お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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やる気と勢いがある内に書こうとした結果、内容がごった煮に……


第31話 お姉ちゃんスカウト えっ、私も?

『どうですか! 我々倉持技研が開発した白式が、卑劣なテロリストの陽炎を一蹴する様は!』

 

「いや、第3世代機が第2世代機に勝つのは普通だろ」

 

「これは酷い」

 

「さすが倉持の上層部、頭レイモンドしてるわね」

 

「これが国を代表するIS開発企業なんて、日本は大丈夫なのかい?」

 

「ダメでしょうね」

 

 デュノア社との合弁会社設立からそこそこ経ち、事務所兼工場が完成したってことでフランスまで飛んだ俺達はアルベールさんに建物内を案内してもらってる最中、休憩室のディスプレイから流れてきた倉持技研の記者会見を見て呆れ返っていた。

 うわぁ、マジでやったよ記者会見。刀奈が言う通り、こいつら頭レイモンドだな。見ろよ、画面端に映ってる記者の顔。すげぇ言いたいことを我慢してるって顔だ。でも言えないんだ、倉持のマシンガントーク(弾は自画自賛)が止まらないから。

 

「フランスに移る準備をしてて正解だった」

 

「えっ、本当に移る気だったのかい!?」

 

「そうですよ。もしかしてアルベールさん、疑ってました?」

 

 最初に合弁会社の話をした時『駆け込み寺』なんて言い方してたぐらいだし、てっきりこっちの真意を汲んでるものかと。

 

「いやぁ……普通あり得ないだろう? 国内最大手のIS開発企業である如月重工が国外移転するなんて……てっきり倉持技研、というよりレイモンド=澤和と、彼と縁のある日本政府関係者に釘を刺すためのブラフなのかと」

 

 まあ、普通ならそう考えるところなんですがね。ただ何分、政府中枢と倉持の上層部が、ねぇ……?

 俺の表情で言いたいことが伝わったのか、アルベールさんから苦笑いが漏れる。

 

「そ、それで更識社長、貴女はどうするんです? 貴女は確か、日本の国家代表――」

 

「ええ、辞めます」

 

「ぶふっ!」

 

 刀奈のあっさり回答に、アルベールさんが綺麗に吹き出す。

 俺としても正直惜しいとは思うし、刀奈はもっとそう思ってるだろう。けど、事ここに至っては国家代表の肩書が日本、というか倉持からの呪いと化してる気もしてるわけで。

 

「国籍を取り直したら、一からフランス国家代表を目指すつもりです」

 

「お姉ちゃん、ガンバ」

 

「確かに、貴女なら出来そうな気もしますがね……」

 

 もちろん刀奈だけでなく、俺や簪、更識家の両親もフランス国籍を取得予定だ。さらには、工場長を始めとした従業員のほとんどがこっち(フランス)に来たいと願い出てるっていう。

 それもあって、新工場には日本にある全設備が揃っている。試験用アリーナを始めとした地上部分はもちろん、地下施設に至るまで。

 

「私達がフランス国籍になったタイミングで、如月の全機能はこっちに移します。あとは日本にある施設を遠隔で爆破解体して終わりですね」

 

「ば、爆破解体?」

 

「はい。表向きは新装備の試験中に爆発事故が発生、再建の目途が立たずに放棄、フランスの新工場に移転という流れです。陽炎を販売したユーザーへのサポートは引き続き行いますが、日本には窓口すら残しません」

 

「お、おお……そこまでしますか……」

 

 しますとも。下手に設備とか残して、倉持とかが勝手に持ち出した挙句、自分達の特許だと主張する恥知らずな真似してきたら腹立つし。

 そんなわけで、日本政府や倉持が気付いた時には、国籍も社屋もフランスに移った俺達に手も口も出せなくなるって寸法だ。さすがに奴等も、他国の人間や企業にちょっかい掛けては来れまい。……まさか来ないよな?

 

 

 

 あっ、言い忘れてたが束も当然フランス行きだ。

 

「フランス? いいよ~♪ というか、あっちにも"ここ"と同じ部屋作るんだよね? ならそこに住むから☆」

 

 フランスに移住しても、束が地下エリアから出ることは無さそうだ。もちろん束が新工場の地下エリアに住み着くことは、アルベールさんにも内緒だ。

 

「ところでりったん、この軌道エレベーターなんだけど――」

 

「いや、せっかくISっていう単独大気圏突破出来るブツがあるのに、わざわざそんなデカいの作る必要ないだろ」

 

「あっ、やっぱり?」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 如月新工場の視察が終わり、陸とお姉ちゃん、そして私の3人はフランス観光をするためパリの街に降り立った。

 ……はずだったんだけど。

 

「む~……」

 

