お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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整合性……? そこに無ければ無いですね


第28話 誰ぇ!? そして弱ぁ!

 臨海学校2日目。今日は各種装備試験運用とデータ取りってことで、1学年全員がISスーツを着てIS試験用のビーチに集合しているんだが……やっぱISスーツって、どっからどう見てもスクール水着だよな?

 

「陸、変なこと考えてない?」

 

「いや別に。海辺でISスーツ着てても違和感無いなって思っただけだ」

 

「それ、他の人の前で言ったらセクハラ」

 

「世知辛い世の中だ……」

 

 というかそれがセクハラになるってことは、世の女達もISスーツはほぼ水着だと思ってるってことだろ。

 

「まあ、それよりもだな……」

 

 視線を簪から向こう側に向けると、そこには一夏ハーレムの面々が……

 

「「「「「……」」」」」

 

「見事に萎れてるな」

 

「うん」

 

 専用機持ち5人とも、ガックリと項垂れていた。目に隈も無いから、寝不足ってわけじゃなさそうだが。

 

「嫁の部屋にたどり着けなかった……」

 

「山田先生と織斑先生のディフェンスを抜けなかったのよ……」

 

「ああなるほど」

 

 ボーデヴィッヒと凰の説明で納得がいった。と同時に、昨晩一夏は山田先生と二人っきりだったわけで……

 

「昨晩は、お楽しみでしたね」

 

「ささ、更識さん!?」

 

「何を動揺しているのだ……?」

 

「もしかして……」

 

「一夏ぁ……?」

 

「ひぃぃぃぃぃ!?」

 

 簪が火にガソリンをぶち撒けたことで、5人の視線(大炎上)が一夏に集中した。これから毎日一夏を焼こうぜ?

 なんてやってたら、織斑先生の眉間に皺が寄り始めたからこれぐらいにしておこう。

 

「それでは各班ごとにISの装備試験を行う。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

「「「はい!」」」

 

 織斑先生の号令に返事をすると、各自装備を取りに散開し始める。

 

「簪、俺達も専用パーツがあるんだっけ?」

 

「うん。一応送られてきてるけど……」

 

 前外史と同じ流れなら、ここから――

 

「ちーちゃ~~~~~~~~~~ん!!」

 

 ズドドドドド……ッ! と砂煙を上げながら、何かが……なんて濁す必要も無いな、うさ耳の変態がこっちに向かってくる。

 エプロンドレスの変態は目視出来る距離まで近付くと、織斑先生に向かってルパンダイブをかましてきた。

 

「会いたかったよちーちゃ――ぶへっ」

 

「うるさいぞ、束」

 

 ルパンダイブしてきた変態を、織斑先生はアイアンクローで迎撃。砂浜から足が離れ、プラーンプラーンしながらも、篠ノ之束は元気そうだ。

 そして妹の方を見ると、シュバッと手を挙げた。

 

「やぁ!」

 

「……どうも」

 

「何年ぶりかなぁ、大きくなったねぇ箒ちゃん。特におっぱいが」

 

――ガンッ!

 

「殴りますよ」

 

「殴ってから言ったぁ! しかも刀の鞘で殴ることないじゃん! ひどいよ箒ちゃぁん!」

 

 これが篠ノ之姉妹の挨拶なんだろうな。というか、ここにまで刀持ってきたのかよ。

 さて、前はあの流れに巻き込まれないよう、簪と隠れてたんだよな。……途中で強制指名されたけど。

 

「(それで陸、今回はどうするの?)」

 

「(……どうせ俺達の存在は知られてるんだし、隠れるのはやめておくか)」

 

「(それもそうだね)」

 

 束の考えが分からん以上、変に動く方が良くないかもしれんし。

 

――ヒュゥゥゥゥゥ……ズズーンッ!!

