お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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戦い(更新)(勢い)だよ兄貴!


第3話 うわっ…私の敵、弱すぎ…?(更識刀奈さんの場合)

 時間は流れ、第2回モンド・グロッソから1年後。決勝戦を放棄した織斑千冬が日本代表を辞任し、その後1年ほど滞在していたドイツから日本へ戻ってきた頃。

 日本代表辞任について、世間では『モンド・グロッソでの贖罪のため』などと囁かれたが、実際はそうではない。

 

 千冬が日本代表を辞した理由はただ一つ。唯一の肉親である弟の一夏が、大会中何者かによって誘拐されたからであった。

 だから、彼女は一夏救出のために決勝戦を放棄した。そして情報を提供したドイツへの礼として、1年間軍の教官役を引き受けた。

 

 そして現在、代表候補生養成所では、千冬の後釜となる次期国家代表を選出する模擬戦が行われていた。

 

ーーーーーーーーー

 

「ふぅ、懐かしいな」

 

 ドイツから戻ってすぐ、私はかつて在籍していた代表候補生養成所に足を運んでいた。

 ここに来た理由は言うまでもなく、次の国家代表を決める試合を見に来たのだ。

 

「千冬様がわざわざ見ずとも……」

 

「いいえ、後任の選手が決まるのを見届けるのが、私の最後の責務だと思っていますから」

 

「そのような崇高なお考えが……さすが千冬様です!」

 

「……」

 

 案内役の女性は目をキラキラさせているが、私はそんな素晴らしい人間ではない。弟の身の安全と国家代表の身分を天秤に掛けて前者を選んだ、一人の姉でしかない。

 だが実際、自分の後任がどんな人間かは興味があった。願わくば、私のような人間でないことを。

 

 そして施設内部にあるアリーナに到着すると、2機のISが空中を飛び交っていた。ちょうど、試合が行われていたようだ。

 

「今戦っているのは誰ですか?」

 

「少々お待ちください。えっと……野崎候補生と、更識候補生ですね」

 

「ほう、片方は野崎さんか」

 

 私と同時期に代表候補生になった人だ。相手の更識というのは、もしかして()()更識か?

 

「更識というのは……」

 

「はい、更識()()さんですね」

 

「やはり、あの『如月重工』の」

 

 世界シェア第2位を誇る、日本国内でも倉持技研に並ぶ、いや倉持を超えるIS開発企業だ。

 政府との繋がりも関係するため、第2回モンド・グロッソでは倉持の開発した第2世代機が選ばれたが、それが無ければ如月重工の機体に乗っていたかもしれない。

 私個人の感想としては、防御性重視の『打鉄』よりも、機動性に重点を置いた『陽炎』の方が性に合っていた気がする。それもたられば、今更の話だが。

 

「お二人とも、なかなか決着がつきませんね」

 

「そうみたいですね。二人が乗っているISについて、何か分かりますか?」

 

「はい、データベースに登録されています。野崎さんの機体は『打鉄()()』。倉持技研が開発中の第3世代機、そのプロトタイプです。更識さんは『ミステリアス・レイディ』。如月重工の機体です」

「なるほど、倉持と如月の……」

 

 野崎さんの打鉄弐式は、第2世代機である打鉄の原型があり、見た目ですぐ分かった。そうなると、もう片方がミステリアス・レイディということか。

 打鉄弐式が刀とアサルトライフルを持ち、ミステリアス・レイディが馬上槍みたいな武装を持っていた。発砲炎が見えるということは、槍にマシンガンが内蔵されているのか。

 

「ふむ……ですが、そろそろケリが着きそうです」

「えっ? あっ!」

 

 どうやらあのミステリアス・レイディという機体、陽炎と同じく機動性重視のようだ。高速移動で打鉄弐式を上手くかく乱し、最後は正面から非装甲部に強烈な突きを入れた。

 

『打鉄弐式、SEエンプティ。勝者、更識楯無』

 

 アナウンスが流れ、両者がゆっくりと地表に降りてくる。

 

「すごい試合でしたね」

 

「ええ。彼女のような強者が次の国家代表になるのであれば、私も安心して引退できます」

 

「そう、ですね……ところで、千冬様は代表を辞められた後は?」

 

 露骨な、そして彼女なりの気遣いとも言える話題転換に、私も苦笑して答える。

 

「実は、候補生時代の後輩に誘われていまして。教師をする予定です」

 

「教師……もしかしてIS学園ですか!?」

 

「ええ」

 

 

 IS学園。IS運用協定、通称「アラスカ条約」に基づいて設置された、IS操縦者やメカニックを養成する国立高等学校。

 後輩の山田真耶に誘われて、来年度からそこの教師として赴任することが決まっている。とはいえ、教員免許は無いから一般科目はノータッチ、IS関連の授業だけなのだが。

 

 

「うわぁ! きっと来年度から入学倍率が上がりますね!」

 

「いや、それは……」

 

 正直、私目的で来られても困るのだが……

 

「ところで、先ほどの試合ですが」

 

「あっ、はい。試合結果から、更識さんが次の日本代表に任命されるはずです。実際彼女は候補生になってからも成績、素行ともに問題ありませんので。それと更識さんは来年度、IS学園へ入学する予定です」

 

「なるほど、私と同じ"新入生"というわけですか。……二人とも、かなり疲弊しているな」

 

「先ほどの試合、白熱してましたからね。接戦というやつですね」

 

「……」

 

「千冬様?」

 

「ああいえ、何でもありません」

 

 案内役が不思議そうな顔をしていたが、私は首を横に振った。

 

 更識楯無……奴は、本気を出していなかった気がする。

 

「更識、か……」

 

――ギリッ

 

(なん、だ……?)

