お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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第21話 PON & PON

 学年別トーナメント当日。

 前外史と同じく、今回も全生徒が慌しく走り回り、雑務や会場の整理、各国政府関係者を始めとした来賓の誘導などに駆り出されていた。

 俺も俺でご多分に漏れず、生徒会長である刀奈の手伝いをさせられていた。開会式が終わってすぐに、大急ぎで男子用の更衣室まで走らされたところまで同じとは……

 

「宮下君、大丈夫?」

 

「な、なんとかな」

 

 男装継続中のデュノアが心配そうに声を掛けてきた。一方一夏は我関せずで、更衣室に付いているモニターを見ていた。

 

「さっきまで案内役してたから知ってるけど、錚々たる面子だな」

 

「3年にはスカウト、2年には1年間の成果の確認のために、それぞれ人が来ているからね」

 

「ふーん、ご苦労なことだ」

 

 モニターに映る各国政府関係者、研究所員、企業エージェント達を説明するデュノアに対して、一夏はあまり興味がなさ気だ。

 

「一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいでね……」

 

「だろうな。オルコットや凰の敵討ちはいいが、空回りしないことを祈っておく」

 

「あはは……一夏も、あまり感情的にならないでね」

 

「ああ、分かってる」

 

 デュノアに指摘されて、一夏はやっとこっちを向く気になったようだ。

 覚悟が決まった顔と言えば聞こえはいいが、さてはて、どうなることやら……

 

「あ、対戦相手が決まったみたい」

 

 観客席を映していたモニターが、トーナメント表に切り替わった。

 前外史では一夏の獲物を、俺と簪が分捕る形になっちまったが、今回はどうだ?

 

『Aブロック第1回戦 更識簪、宮下陸 vs ラウラ・ボーデヴィッヒ、織斑一夏』

 

 ……んん~?

 モニターになぜか、ボーデヴィッヒと一夏の名前が並んでるんだが? っておい!

 

「なんだこれ!? 一体どうなってんだよ!?」

 

「俺が聞きてぇよ! なんでお前とボーデヴィッヒがペアになってんだ!?」

 

「お、おかしいな。締め切り前日に申請書を出したはずなのに……」

 

「そうだ! シャルルと一緒に……あっ」

 

 おい、あってなんだ。

 

「……一夏?」

 

「え~っと……あのあと、山田先生に『ここの記載、間違ってるんで修正して再提出してくださいね~』って締め切り日の朝に言われて……」

 

「まさか……一夏……」

 

「だ、出し忘れてた……」

 

「一夏のお馬鹿ぁ!」「このボケナスゥ!」

 

――ゴンッ! パァンッ!

 

「ぶはぁ!」

 

 俺のチョップとデュノアのビンタが炸裂し、一夏は後方にダブルアクセルをしながらすっ飛んでいった。

 おいこれ、本当にどうすんだよ……というか山田先生も一夏のこと知ってんだから、その場で修正させるとかしろよぉ……

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「さすがにこれは、想定外……」

 

「俺もだ」

 

 アリーナで簪と合流した俺の目の前には、銀髪眼帯チビッ子こと、ラウラ・ボーデヴィッヒがいた。その隣には、先ほど綺麗な2回転半ジャンプを見せた一夏も。

 言うまでもなく、2人の間からは険悪な雰囲気が漂っている。抽選機も、どうしてこの2人を組ませたのやら……

 

「とりあえず、ボーデヴィッヒさんは私が相手をするってことでいい?」

 

「ああ。陰流のベースを陽炎に代えたところで、俺の戦闘スタイルがボーデヴィッヒと相性最悪なのは変わらんからな」

 

 ボーデヴィッヒのISに搭載されてるAIC、あの慣性を0にすることで動きを止める武装は、接近戦主体の俺や一夏にとって天敵だからな。

 

「そんじゃ、俺が一夏の相手をするってことで。大丈夫だとは思うが、ボーデヴィッヒの相手はよろしく」

 

