光の軌跡   作:社畜A

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第26話 パートナーを得て

サラトガレースコースを覆う朝もやの中、三上光輝は孤独な姿で立っていた。アメリカ帰還から2週間が経ち、マイク・ジョンソンの手腕で騎乗機会は順調に増えていた。だが、三上の頭の中では計画が形作られつつあった。わずか3ヶ月のアメリカ滞在を最大限に活かすためには、戦略的なパートナーシップが必要だった。

 

「おはよう、三上」

マイクが朝日に照らされた厩舎エリアに現れた。いつものくたびれたチェック柄のジャケットに、クリップボードを抱えている。

「おはよう」三上は短く答えた。

「今日は面白い話があるんだ」マイクが近づいてきた。「二人の人物が君に会いたがっている。別々の案件だが、どちらも今後に関わる重要な話だ」

三上は静かに頷いた。

「一人目は10時、クラブハウスのラウンジ。エクイティ・レーシングのジェイソン・パークだ」マイクはメモを確認した。

「二人目は午後2時、バックサイドの獣医オフィス。サラ・コーエン博士」

「エクイティ・レーシング?」三上は名前に聞き覚えがなかった。

「新興の馬主シンジケートだ。テック系の若い投資家たちが立ち上げた。特にサラトガシーズンに集中投資している」マイクは説明した。「君のデラウェアとサバーバンでの好騎乗を見て、興味を持ったらしい」

「コーエン博士は?」

「彼女は獣医出身のブリーダーで、最近『ネクストジェネレーション・ブラッドストック』というシンジケートを立ち上げた。若馬の発掘と育成が専門だ」マイクの口元に小さな笑みが浮かんだ。「君の『馬の声を聞く』評判を聞いて、特に関心を持っているらしい」

三上は黙って考え込んだ。

「まあ、話だけでも聞いてみろよ」マイクは肩をすくめた。「7月から9月という限られた期間で最大の成果を上げるには、集中的なパートナーシップも一つの手だ」

 

クラブハウスのラウンジは、朝の静けさに包まれていた。大きな窓からは競馬場の全景が見渡せる。三上が入ると、テーブルに一人の若い男性が座っていた。

「三上さん!」男性は立ち上がり、手を差し伸べた。

「ジェイソン・パークです。お会いできて光栄です」

パークは30代前半、スマートなカジュアルスーツに身を包み、エネルギッシュな雰囲気を漂わせていた。握手を交わすと、すぐに本題に入った。

「私たちエクイティ・レーシングは、データと直感を組み合わせたアプローチで競馬に取り組んでいます」パークはタブレットを取り出した。

「特にサラトガシーズンに特化した投資戦略を展開しています」

画面には複雑なグラフとチャートが映し出された。

「7月中旬から9月初旬のサラトガ開催期間は、年間投資の60%を集中させています。この時期の成功が私たちの年間ROIを左右するんです」

三上は黙って聞いていた。

「サラトガは特殊な競馬場です」パークは情熱を込めて続けた。「『王者の墓場』とも呼ばれ、セクレタリアトやアメリカンファラオといった三冠馬でさえ敗れた場所。タイトなターン、変化する馬場状態、夏特有の気候変動...これらが単純な実力だけでは勝てない独特の環境を作り出しています」

パークはタブレットで別の画面を開いた。

「そこで必要なのが『サラトガ・スペシャリスト』です。このコースの特殊性を理解し、適応できる稀有な騎手。歴史的にもジョン・ベラスケスやジェリー・ベイリーなど、サラトガで特に成功した騎手がいます」

彼はタブレットを三上の方に向けた。画面には三上の過去のレース分析データが並んでいた。

「あなたの騎乗を分析した結果、私たちはあなたがサラトガ・スペシャリストの資質を持っていると確信しています」パークは真剣な表情で言った。

「タイトなコーナーの精密な位置取り、変化する馬場状態への適応力、そして何より------馬の反応を読み取る卓越した能力。これらはすべて、サラトガで必要とされる特性です」

