ところがぎっちょん!
06/09追記:
神様パートを全カット。
さらにサブタイも変更。
理由等は活動報告にて。
昼休みからずっと、僕の頭の中はグチャグチャになっていた。
(スパイをやめる気はあるか、か……)
何度も頭の中で再生される、もう一人の男性操縦者が言っていたこと。
その一言が忘れられず、気付けば放課後になっていて、寮の部屋に戻っていた。
「はぁ……シャワー浴びて落ち着こう」
ルームメイトになった一夏がいない室内で独り言を溢すと、脱衣所に入る。
「んっ……コルセット、だいぶ慣れてきちゃったな……」
男装するために常に付けてるからか、最初に比べて窮屈感は減った気がする。けど、やっぱりまだきついや。
服を全て脱いで、脱衣所からシャワールームに。そして少し熱めのお湯を浴びると、少しずつ頭が覚醒していく気がする。
そこで、また宮下君のことを思い出す。
「本当に、お父さんと顔見知りなのかな……?」
あまりに自信たっぷりに言ってたからついつい信じちゃったけど、こうして思い返すと疑問に感じてしまう。
デュノア社はフランスを代表するIS開発企業だ。他国の、しかも一学生が知り合いってあり得るの?
いや、常識的に考えればそうだけど
「宮下君は、僕のことも含めて色々知っていた。きっと、その情報を調べた人がいるんだ。そしてその人を経由して、お父さんと話ができる」
そうなると、考えられるのは……更識さん? そういえば、日本には倉持技研の他に、如月重工って名前のIS企業があったはず。そこの代表が……そうだ、更識楯無。
(そうか! 如月重工はデュノア社と取引実績があって、その関係で会社のことを調べて、僕のことを知った。そして更識さん経由で宮下君に。つまり宮下君は更識の、延いては如月重工のメッセンジャーなんだ)
ようやく納得できた。そして安心した。そんな後ろ盾があるなら、きっと『助けてやる』と言った彼の言葉に嘘はないはずだ。
(なら、僕は……本当にスパイなんかやめて、普通の女の子として……!)
気付けば僕はすごく上機嫌になり、鼻歌まで歌っていた。
それがいけなかったんだろう。
――ガチャッ
「……」
「……」
全く警戒せずにシャワールームを出た僕と、ボディソープの詰替用を持った一夏と目が合った。
「き……」
「きゃあああああああああっ!!」
――バチーンッ!
「ぶはぁっ!」
お互い固まって10秒近く、僕は悲鳴を上げながら一夏にビンタをかましていた。
「えっと……ごめん、ね。痛かったでしょ?」
「い、いや、俺もノックせずに入っちまったし、お互い様……で、許してくれないか?」
学園指定のジャージを着た僕と、制服のまま正座する一夏。どちらもそこから声を掛けれずにいた。
「しゃ、シャルルは、女の子、だったんだな」
「うん……騙しててごめん」
「いや、謝って欲しいわけじゃなくて……ああもう!」
突然頭をわしゃわしゃと掻き始める一夏。少ししてまた僕の方を向くと
「どうしてそんなことを? IS学園に入るだけなら、わざわざ男装なんかしなくても……」
「……そう、だね。聞いてくれるかな、僕のことを」
僕がデュノア社長と愛人の間に出来た子であること。
母親が亡くなった2年前にデュノアに引き取られたこと。
第3世代機開発の遅れから、会社が経営不振に陥っていること。
だから一夏と専用機のデータを盗むため、男装して学園へ送り込まれたこと。
あと、僕の本当の名前もね。
「……これからシャルルはどうなるんだ」
「一般的に言えば、本国に連絡が入って強制送還。代表候補生の地位と専用機を剥奪された後、スパイ容疑で牢屋行きかな」
「そんなの……!」
「本来なら、ね」
「へ?」
一夏の目が点になる。本当なら、僕が言った通りになるはずだったんだ。けど……
「宮下君が何とかしてくれるかもしれない」
「陸が?」
昼休みのことを話すと、一夏はところどころ納得したり首を傾げたりしていた。ど、どうして首を傾げるの?
