(前後編に割れたともいう)
クラス対抗戦当日。
試合会場の第2アリーナは全席満員。会場入り出来なかった生徒や関係者はリアルタイムモニターで観戦するらしい。
そんな中俺は、何故か刀奈達生徒会の手伝いをさせられていた。前の外史では無かったぞ。
「陸君おつかれ~」
やっとすることがなくなって観客席に行こうとしたら、廊下で刀奈が手を振っていた。
「俺、生徒会に入った覚え無いんですが?」
「いいじゃない、虚と本音ちゃんだけじゃ回らないのよ。しかも今年は、男性操縦者がいるってことで各国のお偉いさんも観戦しに来てるし」
学園外から来たらしい連中の案内もしたが、あれがそうだったのか。
「その言い方だと、いつもは来てないってことですか」
「ええ。陸君も覚えてると思うけど、対抗戦の後にあるトーナメントなのよ。来賓の方々が来るのって」
「そんなのもありましたね」
それが何の因果が変わったのか、今回は対抗戦からぞろぞろとお偉いさんがやって来たわけか。ま、俺は出ないんだが。その分、一夏一人に熱い視線を受け止めてもらおう。
「そんじゃ俺は、観客席に行きますね。楯無さんはどうします?」
「私はちょっと野暮用にね」
「ああ、乱入者への対応ですか」
たぶんというか、間違いなく来るんだろうなぁ、束印の無人機が。
で、簪に頼まれたら刀奈は嫌とは言えないし、これから迎撃準備を整えるんだろう。
「というわけで……はいっ」
「……?」
両腕を広げて何してるん?
「これから頑張るお姉さんに、エネルギー注入のハグ」
「公共の場で何させる気ですか」
「はよはよ」
「おいおい……」
そういうところ、やっぱ簪と姉妹だよ。と言いつつ、結局は刀奈の背中に腕を回すのだった。
「はふぅ……❤」
「エロい声出すなって」
「もっとギュッてしていいのよ? 胸やお尻も触っていいのよ?」
「やめぃ」
訂正、簪以上に理性外れてんなぁ! 少しドキッと来たぞチクショウ!
これ以上は危険だと判断して、非常に、ひじょぉぉぉに残念だが、グイッと刀奈を引き剥がした。
「あぁん、もっと陸君を感じてたかったのに~」
「ただでさえ簪が俺のこと『自分のもの』してるのに、今のを誰かに見つかったらもっと事態がややこしくなるんですよ」
「私達が3人部屋の時点でバレてるでしょ、色々」
「決定的な証拠になるって言ってるんです」
「陸君、私のこと嫌い……?」
「その質問は卑怯」
演技だって分かってるのに、上目遣いに目を潤ませられると……
仕方ない、頭も撫ぜてやろう。
「あはっ♪ よーし! 陸君から元気もらったし、今度の対抗戦が無事に終わらせるわよ~!」
俺に頭を撫ぜられてハイテンションになった刀奈は、アリーナの出口に向かってスキップをしながら消えていった。なんだろう、俺もチョロいのか?
『まもなく、クラス対抗戦第1試合を開始します』
「おっとやべっ」
確か簪は第1試合から出番だし、見てなかったなんてことになったら絞られる。(意味深)
ーーーーーーーーー
ピットの中で、私はレッド・スコルピオの最終チェックをしていた。とはいっても、昨晩陸ががっつり確認したし、実際今確認しても何も異常はない。
「私の出番は第1試合から。対戦相手は……凰さんかぁ……」
前世では無人機の乱入があって中止になったけど、今回はお姉ちゃんが頑張ってくれるから中止にはならない。この世界での凰さんがどれぐらいの強さか、きちんと確認しよう。
『そんなこと言って~、本当はメメントモリを叩き込みたいだけでしょ~?』
『否定はしない』
『あっ、否定しないんだ……』
ちょっとシャーリィ、どうしてドン引きした声なの?