 

「うぉ!」

 

 簪と作戦会議してる間に、どうやら束から妹へのプレゼントが降ってきたようだ。文字通り上空から。

 んで、激しい衝撃と轟音を伴って落ちてきた金属の塊、その正面がぱたりと倒れると……

 

「IS……?」

 

 生徒の誰かが口にしたように、中には赤い装甲のIS『紅椿』が入っていた。

 

「じゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』! 全てのスペックが現行のISを超える、束さんお手製のISだよ!」

 

 自慢気に紹介してる束だが、気付いてないんだろうなぁ……俺や簪以外の全員が、篠ノ之に視線を向けてることに。

 先生方や専用機持ちは別にいいんだ。けど、他の生徒連中からは『身内贔屓+第4世代機=嫉妬』の視線がちらほらと。

 

「それじゃあ箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズを始めようか!」

 

「……それでは、頼みます」

 

「堅いよ~、実の姉妹なんだし、もっとキャッチーな呼び方で~」

 

「早く、始めましょう」

 

「ん~、まぁそうだね」

 

 ハートフル()な姉妹のやり取りから、束の顔が右方向に旋回し、俺達のいる方へ――

 

「……チッ」

 

 舌打ち!? あいつこっち見て露骨に舌打ちしやがったぞ!?

 

「よしっ、さっさと始めようか☆」

 

 そして何事も無かったかのように、空中投影ディスプレイを複数呼び出すと紅椿のフィッティング作業を始めたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 皆が紅椿と束に目が向けられてる間、俺と簪、そしてのほほんは陰流の専用パーツのテストを進めることにした。

 

「ね~りったん、かんちゃんも、あっち見なくていいの~?」

 

「篠ノ之博士のこと? あの人、聞いた話だと他人嫌いらしいから、私達が近付いてもいいことない」

 

「そうそう。それに俺達は俺達で、やるべきことが……あ~あ、オルコットがやられた」

 

「あ~……」

 

 俺が指さし、のほほんの視線の先では、オルコットが束にアタックして惨敗していた。

 『はぁ? 誰だよ君は』『うるさいなぁ、あっちいけよ』のダブルパンチを食らって、しょんぼり引き下がるオルコットに哀愁が漂う。

 そんなやり取りを見て、他の連中も下手に口を出さず、ただただフィッティングの様子を見るだけに留めていた。……一部、相変わらず篠ノ之に嫉妬の視線を向けてるのもいるが。

 

 さあ、そんなことより試験試験。

 

「まず最初は……輻射障壁か」

 

 レッド・スコルピオの右腕とは違い、輻射波動発生機構を背部に着けるタイプにしたものだ。

 

「しかもこれ、『どのISにも付けられる』んだよね~」

 

「おう、そこがこいつの肝だからな」

 

 のほほんが言った通り、アタッチメントを挟めばどの世代、どの国の機体にも付けられるのが売りなんだよ。

 今のところ他所に売る予定はないが、将来的には不知火の追加武装として発表し、最終的にはアタッチメント込みで売り出すつもりだ……刀奈がそう言ってた。(他人事

 コピー対策? こいつにもレッド・スコルピオの武装同様、ただコピーすると(抵抗器の偽装を見破れないと)爆発するトラップが実装されてるから、自分ごとレンチンしたければどうぞ? もしトラップに気付いたら、ウチ(如月)で雇うから連絡くれや。

 

「りった~ん、付け終わったよ~」

 

「おう、お疲れさん」

 

 俺は陰流に乗ったままだから、今回はのほほんに装着を丸投げしていた。そうは言っても、小さな段ボールサイズの装置を背部に付けるだけだしな。

 

「それじゃ簪、頼むわ」

 

「うん」

 

 俺が合図を送るとすぐに、簪が乗るレッド・スコルピオの荷電粒子砲『春雷』の砲口がこちらを向いた。そして

 

――ドゴォォォンッ!

 

――バシィィィィィッ!

 

 放たれた砲弾は俺の目前1mもない空間で、赤黒い光の壁に止められた。

 くは~っ、別外史で乗ってたナイトメアフレーム(暁 直参仕様)で慣れてるつもりだったが、ISだと大丈夫と分かってても怖ぇな。マジで止まるの目の前なんだもん。

 

「のほほん、計測結果はどうだ?」

 

「出力も含めて、当初のスペック通りだよ~」

 

「これなら問題ないね」

 

「よしよし。ん?」

 

 なんか視線を感じると思ったら、紅椿に興味津々だった面々が全員こっちを見ていた。

 

「陸も更識さんも、ずっとテストしてたのか?」

 

「そりゃそうだ。そのためにここに来たんだし」

 

「いや、そうなんだけど……」

 