「陸が更識さんと、如月重工と繋がりがあるのは確かだ。俺も陸本人から聞いたからな。けど本当にうまくいくのか?」
「え?」
「シャルルの父親は、娘にスパイをさせるような奴なんだろ? そんな奴が、素直に陸達の話を聞くのか?」
「え、あ……」
一夏の疑問を聞いて、スッと体の熱が冷めた。
そうだ、一夏の言う通りだ。それに、如月重工がデュノア社と取引しているってことは、もしかしたらデュノア社のやり方に対して強く言えない可能性も……
指先が震え出す。崖から落ちそうになった時、腕を掴まれて助かったと安堵したら、急に手を離されたみたいな感覚に陥った。
「僕、は……」
「……ここにいろ」
「え?」
「もし陸達が失敗しても、ここにいろ」
一夏はそう言うと、ごそごそとポケット中を漁り出した。そして出てきたのは、学生手帳?
「特記事項第二、本学園における生徒はその在学中において、ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」
見せられたページには、確かにそう書いてあった。
「……一夏」
「ん? なんだ?」
「よく覚えてたね、特記事項なんて」
「そこかよ……」
ああっ! ごめん! そんなに落ち込むとは思わなくてつい!
「とにかく、この学園にいれば最低3年間は大丈夫ってことだ。その間に他の方法を探せばいい」
そう結論付けると、一夏の手が僕の肩を叩く。
「大丈夫だ、必ず俺が守ってやる」
――キュンッ❤
「あ、あ……///」
「シャルル?」
「い、いいいや! 何でもないよ!?」
「?」
首を傾げる一夏を何とか誤魔化して、今日は一度解散、そのままお互い寐ることにした。したんだけど……
(俺が守ってやるって! 守ってやる、って……///)
布団に潜り込んでも、頭の中からそのセリフが離れない。
(僕、もしかして一夏に、ひ、一目惚れ……しちゃったのかな……?)
僕を鳥籠から助け出してくれる白馬の王子様は、宮下君じゃなくて一夏だったのかもしれない――
ーーーーーーーーーーーーー
「今回、そちらに迷惑を掛けてしまった。申し訳ない。如月重工の更識社長や宮下君がIS学園に在学していると知っておきながら、この始末」
正座から解放されて数時間後、PCの画面にはデュノア社長であるアルベール氏が頭を下げるシーンが映っていた。
「頭を上げてください、アルベールさん。娘さんの件はこちらが勝手にやったことですし。それにいくら顔見知りとはいえ、ただの商売相手に自社の裏事情に関して頼るわけにもいかないでしょう」
「いやいや! 更識家からいただいた情報で、社内の反体制派を一掃出来そうなのです。これで娘の、シャルロットの心配も無くなる」
心底安堵した表情を浮かべるアルベールさん。どうやらこの世界でも、娘が反体制派の人質にされないよう立ち回っていたようだ。娘に憎まれようとも、だったか。今後親子の仲が修復されることを祈っておこう。
「それと……」
安堵の表情が消え、気まずそうに視線を逸らす。けれど手は怒りでプルプル震えていた。
「まさか反体制派の連中が、研究用に買った陽炎を横流ししていたとは……!」
そう、そこがヤバいところでな。
日仏が研究目的でお互いの第2世代機を輸入し合ったことは、以前説明したと思う。その時にラファールと陽炎を交換したわけだが、契約では『輸出元の許可なく第三者に売却・譲渡しない』と書かれていた。
まあつまり、契約不履行かましたわけだ、デュノア社は。まだ未遂のスパイ容疑より、こっちの方が数倍ヤバい。さらに男装の件はIS学園っていう機密空間で行われたから誤魔化しが効くだろうが、横流しは、なぁ?
