「違う!!!ここ以外に私達が生きて良い世界なんて無いんだ!!!」
「そんなワケない!!!絶対に、絶対にそんなことないよ!!!」
アリウスの研究所、その地下にあるアリウススクワッドの部屋。4人の物や武器やらが散乱する室内に怒声が響き渡っていた。
声の主は錠前サオリと秤アツコ。彼女らはお互いを、心底恨みながら叫んでいた。そして親友である2人の口論を、俺は絶望しながら眺めていた。
遅れて、あぁこれは夢だ、あの時の記憶だと思ったが、自罰的な気持ちでその光景から目線を外すことは無く。ただ受け止めるためにその口論を眺め続けた。
口論がやがてお互いへの人格否定に変わり、暴力へと変わっても、ミサキとヒヨリが止めに入っても終わらず。ただ地獄のような光景が延々とたれ流される。
何故こうなったのか。
それは単純である。
ーーーーー俺がアツコをそそのかしたからだ。
ばにたすばにたーたむ。全ては虚しいだけ。俺は研究所で生まれ今日までその文言を聞かされ続けていたが、本当にそうなのかと疑問を持っていた。何ならその真実を暴き出してやろうとすら思っていた。全ては虚しい?なら今を楽しく生きろやksと心の中で唾を吐いていた。
だからビルドドライバーを自作した。だからこの研究所から出るための作戦を作り上げた。協力者が欲しかったのでアツコをそそのかし、利用した。アツコ経由でアリウススクワッドと接触し彼女らを利用しようとした。
・・・その結果がコレである。
アツコはアリウスからの脱出に賛成してくれた。アリウスの外に可能性があることを本気で信じている。かたやサオリはというと、根っからのバニタス信者なのか希望など無いとキッパリも切り捨ててアリウスからの脱出を拒んだ。アツコはアリウススクワッドの全員が心配で、本気で脱出させようとしてヒートアップし、サオリもアツコの裏切りが信じられずにヒートアップしていく。
ふとバニタスの考えが頭に浮かんだ。友情というものも、全て虚しくいつか消えゆくものなんじゃないかと。
・・・いいや、そんなことは無いハズだ。絶対に。
だってそうなら、俺とアツコも、いつか・・・。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「セントくん!聞いているのですか?」
「あ、あぁ、何だっけ?」
「妖怪ウォッチでうぃすよ!妖怪ウォッチ!」
「お、おう。・・・・・・・・というかお前誰だよ」
「まさかの最初から!?えっ、最初から何も聞いていなかったんでうぃすか!?!?」
「悪い。ちょっとボーっとしてた」
確か同級生とおおもり山に虫取りに行ったところまでは覚えているが、あぁそうだ。1人で虫を探してたら過去の記憶が堂々巡りになって、気持ちを紛らわせるために見かけたガシャポンに100円入れて、出てきたのがコイツだったっけか。
「良いですか?今度はちゃんと聞いていてくださいよ?」
「おう」
「私の名前はウィスパー!妖怪でうぃす!」
「そうか。で?」
「このカプセルから出してくれたお礼に、コレを差し上げます!」
「おう。ありがと」
ウィスパーなる白いほにょほにょが腕時計を差し出してきた。腕時計にしては少し大型で、どちらかというとワン〇ースのログポースに近いデザインをしていた。
「これは?」
「それは妖怪ウォッチでうぃす!普段は見えない『妖怪』を人間側が見ることができる超々激レアなアイテムでうぃす!」
「へぇ妖怪・・・・・・・・・・・ん?・・・ん?え?」
徹夜明け+悪夢+早朝という最悪なコンディションの中、霞がかった意識で何となく応対していたが、あれ?妖怪?あれ?俺今、白くてキモイ浮遊霊みたいなのと会話してないか?え?
