お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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前回の更新、2025/07/27……ウッソやん(絶望)


第29話 紫兎(たばね)ゲットだぜ!

 アホの襲撃から一夜明け、結局初日に遊んだだけで今年の臨海学校は終了した。……銀の福音と戦わなくてよかった半面、前外史よりもひでぇ内容だったな。

 

「いや~、昨日はすごかったねぇ」

 

「ホント、まさか学園の外で襲撃されるなんて思わなかったよ。しかもISに」

 

「それを倒した織斑君、かっこよかったよね~!」

 

 帰りのバスに乗り込む中、1組の方からは一夏を絶賛する声が。一夏が襲撃犯を一人で倒したわけだし、そりゃ株も上がるわな。俺も簪も『あの襲撃犯、実は雑魚だったぞ』なんて言いふらす気も無いし。

 

「さすが一夏さんですわ!」

 

「うむ、私達との特訓の成果だな!」

 

「すごくかっこよかったよ一夏!」

 

「これは新兵(ルーキー)を卒業か?」

 

「は、ははは……」

 

 ハーレムの4人(凰だけは別クラスでいない)からも称賛されて、一夏は苦笑いを浮かべて逃げるようにバスに乗り込んだ。あいつも襲撃犯の弱さに気付いてるんだろう。すげぇ居たたまれないって感じだ。

 

「織斑君、大人気」

 

「だな。ある意味可哀想でもあるが」

 

「仕方ない。それに元々織斑先生の七光りだった面もあるし、そろそろ自分から光ってもいい頃合い」

 

「簪辛辣ぅ」

 

 別に、一夏が目立つのは一向に構わないというか、むしろ俺がその陰で好きに出来るから望むところではあるんだ。ただなぁ……

 

「これで倉持、というかレイモンドがデカい顔するのが目に見えてるのが腹立つ」

 

「それは同意」

 

 まともな見せ場が無い倉持のことだ、この件で『我が倉持技研が開発した(してない)白式には、如月の陽炎を一蹴する力があるのだ!』とかドヤ顔で周囲に言って回るんだろう。ウゼェ。

 そもそも腐っても第3世代の白式が、第2世代の陽炎に勝つのは当然というか。ブルー・ティアーズ戦? あれは山田先生の特訓&オルコットの慢心で勝てたようなもんだ。

 

「は~い、全員乗ったわね? それじゃあ学園に帰りましょ」

 

 エドワーズ先生の点呼も終わり、俺達4組のバスが動き出し、車列の最後尾に付くのだった。さて、途中のSAに着くまで、ひと眠り――

 

「陸、輻射障壁のレポートがまだ残ってる」

 

「うへ~……」

 

 隣に座る簪からタブレット端末を渡されてしまった。学園に帰ってから……じゃダメですか、そうですか。

 

「仕方ねぇ、さっさと片付けるか」

 

「うん。"あれ"に載せるのはしばらく後だから、すぐ必要ってわけじゃないけど」

 

「だよな」

 

 周りにクラスメイト達がいるから色々端折ってるが、第3世代量産機『不知火』はまだ発表前だからな。あんまり固有名詞は出さないようにしている。

 俺としては、輻射障壁が白式の零落白夜を止め切れるのか興味があったりする。輻射波動もエネルギーの一種だし、防げないなら防げないで他の対応案も考えないとな。

 

「う~ん、やることが盛り沢山だな」

 

「そう言って陸、顔が笑ってる」

 

 そりゃそうだ。こうやって開発しては対策、対策しては開発ってのが俺の生き甲斐なんだよ。

 

 

 

「更識さん、宮下君とイチャコラしてる……」

 

「タブレット端末を覗き込む振りして、宮下君の腕に抱き着いてるし……」

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉ! 口の中が甘いいぃぃぃ!」

 

「行きは普通だったのに、どうして……」

 

