お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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サブタイ通り、色々ごった煮回です。


第25話 臨海学校前夜の色々

 臨海学校前夜、俺と簪はあれこれ荷物をまとめていたんだが、

 

「じゃじゃーん! ねぇ、どうかしら!?」

 

 先日買った水着を着た刀奈が、BGM(ただし口から出る)付きで現れた。

 ふむ……

 

「やっぱその水着で良かったな。あのヒモ水着だったらエロ過ぎて逆に萎えてた」

 

「つまり、今のお姉ちゃんはちょうどいいエロさ?」

 

「そうとも言う」

 

「そ、そう……///」

 

 からかい半分で褒めたら刀奈の奴、顔を真っ赤にして布団の中に潜って隠れちまった。

 

「陸、エッチ」

 

「あれ以外の模範解答、あるのか?」

 

 中途半端に褒めたら『もっとないのー?』と言われただろうし、褒めなきゃ褒めないで拗ねてただろうし。

 

「お姉ちゃんも、陸には何度も裸を――」

 

「ストォォォォップ!! 簪ちゃん! 違うのよ! それとこれとは違うのよっ!」

 

「わ、分かったから……あうっ、あうあうあう……!」

 

 スポーンっ! と制服に早着替えした刀奈が布団から飛び出し、簪の肩を掴んでシェイクしまくる。

 簪ー、今部屋に俺達しかいないからって、それ以上は色々アウトだぞー。

 

「はぁ……もしかして陸君、簪ちゃんもそんなエロい目で見てたの?」

 

「いや? 簪は可愛い系。刀奈はエロい系だから」

 

――ズビシッ!

 

「おうふっ!」

 

「陸、それは酷い」

 

 悪かったって。だから肋骨の隙間に指を入れるのはやめてくれ。それ地味に痛ぇんだよ。

 

「私はエロい系……/// ま、まあいいわ! 話は変わるけど、2人には前にも言った通り、夏休み中は忙しくなるわよ」

 

「不知火、だよね? その開発のため?」

 

「そうよ。とはいえ大元は陽炎ベースだから、そこまで大変でもないんだけど」

 

「確か陽炎のハード面を強化した上で、山嵐と春雷を載せるんだったか。春雷は同じもん付けて、山嵐は発射数を24発に抑えると」

 

「ええ。簪ちゃん以外に、48発の同時演算なんか出来ないでしょうし。ましてやシャーリィちゃん(コア人格)の補助なしで96発なんて、とてもとても」

 

 そりゃそうだ。単一目標に打ち込むならともかく、96発全弾独立稼働させるなんて無理無茶無謀。もしレッド・スコルピオ以外でやろうとしたら、イージス艦サイズの演算装置が必要になるだろう。

 

「それにしても懐かしいなぁ。俺が最初に作ったシステム、24発しか撃てなかったんだよな」

 

「そんなこともあったね。……出会って1日で、フレームしかない状態から打鉄弐式が完成するとは思わなかったけど」

 

「あったわねぇ……私も虚から報告を聞いた時、何の冗談かと思ったわ」

 

 2人が顔を会わせて『ねー』と姉妹仲良く納得していた。解せぬ。

 

「あ~、つまり夏休み中は春雷と山嵐のデータ吸い出し作業ってことか?」

 

「そうなるわね」

 

「なるほどな」

 

 それなら、ちょうどいいもんあったはずだ。え~っと……おっ、あったあった。

 

「ほい、これ」

 

「えっ、何このメモリースティック?」

 

 拡張領域から見つけた『探し物』を刀奈に渡す。

 

「陸、まさか……」

 

「簪は見たことあるよな?」

 

 そう、刀奈に渡した2つのメモリースティック。それは

 

「さっき話してた、春雷と山嵐のデータだ」

 

「ちょっとぉぉぉぉ!?」

 

 刀奈が絶叫、メモリースティック片手にプルプル震えていたが

 

「……如月のサーバーに上げておくわね」

 

 自分の端末に差し込んでポチポチし始めた。

 これで夏休み中の仕事が減ったな。よかったよかった。

 

「というか、まだ持ってたんだ」

 

「物持ちはいい方でな。まさかあの未完成データがまんま使いまわせるとは思わんかったが」

 

「アップロード完了っと……これは夏休み、南の島へ行く時間も取れそうね」

 

 データを送り終わった刀奈の目がキラーンと光る。そんなに気にしてんのか、臨海学校に付いていけないこと。

 