とにかく、最初は凰さんに先手を譲って、どんな動きをするか見ようかな。
『第1試合の出場者は、アリーナへ入場してください』
アナウンスが入り、私はアリーナへ入賞するため、レッド・スコルピオの出力を……落とした。
『面倒だよね~、学園の外から来た連中にデュアル・コアを知られないように、1機分の出力しか出さないとか』
『仕方ない。デュアル・コアもそうだけど、GNドライヴの存在もまだ知られるわけにはいかない。知られたら、きっとうるさい連中が出てくる』
『『情報開示しろ~!』って?』
『うん。倉持とか倉持とか倉持とか』
『カンザシ達、ホントそのクラモチって連中嫌いだよね』
GNドライヴについてはきっちりシールドしてあるから、GN粒子の光が漏れてバレる心配はない。けど、念のためGNファングも今回は使わないつもり。
「はぁ……凰さんをGNファングでタコ殴りにしたかったなぁ……」
そんな愚痴を聞こえない程度の声量で漏らしながら入場すると、正面にはIS『甲龍』を纏った凰さんが。
「ちょっとぉ! どうしてアンタが4組の代表なのよ!? あの男じゃないの!?」
開口一番、そんなことを怒鳴られるとは思わなかった。
勝手にそっちが勘違いしただけなのに、どうして私が責められなきゃいけないの?
「ま、まあいいわ! アンタを倒して、一夏もボコしてやるんだから!」
私の視線を受けてバツが悪くなったのか、青龍刀の切っ先をこっちに向けて宣言することで、さっきのことを無かったことにするようだ。なんだかなぁ……
「分かりました。それと先に言っておきます」
「何よ?」
怪訝な顔をする凰さんに、私は右腕を突き出し、3本の指を立てた。
「3手。3手譲ります。どうぞ好きなように仕掛けてきてください」
「なっ、なぁ……!」
うん、言ってみたかった、このセリフ。そして凰さんの顔が真っ赤に染まっていく。
「いい度胸じゃない……」
ガタガタと青龍刀を持つ手が震え、怒り狂った視線を私に向けるのと同時に
――試合開始のブザーが鳴った。
「ぶっとばしてやるわぁ!」
ブザーと同時に、凰さんが突っ込んできた。まずはあの青龍刀で攻撃してくるようだ。
――ガキィィン!
「やるじゃない!」
「当然」
私も夢現を展開して斬撃を弾く。まずは1手。
「でも、隙ありよ!」
凰さんの攻撃を弾いて隙が出来たと思ったのか、空いていたもう片方の手にも青龍刀が展開される。
そっか。敢えて試合前に1本しか展開してなかったのは、二刀流を隠し玉にするためだったんだ。でもごめんね。
――ガキンッ!
「知ってた」
「なぁ!?」
初撃を弾いたタイミングを狙った青龍刀の追撃は、夢現の石突部分に弾かれた。2手目。
「くぅ! でもこれなら!」
後方に飛んで距離を取った凰さんのIS、その肩の横に浮いている棘付き装甲が私の方に向けられる。
「食らいなさい!」
――ドォン!!
空間に圧力をかけて砲身を生成、その時生じた衝撃を砲弾として撃ち出す衝撃砲『龍咆』。砲身も砲弾も見えないのが特徴のこの武装、甲龍の切り札とも言えるこれを撃ってきたのは正しい判断だと思う。けど
「残念」
「こ、これを躱すの!?」
まさか不可視の砲撃を回避されるとは思っていなかったのか、凰さんの足が驚きで止まる。それ、完全に悪手だよ?
「これで3手」
(織斑君やオルコットさんみたいに尖ったところのない、平均的な強さ)
結論、ただの初期凰さんだった。当たり前なんだけど。
「それじゃあ、私も動くね」
そう宣言すると、私は夢現を拡張領域に仕舞って
――ドンッ!
「へっ?」
『
「凰さん、お疲れ様」
――ガッ!
「あがっ!」
「そして、さようなら。メメントモリ、起動」
「おごぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
赤黒い光と、絶対防御を抜けて脳天を揺さぶる衝撃を浴びせられ、言語化出来ない叫びをあげる凰さん。バイザーを確認すれば、甲龍のSEがみるみるうちに減っていく。そして――
『甲龍、SEエンプティ。勝者、更識簪』
私の勝利が宣言された。うん、まずは1勝。
刀奈可愛い。
オリ主がチョロくなるのも仕方ない。でも一番は簪、それは変わらないです。
鈴ちゃん公開処刑
もう簪のセリフが強者のそれなのよ……でも書いてて楽しかった!(退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
次回こそ、刀奈活躍回にしたいです。