 そして油断していたのか、イチャコラ状態の簪(ややデレ顔)を見たクラスメイト達が次々に悲鳴を上げ、コーヒー(無糖)の缶を呷っていく。いやお前ら、いつからそのコーヒー用意してたんだよ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 そうしてSAで昼飯を挟み、バスからモノレールに乗り換え、夕方になる少し前にはIS学園に戻って来られた。

 そして校舎前で織斑先生の号令によって解散になると、俺と簪は寮に戻らず、途中のほほんと合流して生徒会室へ。一報は入れてあるが、一応向こうであったことを報告しようってことになった。

 

「3人とも、おかえりなさい」

 

「簪様、おかえりなさいませ。宮下君と本音も」

 

 生徒会室に入ると、刀奈と虚さん、そして―――

 

 

「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 2人からアームロックを食らって悲鳴を上げる、紫兎が俺達を出迎えた。なんぞこれ。というかお前、昨日のアホ襲撃から姿を見せないと思ったらここにいたのか。

 

「お姉ちゃん、これって~……」

 

「ついさっき、窓から不審者が部屋に侵入したからお嬢様と捕らえたのよ。私も驚いたわ、まさか侵入者があの篠ノ之博士だったなんて」

 

 虚さんはさも驚いたという風に話してるが、束を押さえる力は抜かないようだ。むしろ、刀奈より全力で押さえに行ってないか? ああほら、束がそろそろ泡吹きそうだ。

 

「だ、だずげで……」

 

「虚さん、その辺で。刀奈も」

 

「あら、もうおしまい? 散々簪ちゃんのこと悪し様に言って」

 

「も、もう言わないがらぁ……」

 

 天下の篠ノ之束も、アームロックには屈服する。これが真理というものなんだろう。2人がロックを外すと、束は支えを失ったように床に崩れ落ちた。

 

「こ、この束さんがぁ……ぜってー許さないから(ゴリッ)ひぎぃぃぃぃ!」

 

「おや? まだ足りませんでしたか、失礼いたしました」

 

「虚さん、ステイステイ」

 

 脇腹に虚さんの指が刺さり、束がまたもや絶叫する。スンッとした顔でやることじゃないからそれ。というか簪に教えたの虚さんかよ! なんてもの教えてんだよ! 俺の脇腹の平穏を返せ!

 

「それで、博士はどうしてここに?」

 

「理由ならそいつに「簪ちゃんが、なぁに?(笑顔の圧力)」そ、そこの眼鏡っ子に聞いてよ……」

 

 刀奈に睨まれて怯える束。新しい。

 

「それで簪ちゃん、どういうことなの?」

 

「かくかくしかじか」

 

 というわけで、臨海学校1日目に束がやって来た時のことを説明し始める簪。途中のほほんが『え~、私にも教えて欲しかった~』とダボダボ袖で叩かれた……俺だけ。解せぬ。

 そんで、約束通り束の話を聞いてやると

 

「つまり、クラス対抗戦の時に無人機を倒したISのことを聞きたいと」

 

「そう! 束さんのゴー君を倒したあのIS、あれ一体なんなのさ!」

 

「私の専用機、ミステリアス・レイディですが?」

 

「見せて! 今すぐに!」

 

「いいですけど、条件があります」

 

「条件んん? 束さんを相手に条件を出すとか、調子に(アームロックを仕掛ける仕草)あっ、はい、条件飲みます」

 

 刀奈に対し、再度下手に出る束。もうこいつ、アームロックがトラウマになってるな。扱いやすくなって嬉しい限りだが。

 

「よし、それじゃあ行きましょうか」

 

「へ?」

 

「行くって、どこに?」

 

 突然生徒会室を出ようとする刀奈に、俺も簪も疑問を口にした。だって何も聞いてねぇんだもの。

 

「決まってるじゃない。篠ノ之博士を軟禁する場所よ

 

