代星-我らが母国はいかにして勝利したか、あるいは我らの祖国はいかにして滅びたか- 作:ライト鯖
銀河連盟の作戦に全力を挙げて協力した紅星民主党への感謝を。
紅星民主党がその組織に残された力の全てを出し切って成し遂げた作戦によって、銀河連盟の星系制圧は犠牲も少なく、そして、起源国による核攻撃を防ぎつつ、解放する事が可能になったのだ、と。
対して、声明内で人民革命委員には一言も触れられなかった。
その後、市井には噂が流された。
人民革命委員会は解放作戦の足を引っぱってばかりであった。
起源国を利用し、他のレジスタンス組織を壊滅させ、自分達が絶対的な権力を握ることだけを優先させてきた、と。
全て事実であった。
彼等が選び取った道であり、真実。
そして、市民にとっては、失望の的であった。
人々の窮状よりも、自分達の権力の事だけを考えていた連中に、どうして人が付いてこようか。
中核メンバーのそうした権謀術数の数々、それも、本来同胞たり得た人々に向けられたそれを知った、下層の構成員も多くが離反していった。
そんな中で、銀河連盟は紅星民主党を始め、各地の地域レジスタンス組織も含めた協議を行い、紅星の統治勢力を決める選挙を行うと発表した。
元の政府を担っていた人民革命委員会は瓦解状態にある為、臨時の統治主体が必要である、というロジックだ。
「…我々を破壊しておきながら何を宣っている…!!」
人民革命委員会委員長、
銀河連盟の発表に正統な政府と見なさない、と事実上宣言された上、その原因は、公式には認められていないとはいえ、銀河連盟の流した噂によるものだ。
憤るのも当然とは言えるだろう。
しかし、それは自らの今までの行いを全て棚上げしているということに他ならないのだが、譚星宇はそれを省みられる人間ではない。
「くそっ!くそっ!なめやがって」
ギリッと歯ぎしりをした譚星宇はしかし、数秒の後に、ケタケタと壊れたような笑い声を上げ始める。
「貴様らがそうやって、我々の革命を破壊しようと言うのであれば、成すべきは一つだろう。
ハハハハッ。連中が油断している今がチャンスだ」
我々こそが、と譚星宇は独り言ちた。
「正統なる紅星の革命政府だ。人民を領導し、真の共産主義を、この銀河系の一角に現出させる。
唯一正義の!」
翌日。
紅星民主党と銀河連盟の会談場所に選ばれた空京最大のホテル、"コスモ・モナコ 空京支店"。
そこで爆破テロが発生した。
自爆テロであった。
警備員らによる制止を無視してホテル内に強行突入をした後、ロビーでの自爆。
テロリストは爆発の直前、「革命万歳」を叫んでいたと記録されている。
幸いにも、基之達は既に警備の厳重な上層フロアにて会談中であったため、幹部陣の人的被害は無かった。
しかし、警備員3名の死亡と5名の負傷という結果になってしまってもいた。
これは人民革命委員会による攻撃であると基之が推測、いや殆ど断定した頃、次なる報せが飛び込んでくる。
同じようなテロが、政府施設で何件も発生しているとのことだった。
「やぶれかぶれなのか…?」
基之の推測は外れる。
彼等を甘く見てしまっていたのだろう。
これは、陽動であった。
紅星民主党、銀河連盟、そして、市民。
全てが混乱するように仕向けられた陽動に過ぎないのだ。
つまるところ、人民革命委員会は非武装化されたわけではないのだから、彼等としては勝ち目のない選挙を真面目に戦うよりは、残る力の全てを武力攻撃に割くほうが合理的だった。
故に、譚星宇は奇襲によって、紅星の統治機構を奪い、革命を成就せんと行動を開始したのである。
「さあ!反革命分子共よ!裁きの時だ」
残された武力を用いての蜂起。
これは、確かに軍事的には成功を治める。
だが、市民からの印象は最悪であった。