 当然のことを言ったら、一夏の眉がへの字になった。

 一夏としては『ISの生みの親である篠ノ之束お手製の最新機に興味ないのか?』って言いたいんだろう。うん、興味ない。だって前外史で見たし、今の篠ノ之が機体性能を十全に発揮出来ないのも知ってるから。(ネタバレ

 

「それに、篠ノ之博士って他人嫌いって聞いてたから」

 

「ああ、それもそうか……」

 

 簪のフォローで、一夏も納得したようだ。そういえば良かったのか。

 

「それで、篠ノ之の機体、フィッティングは終わったのか?」

 

「ああ、さっき慣らし運転も終わった。陸は見てなかっただろうが、すごかったぞ! 刀からレーザーがぶわーって!」

 

「お、おう」

 

 語彙力が消滅している一夏の説明に、苦笑いしか出ねぇ。言いたいことは伝わってるからいいけど。

 

 しかしそうなると、そろそろ山田先生が『銀の福音』の暴走を伝えに来――

 

 

――ドゴォォォォンッ!!

 

 

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

「な、なんだ!?」

 

 突如、砂浜の一部が爆発した。ファッ!?

 

「束っ、貴様また何か――!」

 

「違う違う! 束さんじゃないよ!?」

 

 織斑先生に詰められた束が、必死に頭を横に振っていた。

 事態を把握出来ず右往左往する生徒達と違い、専用機持ちはすぐにISを展開して乗り込む。そして先に乗っていた簪は、

 

「センサーに感! これは……ISです!」

 

「なんだと!?」

 

 織斑先生が沖に顔を向け、他の面々もそれに倣う。すると、海上を高速で飛んでくるISが視界に入った。って、ありゃあ……

 

「陸、あれって」

 

「ああ……陽炎だ」

 

 あのフォルム、間違いなく如月重工が販売している第2世代機の陽炎だった。けど、展開してる武装はウチのじゃねぇな。

 つーかどこのどいつだよ、ウチの商品使って喧嘩売ってきた阿呆は!

 

「あちこちに売ったから、絞り込めない」

 

「だよなぁ……」

 

 知っての通り、今各国は第3世代機の開発をしているわけで、つまり世界的には第2世代機が主力ってことになる。

 そんで、欧州とアフリカはラファール、南北米大陸はアメリカのファング、そしてアジア圏(中国など自国開発出来る国は除く)はウチの陽炎を使っているんだよな。

 だから今回の襲撃者はおそらく、ASEAN+オセアニアのどこかってことだ。……絞り込めるか!

 

 その陽炎が砂浜まで到達すると、持っていたスナイパーライフルを俺に向けてきた。

 

「神聖なるISを穢す咎人に死を!」

 

「こいつ、まさか女性権利団体――!?」

 

 無駄口を叩く前に、動くべきだった。そう後悔した時には、相手は引き金を動かした後だった。

 

――ドゴォォンッ!

 

――バシィィィィィッ!

 

「なんだと!?」

 

「あっぶな……!」

 

 赤黒い光がライフル弾を止め、ぽとりと砂の上に落とした。危なかった~!

 

『ま、マスター、気が緩み過ぎです!』

 

『わりぃ、助かった』

 

 どうやらソフィアーが自己判断で輻射障壁を動かしたようだ。マジで感謝。

 

 さてと、それじゃあ今度はこっちの番――!

 

 

 

「うおりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

――ズッパァァァァン!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「えぇ……」

 

 一夏のイノシシ・アタック(零落白夜)を食らった陽炎が、呆気なく砂浜へ墜落していったんですけど~……

 

「よっわ……」

 

「一夏の攻撃をモロに受けてたね……」

 

「あんな大振り食らうとか、どんだけよ……」

 

 簪+ハーレム達が呆れる中、我に返った山田先生がいち早く指示を出し始めた。

 

「お、織斑君は襲撃者を捕縛してください! 他の専用機持ちの皆さんは、他に仲間がいないか周囲の警戒を!」

 

「了解した!」

 

「承知しましたわ!」

 

 さすが軍人のボーデヴィッヒが一番に動き出し、それに続いて他の連中も空に上がって周囲を飛び回る。

 俺と簪も周囲の警戒ってことで、ビーチ周辺をホバー状態で見て回った。

 

「それで、何も無かったと」

 

「はい」

 

 一通り見て回り、一夏が倒した襲撃者以外見つけられなかった俺達は織斑先生に報告を入れに浜辺に戻ると、他の生徒は誰もいなかった。

 聞けば、俺達が見回りしてる間に全員旅館に強制帰還させたそうだ。そこは前外史で福音が暴走した時と同じなのか。

 

「それで、だ。宮下と更識には襲撃者の機体を見てもらいたい」

 

「機体をですか?」

 

「そうだ。あの陽炎から、何か手掛かりが得られないかと思ってな」

 

「はぁ。まあウチの商品ですから、解析とか分解とかするのにちょうどいい人材なんでしょうけど」

 

 でもそれって、あの襲撃者を締め上げれば済むのでは?

