毎度おなじみの第4アリーナ。代替コアの性能を確認するため、ミステリアス・レイディを纏った刀奈の前には、俺と簪とのほほんの他に……
「見学させてくれ」
「如月重工の第3世代機、興味があるんだよね」
デュノアはともかく一夏、お前見学してる余裕あんのか? そんで……
「前代表としての興味と、教員としての職責による監督だ。文句は聞かん」
腕を組んで仁王立ちの織斑先生。
まあいいけど、巻き込まれないでくれよ?
「りったーん、計測器の準備できたよ~」
「おう。それじゃ楯無さんよろしく」
「了解よ。……う~ん、本当に大丈夫なのよね?」
首を傾げる刀奈だったが、気を取り直してランス型武装である蒼流旋を展開した。
「ふっ!」
そして20mほど上空まで飛び上がると、蒼流旋の周りにアクア・ナノマシンが集まり出す。
「行くわよぉ! ミストルテインの槍!」
全ての防御用ナノマシンを攻撃用に転換する、一撃必殺の大技が放たれた。
――ドッ! グオォォォォォォッ!
「な、なんだこれ!?」
「こんな爆発の仕方、普通しないよ!?」
「これは……」
見学者の3人は、開いた口が塞がらないようだ。
爆発って普通球状に広がるもんだが、代替コアによってナノマシンの精密操作が行われた結果、ミストルテインの槍が着弾した地点を中心に、円柱状に爆発の威力が上空へ上がっていく。
「ちょっとりったん、これマズいかも~」
「うん、マズそう」
「奇遇だな、俺もそう思ってる」
真顔で爆風の行方を目で追っていた俺達の予想は、嫌な方向で当たっていた。
――バリィィィィィンッ!
「「「ちょぉぉぉぉぉぉ!?」」」
「「「ああ、やっぱり……」」」
気化爆弾4個分に相当する破壊エネルギーが一点集中で昇っていった結果、アリーナ上空に張られていたバリアと衝突、あっさりとぶち抜いていった。
「陸く~ん……」
通信機から聞こえる刀奈の声も、ほんのりと非難めいているような。
「宮下」
「はい」
「今から生徒指導室に来い」
「……うい~っす」
まさか無人機でなく俺達がバリア破壊しちまうとは……さすがの俺も申し訳なくは思う。反省も後悔もしないがな!
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アリーナの片付けをのほほんに押し付けつつ、俺は織斑先生に生徒指導室へ連行されていった。
「ところで、どうして更識妹までいる?」
「セットなので」
「……まあいいだろう」
あまりにも当たり前みたいに言うから、織斑先生も諦めたようだ。ドカッとパイプ椅子に座ると、疲れたような顔で俺を睨みつける。
「宮下、分かってるとは思うが、あれにリミッターを付けろ。拒否権は無い」
「分かってます。あれを試合で使ったらトンデモナイことになりますって」
あんなの直撃したら、あっという間にSE切れ。それどころか、下手すれば絶対防御抜けて死にかねない。
「それと宮下、お前に倉持技研から――」
「バカめと言っといてください」
「は?」
「バカめだ!」
「言えるか馬鹿者!というか、内容を聞いてからにしろ」
織斑先生が呆れたようにため息をつくが、正直聞くまでも無いんだよなぁ。
「どうせ『お前の技術を全部寄こせぇ!』とか言ってきたんでしょ?」
「なんだ、分かってて言ったのか……ちなみにそれを言ってきた奴はレイモンドと名乗っていた」
「「先生、ご愁傷様……」」
「なんで私が生徒に憐れまれているんだ……?」
解せぬって顔してるけど、
「そういうのは俺個人でなく、如月重工に言ってくださいって」
「それは伝えた。そうしたら『ついでに宮下陸の身柄も寄こせ! 男性操縦者は全て、我が倉持技研が占有して然るべきなのだ!』とも言っていたな。狂人か?」
「狂人ですよ。連中からしたら、白式を使ってる一夏も自分達の管理だとか思ってるんじゃないですか?」
「よし、殺そう」
「殺すのは無しですって。ブラコン発症しないでください」
――スパァァンッ!