「まぁまぁ簪ちゃん、そんなムスッとした顔しちゃダメよ」

 

「それ『まぁまぁ』って顔じゃないですよ、楯無しさん」

 

 お姉ちゃんの顔、イライラを力尽くで押し込めたすごい笑顔になってる。端的に言って怖い。

 ほら、モンパルナス駅を降りた私達を今乗ってる車内に連れ込んだフランス政府の役人達も、すっごい怯えてるし。

 

 

 そんな車内の雰囲気最悪なまま、連れて来られたのはエリゼ宮殿。つまり大統領官邸だ。

 その一室で、IS管理局を名乗る人が私達とテーブルを挟んだ反対側に座っている。

 

「タテナシ・サラシキさん。貴女は日本(ジャポン)の国家代表ですね?」

 

「そうですけど」

 

「国家代表が他国に旅行しちゃいけないって条約はありませんけど」

 

「ああカンザシ・サラシキさん、別に私はそのような意味で言ったわけではありません」

 

 ジト目で目の前の局員を睨んだら、あっちは慌てたように両手を振って否定した。ならどういう意味でムギュッ!

 

「簪、いきなり喧嘩腰になるのはやめとけ」

 

「……うん」

 

「睨んだり先制攻撃したりしていいのは、女権団と倉持だけだ」

 

「うん」

 

 陸の言うことはもっともだ。……なぜか局員さんが『ナニソレコワイ』みたいな顔してるけど。解せぬ。

 

「んっ、んん! それで、日本の国家代表である私に何かあるのでしょうか?」

 

「そ、そうでした。実はタテナシさんにIS管理局、フランス政府から提案がありまして」

 

「提案?」

 

「はい」

 

 すると局員さんは足元に置いていたブリーフケースから書類を取り出して、私達の前に置いた。

 

「○月×日、デュノア社がフランス西部ペイ・ド・ラ・ロワールの土地を購入。同月△日、ナントの港から建設用資材を運搬……」

 

「こちらとしても、日本の如月重工とデュノア社の合弁会社設立の件は存じておりました」

 

「だろうな」

 

 お姉ちゃんが書類の中身を読み上げる中、陸は当然とばかりに頷いた。

 合弁会社自体は違法でも何でもないし、変に隠して日本政府や倉持に余計な足を引っ張られるのが嫌だったから、正規の手続きをしていたはず。だから当事国の片方であるフランス政府が知ってるのも当然。

 問題なのは、どうして建設初期からこうやって行動を見張る真似をしていたのか。

 

「いや簪、そりゃフランス側は気にするだろ」

 

「? そうなの?」

 

「そりゃ日本最大手の俺達が、立て直しつつあるとはいえ最近まで落ち目気味だったデュノア社と合弁会社を作る意味、あるか?」

 

「……ない」

 

「そうはっきり言われると、我々の立場が無いのですが……」

 

 ガックリ項垂れる局員さんは置いておいて。陸が言いたいことが何となく分かった。

 つまりフランス政府は、私達が合弁会社設立を隠れ蓑に、実質デュノア社を乗っ取ろうとしていると考えているんだ。

 確かに言われてみれば、如月重工とデュノア社のパワーバランス的に、デュノア社の方が飲み込まれる側だもんね。

 

「でも私達、別にデュノア社をどうこうするつもりは無い」

 

「ええ、そうでしょう。調査の結果、デュノア社の株式を購入している痕跡も無し。役員選出等に関わっている様子もありませんでした」

 

 アルベール社長との通信についても、怪しいところは出て来なかったと言う。陸が第3世代機の設計図を売却した時は、別の暗号通信を使ったからバレてないみたい。

 

「そうなると、余計分かりませんね。そこまで分かっていながら、わざわざ私達をここに連れてきた理由は何ですか?」

 

 相手の考えが読めず、またイライラしてきたお姉ちゃんに、局員さんはゲンドウポーズをキメて

 

 

「タテナシ・サラシキさん。日本の代表を辞めて、我が国の代表になりませんか?」

 

 

「「……わーお」」

 

「キタコレ」

 

 キュピーンッと目が光らせる局員さんに、私達は(ある意味)勝ちを確信した。フランス、チョロい。

 

「それとカンザシさんも、代表候補生になりませんか?」

 

「はっ?」

 

 ダイヒョウコウホセイニ、ナリマセンカ? だいひょうこうほせい……代表、候補生……ファッ!?

