シンデレラグレイ~転生者を添えて~ 作:キャップちゃん
オグリキャップが地方で走る最後のレース、ゴールドジュニアの日だ、控室でのオグリキャップはいつもより緊張している様に見える。
いつもならもっとリラックスして楽しそうにしているのに何か変だとは思うが気合は十分だと一目見てわかるのでこれ以上何かするのは止めておく。
さてパドックではいつも通り………、じゃないな、フジマサマーチにジッと見られてオグリキャップは何かやりづらそうだ。
それ以外は特に問題はなくゲートイン手前でちょっとしたトラブルがあった、フジマサマーチがオグリキャップに近づいたかと思うと胸倉を両手で掴み何か叫んでいる、観客席まで聞こえるような声なのに何を言ってるのかわからない。
直ぐに異変を感じたスタッフに離され何かされたとかはパッと見無いがここからでも見てわかる位オグリキャップが絶不調顔になっている、やばいぞ、こんな状態のオグリキャップ見た事が無い。
「各ウマ娘ゲートに入りました! 今ゲートが開きました!!」
トップに出たのはフジマサマーチ、オグリキャップはと言うといつも通り3~4番目の位置なのだが本当に体調が悪そうに走っている、そのまま向こう正面へ。
「どうしたのオグリちゃん………」
「さっきまでいつも通りだったじゃねぇかオグリ! どうしたんだよ」
隣で二人がとても心配そうにしている、自分も心配だが今は祈る事しかできない。
第三コーナーから第四コーナーに差し掛かった時、オグリキャップの顔を見ていてもたってもいられなくなり二人は最前列へ駆けて行く。
「オグリィー!! いけぇー!! 走れぇえー!」
「オグリー! 頑張れー!!」
オグリキャップに声援は聞こえているのだろう、しかしいつもの様な豪快な走りにはほど遠い、このままではヤバイ。
「先頭フジマサマーチ! 強い! 強いぞ!! このまま最後まで逃げ切るか!? おっと!! ここでオグリキャップ上がって来る!! ものすごい末脚だが追いつけるか!?」
駄目だ、残り100メートルでその足じゃもう………。
「フジマサマーチ1着でゴールイン! 2着オグリキャップ! 惜しくも半バ身!続いて………」
あぁ、こうなる事もあるよな、レースに絶対は無い、しかし今まで無敗で進んできたので北原やベルノライトにオグリキャップは相当堪えるだろう。
俯いて顔を上げないオグリキャップ、強く手を握りしめ動かないベルノライト、余程心配なのかオグリキャップ駆け寄る北原、そんな中オグリキャップの傍で不適な笑みを隠さずオグリキャップに向け続けるフジマサマーチ、何を思っているのかまったくわからない。
不意にフジマサマーチがオグリキャップに抱き着いた、その瞬間ビクッと体を震わせるオグリキャップ、だがそれ以降動きが無い、そんな二人を間地かで見ている北原だが何もしないって事は悪い事ではないのだろう。
今回はいつものレストランで反省会だな。
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いつもなら皿が積みあがっている筈なのに今日は一般的な範囲でしか空き皿がない、場も静まり返ってお通夜状態だ。
「………、レースには絶対は無い、だからこんな日もある、しかし二着になったじゃないか! それもすごい事なんだぞ」
「………」
誰も話さないので自分が話したのだがやはり誰も話さない、そんな時オグリキャップが立ち上がりフラフラと退店してしまった。
「オグリ! 先輩、ベルノ、ちょっと行ってきます」
「あぁ後は任せろ、そのまま二人で話してこい」
追いかけて北原も行ってしまう、もう今日はお開きかな。
「あの………、サブトレーナーさん、オグリちゃん大丈夫ですよね?」
「大丈夫だ、北原君が付いてるからな」
今はこれしか言えない、もし北原でも駄目なら頭を下げてあの人に頼むしかないか。
数日後見た目ではいつも通りの練習をしているチーム北原だが空気が重い、ベルノライトの中央受験日が近いのもありこの空気をなんとかしたいのだがなかなかうまくいかない。
食事量も落ちているらしくベルノライトの心労も溜まっていく一方だ、こうなったら一回原因であろうフジマサマーチに話を聞きに行こう。
まず担当の柴崎に話を聞くことにしたのだがこちらも雰囲気が良くない、うちのチームと同じように空気が重い。
「柴崎君、少し話いいか?」
「先輩………、こちらからもお話があります」
仕事終わりに声をかけ近くのバーで話をする事に、平日という事もあり客は自分達二人以外に居ない。
「まずは先日のゴールドジュニア1着おめでとう、先に話聞くから………、何があったんだ?」
「ありがとうございます、では………」
話す前に出された酒で唇を潤す柴崎、そして少しの間重い空気が流れた後声を紡ぎ始めた。
「何処から話せばいいのかわかりませんが、フジマサマーチは次期エースにはなれなかったんですよ」
そこから話されるフジマサマーチの過去、聞いてるだけでもとても研磨して作り上げた最高のウマ娘だと判る。
「そんなフジマサマーチはオグリキャップに折られてしまったんです………、心を、再起不能なまでに」
そうなるだろう、幼少期から自分を苛め抜いて作り上げた自信を才能の暴力で殴りつけられたら。
「そこから、おかしくなってしまったんです、あのマーチが………、オグリに執着し初め………」
いつの間にか酒を煽るように飲む様になっていた、差し出された酒一気に飲み干しテーブルに叩きつける。
「マーチは! もうオグリキャップ無しでは! 走れないんです!!!」
どうしてこうなった、もうフジマサマーチに関しては自分の手には余るぞ、どう答えていいか判らず静寂が部屋を包むのだった。
※フジマサマーチ「オグリキャップ、中央へは行かせないから♡」