「口には気を付けろよ?」
諫めたら出席簿アタックを食らった。解せぬ。
「私が言うのもなんだが、お前達は倉持に目の敵にされている。政府と繋がりのある倉持にだ。もし絡まれるのが面倒だと思うなら、少し自重しておけ」
「倉持が無能なのが悪いです」
「一夏に専用機渡しておいて、データ取りばかりでフィードバックの一つも出来ないのが悪いです」
「お前らぁ……」
先生呆れてるけどさぁ、マジで連中無能すぎるんだって。これで如月が自重したら、『IS発祥の国』返上することになるぞ? フランスに逃げ込む準備も整えてる最中だし、場合によってはそれも現実になるか。
「まあいい。ところで話は変わるが、宮下は専用機を持っているな?」
「本当に話が変わりましたね。ありますよ、陽炎のカスタム機ですけど」
「つまり第2世代機か。そうなると、デュノアのラファール・リヴァイヴと同性能と見ていいな」
「(陰流が第2世代機……知らないって怖い)」
「(レッド・スコルピオ以上に外への露出が無かったからな。知らないのも無理ないだろ)」
一人納得している織斑先生を見ながら、簪と苦笑しあう。
刀奈や簪ほどじゃないが、俺の陰流も武装増し増しだからな。俺がその気になれば、
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「2人とも、おかえりなさい。何か有益な話はあった?」
「いいや、気分が悪くなる情報はあったが」
「倉持が相変わらずって話」
「ああ、それは気分悪くなるわね……」
寮のベッドでゴロゴロしてた刀奈だったが、簪の言葉で露骨に嫌そうな顔になった。そもそも倉持が好きな奴、おる?
「ところで本題に入るんだけど、ラウラちゃんは放置にするの?」
刀奈が言ってるのは『ボーデヴィッヒの専用機に秘密裏に積まれている『VTS』をそのままにするのか?』って話だ。
VTS、ヴァルキリー・トレース・システム。名前の通り、過去の
条約により研究・開発・使用全てが禁止されてるんだが、なぜかそれがボーデヴィッヒの専用機に搭載されていて、前外史ではトーナメントでそれが起動したのを一夏が止めたってことがあった。
どうして禁止されてるかって? ISの力で無理矢理動きをトレースするからだよ、搭乗者の安全とか全く気にせず。
「確認はしてないけど、十中八九積まれてるでしょうね」
「うん、私もそう思う。前と同じように、織斑君に協力して撃破する?」
「俺はそれでもいいと思うんだが、刀奈は違うのか?」
「ラウラちゃんがVTSの犠牲者になる理由、あんまり無いと思うのよね~」
「まあ、確かに」
刀奈の言うことも一理あるか。存在自体知らなかった前回ならともかく、今回は先に手を回しても……
~~~♪
スマホの着信音が鳴った。これは俺のスマホだな。
「誰からだ……あん?」
「誰だったの?」
簪の問いに応えるように、通話ボタンを押してさらにスピーカーモードに。
『やっほ~、元気してるかい?』
「ロキさん?」
そう、声の主は馬鹿神ロキだった。
「何か用か? こっちはそこそこ順調なんだが」
『そうなの? それは良かった。
「「「とばっちり?」」」
『そうなんだよ。まったく、聞いてくれよぉ……』
なんだか愚痴を聞かされそうな気がするが、一応聞くだけ聞いてやるか。
『事の発端は、そっちの時間で昨日、あのフランス娘だ』
「フランス娘……シャルロットちゃん?」
『そうそう。そのシャルロットとやらを見たシギュンが、暴走しちゃって』
は? 暴走? どういうことだ?
『シギュン曰く『
「俺ぇ!?」
「陸君が織斑君のハーレムを阻害って……」
いやいや、どういうことだよ?
