、問う。

 

「連中に降伏しない場合、何が起きるかしら?」

「…星京を始めとした諸都市が、壊滅する可能性があります」

「その通り。さて、今、楽観的な可能性に賭けて思考を止める暇が私達にあるかしら?」

 

静まり返った空間を認識すると、クセナキスはよろしい。と頷き、総督へと向き直った。

 

「さて、閣下。こうなった以上は奴等の要求を突っぱね、我々を贄とし、連中を壊滅させようではありませんか?」

 

クセナキスは至って普通に、ただの一般的な軍事作戦を提案するかのごとき調子でサラリとそう言ってのけた。

それ故に、部屋にいる全員がその言葉の意味に反応するまで時間を要した。

 

数秒遅れて、ザワッと全体が色めき立つ。

 

「中将閣下?!」

「何を驚く。起源軍人として当然でしょう?

レジスタンスに、"逃亡者"等に屈する訳にはいきません。

でも、勝ち目もない。少なくともこの総督府は」

 

ならば、と彼女は純粋な瞳で、狂気を周囲に感じさせる笑みを浮かべ、言う。

 

「後に来るだろう味方の為にも、連中に打撃を負わせるべき。そうでしょ?」

 

確かに、軍人としては正しい。

しかし、余りに速く、余りに強く、その判断を下したクセナキスへ即座に賛同と忠誠を叫べる者はいなかった。

むしろ、混乱と困惑が広がった。

 

「どうしたの?速く準備をしなさい。奴等にミサイルを叩き込むのよ。私達は死ぬけど、起源国は勝つ。

言ったでしょう?楽観的な見通しに思考を止めている暇はない、と」

 

緊張が緩衝材のように人々を包んでいたが、サミュエル総督がその箱を開いた。

 

「まあ落ち着いてくれクセナキス中将」

「私は至って冷静ですが」

「しかし、皆は驚いている。…余りに突然だ。全てがな」

「ですから、素早く対策を」

「何れにせよ、3時間はあるのだ。今、ここで無理を利かすよりも少しだけ時間を置くのはどうだね?

皆も胸中を整理したいだろうし、君も遺書を書けるならそうしたいだろう?」

 

余程命が惜しいのだな。

クセナキスはサミュエルの言葉をそう決めつけ蔑みを眉に現したがしかし、周囲の空気も察していたため、とりあえず呑んでやることとした。

 

「分かりました。では1時間半後に全員ここにまた集まること。…これでよろしいですか?」

「ああ。充分だ」

 

恐らくこいつは逃げるのだろうな。

内心ため息を付きつつ、総督代理としての準備もしておくか、と執務室へとクセナキスは戻るのだった。

 





Tips 奪還政府について

何度か言及している奪還政府については、一旦本編が落ち着いた段階で番外編として出す予定です。
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