「うん。久々にGNファングの動作確認ができる」

 

「言い出しっぺの俺が言うのもあれだが、ほどほどにな」

 

 フランスに逃げる準備が整いつつある所為か、刀奈から正式にGN武装の使用が解禁されていた。だから今回動作確認込みで、ボーデヴィッヒ戦でGNファングを使おうという話になったわけだ。

 そういったわけで、簪のレッド・スコルピオに搭載されている2基のGNドライヴ、その片方を限定稼働させている。もしGN粒子を見られても、その全容が分かる奴はまずいないだろう。紫兎以外には。

 

「分かってる。陸も、油断し過ぎて織斑君に倒されないように」

 

「無論だ。少なくとも"今の"一夏に倒されてやるつもりはない」

 

 お互いニヤッと笑い、相手側に向き直ったところで

 

 

 試合開始のブザーが鳴ると同時に、俺と簪は別々の目標に向かって加速した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「俺の相手は陸か!」

 

「おう、申請書出し忘れた馬鹿野郎に、体罰教育してやるから覚悟しておけ」

 

「うぇぇ!?」

 

「ちなみに、お前とペアじゃなくなってデュノア、めっちゃ落ち込んでたぞ」

 

「あ~……確かにそれは悪かった。他の女子生徒と組むことになって、不安だもんな……」

 

「体罰追加で」

 

「なんでぇ!?」

 

 やっぱりどの外史であろうと、一夏の朴念仁は変わらんか。むしろ、それでよく山田先生とあんな関係になったなおい。

 

「というか、陸のその武装……」

 

「自分のよりデカくて卑怯とか抜かすなよ? その分お前の雪片弐型より小回り効かねぇんだから」

 

 俺が展開した、2mを優に超えている大太刀『長船(おさふね)』に驚く一夏を後目に、上段八双に構える。

 

(オン)()()支曳(シエイ)()()()……天清浄(しょうじょう)、地清浄、人清浄、六根清浄」

 

 摩利支天経を唱え終え、再度一夏の方を見る。

 

「征くぞっ」

 

「うっ、おぉ!?」

 

 一気に間合いを詰めた俺に驚きながらも、一夏が雪片を構える。

 

――ガキィィィンッ!

 

「おもっ、てぇ……!」

 

「そりゃ、見た目通りだから、な!」

 

「ぐあっ!」

 

 初撃を防いだのまでは良かったが、まだまだ反射神経に体が付いていけてないようだ。

 昔織斑先生と一緒に篠ノ之流を習っていたとはいえ、IS学園入学までの間に年単位のブランクがある一夏。対して俺は、隙間時間とはいえタイ捨流の鍛錬を続けている。その差は結構デカいぞ?

 

 初撃振り下ろしは防がれたが、そこから角度を付けての切り上げで一夏の体勢が崩れる。すかさず左手に短刀を展開して、白式の装甲外に突き立てる。

 

「ぐぅ! そ、その短刀、陽炎の……」

 

「この陰流は陽炎のバリエーションだ、使えて当然だろ」

 

「そうなると、槍とかあのハンマーみたいのまで出てくるのかよ……けど、そう簡単に負けるわけにはいかねぇ!」

 

「おう、掛かってこいや」

 

 雪片を両手に構える一夏に、俺も再度長船を両手持ちにして迎え撃った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 ドイツ本国で得た事前情報では、日本にIS開発企業は2つあった。織斑一夏の白式を作った倉持技研と、世界シェア2位の大企業である如月重工。

 その内、倉持技研は眼中になかった。織斑一夏の専用機を用意した企業だからと色眼鏡で見ていたことは否定しないが、それも今奴の戦いを見て間違いでは無かったと確信した。

 

(あの宮下とかいう男が乗る機体、第2世代機相手に苦戦している時点で教官の面汚しだ。だがそれ以上に、専用機が欠陥機すぎる。いやむしろ、欠陥同士お似合いか)

 

 そう心の中で嘲笑っていられたのは、試合開始のブザーがなって1分もしない内だった。

 

「はぁっ!」

 

――ドドドドドドドォォンッ!