折角平和的な権力移譲が行われ、悪夢から解放されたと思っていた所に紅星を監視国家下に置き、革命を盾に独裁を敢行せんとする勢力が、漸く終わった戦争をもう一度起こさんばかりの腹積もりで、蜂起したのだから。
愛想を尽かされてしまったのだらう。
それ故に、悲劇が起きてしまう。
「反革命分子を逮捕しました!」
「よくやった。処刑しろ」
人民革命委員会が電撃的に制圧した一部地域では、革命に反すると、人民革命委員会が判断した人々の処刑が行われたのだ。
無論これは、人民革命委員会に反対するデモを開いただとか、反政府的な発言をしただとかそういう類いの理由ではない。
正確な所は伝わっていないが、人民革命委員会が提出を求めた書類に不備があっただとか、金品を貯め込んでいた"プチブル"だから、だとかの理由であったという。
最早、イデオロギーしか見えなくなってしまった人間で構成され、更に、穏健な者は組織のこれまでの陰謀に嫌気がさしいなくなってしまっている人民革命委員会は、市民からの好感度だとか、そうした"支配"に必要な素養全てを失っていた。
確かに、奇襲によって彼等はある程度の支配圏を確保し、首都 空京にも攻撃を仕掛けていたが、態勢を整えた銀河連盟の敵ではない。
人民革命委員会が抑えていた都市には、宇宙から降下した"上陸部隊"によっていきなり防衛ラインを無視する形での攻勢を防ぐこと能わず、敗退していった。
そして──。
「くそっがあ!!何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!」
机のペン立てやカップやらを音を立てて払い除け、八つ当たりをする譚星宇。
殆どの支配圏を失った、という連絡を受け、最早彼は、最後に残った僅かな冷静さすらも捨て去っていた。
「愚民共め!共産主義社会の再建には多少の我慢も必要だと分からんのか!紅星民主党もそうだ!革命の理想を忘れてブルジョワ民主主義なんぞに走るからだ!我々じゃない!我々は日和見主義者や右翼共を片付けるために起源国を利用し、革命を成就させる計画を持っていただけだ!」
あああ、と唸りながら譚星宇は叫ぶ。
「こんな、ことで…っ。銀河連盟め…!ブルジョワの味方!労働者の敵!何が!解放!!」
そうやって十分ほど叫んだ後、疲れたのか冷静になったのか、静かになり落ち着いた譚星宇を見計らって部下が献策した。
「ここはもう一度地下に潜りましょう。
こうなった以上、ブルジョワ勢力たる銀河連盟軍は我々を弾圧しかねません。
一旦引いて、機を伺うべきです。
少なくとも、銀河連盟がこの星系を離れるまでは」
「…くっ。仕方がない」
譚星宇は頷き、立ち上がった。
瞬間、タイミング良く、譚星宇にとっては最悪の、ではあるが。
爆発によると思われる低い破裂音が地下壕を震わせながら響き渡った。
「な、何だ…!?」
隠し通路から逃げようと調度品を利用したある種の古典的な隠し入口を出現させる仕掛けを起動させた譚星宇であったが、既に手遅れであった。
背後の、執務室の扉が勢いよく蹴破られ、銃火器を構えた軍人然とした男達が入ってきた。
「………!」
譚星宇の姿を確認した小隊長らしき男がコンコンと胸に取り付けた特殊なマイクを叩くと、ホログラムが起動する。
そして、ホログラムは基之の姿を映し出した。
「……あんな真似をしておいて貴方自身は地下施設に潜り続けていたのですね」
呆れたようなため息と共に基之は譚星宇を見る。
「…反革命主義者が何を…」
「本当につまらない人間だ。貴方には"人民"の姿が見えていないのですね」
「人民は愚かなのだ!我々が正しき道に領導せねばならない!だからこそ、少々の犠牲は致し方がない!」
冷たい目で、基之は譚星宇を睨んだ。
「理想を持つのは良いことだ。私にもある。あった。けれど、その中にある人を見ていないのなら、それは独善だ」
それに、と基之は言う。