「へぇ? ちょっと束さんを拘束出来たからって、軟禁なんか出来るわけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゅごいよここぉぉぉぉぉ! 決めた! 束さんここに住む!」

 

 即落ち2コマだった。

 

 で、ここはどこかと言えば、如月重工の工場地下エリア。つまり俺達、臨海学校から学園に戻ってきたのに、また学外に出てきたわけだ。おいぃぃ……

 そして束が大喜びしてるのは、ここのスタンドアローンPC内に保管されているデータを見たからだ。

 

「衛星軌道からの太陽光発電システム! 地上へのマイクロウェーブ送電! さらには軌道エレベーター! 嘘っ、宇宙輸送艦まであるの!?」

 

 まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のようにキャッキャと騒ぐ束を見て、布仏姉妹は唖然としていた。俺と更識姉妹はこいつのことをよ~く知ってるから、今更驚きはしないが。

 

 これが刀奈の考えた軟禁方法。前外史の束にも提供した宇宙開発に役立つ情報を餌にして、自主的に如月重工に留め置く作戦なのだ。

 結果については見ての通り、さっそく拡張領域からベッドを出しやがった。お前、本当にこの部屋に住むつもりかよ。いいけどさ。

 

「それで博士、ここに住む条件なんですが」

 

「何かな? 言っとくけど『日本の国益のために働け』とか言うなら即行拒否するからね」

 

「あっ、それはいいです。むしろ日本のために動かないでください」

 

「はへ? 君、確か日本政府の飼い犬じゃなかったっけ?」

 

 束がキョトンとした目になる。こいつにかかれば、更識家のことを調べるなんて簡単だろう。けど日本政府……というよりは倉持との関係を知らないのは、途中で興味が失せたんだろうな。

 案の定、刀奈が説明するとげんなりした顔になった。

 

「相変わらず、この国の連中は馬鹿だねぇ。んで? それなら束さんに出す条件って何さ?」

 

「博士には近日立ち上げる予定の、宇宙開発事業に参加していただきたいのです」

 

「いいよ」

 

「即答!?」

 

 2人のやり取りを見ていた虚さんから、さっそくツッコミが入る。

 

「せっかく宇宙に出るためにISを作ったのに、馬鹿共が兵器だのスポーツだの一向に本来の目的に使わないんだもん。おまけにゴテゴテとIS開発にばっかお金かけて」

 

「そう、誰も手を伸ばしてない、競合他社が皆無なわけで、ここで我々如月重工が宇宙開発に乗り出せば数多くの利権を独占できるわけです」

 

「利権?」

 

「短期的には鉱物資源の採掘、長期的には宇宙移民、とか?」

 

「へぇ……?」

 

 刀奈の説明にニヤリと笑う束。前外史でこいつの"興味のツボ"みたいなものは押さえているからか、ビーチでオルコットをボコった時とは雰囲気が大違いだ。

 篠ノ之束は言ってしまえば、好奇心の塊だ。だから狭い地球を出て、宇宙という自分の知らない世界を見たい、ただそれだけの奴なんだよな。ただ、あまりにも脳ミソのスペックが高すぎて、他の人間から理解されないし理解してもらおうとも思ってないのが問題なわけで。IQが20以上離れてると会話が成立しないんだっけか?

 

「いや~、久々に楽しくなってきたよ! それじゃあこれからよろしくね。えっと……りったんにかんちゃん、たっちゃんとのんたんと……オッパイ眼鏡ちゃん!」

 

「虚ですぅ!!」

 

 

――バッ! ギュッ!

 

 

「あおぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 

 

 半泣き虚さんのアームロック(全力)が束を襲う! あっそうそう、そいつ臨海学校2日目に俺達に向かって舌打ちしたから、その分のお仕置きもよろしく。




結局今回も、束をこっち側に引き込みました。
これからもちょくちょく出番があるはずなのでお楽しみに。

次回から夏休み編、そして女権団と倉持(レイモンド)の発狂回を予定しています。
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