前半一夏パート、後半オリ主パートとなっております……が、なんか前半パートが長いな……
クラス対抗戦の決勝が終わってからの記憶が曖昧だ。気付けば校舎の屋上で、フェンスにもたれ掛かっていた。
(負けた、んだよな……)
更識さんのレッド・スコルピオ。俺はあの機体から発射されたミサイルの嵐にボコボコにされ、あっさりとSE切れになった。
鈴を倒したあの右手、あれに注意すれば俺にも勝ち目があるって思っていたのがそもそもの間違いだった。
「薙刀型の武装は見たけど、荷電粒子砲にミサイルだもんなぁ……初見殺し過ぎるだろ」
口に出して愚痴ってみたものの、最初から手札を全部見せる奴なんていないもんな。俺の白式みたいに雪片弐型だけって機体の方が珍しいだろうし。
――ギィィ
「なんだ、まだこんなところにいたのか」
「千冬姉……」
「織斑先生だと……いや、今はいいだろう」
屋上の出入口から現れた千冬姉は、俺を一瞥すると隣に立って空を見上げた。
「千冬姉」
「なんだ」
「俺、最初は対抗戦で陸に勝つ気でいたんだ。あいつも俺と同じように、4組のクラス代表にだと思ったから」
「そうらしいな。ちなみに凰も同じ勘違いをしていたそうだ。揃って馬鹿者が」
「うぐっ!」
ば、馬鹿者って……確かに陸にもクソデカ溜め息つかれたけどさぁ……
「そ、それで、更識さんがクラス代表だって聞いた時、優勝出来るかもって思ってたんだ……」
「いや無理だろ」
「ぐはぁっ! そ、そんなはっきり……」
「は~~~~~……」
ち、千冬姉もクソデカ溜め息かよっ!? もうちょっと弟の気持ちを慮って(ギロッ)いえ、何でもないです……
「お前のことだ、大方『白式と零落白夜があれば』などと考えていたんだろう」
「……」
「図星か」
「だって、あの単一仕様能力で千冬姉は第1回モンド・グロッソに優勝したんだろ? だから……」
――スパァァァンッ!
「あいたぁぁ!?」
こ、ここで出席簿アタックが来るのかよ!?
「大馬鹿者め。オルコットとの模擬戦から妙に調子付いてると思ったら、そんなことを考えていたのか」
まったく……と言いながら、片手は腰に、もう片方の手で頭を抱える千冬姉。
「一夏、零落白夜は出せば勝てる魔法の武装なんかじゃないんだぞ」
「そ、そりゃそうだけど……でも、白式の能力を合わせれば――」
「は~~~~~……」
ま、またクソデカ溜め息……
「この際はっきり言ってやる。一夏、お前は2つほど思い違いをしている」
「思い違い?」
「そうだ。まず1つ目……お前は弱い」
「おごっ!」
ほ、ホントはっきり言われた……。
「本来であれば、お前は代表決定戦の時点でオルコットに負けるはずだった」
「なっ、なんでだよ!? 真耶さっ、山田先生の特訓で、俺は強くなったんだ! それがあの試合……!」
「そこで思い違い2つ目だ。お前、あの時は陽炎に乗って戦っただろう? そして今回は白式に乗っていた」
「そ、そうだけど、それが何なんだ?」
「白式は欠陥機だ。総合的な性能は陽炎の足元にも及ばん」
「はぁっ!?」
な、なんだよそれ!? だって陽炎は第2世代で、白式は第3世代だろ? 白式の方がいいに決まって……あっ
「……もしかして、簡易最適化機能?」
「ほう、よく知っていたな。いや、更識か宮下に聞いたか?」
やっと要領を得たかとばかりに笑うと、腕を組んだ千冬姉がこっちを見た。
「お前はISに関して圧倒的に経験不足だ。本来であれば、代表候補生にまでなったオルコットに勝てる道理はない。それを補っていたのが陽炎の簡易最適化機能というわけだ。実際白式に乗り換えた時、違和感を感じただろう?」
「……」
心当たりはある。あの時は単純に、世代も開発元も違う機体に変えたからだと思っていた。けど、もしかして……
「なんてことは無い。陽炎の補助が無くなって、元のお前に戻っただけだ」
「しかも雪片弐型しか武装が無い上、使用にSEを消費する零落白夜を積んだ白式では、山田先生との特訓で得た戦闘パターンが使えない。それが私が白式を欠陥機と言った理由だ。ピーキー過ぎて、どう考えても素人が乗るべき機体じゃない」
「し、素人……」
「事実だろう? そもそも『零落白夜があれば』だったか。全盛期の私のように、零落白夜を使いこなせると思っていたのか? 片腹痛いわ」
「ぐぉぉぉ……」
ぐぅの音も出ないぐらいにボッコボコにされた。