「地下に隠れ続けていた言い訳としては余りに安っぽいな」
「黙れ!黙れ!黙れ!私は、革命の指導者として、死ぬわけには…!」
「そうかい。まあ、あんたと議論するつもりはない。賽は投げられているんだ。
あんた達が、自らをばかり優先し、起源国に他の抵抗組織を潰させた時から、既に」
人民革命委員会はこれで殆ど完全に瓦解した。
ほんの僅か、構成員が残り、穏健派の一部も出戻り、選挙に向けての準備を始めたが、これは抵抗でも、革命闘争でもなく、単なるあがきであった。
そうして、選挙が始まった。
一先ずの臨時議会を構成する為の選挙である。
臨時議会によって、臨時の代表を選出し、正式な政府と、新たな統治機構を作っていく。
その為の。
結果としては、紅星民主党が過半数を単独で握ることになった。
当然と言えるだろう。彼女らの命がけの闘争は、広く知られることとなったのだから。
更にいえば、起源国以前から、独裁軍事政府に抗い続けてきた事実も人々に知れ渡ったことも、無関係ではなかっただろう。
他は、地域地域で影響力を有していたレジスタンス組織を前身とした政党がそれぞれの地域で票を獲得し、議席を占めた。
市民が自主的に組織した複数の政治団体も、全体の2割を占め、多様な議会となった。
しかし、人民革命委員会は一つとして議席を得ることは叶わなかった。
これが、トドメであった。
内部での僅かな紛争の後、譚星宇の後を襲った男が辞任。
後任は選出されることはなかった。
最早、誰一人としてこの未来も、過去も消え去った"委員会"を担うことはなかったのだ。
最後の"全惑星人民代表会議"はたった5名の参加者が、かつて何百人と集ったホールで寂しく形式的な議事を進行するのみだったという。
それが、彼等の最期だった。
人民革命委員会は、自らのイデオロギーによって、自らの身を食い潰し、破滅したのだった。
「
「何ですか。
江 蘭啟は冗談めかして徐 玥を肩書付きで呼び、玥の方もそれに応えた。
「終わったのね」
「始まりでしょう。漸く」
即座にそう返された 蘭啟は狐につままれたようにきょとんとしてから、吹き出した。
「そうだね。その通りだ。
漸く、私達は明日への切符を手にしただけだものね」
「ええ。起源国という車止めは消え去った。
だから、後は発車するだけです」
紅星民主党は、民主選挙を前に大規模な組織改革を行なっていた。
党の武装組織は、臨時の政府軍として分離され、政治組織も改組。
まず、"議長"職は廃止、というより、呼称が変更された。
最早、党首であることは議会の長を名乗ることと
党の議長なのだから、という者もいたが、要するにシンボリックな話なのだ。
あらゆる勢力と対等に議論する政党であり、決して、解放の英雄として驕らない。
そういう象徴としての、呼称変更であった。
その上で、議会対策委員長等、議会の存在、他党の存在を意識した役職が新設されていった。
「玥」
「何です?」
もう一つ、蘭啟は考えていることがあった。
「私、宇宙に出ようかと思ってるんだ」
「え…?いやいや何を言ってるんですか。貴方がいなきゃ」
「分かってる。今直ぐに、じゃないよ。
でも、ここが安定して…そうだな。ちゃんと正式な政府が発足するくらいになったら、かな。
銀河連盟に合流したいんだ」
「何でですか?誘われたんですか?」
あははと蘭啟は首を振る。
「私、英雄みたいに持ち上げられてるじゃない?」
そう、彼女は連日、勿論、銀河連盟含む様々な勢力の思惑も混ざっているが、メディアで取り上げられ、これまでの事績が少々の誇張も含めて称賛されている。
彼女自身、今の紅星には、つまり、かつての支配体制を完全に崩壊させ、起源国を追放したばかりのここには、それを取りまとめる存在が必要だと文句は言っていない。
例え虚像であろうと、その責を引き受けるつもりであった。