「世間にバレたらやばいですね」
「お願いします! 横流しされた陽炎は何としても回収します! ですから公表だけは……!」
「大丈夫ですよ、アルベールさん」
「え?」
刀奈の優しい声に、机に額を擦りつけていたフランス紳士が顔を上げる。
「契約不履行の件を公表する気はありません。何でしたら、もう1機お渡ししてもいいですよ」
「え? は? え?」
あまりにもデュノア社に有利過ぎる話に、アルベールさんの目が点になる。もちろん、ちゃんと理由はあるんだが。
「その代わり……ウチとデュノア社で合弁会社を建てません? フランスに」
「合弁会社、ですか?」
「ええ。この際ですから、アルベールさんには真意をお伝えするんですが……」
画面越しなのに、まるで内緒話をするように声量を下げる刀奈。それにアルベールさんも乗って、画面に顔を近付ける。
「正直、日本政府と倉持技研にウンザリしてまして」
「今更ですな」
アルベールさん、ばっさり一刀両断。
どうやら各国の、特にIS関係の企業や官僚にとっては、倉持が政府の紐付きなだけで代表企業とされていることは公然の秘密らしい。
仮に知らない人間も、IS学園の生徒になれば卒業までに打鉄と陽炎の両方に乗って『あれ? 陽炎の方が良くない?』と気付くそうだ。
「我が社もフランス政府から援助を受けている身、そういう意味では自社利益だけで動ける如月が羨ましいですが」
「その分、やっかみがすごいですよ。特にあの……」
「ああ、『セブンライト・レイモンド』ですか」
刀奈だけでなく、アルベールさんまでウンザリした顔になった。
言わなくても分かるだろう? 倉持技研のレイモンド、奴の国外でのあだ名だ。本人は『七色に輝く私の威光』とか言ってるが、実際は『(実家の)七光り』って意味だ。
そしてここまでの話から、ははぁとアルベールさんが納得した声を上げる。
「なるほど。万一日本を見限った際の、"駆け込み寺"を作っておこうと」
「
刀奈も理解を得られて、満足気に頷く。
前の外史でも倉持はウザかったが、この世界ではその比じゃない。いざとなったら話にあった合弁会社を経由して、フランスに逃げちまおうって計画だ。
ちなみに刀奈達の両親である、槍峻さんと琴音さんの承諾済みだ。というか『日本政府のアホ共には愛想が尽きた。ここらで欧州に鞍替えするのも一興だ』なんて言ってたし。
「分かりました。むしろこのような好条件を提示していただいて、断る馬鹿はいないでしょう」
「では、後日正式な契約を」
シャルロット・デュノアの件を話していたはずなんだが、最後の方は合弁会社の話になってたな。
「そして、ここからは個人的な内容になりますが……宮下君」
「はい」
アルベールさんに呼ばれ、刀奈と位置を入れ替わる。
「君が売ってくれた『第3世代機の設計図』、素晴らしいよ!」
満面の笑みで称賛された。やったぜ。
「ああでも、俺から手に入れたってバラさないで下さいよ? 特に――」
「分かっているよ。『日本政府と倉持には』だろ?」
「そういうことです」
今回も、デュノア社に設計図を売り飛ばしましたよっと。
しかも前回の主要部品だけでなく、第3世代機『リィン・カーネイション』の設計図、そのまんまをだ。早けりゃデュノアの奴、臨海学校で新機体に乗れるんじゃね?
そして気になるお値段だが、なんと据え置き価格20万ユーロ!……後で刀奈達からお小言をもらったのは内緒だ。
「ちなみに合弁会社が立ち上がったら、そちらの開発のサポートも」
「なんだって!? 更識社長! 一刻も早く契約を!」
「落ち着いてください。陸君も、特大の餌をアルベールさんの口に捻じ込まないの」
「も、申し訳ない……つい」
「すみません。代わりに『リィン・カーネイション(仮)』で使用する武装の情報を送りますね」
「うっひょぉぉぉぉぉぉ!!」
アルベールさんの豹変に、刀奈と簪は苦笑い。やっぱりこの人、経営者じゃなくて俺と同じ技術馬鹿だわ。
シャル、一夏に惚れる(強制)
う~む、これは酷い。(自分で書いといて
如月重工、逃げる準備を始める。
そしてワールドワイドに知れ渡る、レイモンドのヤバさ。
先に書いておきますが、シャルは一夏に一目惚れしているので、今後オリ主とくっ付くことはありません。
ここまで来ると、ラウラだけが原作順守状態ですね。頑張れ次回。