「ば、バケモノ!?!?!?」
「今更そこですか!?!?」
「喋った!?!?」
「さっきから喋ってるでしょうが!!!」
ハリセンで頭を叩かれた。痛い。
「・・・・・・・・あ~、で?お前が妖怪なのは分かったけど、コレは結局何なんだ?」
「それは妖怪ウォッチでうぃす。ただの人間でも妖怪が見えるようになる特殊な時計で、友達契約した妖怪を呼び出したりできる優れものでうぃす!」
「へぇ。友達契約ねぇ・・・・・」
俺、学校に友達いないし、今回の虫取りも数合わせに近い形での招集だったワケだけど、コイツはソレを知っているのだろうか。いや流石に出会って間もない相手だしそれはないか。
「まぁ口で説明しても仕方ないですよね!百聞は一見に如かずと言いますし、ご近所の妖怪不祥事案件を回りながら解説していくでうぃす!さぁ行きますよ!」
「お、おう・・・・・・・・分かった」
・・・・・・・・・・・・この時の俺は、妖怪という非日常が自分の中のアリウスの記憶を薄れさせてくれるんじゃないかという期待に胸を膨らませながら、本格的にアリウスから逃げる一環としてその提案を受け入れていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
近所にある魚屋の前の交差点。ウィスパー調べによると、そこではここ最近人が交差点に飛び出して轢かれそうになるという事件が続いているらしい。こういった同一系統での連続事件は大抵妖怪の仕業らしく、俺は言われた通りに交差点に妖怪ウォッチを向け、ボタンを押した。すると妖怪ウォッチから光が照射され、交差点にいた不思議生物が見えるようになった。
その不思議生物は全体的に赤色で猫耳をしていて、腹巻をしていて首輪に鈴でドラ〇もんのような2等身の姿をしていた。
「・・・・・何アレ」
「あれが妖怪でうぃす」
「随分と可愛い見た目をしてるんだな」
交差点の反対側から赤猫を眺めていると、赤猫はあろうことか通行人のサラリーマンに乗り移り、そのまま交差点の中央へ飛び出して行った。
「あんのバカ!!!」
「ケータきゅん!?」
慌てて俺も飛び出し、突っ込んでくる車とサラリーマンの前に飛び出すと相撲取りのように車を真正面から受け止めた。現状のハザードレベルでも車ぐらいなら止められると踏んでいたが、どうやら間違いではなかったらしい。
「にゃ、にゃにゃあ!?」
驚いた赤猫がサラリーマンから抜け出ると、俺はその赤猫を引っ掴み、騒ぎになった交差点から脱兎のごとく逃げ出した。
「ち、チミどうやったにゃん!?普通の人間は車を真正面から受け止めるなんて不可能にゃん!!!というかそもそもオレっちが見えてるにゃん!?」
魚屋の裏にある路地に入って少しした所で一息ついた俺に、赤猫は色々と質問をぶつけてきた。だがしかし、その前に俺は言いたいことがあったため赤猫の前に座り込むと説教をたれた。
「それより赤猫、お前人を交差点に飛び出させて何のつもりだよ。アレか?お前見かけによらずかなりの悪霊で、何人も人を殺めたいとかであんなことをしてるのか?」
「ち、違うにゃん!ただオレっちは、オレっちは車に勝ちたいだけにゃん!!!」
「車?」
「・・・・・オレっち、昔はエミちゃんっていう女の子の飼い猫だったにゃん。でもある日、あの交差点でオレっちが車に跳ねられて、そしたらエミちゃんが・・・・」
車に撥ねられて死ぬなんて・・・・ダサッ・・・・・と一言呟いたらしい。
「・・・・・・酷くね?」「最低でうぃす」
「違うにゃん!アレはオレっちが弱かっただけにゃん!だから今日まであの交差点で修行してたにゃん・・・・でも1人じゃトラックには勝てなくて・・・だから憑り付いて力を上げてからトラックに挑んでたにゃん!」
「成る程。それが今回の車の飛び出しに繋がったんでうぃすか・・・」
「・・・・・・」
「オレっちは車に勝たないといけないにゃん!だから、だから見逃して欲しいにゃん!」
涙ながらの訴えはかなり鬼気迫るものがあり、事情を知った以上協力したくもあった。だがその前に、俺が感じたのは眩しさだった。
「・・・・・・・俺の名前は桐生戦兎。桐生戦兎に似せて作られたクローン人間。成り損ないで出来損ないの仮面ライダーだ。赤猫、お前の名前は?」
「・・・・・?・・・・ジバニャンにゃ」
「ジバニャン。俺はさ、アリウス自治区ってところで生まれてな。そこでは何もかもが無くて、ただ上司の言うことを死んでも聞いて死んだ目をしながら働く場所でさ」
「い、いきなり何の話にゃん?」
「俺を作ったエボルトっていう奴はアリウスの中でも有数のクソで人体実験やら何やらを平気で行っていてな。あまりにもクソだったから反抗してその研究所から抜け出すことにしたんだ。で、抜け出す際に戦力は多い方が良いと思ったからアリウススクワッドっていう連中にも引き抜き工作をしたんだけど・・・」
「本当に何の話をしてるにゃん?日本の話には聞こえないにゃんよ?」
「その引き抜き工作に失敗してさ。中途半端に引き抜いて仲良しだったアリウススクワッドを内部から引き裂いちまったんだ。しかも脱出作戦は半分失敗して、逃げ切れたのは俺だけ。罪ばかり重ねてこの世界に来て、そこで俺は、安心しちまったんだ」
「・・・・・・・・」
「それからはアリウスに置いてきた連中を忘れようと必死だった。ここにいる理由もソレ関連だ。だから俺は思うんだ。お前はカッコイイなって。諦めても良いのに、ちゃんと立ち向かってるんだろ?」
「・・・・・・・セントはもう戦わないにゃん?手遅れじゃないにゃんよね?」
「俺の話は良いんだよ。お前が凄いっていう話だ。ジバニャン、お前は凄い。でも人の命を脅かしてまで自分の願いを叶えようとするほど倫理観を忘れた猫でもねぇんだろ?」
「それは、そうにゃんが・・・」
「だからラストチャンスにするぞ。俺に憑りつけ。俺のハザードレベルでもダメなら後は自分の力だけでどうにかしろ。良いか?」
「・・・・・・・・・・分かったにゃん」
渋々といったような表情だったが、確かな覚悟をその瞳に宿していた。
「ん。ならちょっと離れてろ」
俺はビルドドライバーを取り出すと腰に巻き、2本のフルボトルを取り出し、ある程度振ってから先端のノズルを捻った。そしてベルトに2つとも刺すとベルトが音声を掻き鳴らした。
≪ラァビットゥ トゥアンク ベストマッチ!!!!≫
その後。清々しい顔で車に撥ねられるジバニャンがいたとかいなかったとか。