「当然よ! 私だって陸君と一緒に海で泳いだり、簪ちゃんと砂のお城作りたいのぉ!」

 

「IS学園に入学する前は、毎年してたよね」

 

「それはそれ! これはこれ!」

 

 まあいいけどな。不知火はもう手が掛からないし、デュノア社との合弁企業も順調に進んでるって話だし。アルベールさんも、この前通話した時に

 

『リィン・カーネイションも、近接武装を増やした方がいいだろうか? ラファール使用者をターゲットにしているから、どちらかといえば遠距離型になる予定なんだが……』

 

『そうですねぇ……既存のショートソードを二刀流にしたらどうです? それとパイルバンカー(シールド・ピアース)もダブルにして』

 

『それだぁぁぁ!!』

 

 と、前外史のカーネイションの武装を話したら脳汁ダバダバになってたし。

 

「陸君、その話私知らないんだけど」

 

「陸、正座」

 

 解せぬ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 陸達がわちゃわちゃしていた頃、頭を抱えている人間もいた。

 

「うあぁぁぁぁ……」

 

「所長、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫なわけあるかぁぁぁぁぁ!」

 

 名札が付いたISスーツに頭に水中眼鏡を付けた変態……もとい、倉持技研・第2研究所所長の篝火(かがりび)ヒカルノは、副所長の言葉に絶叫で返した。

 

「あの男は一体何考えてるんだ! というか、あいつを押し付けてきた上層部のバカヤロー!」

 

「それに関しては同意です。この前も、如月重工に対してやらかしたそうですし」

 

「あ゛あ゛んっ!?」

 

 全く知らない話に、切れ長の瞳だけでなく口調まで荒くなる。

 

「あのレイモンドが、如月重工にこんな要求書を送り付けたんですよ」

 

 渡された紙を受け取り読み進めてほんの数秒で、ヒカルノの手がプルプル震えて

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 大爆発した。

 

「どうオブラートに包んでも『お前の会社タダで寄こせ』って言ってるようなもんだろ! 誰が受けるんだよ誰が!」

 

 周囲からも『ヘンタイ』と認められるヒカルノが常識を語るほど、レイモンドの行動は常軌を逸していた。

 さらに如月側が問い合わせたところ、なぜか第1研究所の所長が

 

『子供のイタズラですな』

 

 と鼻で笑って突っ返したという。まるで『私には関係ありません』という態度で。如月側からしたら同じ倉持なのだから『関係ありません』は通じないだろうに。

 

「そもそも、私は何も知らされてないんだが!?」

 

「上層部も終わったこととして処理したようです。私もつい先日知りましたから」

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁ!! 白式の解析は遅々として進まない! 第1の連中は気付けば打鉄弐式の開発打ち切って、なんかこっちに混じって来る! 上層部は競合の如月重工に喧嘩売ってばっか! もう終わりだよこの会社ぁ!」

 

 言ってることは至極真っ当なのだが、外見がHENTAIなせいでイマイチ危機感を感じない光景である。

 そんな頭を搔きむしるヒカルノなんか知らんとばかりに

 

『ふはははははっ! 倉持の技術は世界ィィィィーーーー!』

 

 頭がイカれた男のクソデカ声が、数フロア離れたここにも届いていた。

 

「……如月重工に転職しようかな……?」

 

「その時はお供します。というか連れてけ」

 

 この2人が倉持技研を辞めるのは、時間の問題なのかもしれない。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 一方、イカれた男を送り込んだ政府側も頭を抱えていた、正確には、とある省庁が。

 

「やべぇよやべぇよ……」

 

 ISの登場からIS委員会の設立を経て、日本では『IS省』なる組織が設置された(後に各国でも、国内のISを管理する部門が作られた)。

 そのIS省の一部署が今、完全にお通夜状態となっていた。

 

 先日如月重工とデュノア社が合同で発表した、合弁企業設立の記者会見。しかも工場はフランス国内に作ると伝えられ、最初それを見た関係者の反応は

 

『なして?』

 

 だった。少なくとも国の補助無しで経営出来ている如月重工が、立て直しつつあるとはいえ落ち目気味のデュノア社と手を組む意味は何なのか。

 その後理由が推測出来る、出来てしまう情報を得て、このIS管理部門は悲鳴を上げた。

 

「倉持技研が如月重工に要求書を送った!? なんだこの要求!」

 

「あのレイモンド=澤和を倉持技研に送り込むとか、与党は何を考えてるんだ!?」

 