 

「襲撃者だが……」

 

「女性権利団体?」

 

「……更識の言う通りだ」

 

 知ってた。だって『神聖なるISを穢す咎人に死を!』とか言って俺を狙ってきたし。

 

「そいつは何も吐かなかったんですか?」

 

「何もな。しかも『千冬様も、我々女性の象徴たるISを穢す男を始末するため、お力添えを!』と懇願する始末……頭が痛い」

 

 そう言いながら、織斑先生は懐から胃薬の瓶を取り出すと、中の錠剤を振り出して飲み込んだ。うわっ、水なしで飲んだよこの人。

 

「はぁ……というわけで頼む。もう私は、あのキチガイと話したくない」

 

「りょ、了解です」

 

「分かりました……」

 

 焦点の合ってない目をする織斑先生に、俺と簪はそう返すしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 そして、襲撃者が乗っていた陽炎を解析したんだが……

 

「……なんだこれ」

 

「これ用意した人、頭おかしい」

 

「えっ? ええっ?」

 

 俺と簪の出した結論に、立会人をしていた山田先生が困惑の声を上げた。

 いやだってさぁ……

 

「この機体、システムが書き換えられてるんですよ」

 

「システムが?」

 

 通常ISはその機体にあったシステム、OSを用意するもんなんだが、こいつには陽炎用じゃないOSが載ってやがったんだ。その所為で、陽炎の一番の売りである簡易最適化機能が全く機能していない。

 

「このOS、打鉄のもの」

 

「はっ? マジで?」

 

「うん、これ」

 

 簪が呼び出した2枚の空中投影ディスプレイを見比べる。……確かに大部分が打鉄のOSコードだ。

 つまり何か? 陽炎の機体に、打鉄のOSをわざわざ載せ替えたのか?

 

「馬鹿じゃねぇの?」

 

「うん、間違いなくこれをやった人間は馬鹿」

 

「それは……けど、機体に最適化されたOSから変える理由が思いつきませんね……」

 

 あの山田先生も否定出来ないぐらい、これやった奴は馬鹿確定だ。

 

「しかもよく見れば、打鉄のOSもところどころ手が加えられてるじゃん」

 

「そうなんですか? ということは、その分性能が上がって」

 

「いえ、むしろ下がってます」

 

「あれぇ!?」

 

 山田先生がズッコケた。

 

 そう、そこがさらに恐ろしいところだ。

 元の打鉄OSならまだよかったのに、こいつは独自色を出そうとして、却って性能を悪化させていたのだ。

 

「元の陽炎と比較して、性能比50%ダウン」

 

「そ、そんなにですか?」

 

「機動性重視の陽炎に防御重視の打鉄OSを載せたら、打鉄以下の紙装甲機体になるだけです」

 

「逆にすごいよな。OSだけで陽炎の性能をここまで落とせるなんて」

 

「うぇぇ~……?」

 

 形容しがたい表情になった山田先生だったが、とりあえず織斑先生に報告することにしたようだ。この時点で俺達はお役御免、他の連中と同じく旅館に戻るよう言われたのだった。

 

 

『はぁぁぁ!?』

 

 

 山田先生から報告を受けたのであろう織斑先生の声が旅館内に響いたのは、俺達が昼飯を食ってる時だった。




前回書いた通り、陽炎の襲撃回です。

と言いつつ、しれっと輻射障壁を追加。
でもこれ、R2でヴァリスを止めるシーン以外、あんまり使ってた記憶ががが

襲撃者は女権団。そして一夏に瞬殺されるぐらい弱い改造機。
機体の出処については後々。おそらく皆さん気付いてるとは思いますが。
(ヒント:女権団経由ではありません)
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