パークは少し声を落として続けた。

「特に、あなたの日本の精密な騎乗技術とアメリカの大胆なスタイルを融合させた独自の騎乗法は、サラトガの芝とダート両方で効果を発揮するでしょう。さらに、『氷の男』と呼ばれるあなたの冷静な判断力は、多くの名馬が乱れるこの『王者の墓場』で特に価値があります」

三上は窓の外に広がるサラトガの景色に目を向けた。パークの分析は的確だった。実際、三上自身もこのコースの特殊性を感じ取っていた。

「私たちはサラトガ特化型の馬主として知られていますが、それには特別な『サラトガ・スペシャリスト』騎手が必要です」パークは三上をまっすぐ見た。「あなたの騎乗を分析しました。特にサラトガのような難しいコースでの判断力と馬への理解が秀でています」

「私は7月から9月しかアメリカにいません」三上は率直に言った。

「それこそが完璧なんです!」パークの目が輝いた。「あなたのアメリカ滞在期間とサラトガシーズンが完全に一致している。私たちは集中的な成果を求めていますし、あなたもアメリカ滞在を最大化したいはずです」

パークはコーヒーに手を伸ばし、一口飲んでから続けた。

「提案は明確です。この7月から9月の間、エクイティ・レーシングの所有馬すべての第一騎乗権をあなたに提供します。現在10頭、うち4頭がグレードレース級です」

三上は僅かに眉を上げた。これは予想以上の大きな提案だった。

「そして」パークは声を低めた。「私たちは現在、アクセレレーターという3歳馬を所有しています。ジム・ダンディS(G2)、そしてトラヴァーズS(G1)への出走を予定しています。彼には特別な騎手が必要です」

三上の中で何かが反応した。彼がアメリカに戻ってきた理由の一つは、ここでもG1を勝ちたいという野心だった。その機会が目の前に提示されている。

「どうでしょう?」パークは期待に満ちた表情で尋ねた。「『サラトガ・パートナー』になっていただけませんか?」

三上は窓の外、朝の光に輝くレースコースを見つめた。短い滞在期間で最大の成果を上げるには、この提案は理に適っていた。

「条件は?」

パークは満面の笑みを浮かべた。「週末のメインレースは最低保証5000ドル、勝利ボーナスは10%。平日レースは通常の騎乗料に勝利ボーナス。そして、何より大事なのは、私たちのチームの一員になっていただくということです」

「騎乗以外の業務はありますか?」三上は確認した。本業である騎手としての活動を最優先にしたかった。

「いいえ、純粋な騎乗契約です」パークは即座に返答した。「あなたの貴重な時間は馬上で過ごしていただきたい。私たちが欲しいのは、あなたの騎乗技術と馬を理解する能力だけです」

三上は静かに頷いた。「考えてみます」

「もちろん」パークは名刺を差し出した。「明日までにご連絡いただければ。アクセレレーターのワークアウトが明後日あるので」

しかし、席を立つ前に、パークはもう一つ話を切り出した。

「そうそう、最近、コーエン博士という方からターフスター号という若い馬に関する話を聞いたんです」パークは何気なく言った。「彼女の育成した2歳馬の中で最も期待できると評判だから、もし彼女とお会いするなら、その馬についても聞いてみてください」

三上は少し意外な様子で頷いた。パークとコーエンの間に何らかの接点があるとは思っていなかった。

 

バックサイドの獣医オフィスは実用的で整然としていた。壁には競走馬の解剖図と証明書が飾られている。サラ・コーエン博士は40代半ばの女性で、知的な眼鏡とポニーテールという実務的な姿で三上を迎えた。