「でもさ、それは、議会政党になった民主党とは切離されるべきだと思ってるんだ」
「…公平性ってことですか?」
「それもあるし、権力は腐敗しやすいからね」
蘭啟は心配そうに眉を下げる玥に顔を近づけ、笑った。
「私や貴方が、とか、今の仲間達が、と言いたいわけじゃないの。勿論、絶対とは言えないけど。
でも、問題はいつか、それを利用して独裁を敷こうとするんじゃないかってこと」
まあ、と彼女は苦笑する。
「どちらにせよ、いつかそういう人間は出てくるのだろうけれど、それでも、その時に使える口実が少ないに越したことはない。でしょ?」
だから、と徐 玥は戦友を見据える。
「象徴としての役目を引き受けたまま、遠くの宇宙に行って、切離してしまおうってことですね」
「そ。きっと、私の仕事はそれなんだ。
玥ならきっと、良い国にしてくれる」
信じてるよ。と彼女はいたずらっぽく笑うのだった。
「……分かりました。でも、ちゃんとたまには帰ってきてくださいね」
「そりゃね。それに私だって祖国で骨を埋めたいし、ずっと、ってわけでもないよ」
「そうですか。…じゃあ、その時は私が…やり遂げてみせるよ。蘭啟」
─起源国 地球 アルワタン─
統一暦244年(西暦2694年)3月21日
「恐らく、第八星系総督府はもう落ちてるな」
起源国執政官 ジョルジュ・アース・ンガングガは秘書のダヴド・ウマールにホログラフィックデバイスに表示された報告書をスライドさせて寄越し、ぼやくように言った。
「まさか…この報告では宇宙戦力も健在。まだまだ戦えるように…」
「まあな。勘だよ。直感」
「はあ…」
ダヴド・ウマールは曖昧に頷いたが、しかし、それは真実なのだろうな、と感じてもいた。
ンガングガの直感はよく当たる。
恐らく、単なる勘などではなく、長年の経験や、膨大な知識から来る演算の結果なのだろう、とウマールは解していた。
「それに、何方にせよ時間の問題だ。ウチの軍に、同数の兵力で連中に押し勝てる人材はそうはおらんようだからな。夜影が負けた時点でそれは分かっていたことだ」
これまでは、とンガングガは別な資料に目を通しながら続ける。
「此方のほうが大兵力で当たれていた。
だから、夜影程の実力者でなくとも、勝てるだろうとふんでいた」
まあ、と彼は自嘲する。
「結果は散々だがな」
「彼等の戦術も去ることながら、起源国軍の怠慢。官僚主義的な戦術思考に陥っていた事が大きかったですね」
「日野基之以前に一度くらいちゃんとした宇宙戦争を出来ていれば良かったんだが、まあ言っても仕方がない」
しかし、と彼は片手間でホログラフィックデバイスの3D星図を起動する。
「既に連中は我々の1個艦隊と同規模の兵力を有している。
更に、星系を4つも解放されてしまった」
「単純な数でも1/3。資源やら何やらを勘案すれば、もう少し大きな割合を奪われていると考えるべきだろうな」
はい、とウマールは頷く。
「人口も奴等の方は十五億を突破しました」
「此方もまだ八十億はいるが、要するに敵一人につき、此方の一個分隊と同数という人口比になってしまったわけだ」
単純な計算でしかないが、と前置きしつつ、ンガングガは言う。
「このぐらいの比率差ならば覆される危険がある。一人で一個分隊、無理があるように見えて、爆弾一発で覆り得る人数差だ」
「事態はそんな単純ではないが、やはり脅威であることに変わりはない」
「…ですね。連中は次はどの星系を狙うのでしょう…」
幾つかの書面にサインをし、ホログラフィックデバイスのウィンドウに映る報告を一瞥してからンガングガは立ち上がり、窓外の見渡せる場所へと移った。
眼下に座するアルワタンの幾何学模様から天へと視線を移し、美しい夕焼けに染まった地球の空を視界に収める。
しかし、彼の目に映っているのは、淡く赤らんだ空ではなく、漆黒の宇宙であった。