つまり今の俺は、機体の補助も特訓の成果も失った状態ってことか……しかも新しい機体は欠陥機で、もし今のままセシリアと再戦したら今度は負ける可能性が高いのか……
「だが――」
突然肩を叩かれたかと思ったら、俺を諭すような優しい笑みをした千冬姉の顔が目の前にあった。
「幸いお前には、3年という時間がある。もしお前が強くなりたいというのであれば、これから精進しろ」
「……そうすれば、俺は強くなれる?」
「たぶんな。それはお前の努力次第だ。それと、お前が強さを求めようと鍛錬に費やす時間があるのと同様に、他の連中にも同じだけの時間がある。意味は分かるな?」
笑みが消えて真剣な眼差しになった千冬姉に、俺はしっかりと頷く。
「……セシリア達に白式で勝ちたかったら、皆以上の努力をしろってことだろ?」
「そこまで分かっているなら、これ以上私から言うことは無いな」
『風邪を引く前に寮に戻れよ』と最後に声をかけると、千冬姉は出入口のドアの向こうに消えた。
そして千冬姉の姿が見えなくなると同時に、俺は情けなさで大きく溜め息をついた。
セシリアという格上に勝った全能感で、俺は天狗になってたようだ。それを認識した上で、明日から俺はどうすればいいか――
「真耶さんに相談しよう」
素人の俺がどう考えをこねくり回しても、いい案なんか出るわけがない。さっそく時間を取ってもらうために連絡を――
――ギィィ
「やっと見つけたわよ!」
「鈴?」
メールの送信を押した直後、俺を見つけた鈴が走り寄ってきた。
「まったく、アンタに言うべきことがあるっていうのに、探すのに苦労したわよ」
「言うべきこと? あっ、勝負の決着のことか?」
対抗戦が始まる直前に取り決めた、負けた方が勝った方の言うことを1つ聞くってやつ。
「それはもういいわ。どちらにしろ、あの更識とかいう眼鏡女にあたしもアンタも負けたわけだし」
「だな……」
そこだけは鈴と一緒に溜め息が漏れた。鈴も中国の代表候補生だったんだろ? それを倒すって、更識さんはどれだけ運がいいんだよ?
「でもそれじゃないってことは、どうして俺を探してたんだ?」
「フフッ、一夏にとっていい提案をしてあげようと思ってね!」
「提案?」
なんか自信満々にしてるが、同じ腕組んでも千冬姉とは雲泥の差だな。……何がとは言わないが。
「一夏、アンタの周りに模擬戦の相手なんていないでしょ」
「いや、そんなことはないぞ。箒とかセシリアとか……」
「骨董品の打鉄と遠距離専用機じゃないの。アンタはあの刀しか武装が無いんでしょ? だから近接戦が出来るあたしが付き合ってあげるって言ってんのよ!」
どうよ! とか最後に言ってるが、う~ん……
「遠慮しておくわ」
「そうでしょそうで……はい? な、なんでよ!?」
「いや俺、山田先生に特訓をお願いしたから……」
端末を見せると、そこには『もちろんいいですよ! 代表決定戦の時と同じように、みっちり扱いてあげますからね❤』とさっきの返信が。
「……」
「一夏ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うぇぇぇぇぇっ!?」
ちょおまっ、一部とはいえISの無断展開はまずっ、せ、青龍刀をぶん回すなぁぁぁぁ!!
ーーーーーーーーー
「模擬戦やだよぉ……」
「ふぅ……やっと着いた」
生徒会室から放心状態の簪をおぶって、やっと寮の部屋に戻ってきた。
簪自体は重くない、というか軽い方だから体への負担は大したことないんだが、部屋に着くまで周りの視線がな……今更か。
「この世界でのクラス対抗戦は、恙なく終わったな」
「そうね。無人機の乱入も私が食い止めたし、簪ちゃんには悪いけどベストな結果で……あっ」
おい刀奈、なんだその『あっ』って。
ベッドの上にポーイされた簪も刀奈の方を見る。俺達の視線に耐えられなかったのか、刀奈は気まずそうな顔で
「あ、あはは~……撃破した無人機のISコア、持ってきちゃった」
その手には、握り拳大の球体が……おい。
「お姉ちゃん、織斑先生に渡さずに持ってきちゃったの?」
「あぅぅ……」
「おいおい……よく織斑先生に何も言われなかったな」
いくらあの人でも、敵から鹵獲したISコアをそのままにするとは思えないんだが。
「それは……あっ」
……おいぃ?
「まさか、お姉ちゃん……」
「……」
「む、無人機のこと、織斑先生に伝えそびれたわ♪」
「アホんだらぁぁぁ!」
――パンッ!パンッ!パンッ!