「三上さん、お会いできて嬉しいわ」コーエンはきびきびとした口調で言った。「マイクからはいろいろ聞いています。特に『馬の声を聞く』能力については」

三上は少し居心地悪そうに体重を移した。彼のその特殊な能力は、日本では広く知られるようになっていたが、アメリカではまだ噂程度だった。

「座ってください」コーエンはオフィスの小さなテーブルを指さした。「私の提案は少し変わっているかもしれないわ」

彼女はコーヒーを注ぎながら説明を始めた。

「私は獣医として20年働いた後、若馬の育成に特化したシンジケートを立ち上げました。『ネクストジェネレーション・ブラッドストック』よ」

テーブルには2歳馬の写真が何枚か広げられた。

「私たちは毎年5〜10頭の有望な若馬を発掘し、育成するプログラムを運営しています。特に『隠れた才能』---市場が見落としている馬を見つけるのが私たちの強みなの」

三上は静かに写真を見ていった。若馬の目に宿る可能性を感じ取るのは、彼の特技の一つだった。

「私の提案はこうよ」コーエンは椅子に深く腰掛けた。「今月末にファスティグ・セールがあるの。そこで数頭の有望な2歳馬を購入予定なんだけど、事前に私の知り合いのトレーニングセンターで検討中の馬を見てもらえないかしら」

三上は関心を示した。

「通常、セールでは公式のブリーズアップしか見られないんだけど、私には業界のコネクションがあるわ」コーエンは少し誇らしげに続けた。「セールに出る前の馬たちを見られるだけでなく、場合によっては特別に騎乗評価もさせてもらえるの。購入前にあなたの『馬の声を聞く』能力で見極めてもらえれば、投資判断が格段に正確になるわ」

「各馬の潜在能力を評価するんですね」三上は理解を示した。

「そうよ。それに、最近育成中の若馬たちについても評価してほしいの。特にターフスター号という2歳馬がいるんだけど、彼には大きな可能性を感じているの」コーエンは特別な思い入れを持って言った。「それから、セールで気になっている馬のひとつがスカイピアサーという名前の栗毛の2歳馬よ。調教でいくつか問題点があると聞いているんだけど、本当の能力がどれほどなのか、あなたの目で見て判断してほしいの」

三上は購入予定馬の評価という重要な役割について考えた。それは単なる騎乗以上の責任を伴うものだった。

「報酬は、評価セッション1回につき1000ドル。購入に至った馬については追加で2000ドル。レース騎乗は通常の騎乗料に勝利ボーナス10%。そして---」コーエンは少し緊張した様子で続けた。「あなたの評価で購入し成功した馬の収益から5%をシェアします。ただし、それには相応のリスクもありますが」

「なぜ私に?」彼は率直に尋ねた。「失敗したら大きな損失になりますよね」

コーエンは真剣な表情になった。「私は20年間、競走馬と関わってきました。あなたのような『馬の言葉』を理解する人間は、この業界で本当に貴重なの。今までの購入判断は私の経験と獣医学的知識だけに頼ってきた。それでも成功率は業界平均より良いわ。でも、あなたの能力が加われば...」

彼女は一瞬言葉を切った。「リスクはあるわ。あなたの評価で高額の馬を買っても活躍しなければ、その責任の一端はあなたにもある。でも、成功すれば、その見返りも大きい。これは純粋な慈善ではなく、ビジネスよ」

「それから、ターフスター号については、ジェイソン・パークも関心を示しているの」コーエンは少し考え込むように言った。「彼は若くて有望な馬を探しているみたいね。もしあなたがターフスター号の能力を高く評価すれば、彼に売却することも検討するつもりよ」

三上は静かに考え込んだ。彼の判断が大金の投資に影響するという責任は重かった。しかし同時に、若馬の才能を見出し、その成長を見守る機会は彼の本当の情熱だった。

「考えておきます」三上は答えた。

「ありがとう」コーエンは頷いた。「ちなみに、明日の朝、オカラのトレーニングセンターに行く予定なの。セールに出る予定の馬を見るために。もし時間があれば一緒に来ない?スカイピアサーもそこにいるから、あなたの意見が購入判断に直結するから、真剣に考えてみてほしいわ」

その晩、ベルモント近くのアパートで、三上はマイクとその日の出来事について話し合っていた。

「両方とも興味深い提案だな」マイクはウイスキーのグラスを手に言った。「パークの『サラトガ・パートナー』は週末のメインレースをカバーし、コーエンの『若馬投資アドバイザー』はセール前の馬の評価と若馬レース。時間的には競合しない」