「恐らく連中の次の狙いは地球だ」
「…っな!?」
ウマールは驚愕を隠せなかった。
「最大人口を誇る紅星を手に入れたら、連中がちんたらする意味はなくなる。
これ以上、星系総督府に触手を伸ばしたところで、我々が更に後方の星系防衛や地球の戦力を割いてそれに背後を突かれる危険を増やすだけだ」
今でさえ、とンガングガは振り返って星図を指さし、言う。
「4つの星系の距離は中々のもの。
これを艦隊一つで防衛するのは難しい。
今の状況は単に、我々が他星系の防衛を疎かにして、現地反乱に敗北することを懸念しているからこそ生まれているに過ぎない」
だが、とンガングガは続ける。
「敵も、思うことだろう。これだけ星系を解放して、例えば過半数解放したとしよう。
それでもなお、残る領土に固執して、どんどんと不利になる状況を起源国が甘受するだろうか、とな」
そんな訳はない、と彼は呟くように言った。
「…確かにそうかもしれませんが…」
「現に私は考えているよ。各地の守備兵力が多少薄くなっても構わない。少しずつ引き抜き、一個艦隊を新たに急造するべきだとね。
新造艦と新兵を回すことが出来た星系からはその分ベテランを引き抜く」
そして、と今度は青と赤の混じり合った空をこそ見て、ンガングガは空へと手を伸ばす。
「そうして地球の守備兵力と合わせた2個艦隊プラスアルファで連中を迎え撃つんだ」
「全兵力ではないのですか…?そうなさるのであれば、いっそ…」
「その結果、全星系を失った場合のことも考えるべきだろう。
確かに拘り過ぎる訳にもいかないが、かといって無視は出来ない。
第一、私は今、敵戦力が一個艦隊という前提で話しているが、あくまで明らかになっている分のみ、だ」
もしも、と彼は再び星図を見る。
「虎の子の艦隊があったとして、囮に地球へ少量の部隊を向かわせて全兵力の出払った各星系を主力で一挙に電撃的に制圧していく、という可能性もある」
「そも、私の読みが外れていて、連中は地球を無視する可能性もあるのだしな」
「そんなことあり得るでしょうか…?」
勿論だとも、と頷き、ンガングガは苦笑する。
「彼等の勝利条件は地球の占領ではない。
外星系の独立だ。我々と講和がなるならそれでも良いんだよ」
「ですが、全兵力を一箇所に集わせておけば、どんな手を取られても対処が可能では」
「宇宙艦隊には、な。だが、解放した星系に艦隊を置かずに次へ次へと向かっては、いたちごっこだ。
基盤を崩され弱体となってしまった総督府だけで星系を抑えられる訳がない。
また陥落するだけだ」
「……」
「そのいたちごっこで疲弊した我々の背後を、銀河連盟の艦隊がサクッと刺す。
こうなるだろうな。何せレーダー網の外では互いの位置が分からないのだから。
だが、此方は星系の解放に動く以上、ある程度は推測されてしまう」
理解出来たか?とばかりにウマールを一瞥してから、ンガングガは自席へと戻った。
「結局、全兵力の結集など出来ないんだ。守備兵力を、それもハリボテではなく、敵がどう出たとしてもある程度は戦えるように備えるしかない」
「だが、本命が地球であるのは事実。
リスクの高い星系解放合戦をするよりも、地球を落とした方がメリットは大きいからな」
「それも、勘ですか?」
「いいや。これは確信だよ。恐らく、日野基之も同じような思考に至っているはずだ。
これまでの奴の戦略、戦術からしても、な」
ンガングガは多くの起源国軍人に出来ないことを、糸も簡単にやってのけていた。
即ち、"名誉起源民"の能力を正確に評価し、信頼する、という本来至極当然の事を。
「そうなると、しかし、つまり…次が…」
「実質的な"ハルマゲドン"だろうな」
ンガングガはウマールの緊張した様子に気が付いていたが、わざわざ気休めを言う理由もない為、特段の反応を見せることはなく、行政上の職務へと戻るのだった。