「あっ」
「簪は分かったのか?」
「うん。つまりデュノアさんは、織斑君じゃなくて陸に惚れてるってシギュンさんは思った」
「はぁ!?」
『カンザシ正解。それが事実かどうかは分からないけど、少なくともシギュンはそう思ったらしい。で、ここからが問題なんだけど……』
おいおい、一体何したんだよ……
『織斑一夏しか見えなくなるよう、洗脳をね……』
「「「はぁ!?」」」
今度は3人揃ってハモっちまった。おまっ、神が介入するの禁忌だから、俺達がいるんじゃねぇのか? 洗脳ってガチ介入もいいとこじゃねぇか。
『しかもタイミング悪く、用事があってこっちに来てた別世界の連中も混ざって、大乱闘に……』
「いや何があったよマジで」
なんでも、デュノアを洗脳しようとするシギュンをロキが羽交い絞めにしてたところ、ギリシャ神話のカロンって奴が
『織斑一夏とかいう奴、ハーレムとか許されん! 洗脳して弾とかいう奴のケツでも掘ってろ!』
とか言い出し、こっちもガチ介入しようとしたところを他の仲間に止められたんだとか。
「カロン……冥界の河ステュクスの渡し守ね」
「渡し守、要は三途の川の船頭ってところか」
『その認識で大体合ってるよ。で、途中からカロンとシギュンの取っ組み合いになって、そこに2人の考えに賛同する連中が加勢して……』
「大乱闘、と」
『うん……最後はオーディンが出張って、全員をグングニルでぶん殴って両成敗』
「主神まで出てくるとか、ラグナロクかよ」
こんな理由で神々の戦争勃発とか、シャレになんねぇぞおい。
『それで、ここからが本題なんだけど……そのシャルロット何某に、シギュンの流れ弾が……』
「え?」
「つまりデュノアさん……」
「洗脳された、のか?」
お~いおいおい、それはさすがに……
『いやいや! 流れ弾って言っても、大した威力は無いはずなんだよ!? ちょっと対象、つまり織斑一夏に対して惚れっぽくなるぐらいで……』
「いや、それでもアカンだろ」
『だよねぇ……それが原因でシギュン、数百年の謹慎処分食らっちゃって。あとカロン達がどうなったかは知らないよ。グングニルでボコった後、
「そ、そうなんだ」
「す、数百年ですか……」
数百年って聞くとトンデモナイが、神々の数百年だからなぁ。まあ、俺達がこの世界にいる間は出て来れないだろう。
「それで、これからはロキさん一人で?」
『いや、オーディンが『お前一人だとサボりそうだから、補佐を付ける』って』
「ロキさんぇ……」
『カンザシさん? そんな蔑みの視線を感じるような声色やめて? んっ、んんっ! というわけで、今回はその補佐の紹介も兼ねてるんだよ』
『どうも、『セシラブッ!!』運営のクロトと申します』
「せ、セシラブ?」
簪が固まる。刀奈と俺も理解不能で固まった。なんだその、恋愛ゲームのタイトルの略称みたいなのは。
『彼女は最近まで別世界の管理業務をしててね。それが最近落ち着いたんだって』
『ロキ先輩が一人で全部の外史を管理出来てたら、私も異動せずに済んだのですが』
『それは言わないお約束でしょチクショウメェ!』
『汚い言葉使わないでください』
「いや、こっちを置き去りにして漫才するなよ」
まーた変な奴が現れたが、少なくとも禁忌上等のシギュンよりはマシ……なんだよな?
『ちなみに私も意識誘導を行った経験があります。主神からの命令でしたが』
『うっそぉ!?』
「おいロキ、洗脳系の介入はポピュラーらしいぞ」
『だだだ、大丈夫! 僕が担当してる間は洗脳系の介入は無しだから! マジで! 信じて!』
ここからでも土下座してる姿が想像できるぐらい、ロキの声は切羽詰まっていた。こいつお調子者だけど、こういう場面では嘘つかないのは知ってるからなぁ……
「分かった。よっぽどのことが無い限り、そっちからの介入は無しで頼むな」
『もちのろん! 仮に介入することになったら、事前に連絡するからさ! それじゃあまたね~!』
最後は捲し立てるように早口になると、ロキ側から通話が切れた。
それにしても、神々介入しまくりじゃねぇかよ。俺達現地作業員の存在価値って……
「陸、諦めよ。むしろ神々がそんな自由なら、私達も自由に振る舞う権利がある」
「簪……なるほど、そういう考えもありか」
「2人とも~、お願いだからお姉さんの胃が痛むようなことは止めてね~」
そう言いつつ、お前だって結構無茶してるだろ。デュノア社との合弁企業だって、最初に言い出したの刀奈だし。
「なんかすごくカロリーの高い話だった。晩御飯少なめでいいかも」
「あら、もうこんな時間。それじゃあ学食に行きましょうか」
「おう」
刀奈がベッドから起き上がったタイミングで、俺と簪も椅子から立ち上がって部屋を後にした。
昨日の日替わりはサバだったから、今日は肉が食いたいな、肉。
「でも、デュノアさんが陸のことを狙う泥棒猫になる可能性を潰したなら、シギュンさんグッジョブ」
「おいバカやめろ」
簪、間違ってもその考えは捨ててくれ。色々危ねぇから。
……あれ? なんか忘れてるような……まあいいか。
たっちゃん、無人と同じことをしてしまう。
気化爆弾4個分ってサイズにもよるけど、バリア飽和出来そうだと感じたので。
この世界でも倉持は倉持、はっきり分かんだね。
そんな倉持(レイモンド)と接点を持ってしまった千冬姉に、敬礼!
(胃痛の原因が増えた模様)
せっかく前回全消ししたのに、また神様パート書いてるじゃないですかヤダー!
リクエストがあったからね、仕方ないね☆(自分のやらかしの尻ぬぐいである事実から目を逸らす
そして『セシラブッ!!』読み返したら、結構介入してたなこの女神。