三上は窓の外を見つめていた。遠くの夜空に星が瞬いている。

「どちらも騎乗技術を活かした提案だ」マイクは冷静に分析した。「ただ、コーエンの提案はリスクもある。君の評価で購入した馬が失敗すれば、評判にも影響するかもしれない」

「...それでも両方受けたい」

マイクは驚いた表情を見せた。三上からこのような積極的な言葉が出るのは珍しかった。

「理由は?」

三上はしばらく言葉を探してから答えた。「メインレースでの勝利と若馬の才能発掘。どちらも...私がここに来た理由だ。責任は重いが、それだけの価値がある」

マイクはゆっくりと頷いた。三上の目に宿る決意を見て、彼は何か重要なことが起きていると感じた。

「それから、パークとコーエン、二人とも『ターフスター号』という馬に言及していた」三上は静かに付け加えた。「何か関係があるのかもしれない」

「なるほど」マイクは興味深そうに言った。「パークがコーエンの若馬に関心を持っているということは、彼らの間にはすでに何らかのビジネス関係があるのかもしれないな」

「分かった。明日、両方との面会予定をすぐ入れよう」マイクは立ち上がった。「『サラトガ・スペシャリスト』と『若馬投資アドバイザー』。どちらも三上光輝にふさわしい役割だ」

翌朝、三上はコーエンとともにフロリダ州オカラのトレーニングセンターを訪れていた。セールに先立ち、コーエンの旧知のトレーナーが特別に施設を案内してくれることになっていた。

「これがジム・ライアンのセンターよ」コーエンは広大な敷地を示した。「彼は私の長年の友人で、ファスティグ・セールに出す前の馬を見せてくれるの。通常、外部の人間には許可されないことだけど、私の獣医としての評判と彼との信頼関係のおかげね」

彼らはまず、若い栗毛の牡馬のいる馬房に案内された。

「このコがスカイピアサー、セールに出る予定の一頭よ」コーエンが説明した。「血統は良いけど、まだ小さくて、評価が分かれている。でも私には何か可能性を感じるの」

施設主のライアンが近づいてきた。「彼にはいくつか気になる点があってね。でも、騎乗してみると素晴らしい反応を示すんだ」

コーエンは三上に向き直った。「珍しいことだけど、ジムが許可してくれたわ。三上、この馬に乗ってみてくれない?正式なブリーズアップでは見えない部分を教えてほしいの」

三上は深く頷いた。これは特別な機会だった。彼はゆっくりと馬に近づき、その反応を見極めた後、騎乗した。小さなトレーニングトラックを一周し、馬の動きや反応を念入りに確認した。

30分後、三上は馬から降り、静かに意見を述べた。

「体は小さいですが、骨格に問題はない。反応が良く、バランスも取れている。何より、学習意欲がある」彼は少し考えてから付け加えた。「25万ドルまでなら価値はあります」

コーエンはメモを取りながら頷いた。「大きな投資判断になるわ。あなたの意見は非常に重要よ」

次に、彼らは同じ施設内にいるターフスター号の馬房へ向かった。コーエンが現在育成中のこの馬は、すでに調教での成績が良かった。

「ターフスター号は私たちの育成プログラムの一部よ」コーエンが説明した。「まだ若いけれど、素晴らしい才能を持っているわ。パークがこの馬に興味を示しているの」

三上はターフスター号を慎重に観察し、その動きに注目した。馬は自信を持って三上に近づき、知的な目で彼を見つめていた。

「素晴らしい馬だ」三上は静かに評価した。「自信と才能が備わっている」

コーエンは満足そうに微笑んだ。「そう思うでしょ?パークには、この馬がサンフォード・ステークス(G3)で戦えるレベルかどうか、特に気になっているのよ」

三上は静かに頷いた。彼はターフスター号の中に確かな可能性を見出していた。

「私と契約してくれる?」コーエンは期待を込めて尋ねた。「あなたの評価が私たちの投資判断に大きく影響するわ。もちろん、その分の見返りは保証するけど」

三上は責任の重さを感じながらも、黙って頷いた。

 