 官僚の間でもレイモンドのキチガイ振りは有名であり、そのキチガイが倉持技研に送られ、さらにそこで如月重工相手にやらかしたことを遅まきながら知ったのである。

 

「これ、下手したら如月重工が日本から逃げ出すんじゃね? 政府も政府で倉持や女権団の甘言に踊らされてるって話だし」

 

「でも逃げるってどこに……あっ」

 

 そして気付いてしまったのだ。デュノア社との合弁企業設立こそ、如月重工がフランスへ逃げ出す準備であると。

 

「何とか設立を止められないのか!?」

 

「無理ですよ! もう経産省が許可出しちゃいましたし!」

 

「なら、ISコアを回収……ダメだ! それで止まる連中じゃねぇよあそこは!」

 

 もし回収されるとしても、陸が代替コアを用意してそれを渡す予定なのだが。『コアが増えたところで、委員会の連中は気付かんだろ。束? もう468個目のことはバレてるだろうし、今更コアが発する信号が増えたところで、なぁ?』とのこと。

 そもそもそれを言ったら、ミステリアス・レイディにコアを追加した時点でバレている。

 

「もうダメだ……おしまいだぁ……」

 

 某野菜人の王子みたいにM字ハゲな部門長は頭を抱え、力無く天を仰いだ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 様々な場所が阿鼻叫喚となっている中、嬉しい悲鳴を上げている人間もいた。

 

「今日からテストパイロットを務める、野崎蓉子(のざき ようこ)です!」

 

「おう、話はお嬢から聞いてるよ。さっそくだが、アンタには"新型"に乗ってもらうぞ」

 

「はい!……新型?」

 

 日本の代表候補生を返上し、ついでに『打鉄弐式の開発凍結&代替機無し』と抜かした倉持技研の男をぶん殴った野崎は、如月重工の工場へ到着するなり工場長(現場叩き上げのおっちゃん)に連れて行かれるまま

 

「うっはー! 何この陽炎! 前に乗った機体とは全然違う!」

 

 不知火用にハード面を強化した陽炎に乗せられ、工場併設のアリーナ上空を縦横無尽に飛び回っていた。

 

「さすが代表候補生だっただけはあるな。そいつの最大速度で飛んでも体勢を崩さんとは」

 

「これでまだ完成してないんですよね?」

 

「ああ。その"試製・不知火"は陽炎のハード面を強化しただけでな。ソフト面の性能強化を入れて、武装を追加したら完成だ」

 

 陸や刀奈は口にしていなかったが、ハード面とともにソフト面も強化を図る予定であり、試算ではベースの陽炎と比較して10%の性能向上を見込んでいた。

 10%というと少なく感じるが、それだけ陽炎が高性能だったとも言える。それを(試験機とはいえ)第3世代機相手に証明したのが、現在白式(倉持技研)に乗っている一夏というのも皮肉な話であるが。

 

「もうこの時点で、打鉄弐式とは雲泥の差ですよ。いや、私が乗ってたあれ、素の打鉄とほぼ変わらなかったか」

 

「アンタも言うなぁ」

 

 ケラケラ笑いながら煙草に火をつける工場長(刀奈達がいない間、アリーナのみ禁煙解除)を後目に、野崎は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ってみたり、拡張領域内の各種武装をコールしてみたり。

 

「おっ、ちょうどいい。武装を展開してんなら、次はそっちの試験をすっか」

 

「はい!」

 

 工場長が端末を操作すると、標的用ドローンがアリーナ上空にゾロゾロと現れる。それを見て野崎はぺろりと唇を舐めると、近接武装の中からハルバードを両手に構えた。

 

「それじゃあ、行きます!」

 

 候補生時代より、充実した日々が送れそう。そう思いながら、スラスターを全開にした試製・不知火が標的ドローンに躍り掛かった。

 

 

「ん? サーバに何か上がったな。……荷電粒子砲とマルチロックオン・システムのデータ?」

 

 ……

 

「はえーよ若!」




前作の懐かしさに浸ってた結果がこれだよ。
そして今作のアルベール氏は、だいぶ壊れてます(オリ主に染まり過ぎたともいう)。

頭を抱える人達。
何も決めてないですが、今作はヒカルノさんの出番を増やしてもいいかも?

今回一番得した人。
候補生時代と比べて、確実に待遇は良くなってるはず。
話の流れ的にも、この人いないと如月側の進展が何もないという。


次回こそは、海に行きます。
さあ束、アームロックの時間だよ~♪
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