 

 今、ものすごく胃に痛みが……

 

ーーーーーーーーー

 

「はぁ……」

 

 野崎さんとの試合後、私はピット内に設置されたベンチに座り込んだ。

 さっきの試合、すごく疲れた。それと同時に、やり切った感もあった。

 

(相手をワンパンしないで勝つのしんどいわぁ……)

 

 次期国家代表を決める試合だから、ある程度目立つのは仕方ない。だけどあまり目立ちすぎるのもアウト。だから『接戦の上、何とか辛勝した』ぐらいを目指してたのだけど……

 

(倉持技研の打鉄弐式、弱すぎぃぃぃぃぃぃ!!)

 

 なにあの通常の打鉄に毛が生えた程度の機体! あれで代表候補生の専用機!? あれじゃ野崎さんが可哀そうよ!

 

(大して機動性が上がってない。武装も打鉄と変わらず。荷電粒子砲(春雷)も無いし、マルチロックオン・システム(山嵐)なんて影も形も無い……)

 

 さらに1年後、前世と同じように織斑君がIS学園に入ったら、白式に夢中で弐式の開発が凍結されると。……ご愁傷様です、野崎さん。

 

「けど、何はともあれ、これで日本代表になれたわね」

 

 国家代表になるのはこれで2回目だけど、正直今回の方が感慨深いわぁ。前回ロシアの代表になった時は、半分お仕事みたいなものだったしね。

 あとは4年後の第3回大会に出場して……なぜかしら、優勝『出来ない』シーンが想像できないわ……。

 

(4年後って言ったら、セシリアちゃん達も成長してるはず。けど、どうしても簪ちゃん以外に負ける気がしない)

 

 そして本人が『代表候補生にならない』って宣言してる以上、大会で簪ちゃんと戦うことは無い。……うん、楽勝!

 

「って、何馬鹿なこと考えてるのよぉ……これも全部、陸君の所為だわ……」

 

 陸君がミステリアス・レイディを強化し過ぎて、私の慢心も強化されてる? それはまずいわよ。

 っと、そういえば陸君が『万が一、今日の試合で負けそうになったら使ってくれ』って言ってた武装があったわね。

 

「え~っと……あっ、あったあった」

 

===============================================

 

武装名:光子対消滅反応魚雷(フォトン・トルピード)(リミッター付き)

 

概要:周囲に反物質結晶体を散布、触れたものを光子に変換・消滅させる

 

効果範囲:機体を中心に最大で半径100m

 

備考:フォトン・サーチャーによって周囲の光子を吸収、シールドエネルギーに変換が可能

 

===============================================

 

 な、ななななな……っ!

 

 

「なんてもの作ってるのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 こんなもん、封印よ封印っ!! 私はモンド・グロッソに出場するのであって、宇宙を舞台にした大戦争に参加するわけじゃないのよ!?

 

「まったく……陸君には一度、きつ~いお灸を据えないと」

 

 もしかしたら簪ちゃんも共犯かもしれないし、もしそうだったら二人まとめてお仕置きね。

 

ーーーーーーーーー

 

「っ!?(ブルッ)」

 

「陸、どうかしたの?」

 

「いや、何か一瞬悪寒が……」

 

「? ……っ!?(ブルッ)」

 

「簪、お前もか」

 

「(コクコクッ)」

 

 おかしい。如月重工の休憩室で、刀奈からの連絡を待ってるだけなのに。

 

 織斑千冬が会見で日本代表辞任を発表してから数日が経ち、次の代表が今日決まる。正確には代表候補生達が試合って、勝った奴が次の代表ってことだ。

 で、刀奈もその試合に参加していて、俺達はその報告待ちってわけだ。

 

「もしかして、お姉ちゃん負けた?」

 

「いやいやまさか。最後の切り札だって入れただろ」

 

「うん。でも、もし切り札を使う前に速攻をかけられてたら」

 

「う~ん、それでも倉持如きに負けるとは思えんが……」

 

――PiPiPi!

 

 簪の端末から着信音が鳴った。

 

「お姉ちゃんだ! ――もしもし?」

 

『簪ちゃん、やったわよ!』

 

「あ……それじゃあ!」

 

『ええ。さっき正式に、日本の国家代表に選ばれたわ』

 

「よっし!」

 

 なれないなんて全然思ってなかったが、これでまずは、刀奈がブリュンヒルデになるための第1歩だ。

 

『この後手続きがあるから、それが終わったらそっちに戻るわね』

 

「うん、待ってる」

 

『それじゃあ、また後でね♪』

 

 そこで通話が切れる。

 

「「いえ~~い!!」」

 

 上機嫌の簪とハイタッチまでかましちまった。今日の晩飯は豪華に――!

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

「……それで? あの武装について説明、してくれるわよね?」

 

「……」

 

「……」

 

「「あるぇぇぇ?」」

 

 なんで俺と簪、二人揃って刀奈に正座させられてんだ?




2週目ともなると、簪もいい感じでぶっ飛んでます。

さぁちーちゃん、君のポンポンペインは始まってるよ!(満面の笑み
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