同じ日の午後、三上はパークのアクセレレーターの調教を見学していた。パークと共に芝コース脇に立ち、3歳馬の流れるような動きを観察する。

「彼はサラトガのコースに完璧に適応している」三上は静かに評価した。

「そう思っていました!」パークは興奮した様子で言った。「彼にはサラトガ・スペシャリストの騎手が必要なんです。週末のレースだけでも構いません。契約していただけますか?」

「今朝、コーエン博士のターフスター号を見てきました」三上は静かに言った。「素晴らしい若馬です」

パークの目が輝いた。「そうですか!彼女からも話は聞いていましたが、あなたが評価するとなると...」彼は一瞬考え込んで続けた。「もし契約してくれるなら、ターフスター号の購入も本格的に検討しますよ。コーエンからの購入で、サンフォード・ステークスに出走させたいんです」

三上は馬から目を離さず、静かに答えた。「はい、契約します」

 

その夕方、バックサイドのコーヒーショップで、三上はマイクと契約書に目を通していた。「サラトガ・パートナー」契約と「若馬投資アドバイザー」契約。どちらも彼の7〜9月という限られた滞在期間を最大限に活かすよう設計されていた。そして何より、どちらも騎手としての本業を最優先するよう配慮されていた。

「うまくいくと思うか?」三上は珍しく不安を見せた。「特にコーエンの契約は責任が重い」

「確かにリスクはあるよ」マイクは率直に認めた。「君の評価で高額馬を買って失敗すれば、責任の一端は君にもある。でも、成功すれば大きな見返りがある。これはただの騎乗契約以上のものだ」

マイクはコーエンの契約書の条項を指さした。「ここを見てごらん。君の評価で購入した馬が重賞を勝てば、特別ボーナスがある。活躍馬の収益からの5%シェアも魅力的だ。これは単なる報酬以上の、パートナーシップだよ」

三上は考え込むように契約書を見つめた。「パークの契約はシンプルだが、コーエンのは複雑だな」

「でも、どちらも君の本質に関わる」マイクは言った。「パークとコーエン、二人とも君の特別な能力を真に評価している。そして何より、この二つの契約は騎手としての君を尊重している」

「それに、興味深いのはパークとコーエンの関係だ」マイクは付け加えた。「パークがコーエンのターフスター号に興味を示していることから、彼らの間にはすでにビジネス上のつながりがあるようだ。それが君にとってどう働くかは、今後の展開次第だろうね」

三上は慎重に、しかし決意を持って二つの契約書に署名した。これからの夏、彼はサラトガの中心で二つの道を歩む。メインレースでの勝利と、若き才能の発掘。どちらも彼の本質---「馬の声を聞く」騎手としての真価を問うものだった。そして何より、どちらも大きな責任を伴うものだった。

「準備はいいか?」マイクが尋ねた。「明日からは忙しくなるぞ」

 

三上は窓の外、夕陽に染まるサラトガの景色を見つめながら、静かに頷いた。この夏が、彼のアメリカ競馬人生における新たな章の始まりになることを、彼は確信していた。

翌朝、三上はパークのアクセレレーターで朝一番の調教に臨んでいた。馬は彼の指示に完璧に反応し、強い信頼関係の片鱗を見せ始めていた。

調教を終えると、厩舎エリアでコーエンが待っていた。「お疲れ様。素晴らしい仕上がりね」と彼女は言った。

「明日、ファスティグ・セールに行くわ。スカイピアサーの購入交渉をするつもり」コーエンは言葉を続けた。「あなたの評価に基づいて25万ドルまでのオファーをするわ。それと、パークがターフスター号に本格的に興味を示しているわ。彼も明日、馬を見に来る予定よ」

三上は静かに頷いた。彼のサラトガでの日々は既に始まっていた。週末のグレードレースという公の舞台と、若馬への投資という裏の舞台。騎乗技術と馬を見抜く目、その両方が試される夏が、今、動き出したのだ。

 

 

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