 

(くそっ! 倉持技研は論外として、如月重工の試作機がこれほどとは……!)

 

 奴のISから飛んでくる無数のマイクロミサイル――しかも、第3世代型兵器であるマルチロックオン・システム搭載――の嵐。そして荷電粒子砲の連射に、私はAICを使えずにいた。

 AICで捕まえてしまえば、あとはイギリスや中国の奴等と同じように、ワイヤーブレードで切り刻んでやるものを……!

 

「ならばっ!」

 

 全力で距離を縮め、奴の懐に潜り込む。これならミサイルは使えまい。

 

「ふっ!」

 

「甘いっ!」

 

 上段から振り下ろされた薙刀をAICで止める。あとはプラズマ手刀で――

 

「ファング!」

 

「何!?」

 

 奴のスラスター部分から、何かが飛び出して……び、BT兵器だと!?

 

「ば、馬鹿な! イギリスのBT兵器が、どうして日本に……!?」

 

「そこ!」

 

「ぐっ、あぁぁぁぁぁ!」

 

 ビーム刃を形成したビットが(しかも10基も!)私に群がってきた。

 

「くそ……さっきから死角ばかりを狙って!」

 

 なんとか直撃は防げているが、SEは少しずつ削られている。このままでは……!

 

(このままでは……? まさか、負けるというのか、私は……!)

 

 如月重工の力を見くびっていた部分は、確かにあった。だが、しかし――

 

(私は負けるわけにはいかんのだ……!)

 

 

 

 

『どうして強いのか、か。……私には弟がいる。あいつを見ていると、強さとは何か、その先に何があるかが分かる時がある』

 

 かつて教官に尋ねた時の、わずかに優しい笑みに、気恥ずかしそうな表情に、心がチクリとした。

 

『いつか日本に来ることがあれば、会ってみるといい。だが、ひとつ忠告しておくぞ。あいつは――』

 

(違う! 私が憧れるのは、強く、凛々しく、堂々としている貴女なのに……!)

 

 許せない、教官にそんな表情をさせる存在を。認められない、教官をそんな風に変えてしまう弟を。

 

(決めたのだ。あの男を、私の力で敗北させると!)

 

 だからこそ、こんなところで負けるわけにはいかない、いかないのだ……! そのためには――

 

――力が欲しいか?

 

 私の中で、何かがうごめいた。

 

――汝、より強い力を欲するか?

 

 言うまでもない。力があるのなら、それを得られるのなら――!

 

 Damage Level …… D.

 Mind Condition …… Uplift.

 Certification …… Clear.

 

《 Valkyrie Trace System 》…… boot.

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 ボーデヴィッヒさんの異変に、私は攻撃を止めてファングを回収、距離を取った。

 

「何だありゃ……」

 

 陸と織斑君も手を止めてこちらの、ボーデヴィッヒさんから目が離せない。

 

『簪』

 

『うん』

 

 陸からプライベート・チャネルが来たけど、言いたいことはたぶん同じ。

 

『『VTSのこと忘れてたぁ!!』』 

 

 ロキさんからの連絡ですっかり忘れてた! ってうわぁぁぁ! やっぱり織斑君がイノシシ特攻始めちゃったぁぁぁぁ!




PON1発目。
参考書捨てちゃうワンサマーなら、プリントの提出忘れもしそう。しそうじゃない?
特に今回のような『未提出でも話が進む系』だとなおさら。

戦闘シーン。
割と前作の焼き増し感が……オリ主の相手も箒から一夏に代わっただけで、どっちも篠ノ之流だし。
ただ、一夏の『中学3年間のブランク』はどうしようもない。公式デバフなので。

PON2発目。
結局発動しちゃうVTS。それでも、最後は一夏の零落白夜でどうにかするんですがね、初見さん。
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