 

「なななな、なりません! なりませんったらなきません!」

 

 せっかく今世では代表とかにならないで、お姉ちゃんが出場するモンド・グロッソの試合を観客席から応援する気でいたのに、今更――

 

「もし代表候補生になって下さったら、我が国に配分されているISコア、先ほど出てきた合弁会社に1つ回してもよいですよ?」

 

「くっ……! なんて卑劣な!」

 

 正直ISコアなんて無くても問題ない。日本に返却するのは陸が作った代替コアだし、不知火とかの出荷前テストも代替コアで動かせばいい。いざとなれば、束博士がいるからいくらでもコアが作れるし。原料の時結晶も、IS登場前にこっそり採取済み。

 それでも、表向き保持しているコア数=表で動かせる機体数になるから、あればあっただけいいわけで……

 

「分かり、ました。なります……」

 

「いや簪、嫌なら断っても……」

 

「そうよ簪ちゃん」

 

 陸やお姉ちゃんはそう言ってくれるけど、これは私のためでもあるの。ここで正規のコアを手に入れれば、引き続き私がレッド・スコルピオに乗ってても違和感が無くなる。それなら……

 

 

「2学期も、織斑君にメメントモリや山嵐を叩き込める……!」

 

「簪ちゃぁぁぁぁぁんっ!?」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 IS学園の夏休み。僕は今、地獄を経験しているのかもしれない……

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「ど、どうしたんだよ? 全員黙っちまって」

 

 クーラーの効いたリビングで、僕を含めた5人がどんよりとしている姿に一夏が首を傾げている。一夏からしたら、遊びに来たクラスメイト達が家の中に上がった途端、突然落ち込んだように見えただろうからね……

 

「シャルロット……」

 

「なぁに、ラウラ……」

 

「お前は"あれ"、知ってたのか……」

 

「知るわけないよ……」

 

 目のハイライトが消えたラウラの視線の先に、僕も視線を向ける。

 

 

「皆さん、麦茶でいいですか~?」

 

 

 どうして……

 

 どうして山田先生が一夏の家にいるのかなぁぁぁぁぁ!?

 

 そこは織斑先生でしょ普通! いや、織斑先生が僕達にお茶出してくれる姿とか想像できないけど!

 そんな心のツッコミを声に出来ず、僕達の前に麦茶入りのコップが置かれていく。

 

「い、一夏……」

 

「なんだよ鈴」

 

「どうしてアンタのとこの副担任が、家にいるのよ!?」

 

 僕が、僕達が聞きたくても聞けなかったことを鈴が先陣切って聞いてくれた! 箒やセシリアからも、尊敬の眼差しが鈴に向けられる。

 一夏はその眼差しに気付くことも無く

 

「どうしてって、ここ1,2年はずっとそうだったし」

 

「「「「「ファーっ!?」」」」」

 

 僕達全員、思わずテーブルを叩いて立ち上がる。

 ずず、ずっと一緒!? 教師と生徒の関係なのに、なのにぃ!?

 

「どどど、どういうことよ!?」

 

「どういうって、家にずっと一人の俺を心配して、千冬姉が山田先生にお願いして様子を見に来てくれてたんだよ」

 

「あ……」

 

「そういうことでしたの……」

 

 その説明で、僕達はスッと座り直した。

 そ、そうだよね。そういう理由だよね。ぼ、僕ってば何を想像してたんだろ……///

 

「さて私も、よいしょ」

 

 僕達に麦茶を配り終えた山田先生が、ソファーに座……すわった……

 

 一夏の、隣に……! すごく、自然体で!

 

「一夏ぁ……これは一体どういうことだ……?」

 

「説明、してくださいますわよね……?」

 

「逃げるんじゃないわよ……」

 

「うん、逃げずに説明して欲しいな……」

 

「報連相は嫁の義務だぞ……」

 

 

「な、なんなんだよぉぉぉぉ!」

 

 僕達の視線に怯んだのか、一夏がソファーから立ち上がろうとする。けど慌ててたからなのか、足を滑られせて……

 

「ちょっと皆さん、織斑君も落ち着いて……あんっ❤(足を滑らせた一夏の手が胸に当たる、そして反射で揉む)」

 

「「「「「一夏(さん)ぁぁぁぁ!?」」」」」




祝・新工場完成。
着々と逃げる準備が整ってまいりました。
フランス逃避自体は確定ですが、時期についてはまだ未定です。

刀奈、スカウトされる。ついでに簪も候補生に。
フランス政府の狙いとしては『2人を引き込んで、ミステリアス・レイディとレッド・スコルピオの所属を自国にしたい!』というもの。
なお、製作者のオリ主は『刀奈がブリュンヒルデになれるなら、他はどうでもいい』の精神。

織斑家、シュラバロス。
あの1期OVAでまーやんが出ていたら、きっとこうなってたはず。
……と思ったけど、まーやんが一夏に胸揉まれたの、ラファールで墜落した1期5話だけでしたね……


次回、まだ暑いから夏休み回をやるか、それとも2学期に入って一夏に開幕メメントモリか。
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