「痛ぁぁぁいっ! り、陸君! ガチのおっぱいビンタは痛すぎるからぁ! ぬぉぉぉ!」
「胸やお尻にばっかり栄養を流すから。反省して」
――パンッ!パンッ!パンッ!
「うひぃぃぃ!? 簪ちゃん、それダメッ! お尻ぺんぺんとかまずい癖に目覚めちゃうぅ!」
5分後、俺と簪の折檻を受けた刀奈はベッドの上で、尻を天高く突き出しながらピクピクしていた。
「それで、これどうするの?」
簪が手に持ったコアを見つめる。本来なら、織斑先生に報告して渡すべきなんだが……
「ダメよぉ……それしたら私、織斑先生にも折檻されちゃう……」
イヤイヤと尻を振る刀奈がエロいのはいいとして、ならどうしたもんか……
すると、簪がいいこと思い付いたとばかりに手を打った。
「なら、お姉ちゃんのミステリアス・レイディに積もう」
「ファッ!?」
「なるほど、それもアリだな」
ミステリアス・レイディに積むってことは、刀奈が責任もって管理するってことにもなるしな。
「ちょっと二人とも、本気!?」
「デュアルコアの実装経験はある。だから任せろーバリバリ」
「やめて!?」
「なら、今から織斑先生に渡しに行く?」
「分かったわよぉ……積みますからぁ……」
刀奈が折れた。楽して強くなれるんだから、悩む必要も無いだろうに。
「というわけで、ミステリアス・レイディはデュアルコアになりましたとさ」
「とさ~」
「……」
翌日、デュアルコアの改修を終えた俺とのほほんが生徒会室で報告すると、虚さんが宇宙猫になった。
「お嬢様……」
「ちょっと陸君!? 本音ちゃんはともかく、どうして虚がいる前で言っちゃうのよぉ!?」
――バッ! ギュッ!
「お嬢様ぁぁぁぁぁ!」
「があああああああ!」
虚さんのアームロック、もう俺を超えてるんじゃねぇか?
「無人機なんて、私聞いてないんですが!? そもそも一体どこの世界に、ISコアをネコババする人がいるんですか!」
「こ、ここにいるぞぉ!」
「ふんっ!」
――ギュゥゥゥッ!
「んぎぃぃぃぃぃぃ!」
「うわ~、お姉ちゃん本気だ~……」
のほほんすらドン引きするほど、虚さんの追撃は強力だった。
さて……こうなってくると、あの紫兎がどう出てくるかが問題だな。
さすがに無人機の、468個目のコアも束が確認できる信号を発してるだろうし……んん?
「宮下君、どうかしましたか?」
「ああいえ、何でもないです」
虚さんに怪訝な顔されたが、それどころじゃないかもしれん……!
思い出してみよう。この外史に来る直前、ロキとの会話を。
『同じIS世界だし、3人が持ってる機体は持ち込んでいいよ』
『マジでか』
『そうなると私達3人分、員数外のISコアが流入するってことになりません?』
『うん、気付かれたらすごい面倒事になりそう』
『そこは大丈夫! ちょこっと因果を弄って、中国に分配される分を3つ減らしておくから♪』
『……俺達が困らないからヨシッ!』
そして数えてみよう。俺達があの真っ白世界から持ってきたISを。
陰流(シングルコア)
ミステリアス・レイディ(シングルコア)
レッド・スコルピオ(デュアルコア)
そんじゃ、計算してみよう。
467(元々の数) - 3(中国からボッシュートした数) + 4(シングル2+デュアル1) =
……最初からバレバレだった?
(この外史来る前の俺の馬鹿野郎ぉぉぉぉぉ!!)
一夏の反省会タイム。
代表決定戦が順調だった分、今回で千冬姉にボコってもらいました。
鈴にボコられたのは……自業自得で。
お姉さん、ネコババしちゃう。
そしてそのままデュアルコアに。たっちゃんがドンドン強くなるぞ~(暗黒笑顔
次回からトーナメント編へ。
ラウラはいつも通りとして、シャルの立ち位置をどうしよう……
なお、本文中の『更識さんはどれだけ運がいいんだよ?』発言ですが、
(A:一夏、B:代表候補生、C:簪)
「俺がセシリアに勝ったのは運(機体)が良かっただけ」(A>B)
↓
「セシリアと同じ代表候補生の鈴に、更識さんは勝った」(C>B)
↓
「だから更識さんは、俺と同じかそれ以上に運がいい」(C≧A)
みたいなとんでも理論が展開されています。
(IS抜きでも最強だとは、露程も思っていない)
たっちゃんの出番なんだけど……
-
もっと多い方がいい
-
今と同じぐらいでいい
-
もっと少なくてもいい
-
会長の水着を見せろー!